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 理学部 物理学科 表面物理学教室
 Surface Physics Laboratory

教授:
  後藤 哲二
  高木 祥示
■ 概要
ゲータイト(α-FeOOH)へのカドミウム(Cd)吸着の観察
重金属による土壌汚染は重大な環境問題の一つとなっており、粘土鉱物への重金属収着機構の解明は問題解決の前提として重要な意義を持っている。Cdを収着させた粘土鉱物を北里大学で作成し、本研究室でAFM(Atomic force microprobe)、TPD(Temperature programmed desorption ) 法、XPS(X-ray photoelectron spectroscopy)法を用いて吸着状態の観察を行なっている。
・原子間力顕微鏡(AFM)によるゲータイト表面の観察
微粉末であるゲータイトをAFMで観察する際その固定法が問題となる。前年度エポキシ系樹脂を使用したが、摩擦による帯電効果を減らすため今年度は導電性接着剤を使用した。その結果、結晶系を反映していると考えられる一辺数100nmの多角形様の微粒子が観察され、その効果が示された。
・昇温脱離法によるゲータイトへのCd吸着の観察
ゲータイトはc軸方向に伸びた針状結晶であり、その単結晶表面は{021}{110}によって形成され、その表面積のかなりの部分は{110}によって占められる。それらの表面には3種類の吸着サイトが考えられ、{110}ではCd原子は2個のO2-と結合し、{021}では2個のOH-と1個のO2-及び2個のO2-と1個のOH-と結合している。ゲータイトは昇温によりヘマタイトへと変成するが昇温スペクトルにはこれら3種類の吸着サイトに関連した脱離ピークが現れる。本研究により、脱離の活性化エネルギーは順に192kJ/mol、41kJ/mol、138kJ/molと見積もられた。これらのエネルギーはゲータイトへの吸着エネルギーとは異なるが、汚染土壌の熱処理には重要な知見である。
・Cd吸着状態の光電子分光法による観察
Cd吸着ゲータイトからのO1s、Cd3d3/2,5/2、Fe2p1/2,3/2光電子スペクトルを使いArイオンスパッタリングによる深さ方向分析を行なった。照射前及び初期にはO1sのみが観測され、照射とともにCd3d3/2,5/2が出現し、さらなる照射によりCd3d3/2,5/2は消失しFe2p1/2,3/2が出現した。このことによりCd吸着はゲータイト表面で起り、結晶構造上存在する内部空孔には進入していないことが明らかになった。
MgO(001)劈開面への水曝露によるMg(OH)2化のバルクへの進行
水中への浸潤時間が異なる試料(0、1、3、10、30、120時間)を用いて、X線光電子分光法とアルゴンイオンスパッタリングを併用することにより深さ方向へのMg(OH)2化の進行を調べた。バルク内への進行速度は深く進行するにつれて遅くなることが明らかになった。O1sの光電子スペクトルを観察することによりMgOとMg(OH)2の組成比を求め平均的なMg(OH)2層の厚さを見積もるとともに、スパッタリングによる表面研削により最大進行深さを求めた。これらの値は約2倍程度異なり、進行速度は場所により大きく異なり、欠陥密度が進行速度に大きく影響していることを示している。
ステンレス鋼内における水素の熱拡散過程の観察
金属中での水素の挙動は水素脆性、水素貯蔵の観点から重大な関心事となっている。本研究では予備的実験として0.4MPの水素雰囲気中に4時間SUS304ステンレス鋼を放置し水素吸蔵を行い、その後、昇温により水素拡散を促進させ、表面水素濃度の変化を観察した。観察は走査型電子顕微鏡を使用し試料温度を上げながら電子衝撃脱離イオン像を撮影し行う。昇温に伴い表面水素濃度が上昇する過程が観察された。
電界イオン顕微鏡用ティップの電界研磨装置の試作
電界イオン顕微鏡により表面原子配列を観察するためには試料であるティップの先鋭化が鍵となる。電界研磨により試料を作成する際、ティップ切断後は出来るだけ速やかに電源を切りティップ先端の鈍化を避ける必要がある。そのための電流遮断回路を作成し、ティップの製作を行ないタングステンティップ先端の原子配列の観察に成功した。
■ Keywords
MgO, adsorption, ESD, goethite, TPD, FIM,SUS304,XPS
■ 当該年度の研究費受入状況
1.  独立行政法人 物質・材料研究機構 共同研究
 研究課題:表面脱離を利用した金属内含有水素の挙動測定  (研究分担者:高木祥示)
 研究補助金:800000円  (分担)
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















後藤 哲二   教授
              
 
 
 
 
 
高木 祥示   教授
工学博士
              
 
 
 
 
 
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研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














後藤 哲二   教授
         
 
 
高木 祥示   教授
工学博士
         
 
 
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(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会