<<< 前 2010年度 | 2011年度 | 2012年度
 医学部 医学科 臨床検査医学研究室(大森)
 Department of Laboratory Medicine (Omori)

教授:
  盛田 俊介
■ 概要
概要
メタボリック症候群の増加と急速な高齢化が進む現在、その合併症である心血管疾患の予防は健康な老後に重要である。この心血管疾患の基盤となる病変が血管の加齢性変化であるが、この発症と進展には酸化ストレスならびに慢性炎症性反応が中心的役割を演じている。当教室ではこれらを背景に、加齢、高血圧、糖尿病、心腎連関をテーマに研究を遂行している。
Ⅰ:基礎的研究
1.Heme oxygenase に関する研究
酵素heme oxygenase(HO)は生体内でヘムを代謝する過程で抗酸化作用を有するビリルビンと抗炎症作用を発揮する一酸化炭素を産生する酵素であり、種々の生体に対するストレスでその発現が誘導される。我々は、自ら樹立したHO-1過剰発現マウスを利用し、高血圧モデル、内皮傷害モデル、腎障害モデルを作成し、心血管系病変形成における活性酸素ならびに炎症性反応の病態生理学的意義を明らかにするとともに、HOによるこれら心血管病変進展抑制を図る。さらにHO-1過剰発現マウスでは老化に伴う内皮機能障害や血管での炎症性反応が緩和していることが見いだされ、老化とHOとの関連の研究に着手している。
2. 心腎連関に関する研究
慢性腎臓病(CKD)は心血管疾患(CVD)の独立した危険因子であるが、そのメカニズムには不明な点が多い。当院臨床検査部は、以前からHPLC法により血中IS濃度を測定し、CKD患者における蛋白制限食やAST-120服用の治療効果判定を広く実施している。また、血中IS濃度とCKDステージ進行速度ならびに冠動脈疾患発症との関連を明らかにし、ISが単なるnephrotoxinにとどまらない可能性を指摘してきた。我々は、これら臨床から得られた知見を発想の原点としCKDにおけるCVD発症に対するISの役割の解明に着手し血管内皮細胞におけるISの作用点のひとつがAhRであることを報告した。現在ISによる血管内皮障害の詳細なメカニズムの解明とともにIS-AhR経路の遮断による心腎連関抑制の可能性を検討中である。
3. 飲用水素水に関する研究
水に溶存した水素分子は抗酸化作用等により動脈硬化の進展抑制作用が期待できることが動物実験で明らかにされているが、飲用水素水の効果の検証は必ずしも科学的ではない。そこで、「血管病変に与える飲用水素水の効用―そのメカニズムの解明―」をテーマに(株)アムルテクニカと共同研究中であり、今までの研究により高濃度の水素分子が溶存する培養液が制作できることが確認された。現在、この培養液を用いて血管内皮細胞における水素分子による動脈硬化性病変抑制メカニズムの詳細を検討中である。
4.SMP30/GNLKOマウスを利用した研究
SMP30/GNLはマウスにおけるビタミンC合成に必須な酵素である。この酵素のノックアウトマウスを樹立した東京都健康長寿医療センター研究所の石神昭人副部長と共同研究で、①加齢性病変におけるビタミンCの病態生理学的意義に関する研究、②5/6腎摘マウスを用いてIS血中濃度を上昇させたモデルを作成し、心腎連関におけるビタミンCの抑制効果の研究を進行中である。
Ⅲ:最新検査による病態解析
1. ラクトフェリンと炎症性疾患
多機能蛋白であるラクトフェリン(LF)は感染や炎症の結果,好中球の二次顆粒から放出され,血中濃度が増加する。そこで,FITC 標識抗ヒトLF 抗体を作成し,フローサイトメトリーを用い好中球内のLF 含有量ならびに血中濃度を測定し,その病態生理学的意義を解析している。
Ⅳ:産学連携
産学連携センターを通じて株式会社TSSと産学連携契約を結び、新たな臨床的意義が付加された血圧計の開発し商品化した。
Ⅱ:臨床的研究
1. 心腎連関に関する研究
我々のこれまでの基礎的研究の結果をふまえ、CKD患者における血中IS濃度とCVD発症リスクの関係を検討中である。また、国立循環器病センターならびに大阪大学との共同研究としてヒト血中IS濃度の測定を実施している。
2.小児科との連携
炎症性疾患である川崎病患者の治療反応性におけるCRPと血中CO濃度との相関を検討中である。
3.呼吸器内科との連携
呼吸器内科による「特発性間質性肺炎に対するN-アセチルシステイン療法と酸化ストレスに関する研究」に関与し、GSH、8OHdG等の酸化ストレスマーカーの評価を行っている。
■ Keywords
加齢, メタボリックシンドローム, 心腎連関, Heme oxygenase, インドキシル硫酸, ビタミンC
■ 当該年度の主催学会・研究会
1.  第9回腎泌尿器検査研究会学術集会  ( 盛田俊介 )  ,東京  2013/03
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  盛田俊介 :日本高血圧学会評議委員, 日本動脈硬化学会評議委員, 日本抗加齢学会評議委員, 日本自動化学会評議委員・編集幹事, 脳心血管抗加齢研究会評議委員, 日本臨床検査医学会評議委員・全国幹事, 腎・泌尿器検査研究会評議委員
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















盛田 俊介   教授
医学博士
  6  1          2
 27
 2
(1)
 4
(2)
 
 3
(1)
土井 範子   助教
医学博士
              
 
 
 
 
 
 0 0  0 0  0  2
(0)
 2
(1)
 0
(0)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














盛田 俊介   教授
医学博士
         2
 2
(1)
 
土井 範子   助教
医学博士
         
 
 
 0 0  0 0  0  2
(0)
 2
(1)
 0
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. ◎氏家真二, 大須賀裕至, 奥田優子, 佐野将也, 小島鉄巳, 盛田俊介:  改良MMP-3測定試薬の基本性能評価.  医学と薬学  67 (5) :741 -747 , 2012
2. ◎奥田優子, 大須賀裕至, 氏家真二, 勝田逸郎, 盛田俊介:  ファクターオートP-FDPおよびDダイマー測定試薬の性能評価.  医療と検査機器・試薬  36 (1) :93 -101 , 2013
3. ◎難波俊二, 奥田優子, 盛田俊介:  心臓型脂肪酸蛋白の精密、かつ迅速測定可能な試薬の開発とその性能評価.  日本臨床検査自動化学会会誌  38 (1) :12 -19 , 2013
4. Watanabe I, Tatebe J, Namba S, Koizumi M, Yamazaki J, Morita T:  Activation of aryl hydrocarbon receptor mediates indoxyl sulfate-induced monocyte chemoattractant protein-1 expression in human umbilical vein endothelial cells.  Circulation Journal  77 (1) :224 -230 , 2013
総説及び解説
1. ◎建部順子, 盛田俊介:  検査学からみた心血管病における免疫機構.  呼吸と循環  60 (11) :1131 -1136 , 2012
2. ◎建部順子, 盛田俊介:  ウレミックトキシンと血管内皮.  生物試料分析  35 (3) :191 -200 , 2012
■ 学会発表
国内学会
1. ◎奥田優子, 難波俊二, 盛田俊介: 好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン測定用新規試薬の性能評価.  第9回腎泌尿器検査研究会学術集会,  東京,  2013/03
2. ◎前原千佳子,湯本重雄,安井久美子,村上日奈子,榎園恭子,彦坂あゆみ,福澤滋,岩田守弘,佐野将也,石井良和,舘田一博,盛田俊介: 当院過去5年間における尿培養の分離状況および薬感受性について..  第9回腎泌尿器検査研究会学術集会,  東京,  2013/03
3. ◎迫屋舞, 佐藤信博, 西山裕伸, 桑村自奈子, 菅原久美子, 難波俊二, 佐野将也, 盛田俊介: 尿自動分析装置「アイケムヴェロシティ・アイキュー200スプリント」の基礎的検討.  第9回腎泌尿器検査研究会学術集会,  東京,  2013/03
4. ◎今井和花, 鷲澤尚宏, 石井利明, 稲田義信, 山下千知, 森元明子, 難波俊二, 盛田俊介: ウシ由来ラクトフェリン経口摂取における、ウシおよびヒト由来ラクトフェリンの血中動態について.  第28回日本静脈経腸栄養学会学術集会,  金沢,  2013/02
5. ◎山下千知, 鷲澤尚宏, 今井和花, 森元明子, 稲田義信, 難波俊二, 小倉豊子, 池田恭子, 久永直子, 神山薫, 下田正人, 盛田俊介: 迅速検査対応可能な血清亜鉛測定試薬評価および院内検査導入後における検査件数の推移について.  第28回日本静脈経腸栄養学会学術集会,  金沢,  2013/02
6. ◎奥田優子, 難波俊二, 盛田俊介: 3社におけるDダイマー多岐分子種に対する親和性の比較.  第23回生物試料科学会年次集会,  大阪,  2013/02
7. ◎難波俊二, 氏家真二 , 奥田優子, 盛田俊介: 低値領域の反応性が優れるマトリックスメタロプロティネーゼー3測定試薬の性能.  第23回生物試料科学会年次集会,  大阪,  2013/02
8. ◎難波俊二, 大須賀裕至, 奥田優子, 盛田俊介: リウマトイド因子による各種動物IgGに対する非特異的反応の出現頻度とその抑制.  第23回生物試料科学会年次集会,  大阪,  2013/02
9. ◎安井優太郎, 田中学, 青砥彩, 佐野将也, 盛田俊介: D-Dimer低値域における3社D-Dimer測定試薬の比較検討.  第9回東京都医学検査学会,  東京,  2013/02
10. ◎難波俊二, 盛田俊介: インドキシル硫酸は慢性腎臓病における心血管疾患発病の危険因子である.  アンチエイジングフェスタ2012,  大阪,  2012/12
11. ◎盛田俊介, 建部順子: インドキシル硫酸は血管内皮aryl hydrocarbon receptorを介して細胞老化を促進する.  アンチエイジングフェスタ2012,  大阪,  2012/11
12. ◎氏家真二, 大須賀裕至, 奥田優子, 吉原彩, 宮城匡彦, 臼井州樹, 廣井直樹, 久保木幸司, 弘世貴久, 盛田俊介: 自動分析装置を使用したNon-RIA法による総・遊離インスリン測定の試み.  第59回日本臨床検査医学会学術集会,  京都,  2012/11
13. ◎安井優太郎, 田中学, 青砥彩, 佐野将也, 盛田俊介: VIDAS D-Dimer ExclutionⅡ(DEX)の基礎評価.  第44回日本臨床検査自動化学会,  横浜,  2012/10
14. ◎佐藤信博, 石井利明, 西山裕伸, 桑村自奈子, 菅原久美子, 佐野将也, 盛田俊介: 自動血球計数装置ADVIA2120iにおける赤血球混入髄液算定に用いる前処理用溶血剤の検討.  第44回日本臨床検査自動化学会,  横浜,  2012/10
15. ◎氏家真二, 奥田優子, 大須賀裕至, 盛田俊介: アルブミン測定試薬の基本性能評価.  第44回日本臨床検査自動化学会,  横浜,  2012/10
16. ◎氏家真二, 大須賀裕至, 奥田優子, 盛田俊介: 改良ラテックス免疫比濁法MMP-3試薬の基本性能評価.  第44回日本臨床検査自動化学会,  横浜,  2012/10
17. ◎大須賀裕至, 奥田優子, 氏家真二, 難波俊二, 盛田俊介: ルミパルスG1200 を用いたBNP測定試薬の性能評価.  第44回日本臨床検査自動化学会,  横浜,  2012/10
18. ◎田中学, 安井優太郎, 青砥彩, 加藤多紀子, 佐野将也, 盛田俊介: 多項目自動血球分析装置XN2000の評価.  第44回日本臨床検査自動化学会,  横浜,  2012/10
19. ◎原英彦, 中山智孝, 吉川尚男, 原文彦, 鈴木真事, 原田昌彦, 我妻賢司, 並木温, 山崎純一, 松裏裕行, 佐治勉, 中村正人, 杉薫: 国内最大径38mmのAMPLATZER Septal Occluderを植え込んだ成人心房中隔欠損の2症例の検討.  第60回日本心臓病学会学術集会,  金沢,  2012/09
20. ◎盛田俊介: ウレミックトキシンは心腎症候群の危険因子か? インドキシル硫酸と冠動脈疾患 基礎・臨床からの最新知見.  第35回日本高血圧学会総会,  名古屋,  2012/09
21. ◎渡邉 一平, 建部 順子, 小泉 雅之, 山崎 純一, 盛田 俊介: インドキシル硫酸はAhRの活性化を介して血管老化を促進する。.  第35回日本高血圧学会総会,  名古屋,  2012/09
22. ◎岸 太一, 土井 範子, 坪井 康次, 並木 温, 佐藤 二美, 高松 研: 入学当初の学業への姿勢と学業成績.  第44回日本医学教育学会,  横浜、日本,  2012/07
23. ◎渡邉一平, 建部順子, 小泉雅之, 山﨑純一, 盛田俊介: Indoxyl sulfate up-upregulates MCP-1 expression in HUVEC through AhR activation.  第44回日本動脈硬化学会総会,  福岡,  2012/07
24. ◎久保田伊哉, 緒方秀昭, 齊藤芙美, 馬越俊輔, 金澤真作, 三塚幸夫, 金子弘真: 異時性両側性に発生した乳腺管状癌の1 例.  第20回日本乳癌学会学術総会,  熊本,  2012/06
25. ◎盛田俊介: ウレミックトキシンと血管内皮障害.  第11回生物試料分析科学会関東支部学術集会,  東京,  2012/06
26. ◎建部 順子, 渡邉 一平, 小泉 雅之, 盛田 俊介: 心腎連関におけるインドキシル硫酸とAryl hydrocarbon receptorの役割.  第12回日本抗加齢医学会総会,  横浜,  2012/06
27. ◎奥田優子, 大須賀裕至, 村上英一, 山下知千, 氏家真二, 盛田俊介: ファクターオートP-FDPおよびDダイマー測定試薬の性能評価.  第61回日本医学検査学会,  三重,  2012/05
28. ◎田中学, 加藤多紀子, 青砥彩, 稲田義信, 石井利明, 佐野将也, 盛田俊介: 多項目自動血球分析装置XN2000の評価 ~特に体腔モードを中心にした検証~.  第61回日本医学検査学会,  三重,  2012/05
29. ◎田中学, 加藤多紀子, 青砥彩, 稲田義信, 石井利明, 佐野将也, 盛田俊介: 多項目自動血球分析装置XN2000の評価 ~特にCBCモードを中心にした検証~.  第61回日本医学検査学会,  三重,  2012/05
30. ◎村松陽子、杉野圭史、鈴木亜衣香、佐藤敬太、坂本 晋、高井雄二郎、建部順子、盛田俊介、本間 栄: IPFにおけるNAC単独吸入療法の効果とレドックス制御.  第52回日本呼吸器学会学術講演会ミニシンポジウム,  神戸,  2012/04
31. ◎吉原彩, 志水陽介, 須江麻里子, 氏家真二, 久保木幸司, 廣井直樹, 盛田俊介, 芳野原: 抗インスリン抗体陽性糖尿病患者における抗体とインスリンとの結合能の評価.  第109回日本内科学会講演会,  京都,  2012/04
32. ◎Watanabe I, Tatebe J, Koizumi M, Ikeda T, Yamazaki J, Morita T: Activation of aryl hydrocarbon receptor mediates indoxyl sulfate-induced monocyte chemoat-tractant protein-1 expression in HUVEC.  第77回日本循環器学会,  横浜,  2013/03
33. ◎Watanabe I, Tatebe J, Koizumi M, Ikeda T, Yamazaki J, Morita T: Indoxyl sulfate accelerates vascular senescence through activation of aryl hydrocarbon receptor.  第77回日本循環器学会学術集会,  横浜,  2013/03
国際学会
1. ◎Morita T: Round table discussion in AHA.  American Heart Association 2012,  Los Angeles, USA,  2012/11
2. ◎Watanabe I, Namba S, Okuda Y, Tatebe J, Koizumi M, Morita T: Indoxyl Sulfate is an independent Risk Factor for Coronary Heart Disease in Patients with Chronic Kidney Disease.  The 12th International Congress of the Asian Society of Clinical Pathology and Laboratory Medicine,  Kyoto, Japan,  2012/11
3. ◎Watanabe I, Tatebe J, Koizumi M, Yamazaki J, Ikeda T, MoritaT: Indoxyl Sulfate Mediates Endothelial Inflammation Through Activation of Aryl Hydrocarbon Receptor.  The 8th Asian-Pacific Society of Atherosclerosis and Vascular Disease,  Phuket, Thailand,  2012/10
4. ◎Y. Muramatsu, K. Sugino, N. Kikuchi, S. Sakaguchi, K. Sato, G. Sano, K. Isobe, S.Sakamoto, Y.Takai, J. Tatebe, T. Morita, S. Homma: Efficacy Of Inhaled N-Acetylcysteine Monotherapy On Lung Function And Redox Balance In Idiopathic Pulmonary Fibrosis.  2012American Thoracic Society International Conference San Francisico,  USA,  2012/05
5. ◎Morita T, Tatebe J, Chen R, Watanabe I: Blockade of alpha-1 adrenergic receptor amerliorates indoxyl sulfate-induced endothelial injury by inhibiting ROS production as well as MAPK/NFkB pathway in HUVEC.  80th European Atherosclerosis Society,  Milan, Italy,  2012/05
その他
1. ◎迫屋舞, 難波俊二, 山下千知, 奥田優子, 佐野将也, 盛田俊介: 過酸化水素・ペルオキシダーゼ共役呈色反応に対する還元性物質の妨害回避法の考案.  第44回日本臨床検査自動化学会,  横浜,  2012/10
  :Corresponding Author
  :本学研究者