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 薬学部 医療薬学教育センター/薬物治療学研究室
 Department of Pharmacology and Therapeutics

教授:
  高原 章
■ 概要
1.薬物によるQT延長リスクの評価
ウサギ生体位心臓の催不整脈特性を明らかにするため、房室ブロックに伴う徐脈が心室性不整脈の発生に及ぼす影響を房室ブロック急性期と慢性期で検討した。房室ブロック急性期の検討では、心室を60回/分で駆動したウサギにニフェカラントを投与したところ、QT間隔が延長して6例中5例に多形性心室頻拍が出現した。房室ブロック慢性期の検討では、4週間以上生存群の5例に多形性心室頻拍が観察された。ウサギ心臓では慢性期モデルと同様に、急性徐脈によりQT延長薬存在下で催不整脈特性が顕在化することが示された。
2.心房細動の発生メカニズム
心房への伸展刺激は心房組織に様々な変化を生じさせ、心房細動の発生や維持に関与すると考えられている。当研究室では心房に対して慢性的な容量負荷を与えるモデル動物を作製し、心臓の形態的変化、電気生理学的変化および心房細動の持続性について検討している。容量負荷に加えてアルドステロンを投与すると心房細動持続時間が延長することを見出したので、そのメカニズムを解析している。
3.動物を用いたCAVI計測システムの構築
血管拡張薬は血管への作用特性の違いにより臨床的用途は異なる。ニカルジピンは細動脈に対する反応性が高いが、ニトログリセリンは静脈や冠動脈の太い部分のような筋性動脈への反応性が高いとされるが、in vivo実験で両薬物の特性の違いを反映する有用な指標は知られていない。近年、動脈stiffnessを測定する手法としてCardio Ankle Vascular Index (CAVI)が開発され、大動脈から足首までの動脈における血管の硬さを反映する指標として臨床的有用性が示されている。CAVIが血管拡張薬の薬理学的特性を鑑別できるかについて麻酔下ウサギを用いて検討した。ニトログリセリンとニカルジピンは、いずれも用量依存的に上腕動脈血圧を低下させ、大腿動脈血流を増加させた。これらの指標では薬理学的特徴の鑑別は困難であった。血圧低下を示す用量において、CAVIは、ニトログリセリンでは低下し、ニカルジピンでは低下しなかった。CAVIは細動脈の緊張性ではなく、筋性動脈のstiffness変化を反映すると推測されることから、その特性がニトログリセリンとニカルジピンの薬理学的特徴の違いを示したと考えられ、血管拡張薬の薬理学的特性を鑑別する指標として期待できる。
■ Keywords
心房細動, QT延長症候群, 心筋イオンチャネル, 心肥大, 高血圧,動脈硬化, CAVI
■ 当該年度の研究費受入状況
1.  学術研究助成基金助成金 基盤研究(C)  (研究課題番号:24590669)
 研究課題:新しい持続型心房細動モデル動物における心房細動治療標的分子の分析  (研究代表者:高原 章)
 研究補助金:1400000円  (代表)
2.  学術研究助成基金助成金 基盤研究(C)  (研究課題番号:25461042)
 研究課題:難治性薬剤抵抗性高血圧に対する革新的な腎動脈交感神経アブレーション法の開発  (研究分担者:高原 章)
 研究補助金:100000円  (分担)
その他
1.  東邦大学共同研究
 研究課題:慢性心房細動に対する新規治療薬:強力かつ安全な停止薬の開発  (研究分担者:高原 章)
 研究補助金:2500000円  (分担)
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  高原 章 :日本薬学会 学術誌編集委員, 日本薬理学会 学術評議員 代議員
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















高原 章   教授
博士(薬学)
 1 3 1 1          
 14
(2)
 
 1
 
 4
 1 1  0 0  0  0
(0)
 0
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研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














高原 章   教授
博士(薬学)
 1 1       
 
 
 1 1  0 0  0  0
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 0
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 0
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(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. 小原浩, 中村裕二, 曹新, 横山浩史, 中瀬古(泉)寛子, 安東賢太郎, 村越伸行, 佐藤明, 青沼和隆, 高原章, 池田隆徳, 杉山篤:  腎デナベーションおよびアミオダロン慢性投与による心臓電気薬理学的作用の類似性:慢性房室ブロック犬モデルを用いての検討.  Progress in medicine  35 (Suppl.1) :342 -345 , 2015
2. 原田 英里, 内田 裕久, 杉野 多美, 今田 智之, 高原 章, 山門 実:  L/N型カルシウム拮抗薬シルニジピンの白血球からの活性酸素放出に対する作用.  薬理と治療  42 (6) :413 -418 , 2014
3. Yano K, Motegi T, Takimoto S, Hagiwara M, Idota Y, Morimoto K, Takahara A, Ogihara T:  Role of P-glycoprotein in regulating cilnidipine distribution to intact and ischemic brain.  Drug metabolism and pharmacokinetics  29 (3) :254 -258 , 2014
総説及び解説
1. Takahara A, Hagiwara M, Namekata I, Tanaka H:  Pulmonary vein myocardium as a possible pharmacological target for the treatment of atrial fibrillation.  Journal of pharmacological sciences  126 (1) :1 -7 , 2014
その他
1. 高原 章:  肥大心筋における催不整脈特性と電気的リモデリング −「再分極時間の時間的ばらつき」の意義 −.  循環plus  14 (6) :7 -9 , 2014
2. 安東賢太郎, 中村裕二, 星合清隆, 岸江拓也, 柏木克彦, 曹新, 小原浩, 中瀬古(泉)寛子, 高原章, 赤坂喜清, 杉山篤:  正常犬と正常ブタ間でのジピリダモール負荷後の心電図変化の差異―側副血行路が冠盗流(coronary steal)の原因か?―.  心電図  35 (Suppl.1) :79 -80 , 2015
■ 学会発表
国内学会
1. ◎神林 隆一, 萩原 美帆子, 高田 一唐, 高原 章: 急性房室ブロックウサギに発生する薬物誘発性不整脈におけるアドレナリンα1受容体の役割.  第88回日本薬理学会年会,  名古屋,  2015/03
2. ◎萩原 美帆子, 神林 隆一, 高田 一唐, 日下部 太一, 加藤 恵介, 高原 章: 急性房室ブロックウサギにおける薬物誘発性不整脈の発生機序:L型Ca2+チャネルとNa+/Ca2+交換機構の関与.  第88回日本薬理学会年会,  名古屋,  2015/03
3. ◎千葉 俊樹, 近藤 直人, 清水 直子, 高原 章: 電気的にリモデリングされた心房筋に対する抗不整脈薬の効果の比較.  第24回日本循環薬理学会,  山形,  2014/12
4. ◎萩原 美帆子, 高田 一唐, 神林 隆一, 渋田 成二, 高原 章: 抗精神病薬パリペリドンによる催不整脈作用:急性房室ブロックウサギを用いた検討.  第24回日本循環薬理学会,  山形,  2014/12
5. ◎千葉 達夫, 高木 幸恵, 佐々木 英久, 清水 一寛, 高橋 真生, 白井 厚治, 高原 章: 内因性NOによる大動脈stiffnessの制御:麻酔ウサギによる検討.  第37回日本高血圧学会総会,  横浜,  2014/10
6. ◎杉野 多美, 原田 英里, 高原 章: Dahl SラットにおけるL/N型カルシウム拮抗薬シルニジピンの抗心房細動作用:ARBとの併用による効果.  第37回日本高血圧学会総会,  横浜,  2014/10
7. ◎高田 一唐, 萩原 美帆子, 渋田 成二, 神林 隆一, 高原 章: 薬物性不整脈検出におけるウサギ徐脈モデルの有用性.  第58回日本薬学会関東支部大会,  町田,  2014/10
8. ◎高木 幸恵, 千葉 達夫, 佐々木 英久, 白井 厚治, 高原 章: 麻酔下ウサギにおける交感神経作用薬の血管応答性:CAVIを用いた検討.  第58回日本薬学会関東支部大会,  町田,  2014/10
9. ◎小原浩, 中村裕二, 曹新, 横山浩史, 中瀬古寛子, 安東賢太郎, 村越伸行, 佐藤明, 青沼和隆, 高原章, 池田隆徳, 杉山篤: 腎動脈デナベーションおよびアミオダロン慢性投与による心臓電気薬理学的作用の類似性:慢性房室ブロック犬モデルを用いての検討.  第19回アミオダロン研究会,  東京,  2014/09
10. ◎安東賢太郎, 中村裕二, 星合清隆, 岸江拓也, 柏木克彦, 曹新, 小原浩, 中瀬古(泉)寛子, 高原章, 赤坂喜清, 杉山篤: 正常犬と正常ブタ間でのdipyridamole 負荷後の心電図変化の差異: 側副血行路がcoronary stealの原因か?.  第41回比較心電図研究会,  東京,  2014/09
11. ◎恒岡 弥生, 田中 愛弓, 鶴田 將人, 中山 貴弘, 灘 みづき, 相本 恵美, 濵口 正悟, 行方 衣由紀, 高原 章, 田中 光: ラット肺静脈心筋の電気生理学的性質:動静脈瘻の影響.  生体機能と創薬シンポジウム 2014,  大阪,  2014/08
12. ◎萩原 美帆子, 高田一唐, 渋田 成二, 高原 章: α1-Adrenoceptor stimulation is not essential for nifekalant-induced proarrhythmias under the condition of bradycardia in rabbits.  第29回日本不整脈学会学術大会/第31回日本心電学会学術集会合同学術集会,  東京,  2014/07
13. ◎相本 恵美, 灘 みづき, 梛野 健, 江見 遥, 日下部 太一, 加藤 恵介, 高原 章: アルドステロン慢性負荷で生じる心房リモデリングにおけるTRPC3チャネルの関与:動静脈瘻モデルラットを用いた検討.  第130回日本薬理学会関東部会,  東京,  2014/07
14. ◎田中 愛弓、恒岡 弥生、鶴田 將人、中山 貴弘、灘 みづき、相本 恵美、濵口 正悟、行方 衣由紀、高原 章、田中 光: 動静脈瘻ラット肺静脈心筋の電気生理学的性質.  第130回日本薬理学会関東部会,  星薬科大学 東京,  2014/07
国際学会
1. ◎Takumi Tomono, Kentaro Yano, Toshimitsu Motegi, Shinobu Takimoto, Mihoko Hagiwara, Yoko Idota, Takashi Kano, Hiroshi Arakawa, Kaori Morimoto, Chihaya Kakinuma, Akira Takahara, Takuo Ogihara: P-glycoprotein plays a key role in the contractionary effects against brain infarction of cilnidipine.  19th North American Regional ISSX Meeting and 29th JSSX Annual Meeting,  San Francisco, USA,  2014/10
その他
1. ◎千葉 達夫, 山中 茉莉, 高木 幸恵, 佐々木 英久, 清水 一寛, 高橋 真生, 白井 厚治, 高原 章: CAVIによる血管拡張薬の薬理学的特性の識別:ニトログリセリンとニカルジピンの作用比較.  2014年度4学部合同学術集会,  船橋,  2015/03
2. ◎萩原 美帆子, 神林 隆一, 高田 一唐, 渋田 成二, 高原 章: 薬物誘発性不整脈検出モデルの新規構築と抗精神病薬パリペリドンによる催不整脈作用の検討.  2014年度4学部合同学術集会,  船橋,  2015/03
3. ◎杉山篤, 高原章: 慢性心房細動に対する新規治療薬:強力かつ安全な停止薬の開発 平成26年度東邦大学共同研究費補助金(学部を超えた共同研究)報告.  平成26年度 第11回東邦大学4学部合同学術集会,  千葉,  2015/03
4. ◎小原浩, 北原健, 中村裕二, 藤野紀之, 田中光, 高原章, 小池秀樹, 浅田俊樹, 木下利雄, 鈴木健也, 湯澤ひとみ, 佐藤秀之, 福永俊二, 小林健三郎, 山﨑純一, 池田隆徳, 杉山篤: 抗インフルエンザ薬・Oseltamivirは史上最強の抗心房細動薬となるか?.  第62回臨床不整脈研究会,  東京,  2014/12
  :Corresponding Author
  :本学研究者