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 医学部 医学科 解剖学講座/微細形態学
 Division of Histology and Cell Biology, Department of Anatomy

教授:
  黒田 優
准教授:
  船戸 弘正
講師:
  小田 哲子
■ 概要
1. 睡眠およびエネルギー代謝制御の分子機構解明
神経ペプチドであるオレキシンやエピジェネティックスに関与する分子のエネルギー代謝に関する研究に取り降り組んでいます。さらに、睡眠のフォワード・ジェネティクス研究により見出された新しい睡眠覚醒制御分子SIK3の研究にも取り組んでいます。これらの研究を通じて、睡眠覚醒、肥満、うつ・不安、攻撃行動等、異なる行動モダリティー間がどのように統合されているのかを明らかにし、ヒト疾患の病態形成の理解と制御法開発に貢献しようと研究に取り組んでいます。
2. 生得的社会行動を制御する視索前野の機能解剖学
内側視索前野は性行動や養育行動などの本能行動に重要な脳領域であり、内分泌情報や環境情報、他個体の情報などの社会的情報を統合し、下流の複数の情動に関わる神経領域を制御すること、性行動や養育行動、攻撃行動などの生得的な社会行動を制御する中枢です。しかし、その生体機能における多くの示唆がある一方で、その形態的・機能的複雑性が研究の障害となり、神経回路レベルでの役割は未解明な部分が多く残されています。我々は、これまで蓄積してきた組織学的なデータを基盤として遺伝子工学的な手法を用い、内側視索前野の機能検討を行っています。
3. 大脳皮質-視床間神経ネットワークの分子形態学的検討
感覚情報は視床を経由して大脳皮質に送られ、大脳皮質でより高次の情報処理がなされます。この回路は感覚情報処理以外にも様々な役割を持っており、例えば視床背内側核と前頭前皮質との線維連絡は、ワーキングメモリーや情動行動制御にも関与しています。さらに、大脳皮質-視床間の神経回路を修飾するモデュレーターとしてアセチルコリンとドパミンが特に重要です。我々は形態学的な手法により神経回路網における神経伝達物質や受容体などの局在分布の解析を行っています。さらに、遺伝子改変マウスへのアデノ随伴ウイルスベクター局所投与による、遺伝解剖学的研究も行っています。
4. 「親と子の絆」の神経科学
親と子の絆は子にとってはもちろん親にとっても重要なものです。親子の絆は、生後、視覚や聴覚、嗅覚、皮膚感覚など様々な感覚を通して深まることは知られていますが、意外なことに定量的客観的な研究は非常に少なく、さまざまな「子育て神話」が流布する要因となっています。我々は、親が乳児を抱っこするときの、動き・心拍数の変化を親と子の双方の側から検討しています。また、親と子の絆の形成に関する神経機構明らかにするため.親マウスに運ばれる際に仔マウスがおとなしくなる現象等の機能解剖学的研究にも取り組んでいます。
■ Keywords
睡眠覚醒 エネルギー代謝 オレキシン 生得的社会行動 脳の性的二型性 視床皮質回路 輸送反応 親子絆
■ 当該年度の研究費受入状況
1.  文部科学省科学研究費補助金(JSTさきがけ)
 研究課題:次世代型子育て支援:乳児鎮静化の神経基盤とアルゴリズム  (研究代表者:堤さちね)
 研究補助金:11785000円  (代表)
2.  文部科学省科学研究費補助金 若手(B)  (研究課題番号:15K18364)
 研究課題:多様な生得的行動を制御する神経領域:内側視索前野の機能解剖学  (研究代表者:恒岡洋右)
 研究補助金:1170000円  (代表)
3.  文部科学省科学研究費補助金 基盤研究(C)  (研究課題番号:15K08160)
 研究課題:遺伝薬理学を用いた前頭前皮質へのコリン作動性神経入力の解明  (研究代表者:小田哲子)
 研究補助金:1430000円  (代表)
4.  ひと・健康・未来研究財団 研究助成金
 研究課題:行動・精神疾患の性差はどこで生じるのか?新規な性的二型神経領域の機能解剖学的解析  (研究代表者:恒岡洋右)
 研究補助金:1000000円  (代表)
5.  内藤記念女性研究者研究助成金
 研究課題:マウスモデルを用いた母子相互作用中に起こる子の鎮痛の神経機構解明  (研究代表者:吉田さちね)
 研究補助金:2000000円  (代表)
6.  武田科学振興財団 医学系研究奨励金
 研究課題:養育行動によって変化する摂食代謝制御とその神経メカニズムの解明  (研究代表者:恒岡洋右)
 研究補助金:2000000円  (代表)
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















黒田 優   教授
医学博士
    3          
 7
(2)
 
 
 
 
船戸 弘正   准教授
博士(医学)
   1 1          
 8
(4)
 
 
 
 1
(1)
小田 哲子   講師
博士(医学)
    2          1
 6
(2)
 
 
 
 
恒岡 洋右   助教
博士(理学)
   1 2          2
 8
(4)
 
 4
 
 1
(1)
吉田 さちね   助教
博士(神経科学)
    1          2
(2)
 3
 1
(1)
 
 
 
 0 2  0 0  0  5
(2)
 1
(1)
 0
(0)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














黒田 優   教授
医学博士
         
 
 
船戸 弘正   准教授
博士(医学)
  1       
 
 
小田 哲子   講師
博士(医学)
         1
 
 
恒岡 洋右   助教
博士(理学)
  1       2
 
 
吉田 さちね   助教
博士(神経科学)
         2
(2)
 1
(1)
 
 0 2  0 0  0  5
(2)
 1
(1)
 0
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. Yang J, Litscher G, Sun Z, Tang Q, Kishi K, Oda S, Takayanagi M, Sheng Z, Liu Y, Guo W, Zhang T, Wang L, Gaischek I, Litscher D, Lippe IT, Kuroda M:  Quantitative analysis of axon collaterals of single pyramidal cells of the anterior piriform cortex of the guinea pig.  BMC neuroscience  18 :25 , 2017
2. Amano T, Shindo S, Yoshihara C, Tsuneoka Y, Uki H, Minami M, Kuroda KO:  Development-dependent behavioral change toward pups and synaptic transmission in the rhomboid nucleus of the bed nucleus of the stria terminalis.  Behavioural Brain Research  325 (15) :131 -137 , 2017
3. Tsuneoka Y, Tsukahara S, Yoshida S, Takase K, Oda S, Kuroda M, Funato H:  Moxd1 is a marker for sexual dimorphism in the medial preoptic area, bed nucleus of the stria terminalis and medial amygdala.  Frontiers in Neuroanatomy  11 (26) :1 -13 , 2017
4. Funato H, Miyoshi C, Fujiyama T, Kanda T, Sato M, Wang Z, Ma J, Nakane S, Tomita J, Ikkyu A, Kakizaki M, Hotta-Hirashima N, Kanno S, Komiya H, Asano F, Honda T, Kim SJ, Harano K, Muramoto H, Yonezawa T, Mizuno S, Miyazaki S, Connor L, Kumar V, Miura I, Suzuki T, Watanabe A, Abe M, Sugiyama F, Takahashi S, Sakimura K, Hayashi Y, Liu Q, Kume K, Wakana S, Takahashi JS, Yanagisawa M:  Forward-genetics analysis of sleep in randomly mutagenized mice.  Nature  539 (7626) :378 -383 , 2016
5. Okabe S, Tsuneoka Y, Takahashi A, Ooyama R, watarai A, Maeda S, Honda Y, Nagasawa M, Mogi K, Nishimori K, Kuroda M, Koide T, Kikusui T:  Pup exposure facilitates retrieving behavior via the oxytocin neural system in female mice.  Psychoneuroendocrinology  79 :20 -30 , 2017
■ 学会発表
国内学会
1. ◎吉田さちね, 大西竜子, 恒岡洋右, 小田哲子, 黒田優, 船戸弘正, 黒田公美: 親に運ばれる時に示す子の協調的反応:乳児と仔マウスを用いた比較生物学的解析.  第94回日本生理学会大会,  浜松,  2017/03
2. ◎小田哲子、船戸弘正、赤羽悟美、伊藤雅方、恒岡洋右、吉田さちね、黒田 優: 前頭前皮質のアストロサイトにおけるムスカリン受容体M1の局在分布.  第122回 日本解剖学会総会・学術集会,  長崎,  2017/03
3. ◎吉田さちね, 大西竜子, 恒岡洋右, 小田哲子, 黒田優, 黒田公美, 船戸弘正: 親に運ばれる時に起こる子の協調的鎮静反応の意義と神経機構.  第122回日本解剖学会,  長崎市,  2017/03
4. ◎恒岡洋右, 塚原伸治, 吉田さちね, 小田哲子, 黒田優, 船戸弘正: 性的二型核マーカーMoxd1の内側視索前野における発現.  第122回日本解剖学会,  長崎,  2017/03
5. ◎鮎川紫苑, 兵働美佳, 鈴木惠雅, 棟朝亜理紗, 渡辺愛子, 恒岡洋右, 齋藤理佳, 藤原宏子, 佐藤亮平, 宮本武典: The effect of testosterone on synaptic plasticity in brain areas related to extinction memory retention after conditioned taste aversion in mice.  第94回日本生理学会,  浜松,  2017/03
6. ◎伊藤雅方, 冨田太一郎 , 三上義礼 , 村上慎吾 , 小田哲子 , 黒田優 , 赤羽悟美: 脂質転移タンパク質STARD10は脂肪蓄積及び脂肪滴形成を促進する.  第94回日本生理学会大会,  浜松, 日本,  2017/03
7. ◎伊藤雅方, 冨田太一郎 , 三上義礼 , 村上慎吾 , 小田哲子 , 黒田優 , 赤羽悟美: 脂質転移タンパク質STARD10はNASHにおける脂肪蓄積及び脂肪滴形成を促進する.  第90回日本薬理学会年会,  長崎, 日本,  2017/03
8. ◎鴫山文華, 熊代尚記, 吉川芙久美, 恒岡洋右, 船戸弘正, 弘世貴久: 急性睡眠障害が過食・肥満とは独立して肝脂肪蓄積を誘発する.  第31回日本糖尿病・肥満動物学会年次学術集会,  横浜,  2017/02
9. ◎恒岡洋右、吉田さちね、小田哲子、船戸弘正、黒田優: マウス内側視索前野の性ホルモン受容体発現細胞における分子組成.  第25回日本行動神経内分泌研究会,  熱海市,  2016/09
10. ◎天野大樹、伊藤和貴、恒岡洋右、進藤さやか、吉原千尋 、南雅文、黒田公美、: 雄マウスの養育行動発現と神経可塑的変化.  第25回日本行動神経内分泌研究会,  熱海市,  2016/09
11. ◎鴫山文華, 熊代尚記, 藤村梓, 恒岡洋右, 船戸弘正, 弘世貴久: 急性睡眠障害が過食・肥満とは独立して肝脂肪蓄積を誘発する.  第34回内分泌代謝学サマーセミナー,  福岡県久山町,  2016/07
12. ◎鴫山文華, 熊代尚記, 恒岡洋右, 船戸弘正, 弘世貴久: 急性睡眠障害が過食・肥満とは独立して肝脂肪蓄積を誘発する.  第89回日本内分泌学会学術総会,  京都,  2016/04
国際学会
1. ◎Yoshida S: Early mother-infant interaction: comparative analyses in humans and mice.  6th International Kansei Engineering & Emotion Research Conference,  Leeds, UK,  2016/08
2. ◎Miyamoto T, Ayukawa S, Hyodo M, Suzuki E, Munetomo A, Eda-Fujiwara H, Satoh R, Saito R, Watanabe A, Tsuneoka Y: Sex difference in dendritic spine density related to extinction memory acquired after conditioned taste aversion in mice.  The 39th Annual Meeting of the Japan Neuroscience Society,  横浜市,  2016/07
3. ◎Amano T, Shindo S, Yoshihara C, Tsuneoka Y, Minami M, Kuroda KO: The comparison of behavioral pattern toward pups and synaptic transmission in the rhomboid
nucleus of the bed nucleus of the stria terminalis between mice before after weaning.  The 39th Annual Meeting of the Japan Neuroscience Society,  横浜市,  2016/07
4. ◎Kuroda KO, Tsuneoka Y, Ohnishi R, Yoshihara C, Nishimori K: Role of oxytocin and vasopressin in mouse pup-directed behaviors.  The 39th Annual Meeting of the Japan Neuroscience Society,  横浜市,  2016/07
5. ◎Tokita K, Tsuneoka Y, Amano T, Sato M, Kuroda KO: Neural circuits involved in paternal and infanticidal behavior in mice.  The 39th Annual Meeting of the Japan Neuroscience Society,  横浜市,  2016/07
その他
1. ◎鴫山文華, 熊代尚記, 吉川芙久美, 恒岡洋右, 船戸弘正, 弘世貴久: 急性睡眠障害が過食・肥満と独立して肝脂肪蓄積を誘発する.  第28回分子糖尿病学シンポジウム,  富山,  2016/12
  :Corresponding Author
  :本学研究者