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 医学部 医学科 薬理学講座
 Department of Pharmacology

教授:
  水流 弘通
准教授:
  赤羽 悟美
講師:
  古川 勝雄
助教:
  中井 修三
  中瀬古 寛子
  伊藤 雅方
研究生:
  丸山 博子
非常勤研究生:
  守本 慎一
  坂倉 智子
  Catherine Eichel
研究指導委託大学院生
  騰 金風
■ 概要
研究テーマ概要

1.循環器(心臓血管系)薬理学
 当教室の主な研究テーマは、心臓・血管 cardiovascular system の薬理学である。疾病の薬物治療の作用機序の研究と生理・病態生理学的研究は表裏一体の関係であるが、新しい薬物の作用機序を解明することは、しばしば生体機能の新発見に通じる。

2.自律神経系に関する薬理学的研究
a. 血管のアドレナリン受容体に関する研究:
b. コリン作動性神経の起源
c. 血管運動神経の系統発生学的考察
 植物神経 vegetative nervous system (自律神経系 autonomic nervous system)の系統発生学観点から血管運動神経をながめる。

3.顔面静脈の薬理学的研究
 顔面静脈は生理学的・薬理学的に、他の血管と極めて異なる特徴を有する。例えば、(1) 摘出標本でも自発性収縮を示す。(2) この収縮張力は温度依存性である。(3) 交感神経興奮によって血管弛緩反応を生じる。このような顔面静脈の特異な生理学機能とその意義を解明する。

4. Ca2+シグナルの制御機構およびその破綻から疾患へ至るメカニズムの解明:
 Ca2+は細胞の存在・増殖・死をはじめ多くの生理機能において重要な細胞内シグナル分子である。しかし、その使い方を誤ると細胞機能に異常を来たし疾患の原因となる。そこでCa2+シグナルは精微に制御されている。我々は、そのCa2+シグナル制御のしくみを明らかにし、その破綻から疾患へ至る分子メカニズムを解明することを目指している。
4-A.心筋リモデリングの分子機構:
 不整脈および心不全に関連した心筋細胞のイオンチャネル・リモデリングの分子メカニズムを解明している。
4-B.メカノセンサーを解したCa2+シグナルの制御機構:
 心筋の機械的な運動を細胞表面のイオンチャネルの制御やCa2+シグナル制御系へフィードバックする制御システムを明らかにする。圧負荷に由来する心筋細胞のイオンチャネル・リモデリングの分子メカニズム解明を目指して解析を行っている。
4-C.Ca2+透過チャネルの開閉制御機構:
 Ca2+透過チャネルは細胞内Ca2+シグナルの入り口としてその制御に重要な役割を担っている。我々は、電位依存性L型Ca2+チャネルを中心としてその開閉と制御のメカニズムの解明を目指して研究を進めている。その他のCa2+透過チャネルについても研究を展開しつつある。
4-D.Ca2+透過ャネルのCa2+シグナル複合体の解析:
 Ca2+透過チャネルから流入したCa2+を下流のシグナルへと効率よく伝えるしくみを明らかにする目的で、電位依存性L型Ca2+チャネルなどのCa2+透過チャネルに結合あるいは近接しているCa2+シグナル複合体の同定と解析を進めている。

5. イオンチャネル作動薬の開発を作用メカニズムの分子薬理学的解析:
 イオンチャネルをターゲットとした薬物の作用メカニズムの解明にむけて分子薬理学的研究を進めている。

6.脂質結合蛋白を介したカルシウムシグナル制御機構
 電位依存性L型Ca2+チャネルとの相互作用蛋白として脂質結合蛋白を見出した。そこで脂質結合蛋白に注目し、カルシウムシグナル複合体(カルシウムシグナロソーム)の制御機構の解明を進めている。

7.勃起障害(erectile dysfunction:ED)治療のための勃起のメカニズム研究:
 ウサギの陰茎海綿体を用いて、EDの治療という観点から海綿体平滑筋の収縮・弛緩に関する薬物の作用を研究している。現在はATPの弛緩作用に関する受容体およびNOの弛緩作用のメカニズムについて研究中である。
■ Keywords
cardiovascular pharmacology, heart, atria, ventricle, cardiac myocyte, calcium, calcium channel
■ 当該年度の研究費受入状況
1.  科学研究費特定領域研究  (研究課題番号:20056029)
 研究課題:脂質結合蛋白を介したカルシウムシグナロソームの制御機構  (研究代表者:赤羽悟美)
 研究補助金:2400000円  (代表)
その他
1.  東邦大学医学部プロジェクト研究
 研究課題:カルシウムシグナル伝達におけるリン脂質結合タンパク質PCTP- L複合体の研究  (研究代表者:伊藤雅方)
 研究補助金:500000円  (代表)
2.  東邦大学医学部プロジェクト研究
 研究課題:神経因性疼痛の発現機構におけるMAP3K系の役割: ノックアウトマウスを用いた検討  (研究代表者:守本慎一)
 研究補助金:400000円  (代表)
3.  東邦大学医学部プロジェクト研究
 研究課題:L型カルシウムチャネルCaV1.3を介したカルシウムシグナリングと心房細動  (研究代表者:中瀬古寛子)
 研究補助金:500000円  (代表)
■ 教授・准教授・講師の公的役職
1.  赤羽悟美 :大阪大学臨床医工学融合研究教育センター招聘教授, 東京大学薬学系研究科非常勤講師, 人事院作問委員会委員
■ 当該年度の主催学会・研究会
1.  第20回日本性機能学会東部総会  (講師・会長 : 古川 勝雄 )  ,東京  2009/02
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  古川勝雄 :日本性機能学会理事
2.  赤羽悟美 :日本薬理学会評議員・代議員, 日本生理学会評議員, 国際心臓研究学会評議員
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















水流 弘通   教授
    1          
 4
 
 3
 
 3
(1)
赤羽 悟美   准教授
薬学博士
    4          3
(2)
 7
 1
 3
 1
(1)
 3
古川 勝雄   講師
医学博士
    1          
 
 
 
 
 
伊藤 雅方   助教
農学博士
    1          3
 4
 1
 3
 3
 2
(1)
中井 修三   助教
医学博士
              
 
 
 
 
 1
中瀬古(泉) 寛子   助教
博士(理学)
    2          3
 3
 1
 3
 2
 3
(1)
 0 0  0 0  0  9
(2)
 3
(0)
 6
(1)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














水流 弘通   教授
         
 
 
赤羽 悟美   准教授
薬学博士
         3
(2)
 1
 1
(1)
古川 勝雄   講師
医学博士
         
 
 
伊藤 雅方   助教
農学博士
         3
 1
 3
中井 修三   助教
医学博士
         
 
 
中瀬古(泉) 寛子   助教
博士(理学)
         3
 1
 2
 0 0  0 0  0  9
(2)
 3
(0)
 6
(1)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. Teng J, Iida K, Ito M, Izumi-Nakaseko H, Kojima I, Adachi-Akahane S, Iida H:  Role of glycine residues highly conserved in the S2-S3 linkers of domains I and
II of voltage-gated calcium channel alpha1 subunits.  Biochimica et biophysica acta  1798 (5) :966 -974 , 2010
2. Yonezawa A, Yosizumi M, Ise S, Watanabe C, Mizoguchi H, Furukawa K, Tsuru H, Kimuru Y, Kawatani M, Sakurada S:  Synergistic actions of apomorphine and m-chlorophenylpiperazine on ejaculation,but not penile erection in rats.  Biomedical Research  30 (2) :71-78 , 2009
3. Taniguchi S, Nakazawa T, Tanimura A, Kiyama Y, Tezuka T, Watabe AM, Katayama N, Yokoyama K, Inoue T, Izumi-Nakaseko H, Kakuta S, Sudo K, Iwakura Y, Umemori H, Inoue T, Murphy NP, Hashimoto K, Kano M, Manabe T, Yamamoto T:  Involvement of NMDAR2A tyrosine phosphorylation in depression-related behaviour.  The EMBO journal  28 (23) :3717 , 2009
4. Akaike T, Jin MH, Yokoyama U, Izumi-Nakaseko H, Jiao Q, Iwasaki S, Iwamoto M, Nishimaki S, Sato M, Yokota S, Kamiya Y, Adachi-Akahane S, Ishikawa Y, Minamisawa S:  T-type Ca2+ channels promote oxygenation-induced closure of the rat ductusarteriosus not only by vasoconstriction but also by neointima formation.  The Journal of biological chemistry  284 (36) :24025 -24034 , 2009
総説及び解説
1. 東條英昭, 伊藤雅方, 横内耕, 吉田和久:  哺乳類性決定の分子機構.  ヤマザキ動物看護短期大学雑誌  (2) :43-51 , 2010
■ 著書
1. 安東賢太郎, 橋本敬太郎, 藤森観之助:    安全性薬理試験マニュアル  1-432.  エル・アイ・シー,  東京, 2009
■ 学会発表
国内学会
1. ◎伊藤雅方, 中瀬古(泉)寛子, 丸山博子, 水流弘通, 赤羽悟美: PCTP-L (StarD10) の脂質代謝における役割について.  第83回日本薬理学会年会,  大阪,  2010/03
2. ◎守本慎一, 小田哲子, 黒田優, 伊藤雅方, 水流弘通, 赤羽悟美: マウス脊髄結紮モデルにおけるガバペンチンの鎮痛効果と脊髄内メカニズム.  第83回日本薬理学会年会,  大阪,  2010/03
3. ◎中瀬古(泉)寛子, 伊藤雅方, 丸山博子, 水流弘通, 赤羽悟美: 脂質結合タンパク質PCTP-Lを介した心筋イオンチャネルの発現制御.  第83回日本薬理学会年会,  大阪,  2010/03
4. ◎伊藤雅方, 小田哲子: カルシウムシグナル伝達におけるリン脂質結合タンパク質PCTP-L複合体の研究.  第135回東邦医学会例会,  東京,  2010/02
5. ◎中瀬古寛子, 中井修三: L型カルシウムチャネルCaV1.3を介したカルシウムシグナリングと心房細動.  第135回東邦医学会例会,  東京, 日本,  2010/02
6. ◎伊藤雅方, 中瀬古寛子, 水流弘通, 赤羽悟美: カルシウムチャネルCaV1.2結合タンパク質の解析.  第32回日本分子生物学会年会,  横浜,  2009/12
7. ◎中瀬古寛子, 伊藤雅方, 丸山博子, 水流弘通, 赤羽悟美: リン脂質結合タンパク質を介した心筋L型Ca2+チャネルの制御機構.  筋生理の集い,  東京,  2009/12
8. ◎赤羽悟美: 心房筋細胞におけるカルシウムシグナル調節機構.  生理研研究会「イオンチャネル・トランスポーターと心血管機能:細胞機能の分子機序とその統合的理解,  岡崎,  2009/11
9. ◎中瀬古寛子, 伊藤雅方, 赤羽悟美: 脂質結合タンパク質PCTP-Lノックアウトによる心筋イオンチャネルの発現制御.  トランスポーター研究会 第3回九州部会,  鹿児島,  2009/11
10. ◎Ito M, Izumi-Nakaseko H, Tsuru H, Adachi-Akahane S: Novel role of lipid binding protein in the regulation of excitability in atrial myocytes.  The 6th Joint Seminor on Biomedical Sciences,  Tokyo,  2009/10
11. ◎ Ito M, Izumi-Nakaseko H, Tsuru H, Adachi-Akahane S: Role of phosphatidylcholine transfer protein like protein through interaction with calcium channel CaV1.2 and other proteins.  36TH International Congress of Physiological Sciences (IUPS2009),  Kyoto,  2009/07
12. ◎Izumi-Nakaseko H, Murakami S, Ito M, Kurachi Y, Tsuru H, Adachi-Akahane S: Kinetics of slow VDI and fast recovery of Cav1.3 keep its channel availability under pacemaker action potential in atria.  36TH International Congress of Physiological Sciences (IUPS2009),  京都,  2009/07
国際学会
1. ◎Teng J, Izumi-Nakaseko H, Iida K, Ito M, Kojima I, Adachi-Akahane S, Iida H: Role of glycine residues highly conserved in the domain I/II S2-S3 linkers of voltage-gated calcium channel alpha1 subunits.  36th International Congress of Physiological Sciences (IUPS2009),  Kyoto,  2009/07
2. ◎Adachi-Akahane S, Izumi-Nakaseko H, Ito M, Naguro I, Tsuru H,: Molecular mechanisms for the regulation of Ca2+ signalosome via lipid binding protein in atria.  36th International Congress of Physiological Sciences (IUPS2009),  Kyoto,  2009/07
その他
1. ◎赤羽悟美: 心筋リズム制御におけるカルシウムチャネルの機能と調節.  生体機能と創薬シンポジウム2009,  東京,  2009/08
2. ◎伊藤雅方, 中瀬古寛子, 赤羽悟美: 脂質結合タンパク質PCTP-L(StarD10)の解析.  文部科学省科学研究費補助金特定領域研究「生体膜トランスポートソームの分子構築と生理機能」平成21年度第1回班会議,  熊本,  2009/08
3. ◎赤羽悟美, 中瀬古寛子, 伊藤雅方, 水流弘通: 脂質結合蛋白を介したカルシウムシグナロソームの制御機構.  文部科学省科学研究費補助金特定領域研究「生体膜トランスポートソームの分子構築と生理機能」平成21年度第1回班会議,  阿蘇,  2009/08
4. ◎中瀬古寛子, 伊藤雅方, 赤羽悟美: 心房筋におけるL型Ca2+チャネルとPCTP-Lの相互作用の解析.  文部科学省科学研究費補助金特定領域研究「生体膜トランスポートソームの分子構築と生理機能」平成21年度第1回班会議,  熊本,  2009/08
  :Corresponding Author
  :本学研究者