理学部 物理学科 表面物理学教室
Surface Physics Laboratory
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■ 概要
ゲータイト(α-FeOOH)表面上のO<SUP>2-</SUP>とOH<SUP>-</SUP>のO1s結合エネルギーの測定
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重金属による土壌汚染は重大な環境問題の一つとなっており、粘土鉱物への重金属収着機構の解明は問題解決の前提として重要な意義を持っている。Cdを収着させた粘土鉱物を北里大学で作成し、本研究室でAFM(Atomic force microprobe)、TPD(Temperature programmed desorption ) 法、XPS(X-ray photoelectron spectroscopy)法を用いて吸着状態の観察を行なっている。
本年度は土壌汚染浄化技術において重要である土壌鉱物表面の化学結合状態の知見を得るために主要な土壌鉱物であるゲータイト(α‐FeOOH)のO2-とOH-のO1s電子結合エネルギーを測定した。XPSを用いて天然に結晶成長した針鉄鉱(1~2mm)と粉末ゲータイト(1μm以下)を観察した。針鉄鉱は主に(110)が現れその面でのO2-とOH-の存在比は3:2である。粉末ゲータイトには種々の結晶面が現れ存在比は分からない。O1s結合エネルギーは針鉄鉱531.4eV、粉末ゲータイトは531.9eVとなり、0.5eVの差が観測された。O1sピークを2つのガウス曲線乃分解することにより、O2-とOH-のO1s結合エネルギーは530.9eVと532.2eVとなった。針鉄鉱の場合、この強度比は3:2となりO2-とOH-の存在比と一致した。粉末ゲータイトの強度比は1:1となりO2-とOH-の存在比はほぼ同じであることが分かった。
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酸化マグネシウム(100)表面へのメタノール吸着の観察
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MgO(100)は気体吸着が起こりにくいこともあり蒸着用の基盤として使われている。本研究では洗浄用にも使われるメタノールの吸着状態を調べるために曝露量と吸着量の関係を調べた。大気中で劈開された(100)面には大気成分に由来する吸着子が存在する。表面を清浄化するために、超高真空中で700℃12時間試料加熱を行った。吸着子の存在は電子衝撃イオン脱離により観察する。入射電子のエネルギーは300eVである。脱離イオンの質量は4重極質量分析計(QMS)を用いて分析する。微量分析を行うため、QMSの質量走査とマルチチャンネルスケーラー(MCS)の同期を取り、質量スペクトルを測定するために40分間の溜め込みを行った。曝露量は10L~105Lである。すべての曝露領域で観察されたメタノール由来と考えられる脱離子はC+、CH+、CH2+、CH3+、COH+である。曝露量が高い場合はCOH2+、COH3+、CH3OH+も検出された。これら脱離子の量は曝露量の約1/3乗に比例する結果となった。
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電界イオン顕微鏡によるタングステンティップの観察
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ティップ冷却用液体窒素シュラウドからのリーク発生のため新たなシュラウドの製作を行い、試験的にWティップ先端の観察を行った。電界イオン顕微鏡により表面原子配列を観察するためには試料であるティップの先鋭化が鍵となる。電界研磨により試料を作成する際、ティップ切断後は出来るだけ速やかに電源を切りティップ先端の鈍化を避ける必要がある。そのため前年度作成した電流遮断回路を使い試料用Wティップを作成した。Wティップ先端の原子配列を確認することが出来たが、観察を容易にするために、ティップの方向を調整する機構を検討する必要がある。。
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ステンレス薄板中を横切る水素透過特性の観察
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金属中での水素の挙動は水素脆性、水素貯蔵の観点から重大な関心事となっている。本研究では予備的実験として0.4MPの水素雰囲気中に4時間SUS304ステンレス鋼を放置し水素吸蔵を行い、その後、昇温により水素拡散を促進させ、表面水素濃度の変化を観察してきた。本年度、ステンレス板を横切って拡散・透過してくる水素を直接観察するために、ステンレス板の1方の側を水素雰囲気に晒し、他方の側に拡散・透過してくる水素濃度分布を走査型電子顕微鏡を用いて電子衝撃脱離イオン像として2次元的に観察できる水素曝露装置を製作し、予備的実験を行った。この手法により高い位置精度で水素が拡散し易いチャンネルを観察できるとともに、拡散定数に関する情報を得ることが出来る。測定したステンレスは面心構造のオーステナイト系ステンレスであるSUS304である。昇温により200℃辺りから表面水素濃度は増加し始め測定した350℃の範囲では増加し続けた。また、一定温度(300℃)での時間変化は5時間ほどで表面水素濃度は最大となりその後約2ヵ月間ゆっくり減少し続けた。SUS304については、300℃でのバルクを横切る水素拡散は起こりにくいことが分かる。
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■ Keywords
goethite, XPS, AFM, hydrogen, stainless steel, diffusion, permeation, MgO, ESD, adsorption, FIM
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■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 |
刊行論文 |
著書 |
その他 |
学会発表 |
その他 発表 |
和文 | 英文 |
和文 | 英文 |
国内 | 国際 |
筆 頭 | 共 著 | 筆 頭 | 共 著 |
筆 頭 | 共 著 | 筆 頭 | 共 著 |
筆 頭 | 共 著 |
演 者 | 共 演 | 演 者 | 共 演 |
演 者 | 共 演 |
高木 祥示
教授
工学博士
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研究者名 |
刊行論文 |
著書 |
その他 |
学会発表 |
その他 発表 |
和 文 | 英 文 |
和 文 | 英 文 |
国 内 | 国 際 |
筆 頭 | 筆 頭
| 筆 頭 | 筆 頭
| 筆 頭 |
演 者 | 演 者
| 演 者 |
高木 祥示
教授
工学博士
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計 |
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( ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
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( ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
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■ 刊行論文
その他
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1.
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Sakai Y, Takagi S, Jin WG, Takaya K, Yamamoto K, Sugihara T, Sakaue, HA, Yamada, I:
Multi-electron Capture Processes in Highly Charged Ion - Alkali-earth Metal Atom CollisionsIon Excited Atomic Processes as Fundamental Reseaches for New Plasma Diagnostic.
Annual Report of NIFS April 2009-March 2010
:426
, 2010
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■ 学会発表
国内学会
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1.
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◎板倉明子, 髙木祥示, 酒井大樹, 後藤哲二:
ステンレス薄板を横切る水素の透過特性.
第58回応用物理学関係連合講演会,
厚木市,
2011/03
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