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 薬学部 医療薬学教育センター/臨床薬剤学研究室
 Department of Clinical Pharmaceutics

教授:
  大林 雅彦
講師:
  石川 稚佳子
■ 概要
1.PK-PD理論に基づいたセフタジジム注射剤の投与方法に関する検討
CAZは緑膿菌への感受性が回復し、緑膿菌感染症治療薬として見直されつつある薬剤であるが、臨床では、ほとんどの症例で腎機能や単離菌株のMICを十分に考慮していない画一的な投与方法で使用されていることが明らかとなった。また、緑膿菌感染症の中でも特に肺炎治療において、現状の目標値では高い有効性を確保できないことは明らかで、CAZを使用する際、%T>MICを少なくとも50%以上確保する必要がある。また、患者個々の腎機能やMICを考慮したCAZの投与方法を検討した結果、1日投与量を増量するよりも、投与間隔を短縮することが、%T>MICの増加に寄与していた。
緑膿菌に対する有効な抗菌薬は少ないうえに、MDRP(multi-drug resistant Pseudomonas aeruginosa)が増加傾向にあり、治療は年々困難となってきている。そのため、既存の有効とされる抗菌薬の感受性をいかに保ちながら使用できるかが問題となり、患者個々の腎機能等を考慮しつつ、十分な有効性が得られる用法・用量を選択することが重要である。今回検討した用法・用量をもとにCAZを使用することにより、腎機能を考慮し、PK-PD理論に基づいた適正使用を可能にし、CAZの有効性を確保できるものと考える。
2.がん化学療法誘発性悪心・嘔吐に対する適切な制吐療法導入に向けた検討
本研究ではがん化学療法誘発性の悪心・嘔吐に対して適切な制吐療法が行われることを目的として、①既定制吐療法の検証および新規制吐療法の検討、②既定療法と新規制吐療法の評価比較検討、③悪心・嘔吐評価形式の考案の三段階で研究を進めてきた。第1章では、わが国の制吐療法における体制は海外より遅れているという現状が明らかとなったが、本研究開始後の2010年5月に国内制吐療法ガイドラインが発行され推奨療法が示された。日本独自といった部分はなく海外ガイドラインの内容とほぼ同じもので昨年発売されたアプレピタントも推奨薬剤に挙げられた。そのため本研究で導入した療法では不足している結果となった。
 このように日々更新される臨床現場において、薬剤師が薬物療法の立案や提案、更新を積極的に行うことは大変重要なことであると考える。本研究では対象を一つのレジメンに絞り検証および検討を行ったが、本研究での制吐療法改定をモデルとして今後院内における化学療法レジメンの制吐療法検討を進めていく足掛かりになると思われる。
 第2章では第1章で導入した新規制吐療法の評価を行った。症例数が未だ少数であるが、既定制吐療法と比べ制吐療法の薬剤費を3分の1まで抑えられた上に制吐効果では同等もしくはそれ以上の結果となった。症例数を増やす中で制吐効果を再評価し、ガイドラインに示されるNK1受容体拮抗薬薬剤の上乗せを視野に入れた再検討を今後期待する。
第3章では第2章で直面した症状評価の難しさを克服するために患者自身の訴えを反映することのできる記録形態を考案した。ガイドラインに定められる制吐療法を行ったら終わりではなく患者個々の症状を観察しそれに合った治療をする上でも、患者の訴えを正確に評価することは重要なポイント点である。患者側は医療者にどこか訴えづらいという認識があるように見受けられる。症状がある場合にはそれを訴える必要性を十分理解してもらい、医療者側が正確に評価、対策を講じる体制を整えることが必要である。そのための手段として今回考案した形態の導入により患者と医療者どちらもが治療および有害事象に対する認識を高めることができればよいと考える。
3.ST合剤による臨床検査値の変動に関する研究
ST合剤投与によって変動しやすい臨床検査値や、その変動の要因を認識し、薬剤師が積極的に臨床検査値のモニタリングを行うことで、ST合剤の適正使用につながり、安全な薬物治療が行えると考えられた。
■ Keywords
PK/PD, セフタジジム, 投与設計、癌化学療法、
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  大林 雅彦 :日本TDM学会評議員, 日本臨床薬理学会評議員, 日本医療薬学会評議員, 薬物治療モニタリング研究会幹事, 日本病院薬剤師会雑誌編集委員会特別委員, 日本アプライドセラピューティックス学会評議員
2.  石川 稚佳子 :日本女性化学者の会理事
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















大林 雅彦   教授
薬学博士
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石川 稚佳子   講師
医学博士
              
 
 
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研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














大林 雅彦   教授
薬学博士
         
 
 
石川 稚佳子   講師
医学博士
         
 
 
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(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. Takahiko Aoyama, Takayoshi Kosugi, Kazuhiro Matsuo, Itsuki Kimura, Masahiko Obayashi, Minoru Kurokawa, Masaki Igarashi, Jun-ich Yamasaki, Yoshimasa Ishida, Yoshiaki Matsumoto:  Population Pharmacokinetic Analysis of Pilsicainide in Patients with Cardiac Arrhythmias.  The Japanses Joural of Therapeutic Drug Monitoring  27 (2) :85-97 , 2010
■ 著書
1. 大林雅彦(分担):    第95回薬剤師国家試験解答・解説  241-274.  評言社,  東京, 2010
■ 学会発表
国内学会
1. 小野田稔久、石川稚佳子、矢島修平、小池一男、真坂亙、大林雅彦: 漢方薬における糖尿病性神経症に効果のあるアルドース還元酵素阻害作用の比較検討.  第21回日本医療薬学会年会,  神戸,  2010/10
2. 齋藤良太,宇田圭祐,鴇田麻衣,石川千佳子,佐藤光利: アミノピラジン類のアルドース還元酵素阻害活性.  有機合成化学協会関東支部シンポジウム,  東京,  2010/05
  :Corresponding Author
  :本学研究者