2008年度
 薬学部 医療薬学教育センター/臨床薬剤学研究室
 Department of Clinical Pharmaceutics

教授:
  大林 雅彦
講師:
  石川 稚佳子
■ 概要
悪性リンパ腫患者におけるR-CHOP療法による好中球減少に対する顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)投与法の検討
悪性リンパ腫など一部のがん種に対する顆粒球コロニー刺激因子(以下,G-CSF)製剤の用法は添付文書上、明確な投与時期が示されていない。そこで、患者のquality of life面で最も有用な投与時期を検討した。また、G-CSFの反応性における影響因子を検討した。対象は2006年6月までの1年間に、東邦大学医療センター大森病院においてR-CHOP療法施行となった非ホジキンリンパ腫患者とし、レトロスペクティブに調査した。その結果、G-CSF投与開始時の好中球Gradeが高いほど、また好中球最低値(以下,Nadir)期(day10~14とした)後に投与開始したものほど、1クールあたりのG-CSF総投与回数は少なく、感染のリスクは低かった。またアルブミン値が低い患者ほど1クールあたりのG-CSF総投与回数が多かった。以上より、予防投与の必要はなく、Nadir期後に投与開始するのが望ましく、栄養状態がG-CSF投与回数に影響を及ぼす可能性があることが示唆された。この結果を日本病院薬剤師界雑誌に発表した。
塩酸バンコマイシン後発品の安全性に関する臨床評価
塩酸バンコマイシンの後発品であるMEEK(M-VCM)は、添加剤としてD-MannitolとMacrogol 400(PEG 400)を含んでいる。ラットにおけるVCMの高用量投与の研究によれば、M-VCMは先発品であるS-VCMと比較すると腎毒性を軽減したと報告されている。この後ろ向き研究の目的は、臨床症例においてM-VCMとS-VCMの間で腎毒性頻度を検討することである。肝機能検査値の異常に関しては、頻度の相違は、2製剤間で見いだされなかった。しかし、腎臓機能検査値の異常に関しては、M-VCM群はS-VCM群と比較して少ない頻度であった。さらに、血清クレアチニン値を腎障害の指標として用いてVCMトラフ濃度と腎障害の発現との関係を検討した結果、S-VCMが投与された群の腎障害の頻度は、VCMトラフ濃度に依存して、有意に増加した。しかし、M-VCM投与群ではVCMトラフ濃度と腎障害の間で関連は認められなかった。これらの所見は、臨床症例においてM-VCMの腎障害の発現がS-VCMとは異なる可能性があり、VCMの腎毒性を軽減させる可能性があることを示唆している。この結果を日本病院薬剤師会雑誌に発表した。
バンコマイシンの初期投与量評価に関する研究
MRSAによる重症感染症患者などでは、投与開始数日後の血中濃度測定時には治療予後が決まってしまう患者も存在するため、適正な初期投与量を決定することは重要である。しかし、バンコマイシン(VCM)は、添付文書の投与量を順守しても、推奨されている血中濃度に達しないを満たさない例が国内で複数報告されている。そのため、VCMの初期投与量を決定する方法が検討、報告されている。しかし、これらの初期投与量決定法は、臨床的に不向きな投与量、投与間隔が算出され、繁多な業務の中では、複雑な表が使用しづらいなどの欠点がある。従って、本研究では、臨床現場で実際に用いられているVCMの使用実態を調査し、臨床における初期投与量が適切であるかを検討するとともに、VCMの初期投与量による定常状態における血中濃度を予測検討することにより、適切な初期投与量を決定する目安となる簡便な表を提案することができた。
切除不能非小細胞肺がんにおけるCarboplatin and Weekly Paclitaxel併用療法とCisplatin and Docetaxel併用療法の薬剤経済学的比較検討
切除不能非小細胞肺がんに対して、Carboplatin and Weekly Paclitaxel併用療法((以下CBDCA/wPTX療法))とCisplatin and Docetaxel併用療法((以下CDDP/DTX療法))は世界的な標準療法となっており、両者はほぼ同等の有効性を有していると評されているいわれている。そこで診断群分類に基づく包括支払い制度DPC環境下で、どちらのレジメンが費用対効果に優れているのか検討を行った。その結果を日本薬学会に発表した。
薬学部6 年制における共通試験(OSCE)実施のための検討
薬学部6 年制で実施される共通試験(OSCE)について,本学での実施体制の確立を検討した。今年度は120 名づつ,2回のトライアルを行った。
その他
6年制に行われる長期病院実務実習のテキストを、付属病院と協力して作成した。
■ Keywords
顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF), 好中球減少, 悪性リンパ腫, 塩酸バンコマイシン, 後発医薬品, 安全性, 臨床評価, 薬剤経済学, OSCE, 長期実務実習
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  大林 雅彦 :日本TDM学会評議員, 日本臨床薬理学会評議員, 日本医療薬学会評議員, 薬物治療モニタリング研究会幹事, 日本病院薬剤師会雑誌編集委員会特別委員, 日本アプライドセラピューティックス学会評議員
2.  石川 稚佳子 :日本女性化学者の会理事
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















大林 雅彦   教授
薬学博士
    2   2       
 
 
 2
 
 
石川 稚佳子   講師
医学博士
              
 
 1
 
 
 
 0 0  0 0  0  0
(0)
 1
(0)
 0
(0)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














大林 雅彦   教授
薬学博士
         
 
 
石川 稚佳子   講師
医学博士
         
 1
 
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(0)
 1
(0)
 0
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. 森山知美, 小杉隆祥, 松尾和廣, 木村伊都紀, 黒川實, 大林雅彦:  塩酸バンコマイシン後発品の安全性に関する臨床評価.  日本病院薬剤師会雑誌  44 (12) :1765-1768 , 2008
2. 鈴木敦, 西澤健司, 黒川實, 大林雅彦:  悪性リンパ腫患者におけるR-CHOP療法による好中球減少に対する顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)投与法の検討.  日本病院薬剤師会雑誌  44 (8) :1765-1768 , 2008
■ 著書
1. 大林雅彦, 佐藤光利:  TDM.  わかりやすい薬学生のための実務事前学習テキスト  374-405.  ネオメディカル、厚木市,  厚木市, 2009
2. 大林雅彦ほか:    第96回薬剤師国家試験問題解答解説  245-275.  評言社,  東京, 2008
■ 学会発表
国内学会
1. 稲毛俊介, 伊勢雄也, 片山志郎, 大林雅彦: 切除不能非小細胞肺がんにおけるCarboplatin and Weekly Paclitaxel併用療法とCisplatin and Docetaxel併用療法の薬剤経済学的比較検討.  日本薬学会第129年会,  京都,  2009/03
2. ◎青山隆彦, 小杉隆祥, 石田義正, 松尾和廣, 木村伊都紀, 大林雅彦, 菅紀子, 五十嵐正樹, 山﨑純一, 松本宜明: モンテカルロシュミレーションによる腎機能低下患者におけるピルジカイニド至適投与量の検討.  第25回日本TDM学会学術大会,  東京,  2008/06
国際学会
1. ◎Ishikawa C, Satoh M, Muto S, Takahashi M, Obayashi M, Sadamoto K.: What is required for community pharmacists to provide pharmaceutical care for patients.  68th International of Congress of FIP,  Basel, Swtzerland,  2008/09
  :Corresponding Author
  :本学研究者