2008年度
 薬学部 病態生化学教室
 Department of Pathological Chemistry

教授:
  松本 宏治郎
准教授:
  東 祐太郎
講師:
  檜貝 孝慈
■ 概要
1)NK細胞のレクチン様受容体の機能解析
NK細胞上のレクチン様受容体であるNKG2DやCD94が、フコース転移酵素(FUTⅢ)遺伝子導入K562細胞上の糖鎖抗原Sialyl Lewis X (sLeX)を認識して細胞傷害を誘発することを明らかにしている。炎症やがんではsLeXを発現する血清糖蛋白が増加することから、肝細胞をIL-1b刺激して遺伝子発現を解析し、シアル酸転移酵素(ST3GalⅣ) mRNAの早期の発現上昇と FUTⅥ mRNAの遅い発現が関与すること、がん化によるsLeX発現亢進には転写因子HNF-4a によるFUTⅥ mRNAの恒常的発現上昇が関与することを明らかにした。さらに、強制発現させた大腸菌から単離したNKG2DやCD94が、sLeXに結合することを直接証明するとともに、これらのレクチン様受容体が多価のa2,3-結合シアル酸およびヘパリンなどのグルコサミノクリカンとも強く結合することを明らかにした。
2)アポトーシス誘発細胞の細胞表面蛋白の発現変化
ヒトT細胞由来Jurkat細胞にTopoisomeraseⅡ阻害剤Etoposideでアポトーシスを誘発させた細胞表面では、シアル酸の減少、Ganglioside GM3の上昇とGD3の減少、膜結合性Neuraminidase(Neu3) mRNA発現と活性の増加が見られ、これらの変化はCaspase 3阻害剤で抑制されることを明らかにしている。さらに、細胞表面の接着分子ICAM-2とICAM-3の顕著な減少とその減少のCaspase 3やMetaloproteinase阻害剤での抑制、リソゾーム膜蛋白LAMP-1とLAMP-2およびミクロソーム蛋白CalreticulinとCalnexinの細胞膜への移行など、アポトーシス細胞では細胞表面の蛋白発現の顕著な変化が起こることを明らかにした。
3)高血糖による細胞機能変化
PMAでマクロファージ様に分化させたヒト単球系U937細胞では、アルブミンの前期糖化産物(GlcHSA)刺激によりMacrophage inflammatory protein (MIP)-1bのmRNA発現が顕著に増強され、この発現増強にはPKCdによるp47Phoxのリン酸化とNADPH oxidaseの活性化が関与すること、また、高血糖では肝細胞のヘキソサミン代謝経路が亢進してCREBのSer/Thrが酵素的にO-GlcNAc化され、接着因子E-Selectinの発現が上昇することを明らかにしている。さらに、Jurkat細胞を長期間高血糖で培養することにより、ICERの発現が亢進してPMAとIonomycin刺激によるIL-2 mRNA発現上昇が抑制されることを明らかにした。これらの細胞機能変化が糖尿病における血管病変や免疫抑制に関与することが考えられる。
■ Keywords
NK細胞、CD94、NKG2D、細胞傷害、アポトーシス、ICAM、LAMP、calreticulin、糖尿病、IL-2、ICER
■ 当該年度の研究費受入状況
1.  私立大学学術研究高度化推進事業オープンリサーチセンター整備事業
 研究課題:研究課題:細胞機能制御システムの破綻による老化関連疾患発症の分子機構と予防・治療に関する研究  (研究代表者:松本宏治郎, 東祐太郎, 桧貝孝慈)
 研究補助金:3000000円  (代表)
2.  平成20年度文部科学省科学研究費補助金・若手研究(B)  (研究課題番号:19790398)
 研究課題:血清中シアリルルイスXの合成制御機構および生体内免疫応答への関与  (研究代表者:桧貝孝慈)
 研究補助金:900000円  (代表)
その他
1.  大学院重点特別経費経常費補助金
 研究課題:タンパク質のポストトランスレーショナル修飾の加齢変化とその生体機能に対する影響  (研究分担者:松本宏治郎、東祐太郎、桧貝孝慈)
 研究補助金:1000000円  (分担)
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















松本 宏治郎   教授
薬学博士
    2          1
 8
 
 
 
 
東 祐太郎   講師
医学博士
    2          2
 8
 
 
 
 
檜貝 孝慈   講師
博士(薬学)
   2           2
 8
 
 
 
 
 0 2  0 0  0  5
(0)
 0
(0)
 0
(0)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














松本 宏治郎   教授
薬学博士
         1
 
 
東 祐太郎   講師
医学博士
         2
 
 
檜貝 孝慈   講師
博士(薬学)
  2       2
 
 
 0 2  0 0  0  5
(0)
 0
(0)
 0
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. K. Higai, M. Tsukada, Y. Moriya, Y. Azuma, and K. Matsumoto:  Prolonged culture in high glucose suppresses phorbol 12-myristate 13-acetate and ionomycin-induced interleukin-2 mRNA expression in Jurkat cells via accumulation of inducible cAMP early repressor.  Biochim Biophys Acta  1790 :8-15 , 2008
2. Higai K, Miyazaki N, Azuma Y and Matsumoto K:  Transcriptional regulation of the fucosyltransferase VI gene in hepatocellular carcinoma cells.  Glycoconj. J.  225 (3) :225-235 , 2008
■ 学会発表
国内学会
1. 東祐太郎、佐藤洋隆、中川英明、桧貝孝慈、松本宏治郎: アポトーシスの誘発による細胞表面糖タンパク質発現の変化.  日本薬学会第129年会,  京都,  2009/03
2. Hirotaka Sato, Yutaro Azuma, Koji Higai, Kojiro Matsumot: Alteration of cell surface glycoprotein expression during etoposide-induced Jurkat cell apoptosis.  第31回日本分子生物学会年会・第81回日本生化学会大会合同大会,  神戸,  2008/12
3. Koji Higai, Yuzo Imaizumi, Akiko Kusuhara, Yutaro Azuma, Kojiro Matsumoto: NKG2D mediates cytotoxicity against high sialyl Lewis X-expressing cells.  第31回日本分子生物学会年会・第81回日本生化学会大会合同大会,  神戸,  2008/12
4. Kojiro Matsumoto, Koji Higai, Masatoshi Tsukada, Yutaro Azuma: Prolonged high glucose suppresses phorbol 12-myristate 13-acetate and ionomycin-induced interleukin 2 mRNA expression in Jurkat cells.  第31回日本分子生物学会年会・第81回日本生化学会大会合同大会,  神戸,  2008/12
5. ◎Yutaro Azuma, Yuko Shiratori, Tatsuo Kuwabara, Masatoshi Tsukada, Koji Higai, Kojiro Matsumoto: High glucose induced enhancement of apoptosis in Jurkat cells through down-regulation of Bcl-2 expression by accumulation of ICER Ⅱ.  第31回日本分子生物学会年会・第81回日本生化学会大会合同大会,  神戸,  2008/12
6. 今泉雄三、鈴木千穂、伊藤あゆみ、桧貝孝慈、東祐太郎、松本宏治郎: NKG2Dの糖鎖リガンドの解析.  日本薬学会第129年会,  京都,  2009/03
7. 佐藤洋隆、中川英明、東祐太郎、桧貝孝慈、松本宏治郎: アポトーシスに伴う細胞表の糖タンパク質発現低下に対するメタロプロテアーゼとカスパーゼの関与.  日本薬学会第129年会,  京都,  2009/03
8. 桧貝孝慈、田中智美、中村香、金内麻美、東祐太郎、松本宏治郎: DNAメチル化による糖転移酵素発現制御機構.  日本薬学会第129年会,  京都,  2009/03
  :Corresponding Author
  :本学研究者