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 薬学部 医療薬学教育センター/臨床薬剤学研究室
 Department of Clinical Pharmaceutics

教授:
  大林 雅彦
講師:
  石川 稚佳子
■ 概要
統合失調症患者の服薬アドヒアランスに関する要因
本研究ではDAI-10とPCP-29(仮)を用いて、統合失調症患者の服薬アドヒアランスの実態調査を行い、服薬アドヒアランスに影響する要因を調査した。その結果、患者側の因子として、入院期間、薬の効果の満足度、服薬継続の必要性の認識、薬が役立つという認識が、治療者側の因子として、持効性抗精神病薬の投与量、抗パーキンソン薬の投与量、治療者側との信頼関係が服薬観と関連していることが示唆された。また、PCP-29(仮)はDAI-10を除いた19項目だけでも、服薬観と相関が認められたため、服薬指導時などにこれらを用いて患者が薬に対してどう思っているのか、治療に対して積極的か、あるいは治療者との関係は良好なのかなど服薬アドヒアランスを確認する上で、有効であるといえる。ただし、患者が回答しにくかった質問項目があったことやDAI-10との相関が低かった項目があったことなどを考慮して、質問内容を再検討し、さらに質問項目を絞って調査する必要がある。
外来がん化学療法における施行中止理由の調査
患者背景と化学療法が中止になった理由を調査し、どのような理由により継続が困難になっているのかを明らかにして、これらの症例に対する薬剤師の関わり方を検討した。消化器外科では、 CPT-11による下痢や、 AVASTIN による好中球減少が目立った。高度な下痢は、脱水症状や、電解質異常をきたし、特に重篤な白血球・好中球減少を伴った場合には、致命的な経過をたどる可能性もあるため、患者の症状に気を配り、減量や中止なども考慮しなければならない。 しかし、早発型・遅発型それぞれにあった支持薬物療法があり、症状を緩和することが可能であるため、患者の症状を観察しながら適切に薬剤を使用し、治療を継続できるように提案を行わなければならない。
サプリメントにおけるアルドース還元酵素阻害活性の検討
日常的に摂取している食品やサプリメントに含まれる成分に着目し、アルドース還元酵素阻害活性を検討し、合併症予防の可能性を検索することを試みた。結果、コーヒーに含まれるクロロゲン酸には比較的高いアルドース還元酵素阻害活性があった。クロロゲン酸の阻害活性はエパルレスタットに対し約1/60倍の阻害活性を示し、クエルセチンやレチノイン酸より有効性が高いと思われた。エパルレスタットの用法用量が1回 50mg1日3回(食前)であることと、コーヒー1杯当たり70~220mgのクロロゲン酸が含まれるとの報告があることより、クロロゲン酸による糖尿病合併症予防の可能性が示唆された。
HPLCによるメロペネムの血中濃度測定法の検討
本研究では、病院での日常業務として施行可能な、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による簡便で迅速なメロペネム(MEPM)の血中濃度の測定法を検討した。検討の結果、移動相は5mMリン酸緩衝液(pH6.2):メタノール=85:15(v/v)、内部標準物質はm-アミノフェノールとした。試料の前処理には固相抽出法を用い、抽出から測定までの時間が一検体あたり25分以内と簡便かつ迅速な測定法となった。また、0.5~50μg/mLの範囲で検量線を作成したところ、R2=0.9999と良好な直線性が得られた。再現性を示す日内変動は1.78%以下、日間変動は3.53%以下といずれも5%以下であり、再現性の高い測定法と言える。
禁煙治療におけるバレニクリンの使用実績
バレニクリンが上市されて約2年余り経過したが、その臨床評価に関する報告は少ない。そこで、禁煙治療におけるバレニクリンの有用性、問題点を検討した。バレニクリンの禁煙率は、65.4%、一方、貼付型ニコチン製剤は、53.3%であり、バレニクリンの有用性は高いといえた。有害事象発現は、バレニクリン投与の41%の患者が嘔気を体験し、バレニクリンによる禁煙を諦めるという患者も存在したことから、嘔気を治療薬の減量や制吐薬投与によりコントロールすることが、禁煙成功率を上昇させる重要な要因だと思われた。
改正薬事法施行後のOTC医薬品購入における一般消費者の意識調査およびOTC医薬品の適正使用に関する検討
改正薬事法施行から約1年が経過した現在、OTC医薬品購入に関する意識調査を行うことは、今後のセルフメディケーションの推進や、OTC医薬品を普及する上で有用な情報となる。このことから、現在のOTC医薬品の購入から使用に関する消費者の意識や現状、販売の際の薬剤師・登録販売者の関わり方についてのアンケート調査を行った。今回の調査から、OTC医薬品を提供する側である専門家と、実際に使用する側である消費者双方が意識的に医薬品情報を活用することが、さらなる医薬品の適正使用につながるものと考えられた。そして、OTC医薬品の適正使用と活性化には、専門家である薬剤師や登録販売者がこれまで以上に積極的に関わっていくことこそ最も重要な課題であると思われる。
■ Keywords
統合失調症, アドヒアランス, 外来がん化学療法, 下痢, 好中球減少症, OTC医薬品, セルフメディケーション, 禁煙治療, バレニクリン, 嘔吐, HPLC, メロペネム, クロロゲン酸, アルドース還元酵素阻害活性
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  大林 雅彦 :日本TDM学会評議員, 日本臨床薬理学会評議員, 日本医療薬学会評議員, 薬物治療モニタリング研究会幹事, 日本病院薬剤師会雑誌編集委員会特別委員, 日本アプライドセラピューティックス学会評議員
2.  日本女性化学者の会理事 :日本女性化学者の会理事
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















大林 雅彦   教授
薬学博士
    1   1       1
(1)
 3
 
 
 
 
石川 稚佳子   講師
医学博士
   1           
 2
 
 
 
 
 0 1  0 0  0  1
(1)
 0
(0)
 0
(0)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














大林 雅彦   教授
薬学博士
         1
(1)
 
 
石川 稚佳子   講師
医学博士
  1       
 
 
 0 1  0 0  0  1
(1)
 0
(0)
 0
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. Chikako Ishikawa, Midori Itoh, Mariko Kaida, Toshihisa Onoda, Satomi Tanimoto and Masahiko Obayashi:  The Inhibitory Effect of All-Trans-Retinoic Acid on Aldose Reductase.  Pharmacometrics  80 (1) :27-31 , 2011
■ 著書
1. 大林雅彦(分担):    第96回薬k座医師国家試験解答・解説  239-272.  評言社,  東京, 2011
■ 学会発表
国内学会
1. 栗原恵利華、石川稚佳子、吉野禎章、土井啓員、真坂 亙、大林 雅彦: 禁煙治療薬バレニクリンの有用性と問題点の検討.  日本薬学会,  札幌,  2012/03
2. 深澤高広、石川稚佳子、小野田稔久、小池 一男、大林 雅彦: 抑肝散のアルドース還元酵素阻害作用:in vitroでの検討.  日本薬学会第132年会,  札幌,  2012/03
3. 大林雅彦: 卒前教育BSL~医学、薬学、看護学の実習を比較する~.  第2回日本アプライド・セラピューティクス学会学術大会,  東京,  2011/06
  :Corresponding Author
  :本学研究者