2008年度
 理学部 情報科学科 情報処理部門
 Information Processing Section
■ 概要
1. 神経情報科学と生体情報学に関する研究(海野 修)
神経情報科学,その中でも視覚系に関する研究を行っている。生体の神経回路網で行われている情報処理様式を解明することが目的で,そのために電気生理,計算機シミュレーション,画像処理,時系列データの解析など,種々の手法を用いる。研究成果はニューラルネット,画像,ロボットビジョンなどを考える上での基礎となる。具体的には以下のようなプロジェクトを行っている。1) 網膜神経回路網における逆行性信号伝達様式の解明,2) エッジ検出神経細胞間の電気的結合および受容野特性,3) 色覚の神経回路機構,4) 時空的ランダムパターン光による網膜神経細胞の受容野の解析,5) 電子顕微鏡レベルにおける神経細胞立体像の構築システムの開発。
2. コンピュータグラフィックスに関する研究(新谷幹夫)
画像や動画などのコンテンツ作成において, コンピュータグラフィックス(CG)は必要不可欠の技術となった。本研究室では, CGをより使いやすく, よりパワフルにするため, 1) コンピュータアニメーション作成技術の研究, 2) 写実的画像生成技術の研究, 3) 生成画像知覚に関する心理物理学的研究, 4) 3次元モデル獲得の研究などを中心に, 研究を進めている。
3. 画像および音楽情報の認識・処理に関する研究(松島俊明)
音楽の計算機処理の研究や製品が多く見られるようになったが,日本伝統音楽の計算機処理の研究は遅れている。本研究室では,五線譜では十分に表すことができない尺八や筝などの和楽器の楽器情報を認識・処理するシステムの開発を行っている。また手書による五線譜の入力・編集システム,自動譜めくりシステム等の研究も行っている。画像を対象とした認識システムでは,3次元物体の形状計測や顔画像や手相画像の処理・認識を行う研究をしている。
4. 組合せデザインの研究(足立智子)
組合せデザインとよばれる離散構造の研究は, 実験計画法・符号理論等と共に発展してきたが, 近年では, 暗号・CDMA通信などの情報通信分野にもその応用が広がっている。主として取り組んでいるのは, 組合せデザインの一種であるGD(group divisible)デザインの離散構造の特徴付けである。また, RAID(複数のハードディスクを並列的に制御しアクセス効率を上げる技法)の数理モデル化の研究も行っている。
5. 統計学に関する研究(菊地賢一)
本研究室では,実社会にある様々な現象について観測されたデータをモデル化し,それを理論的に解析するために,何らかの形で統計学的な手法を使うテーマに関して,研究を行っている。例えば,扱うデータとしては,以下のような色々な分野のデータが考えられる。工学の分野では,生産ラインや実験の際の測定値などのデータ。経済の分野では,株価やマーケティングなどに関するデータ。アンケートやその他の調査などの社会調査に関するデータ。心理学的なテストや学力テストなどの心理測定に関するデータ。特に最近では,コンピュータ適応型テストに関する研究を行っている。
6. 並列分散処理に関する研究(吉田明正)
スーパーコンピュータからマルチコアプロセッサやGPUに至るまで、コンピュータの計算速度を向上させるために,並列処理方式が広く用いられている。この並列処理方式のコンピュータの性能を最大限に引き出すためには,プログラム全域のタスク並列性を最大限に引き出し,かつ,タスク間データ転送を最小化することが必要となる。そこで,本研究室では,並列化コンパイラの最適化手法,および,メディアアプリケーションの並列処理に関する研究を行っている。具体的には,粗粒度タスク並列処理を対象とした階層統合型実行制御手法を研究している。
7. 非写実的な画像の生成手法(白石路雄)
主として,ノンフォトリアリスティック・レンダリングと呼ばれる非写実的な画像の生成手法について研究を行っている。ノンフォトリアリスティック・レンダリングとは,従来コンピュータグラフィクスの研究で主な目的とされてきた,写真のような現実感を持つ画像ではなく,絵画や工業デザイン画などの非写実的な画像の生成を目的とするものである。
■ Keywords
視覚情報処理,コンピュータグラフィックス, パターン認識,音楽情報処理, 並列分散処理, 統計学,組合せデザイン
■ 当該年度の研究費受入状況
1.  文部科学省科学研究費補助金 若手研究(B)  (研究課題番号:18700276)
 研究課題:組分け型ブロック計画の構造分類と関連計画の工学的応用に関する研究  (研究代表者:足立智子)
 研究補助金:1000000円  (代表)
2.  文部科学省科学研究費補助金 基盤研究(C)  (研究課題番号:20500846)
 研究課題:Webベースの汎用型コンピュータ適応型テストシステムと新しい項目反応モデルの開発  (研究代表者:菊地賢一)
 研究補助金:600000円  (代表)
3.  文部科学省科学研究費補助金 基盤研究(A)  (研究課題番号:18202012)
 研究課題:インターネットによる日本語のコンピュータ適応型テストの開発と検証  (研究分担者:菊地賢一)
 研究補助金:100000円  (分担)
■ 教授・准教授・講師の公的役職
1.  菊地賢一 :情報処理技術者試験委員, 特許庁工業所有権審議会専門委員(弁理士審査分科会専門委員)
2.  吉田明正 :文部科学省大学評価研究委託事業JABEE情報系認定審査準備委員会委員
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  海野 修 :日本生理学会評議員
2.  菊地賢一 :日本行動計量学会理事・運営委員長・副事務局長・学会賞選考担当理事・広報委員会相談役, 日本テスト学会理事・学会誌編集委員・広報委員・テスト基準作成委員, 日本心理学諸学会連合心理学検定局出題判定部会委員, 統計関連学会連合Web管理委員, 日本リメディアル教育学会論文誌編集委員
3.  吉田明正 :情報処理学会ハイパフォーマンスコンピューティング研究会運営委員, 電気学会情報処理技術委員会幹事・JABEE部会委員
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















海野 修   教授
工学博士
              
 1
 
 
 
 
新谷 幹夫   教授
博士(工学)
 1 1            1
 
 
 
 
 
松島 俊明   教授
工学博士
              
 2
 
 
 
 
足立 智子   准教授
理学博士
           1   
 1
 1
 
 
 
菊地 賢一   准教授
博士(理学)
 1 1            4
(2)
 6
(5)
 
 
 
 
吉田 明正   准教授
博士(工学)
              1
 2
 
 
 
 
白石 路雄   講師
博士(学術)
  2            
 1
 
 
 
 
 2 0  0 0  1  6
(2)
 1
(0)
 0
(0)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














海野 修   教授
工学博士
         
 
 
新谷 幹夫   教授
博士(工学)
 1        1
 
 
松島 俊明   教授
工学博士
         
 
 
足立 智子   准教授
理学博士
       1  
 1
 
菊地 賢一   准教授
博士(理学)
 1        4
(2)
 
 
吉田 明正   准教授
博士(工学)
         1
 
 
白石 路雄   講師
博士(学術)
         
 
 
 2 0  0 0  1  6
(2)
 1
(0)
 0
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. 嶋田有紀, 新谷幹夫, 白石路雄, 原田隆宏:  GPUシェーダーを用いた動的な雲の拘束レンダリング.  情報処理学会論文誌  49 (5) :497-502 , 2008
2. 今井新悟, 伊東祐郎, 中村洋一, 菊地賢一, 赤木彌生, 中園博美, 本田明子, 平村健勝:  項目応答理論に基づくテストの得点-J-CATの得点換算・解釈・利用法について-.  大学教育  (6) :93-105 , 2009
3. 菊地賢一:  試験科目の変更による学力推移と学内成績の追跡調査.  大学入試研究ジャーナル  (19) :167-173 , 2009
4. 新谷幹夫, 白石路郎, 林 明照, 丸山 優, 岡田恵美, 酒井敦子, 稲見浩平, 原田孝:  3次元頭蓋顔面骨データベース構築におけるテンプレート変形処理の改良.  日本シミュレーション外科学会会誌  16 (3) :83-88 , 2008
総説及び解説
1. 吉川浩,津田貴生,檜山茂雄,新谷幹夫,小黒久史:  映像情報メディア年報 3-3映像表現およびコンピュータグラフィック.  映像情報メディア学会誌  62 (8) :1255-1261 , 2008
その他
1. 足立智子, 杉浦智吉:  完全二部グラフを用いたRAID6でのDataとParityの配置.  京都大学数理解析研究所講究録  1604 :19 -30 , 2008
■ 学会発表
国内学会
1. ◎鈴木涼介, 吉田明正: マルチコアプロセッサ上でのハーモニッククラスタリングを用いた基本周波数解析の並列処理.  情報処理学会第71回全国大会,  京都,  2009/03
2. ◎吉谷幹人, 松島俊明: Music Walk Around: 楽曲マップと自動選曲を利用したプレイリストの作成支援システム.  情報処理学会音楽情報科学研究会,  東京,  2009/02
3. ◎光野敏治, 足立智子: RSA分散復号.  代数系アルゴリズムと言語および計算理論,  京都,  2009/02
4. ◎松本徹, 菊地賢一, 古川章, 須田修二, 村尾晃平, 山本眞司, 和田真一, 五味志穂, 花井耕造: 肺がん検診用CT画像の異常所見を1,0判定により検出した結果からROC曲線を描き異常所見検出能とCAD支援効果を評価する方法の検討.  第16回日本CT検診学会学術集会,  横浜,  2009/02
5. ◎新谷幹夫,白石路雄,土橋宜典,岩崎慶,西田友是: 散乱近似を用いた樹木のレンダリング.  ビジュアルコンピューティングワークショップ2008,  盛岡,  2008/10
6. ◎林 明照, 丸山 優, 新谷幹夫, 白石路雄, 室 孝明, 保坂宗孝, 山田哲郎, 原田 考: 3次元頭蓋顎顔面骨データベースからみた中顔面骨の形態的特徴.  第26回日本頭蓋顎顔面外科学会総会・学術集会,  盛岡,  2008/10
7. ◎岩田昇, 菊地賢一, 藤原裕弥, 道家庚一: 産業メンタルヘルス第一次予防のためのCAT/CBTシステムの構築と現場試用.  日本行動計量学会第36回大会,  東京,  2008/09
8. ◎今井新悟, 菊地賢一, 中村洋一: J-CATにおけるアイテムバンキングの課題.  日本行動計量学会第36回大会,  東京,  2008/09
9. ◎松宮功, 菊地賢一: 中学校におけるコンピュータ適応型テストの活用.  日本行動計量学会第36回大会,  東京,  2008/09
10. ◎中村洋一, 今井新悟, 菊地賢一, 平村健勝: 言語テスト開発におけるアイテムバンキングの課題.  日本行動計量学会第36回大会,  東京,  2008/09
11. ◎平村健勝, 今井新悟, 菊地賢一: コンピュータ適応型テストにおけるWeb項目選択シミュレータの開発.  日本行動計量学会第36回大会,  東京,  2008/09
12. 菊地賢一: 小規模テストのための汎用的コンピュータ適応型テストシステムの開発.  日本行動計量学会第36回大会,  東京,  2008/09
13. ◎宮坂広純, 松島俊明, 小田弘良: 多重音の基本周波数評価尺度の最小値選択による実時間音高・音源数推定の試み.  FIT2008,  慶応義塾大学湘南キャンパス,  2008/09
14. ◎宮坂広純, 松島俊明, 小田弘良: 多重音の基本周波数評価尺度の最小値選択による実時間音高・音源数推定の試み.  電子情報通信学会/情報処理学会,  藤沢市,  2008/09
15. ◎小澤智弘, 山本義幸, 吉田明正: 階層統合型粗粒度タスク並列処理のための並列Javaコード生成.  情報処理学会第7回情報科学技術フォーラム,  藤沢,  2008/09
16. ◎菊地賢一, 岩田昇, 藤原裕弥: 汎用的コンピュータ適応型テストシステムの開発とうつ症状評価のためのCATシステムへの適用.  日本テスト学会第6回大会,  東京,  2008/08
17. ◎日高 聰, 海野 修: 網膜杆体系ON型双極細胞の受容野中心部の光応答特性.  第12回視覚科学フォーラム,  大阪大学(大阪市),  2008/08
18. ◎吉田明正, 小澤智弘: 階層統合型粗粒度タスク並列処理のための並列Javaコード生成手法.  情報処理学会,  佐賀,  2008/08
19. 菊地賢一: 試験科目の変更による学力推移と学内成績の追跡調査.  全国大学入学者選抜研究連絡協議会第3回大会,  東京,  2008/05
20. 菊地賢一: 大学入試センター試験利用入試の現状と課題.  全国大学入学者選抜研究連絡協議会第3回大会,  東京,  2008/05
21. ◎林 明照, 丸山 優, 新谷幹夫, 白石路雄, 山田哲郎, 原田孝: 3次元頭蓋顎顔面骨データベースを用いた中顔面骨形態の解析.  第51回日本形成外科学会総会・学術集会,  名古屋,  2008/04
国際学会
1. ◎T. Adachi: Methods for placing data and parity in disk arrays using complete bipartite graphs.  The 40th Southeastern International Conference on Combinatorics, Graph Theory and Computing,  Florida, USA,  2009/03
  :Corresponding Author
  :本学研究者