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 薬学部 衛生化学教室
 Department of Hygienic Chemistry

教授:
  井手 速雄
講師:
  金木 弘之
助教:
  桐生 道明
助教:
  水落 茂樹
■ 概要
骨芽細胞におけるユビキチンリガーゼSmurf1の発現機構
ラット初代培養骨芽細胞を用いて、TNFによるSmurf1の発現誘導機構について検討した。TNFはSmurf1の発現とRunx2のユビキチン化を誘導し、それらの誘導はSmurf1に対するsiRNAの細胞内導入により消失した。TNFは、プロスタグランジE2(PGE2)の産生を促進した。そこで細胞にPGE2受容体EP2に対するアゴニストを添加すると、細胞内cAMP濃度とSmurf1の発現レベルは上昇し、それらの上昇はプロテインキナーゼA阻害剤の添加で消失した。以上の結果から、TNFはPGE2産生を誘導し、そのPGE2はcAMP産生経路を介してSmurf1の発現を誘導することが示唆された。
骨芽細胞におけるインスリン増殖因子結合タンパク質の発現機構の解析
ヒトおよびラット初代培養骨芽細胞を用いて、IGFBP-4の発現機構について検討を行った。細胞にアデニル酸シクラーゼ活性化剤またはcAMPアナログを添加すると、どちらの細胞でもIGFBP-4発現レベルは上昇し、その作用はプロテインキナーゼA阻害剤の前処理により完全にブロックされた。プロスタグランジンE2受容体のうち、EP2受容体はアデニル酸シクラーゼを活性化するGsタンパク質と共役する。そこで、細胞にEP2受容体アゴニストを添加すると、どちらの細胞でも細胞内cAMP濃度およびIGFBP-4発現レベルは著しく上昇し、その作用はEP2受容体アンタゴニストまたはプロテインキナーゼA阻害剤の前処理により完全にブロックされた。以上の結果から、IGFBP-4の発現は細胞内cAMP濃度の上昇により誘導されることが示唆された。
骨芽細胞におけるメラトニン受容体発現機構の解析
ヒトおよびラットから調製した骨芽細胞を用いて、メラトニン受容体MT2の発現機構について解析した。細胞にメラトニンまたはMT2アゴニストを添加すると、骨形成マーカーであるアルカリホスファターゼ活性の促進およびMT2受容体の発現上昇が認められ、どちらの作用もMT2受容体に対するアンタゴニストの添加により抑制された。また、細胞を予め Gi タンパク質阻害剤、ホスホリパーゼC阻害剤あるいは細胞内カルシウムキレート剤で処理した場合でも、メラトニンによる骨形成マーカーの促進とMT2受容体の発現誘導は抑制された。
炎症性サイトカインによる骨芽細胞機能低下に及ぼすフラボノイドの影響
ケルセチンは野菜などに多く含まれるフラボノイドであり、骨粗鬆症治療薬として期待されている。関節リウマチや骨粗鬆症罹患者では、腫瘍壊死因子(TNF)の発現が上昇しており、その結果、骨芽細胞機能が著しく低下している。そこで本研究は、ヒトおよびマウス骨芽細胞を用いて、TNFが誘導する骨形成抑制作用に及ぼすケルセチンの影響について検討を行った。どちらの細胞でも、ケルセチンはメラトニン受容体MT2の発現を誘導し、骨形成の指標を促進した。TNFはMT2受容体の発現および骨形成の指標を抑制したが、ケルセチンはそれらのTNFの作用を完全に抑制した。
TNF-αによる骨形成抑制因子gremlinの発現誘導
マウス培養骨芽細胞様細胞MC3T3-E1細胞を、炎症性サイトカインの一つTNF-αで刺激したところ、その発現量はTNF-αに関して、濃度依存的、時間依存的に上昇した。この発現上昇は、MAP-kinase 経路のp38を介していることが示唆された。ゲノム上の転写調節領域の探索し、プロモーター領域およびエンハンサー領域の候補を見い出した。
骨芽細胞機能に及ぼすケンフェロールの影響
マウス由来初代培養骨芽細胞を用いて、フラボノイドの一つであるケンフェロールが、破骨細胞促進因子RANKLの発現を抑制することなどを明らかにした。
LPSによる破骨細胞分化に及ぼすケルセチンの影響について
フラボノイドのケルセチンは、LPSによる破骨細胞形成を著しく阻害することが分かった。
■ Keywords
骨代謝, 関節リウマチ, 骨粗鬆症, 骨芽細胞, 破骨細胞, ユビキチンリガーゼ, メラトニン, gremlin, ケルセチン
■ 教授・准教授・講師の公的役職
1.  井手 速雄 :薬学教育協議会衛生薬学担当委員会議委員長, 日本中央競馬会禁止薬物再検査委員
2.  金木 弘之 :日本中央競馬会禁止薬物再検査委員
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  井手 速雄 :日本薬学会 環境・衛生部会 相談役, 薬学教育協議会 衛生薬学担当教員会議 幹事, 私立薬科大学協会 国家試験問題検討委員会 幹事
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















井手 速雄   教授
薬学博士
              
 21
 
 
 
 
金木 弘之   講師
博士(薬学)
              2
 19
 
 
 
 
桐生 道明   助教
薬学修士
              
 6
 
 
 
 
水落 茂樹   助教
博士(薬学)
              2
 3
 
 
 
 
 0 0  0 0  0  4
(0)
 0
(0)
 0
(0)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














井手 速雄   教授
薬学博士
         
 
 
金木 弘之   講師
博士(薬学)
         2
 
 
桐生 道明   助教
薬学修士
         
 
 
水落 茂樹   助教
博士(薬学)
         2
 
 
 0 0  0 0  0  4
(0)
 0
(0)
 0
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 著書
1. 今井浩孝, 吉岡忠夫, 早川磨紀男, 原俊太郎, 山本千夏, 上野仁, 樋口敏幸, 清宮健一, 酒巻利行, 閔庚善, 小椋康光, 山田芳宗, 大塚文徳, 中西剛, 藤原泰之, 鍜冶利幸, 戸田晶久, 佐藤雅彦:    コンパス衛生薬学 健康と環境  1-459.  南江堂,  東京, 2011
2. 太田 茂, 菊川 清見, 笹津 備規, 北条 博史他:    スタンダード薬学シリーズ5 健康と環境  1-482.  日本薬学会,  東京、日本, 2011
3. 足立達美、井手速雄、井上義雄、金木弘之、高橋朋子、出川雅那、永沼章、根本清光、福井哲也、安田一郎、山﨑正博、和田啓爾:    衛生薬学-新しい時代-  1-550.  廣川書店㈱,  東京、日本, 2011
■ 学会発表
国内学会
1. ◎桐生道明、井手速雄: ヘスペレチンはRANKLによるc-fosおよびNFATc1の発現を抑制することにより破骨細胞分化を抑制する.  日本薬学会第132年会,  札幌,  2012/03
2. ◎藤江智也,中寛史,立浪忠志,山本千夏,廣岡孝志,安池修之,新開泰弘,熊谷嘉人,内山真伸,鍜冶利幸: 血管内皮細胞のNrf2およびメタロチオネインの発現を誘導するハイブリッド分子.  日本薬学会第132年会,  札幌,  2012/03
3. ◎水落 茂樹, 泉 雄介, 金木 弘之, 井手 速雄: TNF-alpha による骨形成抑制因子のシグナル伝達経路と転写調節.  日本薬学会,  札幌,  2012/03
4. 山本千夏: カドミウムの血管内皮細胞毒性.  日本衛生学会第83回学術総会,  金沢,  2012/03
5. ◎藤江智也,中寛史,立浪忠志,山本千夏,廣岡孝志,安池修之,新開泰弘,熊谷嘉人,内山真伸,鍜冶利幸: ハイブリッド分子による血管内皮細胞のNrf2およびメタロチオネインの発現誘導.  メタロチオネインおよびメタロバイオサイエンス研究会2011,  愛知,  2011/12
6. ◎金木弘之, 二瓶里菜, 長田淳美, 西田真規, 村山彩, 山口祐希, 井手速雄: ラネリックス酸ストロンチウムはカルシウム感知受容体を介して骨芽細胞分化を促進し,破骨細胞分化を抑制する.  フォーラム2011 衛生薬学・環境トキシコロジー,  金沢,  2011/10
7. ◎山口祐希, 金木弘之, 西田真規, 村山彩, 桐生道明, 水落茂樹, 定本清美, 野本聡, 井手速雄: フラボノイドのケルセチンはインスリン様増殖因子が惹起するシグナルを亢進する.  フォーラム2011 衛生薬学・環境トキシコロジー,  金沢,  2011/10
8. ◎西田真規, 金木弘之, 村山彩, 山口祐希, 井手速雄: 骨芽細胞におけるインスリン様増殖因子結合タンパク質の発現機構とその加齢変化について.  フォーラム2011 衛生薬学・環境トキシコロジー,  金沢,  2011/10
9. ◎村山彩, 金木弘之, 二瓶里菜, 長田淳美, 西田真規, 山口祐希, 井手速雄: インスリン様増殖因子結合タンパク質の発現レベルに及ぼすラネリックス酸ストロンチウムの影響.  フォーラム2011 衛生薬学・環境トキシコロジー,  金沢,  2011/10
10. ◎長田淳美, 金木弘之, 西田真規, 村山 彩, 山口祐希, 二瓶里菜, 井手速雄: 破骨細胞分化に及ぼすC型ナトリウム利尿ペプチドの影響.  フォーラム2011 衛生薬学・環境トキシコロジー,  金沢,  2011/10
11. ◎二瓶里菜, 金木弘之, 長田淳美, 西田真規, 村山彩, 山口祐希, 井手速雄: ラネリックス酸ストロンチウムは加齢に伴う破骨細胞分化の亢進を抑制する.  フォーラム2011 衛生薬学・環境トキシコロジー,  金沢,  2011/10
12. ◎藤江智也,中寛史,立浪忠志,山本千夏,廣岡孝志,安池修之,新開泰弘,熊谷嘉人,内山真伸,鍜冶利幸: 血管内皮細胞においてNrf2を活性化しメタロチオネインを誘導する銅錯体.  フォーラム2011:衛生薬学・環境トキシコロジー,  金沢,  2011/10
13. 山本千夏: 金属の生物活性・毒性研究を切り拓く新しいテクノロジー.  フォーラム2011:衛生薬学・環境トキシコロジー,  金沢,  2011/10
14. ◎角田美岬, 金木弘之, 中島のぞみ, 森泉詩保子, 井手速雄: 骨芽細胞機能抑制因子Smurf1の発現は加齢や卵巣摘除により誘導される.  第55回日本薬学会関東支部大会,  千葉,  2011/10
15. ◎金木弘之, 桐生道明, 森泉詩保子, 角田美岬, 中島のぞみ, 井手速雄: フラボノイドであるケルセチンは骨芽細胞機能抑制因子Smurf1の発現を抑制する.  第55回日本薬学会関東支部大会,  千葉,  2011/10
16. ◎山口祐希, 金木弘之, 長田淳美, 西田真規, 二瓶里菜, 村山彩, 桐生道明, 井手速雄: フラボノイドのケルセチンは骨形成促進因子であるインスリン様増殖因子の産生を亢進する.  第55回日本薬学会関東支部大会,  千葉,  2011/10
17. ◎小倉宏之, 金木弘之, 池田勧, 山賀亮祐, 桐生道明, 井手速雄: ケルセチンは炎症性サイトカインによる骨芽細胞機能低下を抑制する.  第55回日本薬学会関東支部大会,  千葉,  2011/10
18. ◎森泉詩保子, 金木弘之, 角田美岬, 中島のぞみ, 井手速雄: 骨芽細胞におけるユビキチンリガーゼSmurf1の発現機構に及ぼす加齢の影響.  第55回日本薬学会関東支部大会,  千葉,  2011/10
19. ◎西田真規, 金木弘之, 村山彩, 山口祐希, 井手速雄: 骨芽細胞におけるインスリン様増殖因子結合タンパク質の発現機構の解析.  第55回日本薬学会関東支部大会,  千葉,  2011/10
20. ◎村山彩, 金木弘之, 山口祐希, 長田淳美, 西田真規, 二瓶里菜, 桐生道明, 井手速雄: インスリン様増殖因子結合タンパク質の発現レベルに及ぼすケルセチンの影響.  第55回日本薬学会関東支部大会,  千葉,  2011/10
21. ◎池田勧, 金木弘之, 小倉宏之, 山賀亮祐, 井手速雄: 骨芽細胞におけるメラトニン受容体発現機構の解析.  第55回日本薬学会関東支部大会,  千葉,  2011/10
22. ◎中島のぞみ, 金木弘之, 森泉詩保子, 角田美岬, 井手速雄: 骨芽細胞におけるユビキチンリガーゼSmurf1の発現機構.  第55回日本薬学会関東支部大会,  千葉,  2011/10
23. ◎長田淳美, 金木弘之, 西田真規, 二瓶里菜, 村山彩, 山口祐希, 井手速雄: 骨芽細胞におけるナトリウム利尿ペプチド受容体の発現機構.  第55回日本薬学会関東支部大会,  千葉,  2011/10
24. ◎二瓶里菜, 金木弘之, 村山彩, 山口祐希, 長田淳美, 西田真規, 桐生道明, 井手速雄: 破骨細胞および骨芽細胞におけるカルシウム感知受容体の役割.  第55回日本薬学会関東支部大会,  千葉,  2011/10
25. ◎志村 翔大, 小川 英理, 中村 美沙, 入村 友子, 泉 雄介, 水落 茂樹, 金木 弘之, 井手 速雄: 炎症性サイトカインによる骨形成タンパク質アンタゴニストgremlinの発現.  日本薬学会関東支部大会,  千葉,  2011/10
26. ◎辻谷 圭祐, 小川 昌孝, 高橋 彩菜, 手島 麻衣子, 泉 雄介, 水落 茂樹, 金木 弘之, 井手 速雄: マウス骨芽細胞におけるBMP antagonist gremlinの発現調節.  日本薬学会関東支部大会,  船橋, 日本,  2011/10
27. ◎水落 茂樹, 泉 雄介, 金木 弘之, 井手 速雄: 骨形成タンパク質アンタゴニストgremlinは、骨芽細胞においてMAPキナーゼ系を解するTNF-alpha刺激により発現誘導される.  日本生化学会,  京都,  2011/09
  :Corresponding Author
  :本学研究者