<<< 前 2008年度 | 2009年度
 医学部 医学科 臨床検査医学研究室(大森)
 Department of Laboratory Medicine (Omori)
■ 概要
1.Heme oxygenase に関する研究
酵素heme oxygenase(HO)は生体内でへムを代謝する過程で抗酸化作用を有するビリルビンと抗炎症作用を発揮する一酸化炭素を産生する酵素であり,種々の生体に対するストレスでその発現が誘導される。
a.基礎的研究
 1)HO 過剰発現マウスを利用した研究
 高血圧モデル,内皮傷害モデル,腎障害モデルを作成し,心血管系病変形成における活性酸素ならびに炎症性反応の病態生理学的意義を明らかにするとともに,HOによるこれら心血管病変進展抑制を図る。さらにHO 過剰発現マウスでは老化に伴う内皮機能障害や血管での炎症性反応が緩和していることが見いだされ,老化とHO との関連の研究に着手している。
 2)培養脂肪細胞,筋肉細胞を利用した研究
 喫煙は、糖尿病やインスリン抵抗性発症の独立した危険因子であることは周知であるが、そのメカニズムの詳細は不明である。我々は、喫煙がインスリン抵抗性発症に関わる細胞内メカニズムを解明すると共に、この経路を制御する新たな治療ターゲットを探る。
 3)心腎連関のメカニズムを探る
 慢性腎臓病が心血管疾患の独立した危険因子であると認識されて久しい。しかしながら、これら病態を結びつける因子に関しては不明な点が多い。我々は、腎機能低下とともに血中に蓄積するインドキシル硫酸に着目し、血管系細胞ならびにマウスを利用した研究を行っている。これまでの研究により、インドキシル硫酸は血管系細胞の酸化ストレスの増強を介する炎症を惹起させ、内皮細胞障害をもたらす可能性が明らかとなり報告した。今後この結果をもとに、高血圧治療薬等によるCKDにおけるCVD発症予防の可能性を検討する。
b.臨床的研究
 1)急性冠症候群(ACS)患者における単球機能に関して
 これまでのわれわれの研究は,単球HO 発現と遊走能との関連を明らかにしている。そこで,ACS 患者単球を分離し,単球におけるHO 発現をRT-PCR,western 解析ならびにflow cytometry により解析し,ACS の病態との関連を検討している。
 2)川崎病患者における血中CO 濃度とCRP との関連
 炎症性疾患である川崎病患者の治療反応性におけるCRP と血中CO 濃度との相関を検討中である。
2. SMP30/GNLKOマウスを利用した研究
SMP30/GNLはマウスにおけるビタミンC合成に必須な酵素である。この酵素のノックアウトマウスを樹立した本薬学部生化学教室の石神昭人准教授と、加齢性病変におけるビタミンCの病態生理学的意義に関する共同研究を予定している。
3.最新検査による病態解析
1)ラクトフェリンと炎症性疾患
多機能蛋白であるラクトフェリン(LF)は感染や炎症の結果,好中球の二次顆粒から放出され,血中濃度が増加する。そこで,FITC 標識抗ヒトLF 抗体を作成し,フローサイトメトリーを用い好中球内のLF 含有量ならびに血中濃度を測定し,その病態生理学的意義を解析している。
2)シスタチンCならびにインドキシル硫酸と慢性腎臓病(CKD)
我々は、これまでに血中シスタチンC(Cys-C)は糸球体濾過機能ならびに尿細管障害のマーカ-として、また、インドキシル硫酸は、PSP試験に代わる尿細管排泄機能障害の新しいマーカーとして期待できることを報告している。そこで,糖尿病性腎症ならびにCKDステージ進行におけるCys-C インドキシル硫酸の測定意義に関して研究している。
3)微量元素と加齢ならびに生活習慣病
生体の恒常性維持には多くの微量元素が関与している。誘導結合プラズマ発光分析法ならびに誘導発光プラズマ質量分析法を利用して血中ならびに尿中微量元素測定を行うとともに,炎症性マーカー,酸化ストレスマーカーと血管機能との関連を研究中である。
4) 活性化血小板と心血管疾患
活性化血小板をフローサイトメトリーならびに血小板由来マイクロパーティクル(PDMP)により評価し,急性冠症候群ならびに心不全の発症と経過との関連解析を循環器内科との共同で実施している。
4.臨床研究
呼吸器内科による、「特発性間質性肺炎に対するN-アセチルシステイン療法と酸化ストレスに関する研究」に関与し、GSH、8OHdG等の酸化ストレスマーカーの評価を行っている。
概要
加齢とともに生ずる形体ならびに機能学的変化のみならずメタボリック症候群とその合併症の進展に酸化ストレスならびに慢性炎症性反応は中心的役割を演じている。当教室では,加齢,高血圧、糖尿病,心腎連関をテーマに研究を遂行している。
■ Keywords
加齢,ラクトフェリン,シスタチン,インドキシル硫酸、ビタミンC
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  盛田俊介 :日本高血圧学会評議員,日本動脈硬化学会評議員, 日本加齢医学会評議員, 日本自動化学会評議員
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















盛田 俊介   教授
医学博士
  2  1   2       
 23
(1)
 3
(2)
 3
 
 3
(2)
土井 範子   助教
医学博士
              
 
 
 
 
 
 0 0  0 0  0  0
(0)
 3
(2)
 0
(0)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














盛田 俊介   教授
医学博士
         
 3
(2)
 
土井 範子   助教
医学博士
         
 
 
 0 0  0 0  0  0
(0)
 3
(2)
 0
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. Yoshino G, Tanaka M, Nakano S, Matsumoto T, Kojima M, Murakami E, Morita T:  Effect of Rosuvastatin on Concentrations of Plasma Lipids, Urine and Plasma Oxidative Stress Markers, and Plasma High-Sensitivity C-Reactive Protein in Hypercholesterolemic Patients With and Without Type 2 Diabetes Mellitus.  Current Therapeutic Research, Clinical and Experimental  70 (6) :439-448 , 2009
総説及び解説
1. 土井 範子, 盛田 俊介:  臨床検査領域におけるシミュレーション教育.  東邦医学会雑誌  57 (2) :163-164 , 2010
その他
1. 山下千知, 氏家真二, 稲田義信, 村上英一, 加藤弘子, 奥田優子,難波俊二, 盛田俊介:  汎用亜鉛測定試薬「アキュラスオートZn」の基本性能評価と年齢階層別亜鉛濃度分布について.  医療と検査機器・試薬  32 (3) :431-438 , 2009
■ 著書
1. 佐地勉, 杉薫, 中村正人, 盛田俊介, 山崎純一, 小澤司.:  V.心血管系疾患..  ハリソン内科学準拠問題集(改定第3版)  213-285.  メジカルビュー社,  東京, 2009
2. 盛田俊介:  糖尿病患者の心疾患の特徴と降圧治療.  Diabetes Frontier  685-690.  メジカルビュー社,  東京, 2009
■ 学会発表
国内学会
1. ◎奥田優子, 難波俊二, 盛田俊介: ラテックス凝集比濁法による心臓型脂肪酸結合蛋白測定試薬の開発および性能評価.  第20回生物試料分析化学年次学術集会,  東京,  2010/03
2. ◎小島 彩, 佐野将也, 石井利明, 加藤多紀子, 盛田俊介: 食道癌原発で播種性骨髄癌症と考えられた1症例.  第7回東京都臨床検査技師会,  東京,  2010/03
3. ◎小島 彩, 佐野将也, 石井利明, 加藤多紀子, 盛田俊介: 当検査部が血液凝固測定装置を更新する上での重点と運用効果.  第7回東京都臨床検査技師会,  東京,  2010/03
4. ◎石井利明, 佐藤信博, 佐野将也, 盛田俊介: 高濃度ビリルビン存在下における血球ヘモグロビン濃度測定はレーザー法が有用である.  第7回東京都臨床検査技師会,  東京,  2010/03
5. 土井範子, 石川文雄, 片桐由起子, 竹下直樹,: 末梢血NK細胞の培養におけるcAMPの効果.  第84回生化学会,  神戸,  2009/10
6. ◎建部順子, 山﨑純一, 盛田俊介: Olmesartanはラットにおける血管老化の進行を遅延する.  第32回日本高血圧学会総会,  大津,  2009/10
7. ◎奥田優子, 難波俊二, 藤澤宗弘, 草柳竹義, 盛田俊介: ラテックス凝集比濁法による心臓型脂肪酸結合蛋白測定試薬の開発および性能評価.  日本臨床検査自動化学会 第41回大会,  横浜,  2009/10
8. ◎佐藤信博, 石井利明, 森元明子, 盛田俊介: 高濃度ビリルビン存在下におけるレーザー法を用いた血中ヘモグロビン濃度測定の有用性.  日本臨床検査自動化学会第41回大会,  横浜,  2009/10
9. ◎木内俊介,並木温,盛田俊介,原文彦,原田昌彦,藤本進一郎,佐藤秀之,中野元,山﨑純一: 初回心筋梗塞症例でがLDL/HDL比は上昇し、IMT肥厚度とは相関しない.  第57回日本心臓病学会学術集会,  札幌,  2009/09
10. ◎木内俊介,並木 温,盛田俊介,原 文彦,原田昌彦,藤本進一郎,佐藤秀之,中野 元,山崎純一: 初回心筋梗塞症例ではLDL/HDL比は上昇し、IMT肥厚度とは相関しない..  第57回日本心臓病学会学術集会,  札幌,  2009/09
11. ◎奥田優子, 難波俊二, 桑村自奈子, 小島鉄巳, 盛田俊介: 内因性のインドキシル硫酸をいた尿細管排泄機能検査の考案.  第56回 日本臨床検査医学会学術集会,  札幌,  2009/08
12. ◎鈴木徳二, 氏家真二, 小島鉄巳, 盛田俊介: 外来迅速検体加算推進の取り組み.  第56回 日本臨床検査医学会学術集会,  札幌,  2009/08
13. ◎小島 彩, 佐野将也, 市橋裕一, 盛田俊介: 血液レオロジー測定装置MCFANを用いた血小板凝集能測定の試み.  第56回日本臨床検査医学会,  札幌,  2009/08
14. ◎正井なつ実, 山岸泰道、建部順子, 山﨑純一, 盛田俊介: Olmesartan Inhibits Development of Vascular Senescence in Rats.  第41回日本動脈硬化学会総会,  下関,  2009/07
15. ◎並木 温, 山崎純一, 盛田俊介, 坪井康次, 高松 研: 大森病院循環器内科におけるシミュレーターを用いた聴診実習の現状と今後の方向性.  第134回東邦医学会例会,  東京,  2009/06
16. ◎西山裕伸,盛田俊介、酒井 謙、水入苑生: イコデキストリン腹膜透析患者の各種体腔液
における簡易血糖測定器の血糖値乖離状況..  第54回日本透析医学会総会,  横浜,  2009/06
17. ◎木下利雄, 並木 温, 木内俊介, 山岸泰道, 盛田俊介, 山﨑純一: Heart Failure Causes Platelet Activation, through Impaired Endothelial Function.  17th Asian Pacific Congress of Cardiology May 20-23 2009,  京都,  2009/05
18. ◎松本知子, 杉野郁美, 中野三郎, 礒薫, 久保木幸司, 上芝元, 田中学, 村上英一, 西村千秋, 盛田俊介, 芳野原: IMTの決定因子としてのアディポネクチン、テストステロン及びsmall,dence LDL-コレステロールとの関連.  第52回日本糖尿病学会年次学術集会,  大阪,  2009/05
19. ◎中野三郎, 小島正人, 田中学, 礒薫, 盛田俊介, 久保木幸司, 芳野原: ロスバスタチンは大型LDLを減らすが小型LDLを優先的に減らす.  第52回日本糖尿病学会年次学術集会,  大阪,  2009/05
20. ◎大須賀裕至, 氏家真二, 盛田俊介: 電気化学発光免疫測定法(ECLIA法)を原理とするTRAb測定試薬の評価.  第58回 日本医学検査学会,  横浜,  2009/05
21. ◎菅原久美子, 今井和花, 佐藤信博, 西山裕伸, 桑村自奈子, 清水涼子, 舛方栄二, 盛田俊介: 尿中尿素窒素測定試薬のアンモニア消去能の比較検討.  第58回日本医学検査学会,  横浜,  2009/05
22. ◎正井なつ実, 山岸泰道, 建部順子, 山﨑純一, 盛田俊介: オルメサルタンはラットにおける血管老化の進行を遅延する.  第9回日本抗加齢医学会総会,  東京,  2009/05
23. ◎盛田俊介, 建部順子: Indoxyl Sulfate Stimulates MCP-1 Expression by Inducing Oxidative Stress in HUVECs.  第74回日本循環器学会総会,  京都,  2010/03
24. 土井範子, 竹下直樹: LAK療法と分子標的薬剤の              併用効果.  東邦医学会,  東京,  2009/11
国際学会
1. ◎Morita T, Eri Terada, Tatebe J, Saji B, Yamasaki J: Induction of heme oxygenase-1 by curcumin prevents vascular senescence through mechanisms involving SIRT1/Akt pathway.  International Conference on Nutrition and physical activity in aging, obesity, and cancer,  Jeju Island, South Korea,  2009/12
2. ◎Morita T, Eri Terada, Tatebe J, Saji B, Yamasaki J: Heme oxygenase-1 prevents vascular senescence through mechanisms involving SIRT1/p53/ Akt pathway.  The 6th International congress on heme oxygenaes,  Florida, USA,  2009/09
3. ◎Morita T, Tatebe J, Yoshino G, Yamasaki J: Olmesartan ameliorates senescence-related changes in cardiovascular system through inhibition of oxidative stress.  19th European Meeting on Hypertension.,  Milan, Italy,  2009/06
4. ◎Matsumoto T, Nakano S, Iso K, Kuboki K, Ueshiba H, Tanaka M, Murakami E, Nishimura C, Morita T, Yoshino G: Relationship between carotid intima-media thickness (IMT) and adiponection, testosterone or small, dense LDL-cholesterol (SLCL-C).  Third International Congress on Prediabetes and the Metabolic Syndrome,  Nice, France,  2009/04
その他
1. ◎杉野圭史、石田文昭、村松陽子、佐藤大輔、佐野 剛、草野英美子、磯部和順、坂本 晋、高井雄二郎、建部順子、盛田俊介、西村千秋、本間 栄: 特発性肺線維症におけるNAC単独吸入療法の効果とレドックス制御.  第12回間質性肺炎細胞分子病態研究会,  東京,  2009/08
2. ◎西山裕伸, 酒井 謙, 水入苑生, 盛田俊介: イコデキストリン腹膜透析患者での簡易血糖測定器による測定値乖離の有用性。.  第56回日本臨床検査医学会学術集会,  札幌,  2009/08
3. ◎難波俊二, 奥田優子, 小島鉄巳, 盛田俊介: 血中インドキシル硫酸濃度は慢性腎臓病の進行予知因子として有用である.  第134回東邦医学会例会,  東京,  2009/06
  :Corresponding Author
  :本学研究者