2008年度
 医学部 医学科 薬理学講座
 Department of Pharmacology

教授:
  水流 弘通
准教授:
  赤羽 悟美
講師:
  古川 勝雄
■ 概要
研究テーマ概要

1.循環器(心臓血管系)薬理学
 当教室の主な研究テーマは、心臓・血管 cardiovascular system の薬理学である。疾病の薬物治療の作用機序の研究と生理・病態生理学的研究は表裏一体の関係であるが、新しい薬物の作用機序を解明することは、しばしば生体機能の新発見に通じる。

2.自律神経系に関する薬理学的研究
a. 血管のアドレナリン受容体に関する研究:
b. コリン作動性神経の起源
c. 血管運動神経の系統発生学的考察
 植物神経 vegetative nervous system (自律神経系 autonomic nervous system)の系統発生学観点から血管運動神経をながめる。

3.顔面静脈の薬理学的研究
 顔面静脈は生理学的・薬理学的に、他の血管と極めて異なる特徴を有する。例えば、(1) 摘出標本でも自発性収縮を示す。(2) この収縮張力は温度依存性である。(3) 交感神経興奮によって血管弛緩反応を生じる。このような顔面静脈の特異な生理学機能とその意義を解明する。

4. Ca2+シグナルの制御機構およびその破綻から疾患へ至るメカニズムの解明:
 Ca2+は細胞の存在・増殖・死をはじめ多くの生理機能において重要な細胞内シグナル分子である。しかし、その使い方を誤ると細胞機能に異常を来たし疾患の原因となる。そこでCa2+シグナルは精微に制御されている。我々は、そのCa2+シグナル制御のしくみを明らかにし、その破綻から疾患へ至る分子メカニズムを解明することを目指している。
4-A.心筋リモデリングの分子機構:
 不整脈および心不全に関連した心筋細胞のイオンチャネル・リモデリングの分子メカニズムを解明している。
4-B.メカノセンサーを解したCa2+シグナルの制御機構:
 心筋の機械的な運動を細胞表面のイオンチャネルの制御やCa2+シグナル制御系へフィードバックする制御システムを明らかにする。圧負荷に由来する心筋細胞のイオンチャネル・リモデリングの分子メカニズム解明を目指して解析を行っている。
4-C.Ca2+透過チャネルの開閉制御機構:
 Ca2+透過チャネルは細胞内Ca2+シグナルの入り口としてその制御に重要な役割を担っている。我々は、電位依存性L型Ca2+チャネルを中心としてその開閉と制御のメカニズムの解明を目指して研究を進めている。その他のCa2+透過チャネルについても研究を展開しつつある。
4-D.Ca2+透過ャネルのCa2+シグナル複合体の解析:
 Ca2+透過チャネルから流入したCa2+を下流のシグナルへと効率よく伝えるしくみを明らかにする目的で、電位依存性L型Ca2+チャネルなどのCa2+透過チャネルに結合あるいは近接しているCa2+シグナル複合体の同定と解析を進めている。

5. イオンチャネル作動薬の開発を作用メカニズムの分子薬理学的解析:
 イオンチャネルをターゲットとした薬物の作用メカニズムの解明にむけて分子薬理学的研究を進めている。

6.脂質結合蛋白を介したカルシウムシグナル制御機構
 電位依存性L型Ca2+チャネルとの相互作用蛋白として脂質結合蛋白を見出した。そこで脂質結合蛋白に注目し、カルシウムシグナル複合体(カルシウムシグナロソーム)の制御機構の解明を進めている。

7.勃起障害(erectile dysfunction:ED)治療のための勃起のメカニズム研究:
 ウサギの陰茎海綿体を用いて、EDの治療という観点から海綿体平滑筋の収縮・弛緩に関する薬物の作用を研究している。現在はATPの弛緩作用に関する受容体およびNOの弛緩作用のメカニズムについて研究中である。
■ Keywords
cardiovascular pharmacology, heart, atria, ventricle, cardiac myocyte, calcium, calcium channel
■ 当該年度の研究費受入状況
1.  科学研究費特定領域研究  (研究課題番号:20056029)
 研究課題:脂質結合蛋白を介したカルシウムシグナロソームの制御機構  (研究代表者:赤羽悟美)
 研究補助金:2400000円  (代表)
その他
1.  東邦大学医学部プロジェクト研究
 研究課題:カルシウムシグナル伝達におけるリン脂質結合タンパク質PCTP- L複合体の研究  (研究代表者:伊藤雅方)
 研究補助金:500000円  (代表)
2.  東邦大学医学部プロジェクト研究
 研究課題:神経因性疼痛の発現機構におけるMAP3K系の役割: ノックアウトマウスを用いた検討  (研究代表者:守本慎一)
 研究補助金:400000円  (代表)
3.  東邦大学医学部プロジェクト研究
 研究課題:L型カルシウムチャネルCaV1.3を介したカルシウムシグナリングと心房細動  (研究代表者:中瀬古寛子)
 研究補助金:500000円  (代表)
■ 教授・准教授・講師の公的役職
1.  赤羽悟美 :大阪大学臨床医工学融合研究教育センター招聘教授, 東京大学薬学系研究科非常勤講師, 人事院作問委員会委員
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  赤羽悟美 :日本薬理学会評議員・代議員, 日本生理学会評議員, 国際心臓研究学会評議員
2.  古川勝雄 :日本薬理学会評議員・日本性機能学会評議員
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















水流 弘通   教授
              
 4
 
 
 
 
赤羽 悟美   准教授
薬学博士
 1   2       1   5
(4)
 3
 1
(1)
 
 1
 2
古川 勝雄   講師
医学博士
 1     1        1
 
 
 
 
 
伊藤 雅方   助教
農学博士
              
 1
 
 
 1
 1
中井 修三   助教
医学博士
              
 1
 
 
 
 
中瀬古(泉) 寛子   助教
博士(理学)
              1
 2
 
 
 1
 1
守本 慎一
              1
 
 
 
 
 
 2 0  1 0  1  8
(4)
 1
(1)
 3
(0)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














水流 弘通   教授
         
 
 
赤羽 悟美   准教授
薬学博士
 1      1  5
(4)
 1
(1)
 1
古川 勝雄   講師
医学博士
 1   1     1
 
 
伊藤 雅方   助教
農学博士
         
 
 1
中井 修三   助教
医学博士
         
 
 
中瀬古(泉) 寛子   助教
博士(理学)
         1
 
 1
守本 慎一
         1
 
 
 2 0  1 0  1  8
(4)
 1
(1)
 3
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. Yonezawa A, Yoshizumi M, Ise S, Watanabe C, Mizoguchi H, Furukawa K, Tsuru H, Kimura Y, Kawatani M, Sakurada S:  Synergistic actions of apomorphine and m-chlorophenylpiperazine on ejaculation, but not penilke erection in rats.  Biomedical Research  30 (2) :71-78 , 2009
2. Kawazu T, Murakami S, Adachi-Akahane S, Findlay I, Ait-Haddou R, Kurachi Y, Nomura T.:  Microstructure-based Monte Carlo simulation of Ca2+ dynamics evoking cardiac calcium channel inactivation.  The Journal of Physiological Sciences  58 (7) :471-480 , 2008
総説及び解説
1. 古川勝雄:  特集:男性性機能:動物実験からの評価と問題点 勃起機能評価のための動物実験 b)in vitro.  アニテックス  20 :8-20 , 2008
その他
1. 赤羽 悟美:  心房筋細胞におけるカルシウムシグナロソームの制御と破綻の分子機構.  基盤研究C(2) 成果報告書  :(平成18‐19年度) , 2008
■ 著書
1. 古川勝雄:  男性更年期障害の臨床 H.有害な副作用:各種薬剤と性機能障害.  男性更年期障害  76-82.  新興医学出版社,  東京, 2008
2. 赤羽悟美:  心房筋細胞におけるカルシウムシグナロソームの制御と破綻の分子機構.  科学研究費補助金(基盤研究(C))研究成果報告書  全ページ.  東邦大学,  東京都、日本, 2008
■ 学会発表
国内学会
1. ◎赤羽悟美: 脂質輸送蛋白を介した心機能の制御と異常.  第82回日本薬理学会年会シンポジウム,  横浜,  2009/03
2. ◎赤羽悟美: 平滑筋カルシウムチャネルの役割と構造と機能制御.  第20回日本性機能学会東部総会教育講演,  東京,  2009/02
3. ◎騰金風, 中瀬古(泉)寛子, 飯田和子, 小島至, 赤羽悟美, 飯田秀利: 電位作動性カルシウムチャネルα1サブユニットS2-S3リンカーに保存されているGly残基の役割.  第31回日本分子生物学会年会,  神戸,  2008/12
4. ◎中瀬古寛子, 水流弘通, 赤羽悟美,: 心房筋に発現するL型Ca2+チャネルCaV1.2とCaV1.3の電流キネティクスとチャネル活性の調節.  第18回日本循環薬理学会,  千葉市,日本,  2008/11
5. ◎中瀬古寛子, 伊藤雅方, 水流弘通, 赤羽悟美: 心房筋におけるL型Ca2+チャネル電流のサブタイプ特異的調節機構.  第18回日本循環薬理学会,  千葉,  2008/11
6. ◎赤羽悟美, 中瀬古寛子, 伊藤雅方, 水流弘通: L型Ca2+チャネルを介した心筋Ca2+シグナル制御と破綻の分子機構.  生理学研究所研究会,  岡崎市,日本,  2008/11
7. ◎守本慎一, 水流弘通, 赤羽 悟美: 脊髄神経結紮マウスにおける神経因性疼痛発現とgabapentinの効果.  第119回日本薬理学会関東部会,  東京,  2008/10
8. ○古川勝雄, 片岡和義, 中井修三, 永尾光一, 水流弘通, 石井延久: ウサギ陰茎海綿体におけるVIPの弛緩反応に関与する受容体の解析.  第19回日本性機能学会学術総会,  秋田市,  2008/09
国際学会
1. ◎Yasuda K, Kaneko T, Nomura F, Sugiyama A, Manabe S, Cohen S: On-chip pre-clinical cardiac toxicity.  ILSI Health and Environmental Sciences Institute. ANNUAL HESI EMERGING ISSUES MEETING,  Tucson, Arizona, USA,  2009/01
2. ◎Adachi-Akahane S: Calcium signalosome associated with cardiac L-type calcium channels.  2009 IUPS International Conference of Physiological Sciences,  Pusan, Korea,  2009/01
3. ◎Sugiyama A: Strategy for Predicting the Drug-Induced TdP in High Risk Patients: Utility and Reliability of In Vivo Proarrhythmia Animal Models.  2008 Annual Meeting of The Korean Society of Applied Pharmacology,  Seoul, Korea,  2008/11
その他
1. ◎伊藤雅方, 中瀬古寛子, 水流弘通, 赤羽悟美: 脂質結合タンパク質PCTP-L(StarD10)の解析.  Gタンパク質特定領域・膜輸送複合体特定領域合同若手ワークショップ2009,  神戸,  2009/01
2. ◎赤羽悟美: 大学において女性研究者・教育者として活躍するために.  第1回理系女性人材育成シンポジウム招待講演,  武庫川女子大学・神戸,  2009/01
3. ◎赤羽悟美: 心筋細胞におけるCa2+シグナルロソーム制御の分子機構.  第五回3学部合同学術集会,  東京都,日本,  2008/11
4. ◎赤羽悟美: 心筋細胞におけるCa2+シグナルロソーム制御の分子機構.  第5回3学部合同学術集会,  東京,  2008/11
5. ◎赤羽悟美: 電位依存性Ca2+チャネルを介した心筋細胞Ca2+シグナル制御機構.  大阪大学MEIセンターグローバルCOE第9回定例シンポジウム,  大阪市,日本,  2008/10
6. ◎伊藤雅方, 赤羽悟美: 脂質結合タンパク質PCTP-L(StarD10)の解析.  文部科学省科学研究費補助金特定領域研究生体膜トランスポートソームの分子構築と生理機能平成20年度第1回班会議,  淡路,  2008/09
  :Corresponding Author
  :本学研究者