<<< 前 2009年度 | 2010年度 | 2011年度
 理学部 生物分子科学科 分子生物学部門
 Division of Molecular Biology

教授:
  渡辺 直子
准教授:
  藤崎 真吾
  岸本 利彦
講師:
  曽根 雅紀
■ 概要
細胞の機能制御における分子機構の解析(渡辺)
1. 皮膚炎症反応の発症機構の解析
 耳の肥厚を伴う皮膚炎症反応において、酸化ストレス時に誘導される xCT の関与を解析している。xCT ノックアウトマウスでは炎症反応が増大するが、炎症局所への好中球、単球・マクロファージの浸潤を組織学的に解析した。また、炎症誘導に関わる薬剤が最初に作用するのは表皮のケラチノサイトであることから、マウスケラチノサイト細胞株 PAM212 を用い、これらの薬剤によって誘導されるケモカイン発現におけるシグナル伝達経路を解析した。
2. 細胞の機能分化制御に関わる転写因子 Dve の解析
 ショウジョウバエの転写因子 Dve タンパク質が DNA に結合する際に必要かつ十分である配列の検討を行った。また、同定された配列を含むショウジョウバエ遺伝子のプロモーター領域に対して Dve タンパク質が結合することが明らかになった。
大腸菌の脂質代謝の解析および非密封放射性同位元素を用いる高等学校生徒実験の教材化(藤崎)
1.大腸菌のイソプレノイド代謝の解析
 プレニル一リン酸とプレニル二リン酸の分析条件を検討した。プレニル一リン酸とPhos-tagの複合体がESIプローブによるイオン化による液体クロマトグラフ質量分析で感度よく検出できることを見いだし定量条件を検討した。ホスミドマイシンに著しい感受性を示す大腸菌変異株を解析し複数の変異遺伝子を同定した。
2.ハーシーとチェイスの実験の教材化
 DNAおよびタンパク質をそれぞれ標識したファージを用いる大腸菌への吸着離脱実験およびDNAのDNA分解酵素感受性を指標にするDNAの状態変化を追跡する実験を再現する条件(大腸菌の菌株、ファージの調製法・保存法、温度、緩衝液、時間)の検討を行い、生徒実験を行う条件をほぼ確定した。
細胞の適応・進化および増殖(癌化)機構の解析(岸本)
1. 大腸菌耐熱進化過程の解析
45℃以上の高温で生育可能な耐熱性大腸菌を創出し、その適応・進化過程を分子レベルで解析し、適応進化過程で現れる特徴的な相互作用等を明らかとすることで、進化メカニズムを解明する。今年度は、48℃以上の適応大腸菌の創出、45℃適応進化時に現れる相互作用の高温適応への関与メカニズムの解析、高温適応時の分子シャペロンの機能解析を行った。
2. 微小管切断因子Kataninの機能解析
微小管切断因子Kataninの新たな細胞質分裂部での局在に関し、Katanin遺伝子機能阻害実験のタイムラプス解析により解析した。また微小管束化因子PRC1について解析を行った。
3. グリシン抱合酵素ファミリーGATF-Cの解析
グリシン抱合酵素ファミリーの中で、アシル化合物の投与により誘導的に発現するGATF-Cについて解析し、GATF-Cを特異的に発現するミトコンドリアの存在を確認した。ヒト肝臓癌特異的にグリシン抱合酵素の発現が低下することを確認した。
神経変性と神経発生の分子機構 (曽根)
1 ショウジョウバエモデルを用いた神経変性疾患関連遺伝子の研究
アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、ポリグルタミン病などの関連遺伝子の変異を導入したモデルショウジョウバエの表現型観察から、神経変性を引き起こす分子機構を明らかにし、神経変性疾患の治療法開発に結びつく生物学的治験を得ることを目的とした研究を行った。
2 神経発生、神経回路形成の分子機構
行動に異常を示すショウジョウバエ変異体原因遺伝子の解析から、脳が高度な機能を発揮するために必要な発生期の分子機構を明らかにすることを目指した。特に、細胞内小胞輸送の調節機構と脳機能との関連に着目して分子生物学的研究を行った。
■ Keywords
大腸菌, 適応, 進化, 増殖, ショウジョウバエ, 神経変性疾患, バクテリオファージ, 非密封放射性同位元素
■ 当該年度の研究費受入状況
1.  ERATO 戦略的創造研究推進事業
 研究課題:大腸菌の高温環境適応応答の解析  (研究分担者:岸本利彦)
 研究補助金:4400000円  (分担)
2.  科学研究費補助金 基盤研究A
 研究課題:大腸菌ゲノム高温適応進化機構の解明  (研究分担者:岸本利彦)
 研究補助金:1000000円  (分担)
3.  科学研究費補助金 基盤研究C
 研究課題:大腸菌耐熱進化を加速する相互作用の解析  (研究代表者:岸本利彦)
 研究補助金:1500000円  (代表)
4.  文科省科学研究費補助金基盤研究 (C)  (研究課題番号:22500822)
 研究課題:非密封放射性同位元素を用いた高等学校・中学校生徒実験の教材化  (研究分担者:佐藤浩之, 藤崎真吾)
 研究補助金:1000000円  (分担)
5.  文部科学省科学研究費補助金 基盤研究(C)
 研究課題:細胞内蛋白質輸送の異常によって生じる神経変性機構  (研究代表者:曽根雅紀)
 研究補助金:2080000円  (代表)
その他
1.  理学部補助金 基盤研究(B)
 研究課題:皮膚炎症反応におけるシスチントランスポーターの生理機能解析  (研究代表者:渡辺直子)
 研究補助金:820000円  (代表)
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















渡辺 直子   教授
理学博士
    2          
 6
 
 1
 
 
藤崎 真吾   准教授
理学博士
              1
 1
 
 
 
 
岸本 利彦   准教授
理学博士
              2
(1)
 9
(1)
 
 
 2
(2)
 
曽根 雅紀   講師
理学博士
    1          1
(1)
 5
 
 
 
 1
 0 0  0 0  0  4
(2)
 0
(0)
 2
(2)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














渡辺 直子   教授
理学博士
         
 
 
藤崎 真吾   准教授
理学博士
         1
 
 
岸本 利彦   准教授
理学博士
         2
(1)
 
 2
(2)
曽根 雅紀   講師
理学博士
         1
(1)
 
 
 0 0  0 0  0  4
(2)
 0
(0)
 2
(2)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. Nakashioya H, Nakano K, Watanabe N, Koga H,Miyasaka N, Matsushita S, Kohsaka H:  Therapeutic effect of D1-like dopamine receptor antagonist on collagen-induced arthritis of mice.  Modern Rheumatology  21 (3) :260-266 , 2011
2. Minami R, Wakabayashi M, Sugiori S, Taniguchi K, Kokuryo A, Imano T, Adachi-Yamada T, Watanabe N, Nakagoshi H:  The homeodomain protein defective proventriculus is essential foe male accessory gland development to enhance fecundity in Drosophila.  PLoS One  7 (3) :e32302 , 2012
3. Takuya Tamura, Masaki Sone, Takeshi Iwatsubo, Kazuhiko Tagawa, Erich E. Wanker, Hitoshi Okazawa:  Ku70 alleviates neurodegeneration in Drosophila models of Huntington's disease.  PLoS one  6 :e274088 , 2011
■ 学会発表
国内学会
1. ◎高橋俊樹、岸本利彦、渡邊総一郎: 光分解基を介した末端アルキンで表面を修飾した機能性ビーズの合成.  日本化学会 第92春季年会,  横浜,  2012/03
2. ◎曽根雅紀: ショウジョウバエを使って脳の病気を解き明かす.  日本動物学会第64回関東支部大会,  船橋,  2012/03
3. ◎鈴木章弘, 曽根雅紀: 細胞内蛋白質輸送スイッチング機構の脳機能発現における役割.  日本動物学会第64回関東支部大会,  船橋,  2012/03
4. 花神彩香、小林日沙香、伊藤明日香、山内長承、岸本利彦、四方哲也: 大腸菌高温適応進化における中立変異固定メカニズムの解析.  日本動物学会第64回関東支部大会,  船橋,  2012/03
5. ◎岡部 結希、佐藤 英世、渡辺 直子: シスチントランスポーター xCT の接触皮膚炎における役割.  日本動物学会第 64 回関東支部大会,  船橋,  2012/03
6. ◎尾崎 美奈、加藤 恵里子、渡辺 直子: 炎症誘導刺激に伴うケラチノサイトからのケモカイン産生.  日本動物学会第 64 回関東支部大会,  船橋,  2012/03
7. ◎鈴木文仁、渡邊総一郎、岸本利彦: Ratグリシン抱合酵素ファミリー遺伝子GATF-Cは細胞の毒物耐性に関与する.  第34回日本分子生物学会年会,  横浜,  2011/12
8. 花神彩香、小林日沙香、伊藤明日香、山内長承、岸本利彦、四方哲也: 大腸菌耐熱進化における中立変異固定メカニズムの解析.  第34回日本分子生物学会年会,  横浜,  2011/12
9. 橋本智美、岸本利彦、四方哲也: 大腸菌の耐熱進化におけるgroL変異の機能解析.  第34回日本分子生物学会年会,  横浜,  2011/12
10. 小宅綾菜、山内長承、岸本利彦、四方哲也: 大腸菌の耐熱進化時に見られる相互作用の解析.  第34回日本分子生物学会年会,  横浜,  2011/12
11. ◎南 竜之介、若林 みゆき、杉森 聖子、谷口 喜一郎、國領 顯彦、今野 貴夫、安達 卓、渡辺 直子、中越 英樹: ショウジョウバエ Dve は附属線の細胞死阻害によってオスの繁殖力を高める.  第 34 回日本分子生物学会年会,  横浜,  2011/12
12. ◎尾崎 美奈、加藤 恵里子、佐藤 美公、石川 恵理子、加藤 真耶、渡辺 直子: 炎症性刺激に伴うマウスケラチノサイトからのケモカイン産生.  第 34 回日本分子生物学会年会,  横浜,  2011/12
13. ◎藤崎真吾, 徳元俊哉, 森川美里, 中臺智絵, 高木春奈, 立川智章, 石川達也, 安田絵美,
齋藤雄一郎, 鈴木久美子, 下鳥菜穂美, 西村行進: ウンデカプレニル二リン酸を蓄積する大腸菌変異株の解析.  第21回ドリコールおよびイソプレノイド研究会例会,  松江,  2011/11
14. 岸本利彦、イン ベイウェン、四方哲也: Thermo-tolerant evolution of Escherichia coli.  「細胞を創る」研究会4.0,  大阪,  2011/10
15. ◎荒野拓, 藤崎真吾, 池本光志: Addicsin regulates the intracellular localization of Tomoregulin-1(addicsinによるTomoregulin-1細胞内局在の制御).  第34回日本神経科学大会,  横浜,  2011/09
16. ◎田村拓也, 曽根雅紀, Sam Barclay, 伊藤日加瑠, 塩飽裕樹, 田川一彦, 岡澤均: 脊髄小脳変性症I型におけるDNA損傷修復の関与.  第34回日本神経科学大会,  横浜,  2011/09
17. ◎田村拓也, 曽根雅紀, 伊藤日加瑠, 塩飽裕樹, 田川一彦, 岡澤均: ポリグルタミン病とDNAダメージ.  第4回分子高次機能研究会,  阿蘇,  2011/08
18. 小宅綾菜、岸本利彦、四方哲也: 大腸菌の耐熱進化時に見られる相互作用の解析.  第13回日本進化学会大会,  京都,  2011/07
19. 大野浩平、◎岸本利彦、小宅綾菜、四方哲也、渡邊総一郎: 大腸菌耐熱進化時に現れる相互作用を仲介する分子の探索.  第13回日本進化学会大会,  京都,  2011/07
20. 應蓓文、岸本利彦、四方哲也: 大腸菌の高温への適応進化.  第13回日本進化学会大会,  京都,  2011/07
21. ◎花舘 有希、津久井 久美子、渡辺 直子、野崎 智義、中野 由美子: 赤痢アメーバにおける Rab7 サブファミリーの機能解析.  第 80回日本寄生虫学会大会・第22回日本臨床寄生虫学会大会,  東京,  2011/07
22. ◎間瀬 望、津久井 久美子、渡辺 直子、野崎 智義: Entamoeba invadens におけるトランスフェクション系の確立.  第 80回日本寄生虫学会大会・第22回日本臨床寄生虫学会大会,  東京,  2011/07
23. ◎田村拓也, 曽根雅紀, 岡澤均: PQBP-1を介したポリグルタミン病の認知障害の分子メカニズム.  第52回日本神経学会学術大会,  名古屋,  2011/05
24. ◎阿部大数, 曽根雅紀, 田村拓也, 白石理沙, 岡澤均: in vivoスクリーニングに適した新規HD, SCA1モデル動物の開発.  第52回日本神経学会学術大会,  名古屋,  2011/05
25. 曽根雅紀, ◎田村拓也, 岡澤均: SCA1病態におけるDNA損傷修復機構の関与.  第52回日本神経学会学術大会,  名古屋,  2011/05
国際学会
1. ◎Konomi Marumo, Kumiko Nakada-Tsukui, Naoko Watanabe, Tomoyoshi Nozaki: Identification of ligands and regulatory/accessory proteins associated with cysteine protease binding protein family in Entamoeba histolytica.  Amoebiasis 2012,  Khajuraho, India,  2012/03
その他
1. ◎高橋俊樹、岸本利彦、渡邊総一郎: 光分解基を介した末端アルキンで表面を修飾した機能性ビーズの合成.  第5回複合物性研究センターシンポジウム,  船橋,  2011/12
  :Corresponding Author
  :本学研究者