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 医学部 医学科 臨床検査医学研究室(大森)
 Department of Laboratory Medicine (Omori)
■ 概要
Ⅰ:基礎的研究
1.Heme oxygenase に関する研究
酵素heme oxygenase(HO)は生体内でヘムを代謝する過程で抗酸化作用を有するビリルビンと抗炎症作用を発揮する一酸化炭素を産生する酵素であり、種々の生体に対するストレスでその発現が誘導される。我々は、自ら樹立したHO-1過剰発現マウスを利用し、高血圧モデル、内皮傷害モデル、腎障害モデルを作成し、心血管系病変形成における活性酸素ならびに炎症性反応の病態生理学的意義を明らかにするとともに、HOによるこれら心血管病変進展抑制を図る。さらにHO-1過剰発現マウスでは老化に伴う内皮機能障害や血管での炎症性反応が緩和していることが見いだされ、老化とHOとの関連の研究に着手している。
2. 心腎連関に関する研究
慢性腎臓病(CKD)は心血管疾患(CVD)の独立した危険因子であるが、そのメカニズムには不明な点が多い。我々は、ウレミックトキシンとCVDに関する研究を行っている。これまでの研究により、ウレミックトキシンの一つであるインドキシル硫酸(IS)が、血管系細胞の酸化ストレスの増強を介する炎症を惹起させ、内皮細胞障害をもたらすことを報告した。
3. 飲用水素水に関する研究
水に溶存した水素分子は抗酸化作用等により動脈硬化の進展抑制作用が期待できることが動物実験で明らかにされているが、飲用水素水の効果の検証は必ずしも科学的ではない。そこで、「血管病変に与える飲用水素水の効用―そのメカニズムの解明―」をテーマに(株)TSSと共同研究中である。
4. 喫煙とメタボリック症候群に関する研究
喫煙は、糖尿病やインスリン抵抗性発症の独立した危険因子であることは周知であるが、そのメカニズムの詳細は不明である。我々は、培養脂肪細胞,骨格筋細胞を利用した研究により、喫煙がインスリン抵抗性発症に関わる細胞内メカニズムのひとつを解明し報告した。今後この経路を抑制する新たな治療ターゲットを探る。
5.SMP30/GNLKOマウスを利用した研究
SMP30/GNLはマウスにおけるビタミンC合成に必須な酵素である。この酵素のノックアウトマウスを樹立した東京都健康長寿医療センター研究所の石神昭人副部長と、加齢性病変におけるビタミンCの病態生理学的意義に関する共同研究策定中にある。
Ⅲ:最新検査による病態解析
1. ラクトフェリンと炎症性疾患
多機能蛋白であるラクトフェリン(LF)は感染や炎症の結果,好中球の二次顆粒から放出され,血中濃度が増加する。そこで,FITC 標識抗ヒトLF 抗体を作成し,フローサイトメトリーを用い好中球内のLF 含有量ならびに血中濃度を測定し,その病態生理学的意義を解析している。
Ⅳ:産学連携
産学連携センターを通じて大田区地元企業と産学連携契約を結び、新たな臨床的意義が付加された血圧計の開発に着手している。
Ⅱ:臨床的研究
1. 心腎連関に関する研究
我々のこれまでの基礎的研究の結果をふまえ、CKD患者における血中IS濃度とCVD発症リスクの関係を検討中である。
2.小児科との連携
炎症性疾患である川崎病患者の治療反応性におけるCRPと血中CO濃度との相関を検討中である。
3.呼吸器内科との連携
呼吸器内科による「特発性間質性肺炎に対するN-アセチルシステイン療法と酸化ストレスに関する研究」に関与し、GSH、8OHdG等の酸化ストレスマーカーの評価を行っている。
概要
メタボリック症候群の増加と急速な高齢化が進む現在、その合併症である心血管疾患の予防は健康な老後に重要である。この心血管疾患の基盤となる病変が血管の加齢性変化であるが、この発症と進展には酸化ストレスならびに慢性炎症性反応が中心的役割を演じている。当教室ではこれらを背景に、加齢、高血圧、糖尿病、心腎連関をテーマに研究を遂行している。
■ Keywords
加齢, メタボリックシンドローム, 心腎連関, Heme oxygenase, インドキシル硫酸, ビタミンC
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  盛田 俊介 :日本高血圧学会評議委員, 日本動脈硬化学会評議委員, 日本抗加齢学会評議委員, 日本自動化学会評議委員・編集幹事, 脳心血管抗加齢研究会評議委員, 日本臨床検査医学会全国幹事, 腎・泌尿器検査研究会評議委員
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















盛田 俊介   教授
医学博士
 1 8 1 4          
 19
(7)
 1
 1
(1)
 
 3
(2)
土井 範子   助教
医学博士
              
 
 
 
 
 
 1 1  0 0  0  0
(0)
 1
(0)
 0
(0)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














盛田 俊介   教授
医学博士
 1 1       
 1
 
土井 範子   助教
医学博士
         
 
 
 1 1  0 0  0  0
(0)
 1
(0)
 0
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. 青砥彩, 佐野将也, 小島鉄巳, 盛田俊介:  全自動血液凝固測定装置
COAGTRON-180によるP-FDPおよびDダイマー試薬の評価.  医学と薬学  64 (5) :733-738 , 2010
2. 佐藤信博, 石井利明, 森元明子, 盛田俊介:  全自動血球計数装置ADVIA2120の高濃度ビリルビン存在下におけるレーザ法(Celluler HGB)を用いた赤血球内ヘモグロビン濃度測定の有用性.  日本臨床検査自動化学会会誌  36 (1) :32-37 , 2010
3. 奥田優子, 難波修二, 盛田俊介, 藤澤宗弘, 神原敬一, 藤澤宗駿:  ラテックス凝集比濁法によるヒト心筋型脂肪算結合蛋白測定試薬の開発と性能評価.  日本臨床検査自動化学会会誌  36 (3) :283-289 , 2010
4. 難波俊二, 奥田優子, 森元明子, 小島鉄巳, 盛田俊介:  インドキシル硫酸血清濃度は慢性腎臓病の進行予知因子となり得る.  臨床病理  58 (5) :448-453 , 2011
5. Masai N, Tatebe J, Yoshino G, Morita T:  Indoxyl sulfate stimulates monocyte chemoattractant protein-1 expression in human umbilical vein endothelial cells by inducing oxidative stress through activation of the NADPH oxidase-nuclear factor-κB pathway.  Circulation Journal  74 (10) :2216-2224 , 2010
6. Tatebe J, Morita T:  Enhancement of TNF-α expression and inhibition of glucose uptake by nicotine in the presence of a free fatty acid in C2C12 skeletal myocytes.  Hormone and metabolic research. Hormon- und Stoffwechselforschung. Hormones et métabolisme  43 (1) :11-16 , 2011
7. Sano M, Ichihashi Y, Aoto A, Tanaka M, Kojima T, Morita T:  Platelet
aggregation measurement using MCFAN (hemorheology measurement equipment).  医学と生物学  151 (11) :538-545 , 2010
総説及び解説
1. 盛田俊介:  レニン阻害薬.  最新医学  65 (12) :115-120 , 2010
2. 建部順子, 盛田俊介:  NO,CO.  臨床化学  39 (4) :354-361 , 2010
3. Morita T:  Celastrol: a new therapeutic potential of traditional Chinese medicine.  American journal of hypertension : journal of the American Society of Hypertension  23 (8) :821 , 2010
その他
1. 菅原久美子, 佐藤信博, 西山裕伸, 桑村自奈子, 舛方栄ニ, 盛田俊介:  尿素窒素測定試薬における尿中アンモニア処理能の比較検討.  医学検査  60 (2) :63-68 , 2011
2. 村松陽子,杉野圭史,佐藤敬太,坂本 晋,高井雄二郎,建部順子,盛田俊介,本間 栄:  特発性肺線維症における長期NAC単独吸入療法の効果とレドックス制御の関連性.  厚生労働科学研究難治性疾患克服研究事業びまん性肺疾患に関する調査研究班平成22年度研究報告書  :219-226 , 2011
3. 磯部和順、村松陽子、杉野圭史、壽満ありさ、鈴木亜衣香、卜部尚久、市川敦央、和田知博、太田宏樹、後町杏子、岩田基秀、石田文昭、菊池 直、阪口真之、佐野 剛、佐藤敬太、坂本 晋、高井雄二郎、建部順子、盛田俊介、寺原敦朗、本間 栄:  放射線肺臓炎におけるN-アセチルシステイン吸入療法の有用性の検討.  厚生労働科学研究難治性疾患克服研究事業びまん性肺疾患に関する調査研究班平成22年度研究報告書  :227-232 , 2011
■ 学会発表
国内学会
1. ◎難波俊二, 奥田優子, 盛田俊介: 炎症性消化管疾患のスクリーニング検査を目的とした便中ラクトフェリン測定法の考案.  第21回生物試料分析科学会年次学術集会,  松山,  2010/12
2. ◎磯部和順、村松陽子、、阪口真之、岩田基秀、石田文昭,佐野 剛、杉野圭史,坂本 晋、高井雄二郎、建部順子、盛田俊介、本間 栄: 放射線肺臓炎におけるN-アセチルシステイン吸入療法の有用性の検討.  第51回日本肺癌学会総会,  広島,  2010/11
3. ◎建部順子, 陳睿, 盛田俊介: ドキサゾシンはインドキシル硫酸による酸化ストレスを介して亢進したMCP-1の発現を抑制する.  第33回日本高血圧学会総会,  福岡,  2010/10
4. ◎氏家真二, 大須賀裕至, 奥田優子, 盛田俊介: 汎用自動分析装置を用いた血中薬物濃度測定試薬ナノピアTDMの評価.  第42回日本臨床検査自動化学会大会,  神戸,  2010/10
5. ◎青砥彩, 佐野将也, 小島鉄巳, 盛田俊介: 全自動血液凝固測定装置COAGTRON-180によるFDP・Dダイマーの有用性.  第42回日本臨床検査自動化学会大会,  神戸,  2010/10
6. ◎大須賀裕至, 氏家真二, 奥田優子, 盛田俊介: 全自動エンザイムイムノアッセイ装置AIA-900の性能評価.  第42回日本臨床検査自動化学会大会,  神戸,  2010/10
7. ◎田中学, 佐野将也, 盛田俊介: 人工関節置換術のフォンダパリヌクス投与における可溶性フィブリンモノマー複合体の有用性.  第57回日本臨床検査医学会学術集会,  東京,  2010/09
8. ◎土井範子, 高松 研, 岸 太一, 大石道夫, 蓮沼克昌, 盛田俊介: 低学年からの検査医学教育への意識向上への試み ―採血自主トレ会―.  第57回日本臨床検査医学会学術集会,  東京,  2010/09
9. ◎難波俊二, 奥田優子, 盛田俊介: 炎症性消化管疾患のスクリーニング検査に適応した便中ラクトフェリン測定試薬の開発.  第57回日本臨床検査医学会学術集会,  東京,  2010/09
10. ◎藤代健太郎,佐藤二美,坪井康次,盛田俊介,杉 薫,本間 栄,並木 温,高松 研: 共用試験CBTとOSCEとPBLテュートリアルの評価との関係.  第42回日本医学教育学会,  東京,  2010/07
11. 土井範子, 盛田俊介, 岸 太一, 大石道夫, 蓮沼克昌, 高松 研: 学生を対象とした採血自主トレ会の試み.  第42回日本医学教育学会大会,  東京,  2010/07
12. ◎正井なつ実, 建部順子, 芳野源, 盛田俊介: Indoxyl Sulfate Stimulates MCP-1 Expression in HUVECs by Inducing Oxidative Stress through Activation of the NADPH Oxidase-NF-κB Pathway.  第42回日本動脈硬化学会総会,  岐阜,  2010/07
13. ◎難波俊二, 奥田優子, 盛田俊介: 腎機能検査と未病.  第9回未病臨床検査セミナー,  名古屋,  2010/07
14. ◎村松陽子、杉野圭史、佐藤敬太、坂本 晋、建部順子、盛田俊介、本間 栄: IPFにおけるNAC単独吸入療法の効果とレドックス制御.  第104回臨床呼吸生理研究会学術集会(奨励賞受賞),  東京,  2010/06
15. ◎建部順子, 山﨑純一, 盛田俊介: Olmesartanはラットにおける加齢に伴う心機能の低下を回避する.  第10回日本抗加齢学会総会,  京都,  2010/06
16. ◎伊賀涼, 宮城匡彦, 久保木幸司, 松本知子, 正井なつ実, 吉原彩, 礒薫, 廣井直樹, 上芝元, 村上英一, 芳野原: 糖尿病におけるエゼミチブのsmall, dense LDL-コレステロール(sLDL-C)に対する効果の検討.  第53回日本糖尿病学会年次学術集会,  岡山,  2010/05
17. ◎礒薫, 久保木幸司, 伊賀涼, 松本知子, 杉野郁美, 宮城匡彦, 正井なつ実, 重光理華, 廣井直樹, 上芝元, 芳野原, 村上英一: 2型糖尿病における酸化ストレスの頚動脈プラークに対する関与.  第53回日本糖尿病学会年次学術集会,  岡山,  2010/05
18. ◎中野元,盛田俊介,酒井謙,原田昌彦,藤代健太郎,山崎純一,正林浩高,北條稔: 城南地域の血圧管理状況(TOHO-JOINT研究).  第107回日本内科学会,  東京,  2010/04
国際学会
1. ◎Morita T, Tatebe J, Kiuchi S, Masai N, Yoshino G, Yamasaki J: Olmesartan ameliorates development of vascular senescence as well as left ventricular dysfunction of aged rat.  23rd Scientific Meeting of the International Society of Hypertension,  Vancouver, Canada,  2010/09
2. ◎F.Ishida, K.Sugino, Y. Muramatsu, D. Sato, S. Sakaguchi, G. Sano, K. Isobe, S.Sakamoto, Y.Takai, J. Tatebe, T. Morita, C. Nishimura , S. Homma: Efficacy of Inhaled N-acetylcysteine on Lung Function and Redox Balance in Idiopathic Pulmonary Fibrosis. (Am J Respir Crit Care Med 181; 2010: A6351).  2010 American Thoracic Society International Conference,  New Orleans USA,  2010/05
3. ◎Shinohara M, Ishii K, Kougame M, Shiratori M, Nagai H, Watanabe M, Iida K, Igarashi Y, Sano M, Morita T, SuminoY: Correlation Between Interferon Alpha Receptor 2 Expression By Peripheral Blood Monocytes, Serum 2’-5’ Oligoadenylate Synthtase, And Early Viral Response In Patients With A High Viral Load Of Hepatitis C Virus Genotype 1 Showing Substitution Of Amino Acid 70 In The Core Region.  Digestive DIsease Week(DDW),  New Orleans, USA,  2010/05
その他
1. ◎並木 温,山崎純一,盛田俊介,杉本元信: 大森病院循環器センター(循環器内科)ホットラインの運用開始半年間の状況.  第三回大田区医学会,  東京,  2011/03
2. ◎村松陽子,杉野圭史,佐藤敬太,坂本 晋,高井雄二郎,建部順子,盛田俊介,本間 栄: 早期IPFに対する長期NAC単独吸入療法の効果とレドックス制御の関連性.  厚生労働科学研究難治性疾患克服研究事業びまん性肺疾患に関する調査研究班平成22年度第2回班会議総会,  東京,  2010/12
3. ◎奥田優子, 氏家真二, 大須賀裕至, 盛田俊介: VIDASによるプロカルシトニン測定の性能評価 特にリウマトイド因子の影響について.  第42回日本臨床検査自動化学会大会,  神戸,  2010/10
  :Corresponding Author
  :本学研究者