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 医学部 医学科 解剖学講座/微細形態学
 Division of Histology and Cell Biology, Department of Anatomy

教授:
  黒田 優
講師:
  五十嵐 広明
  小田 哲子
  船戸 弘正
■ 概要
器官発生学的研究
心臓流出路中隔形成過程を走査電子顕微鏡を用いて研究している。従来より知られる心臓流出路の中隔形成過程は
鳥類をも含めた複数の動物種から得た種々の発生段階をつなぎ合わせたものである。ラット心臓流出路中隔形成過
程のすべての記載を目指している。
視床背外側核(LD 核)と膨大後野・視覚連合野間の神経回路の研究
視床連合核の1 つであるLD 核は大脳辺縁系に加えて視覚連合野と線維結合を有し,また視覚と関連した皮質下領域
とも線維結合を有している。そのためLD 核は視覚情報の中継に関わっていると考えられている。LD 核と大脳辺縁
系・視覚連合野間の神経回路の一端を明らかにするために,順行性および逆行性トレーサーを用いて皮質視床路の
神経終末の形態と起始細胞の皮質内分布を解析した。
前頭前皮質と視床背内側核(MD 核)間の神経回路・機構の研究
作業記憶などの高次脳機能に深く関わる前頭前皮質と視床背内側核(MD 核)間の神経回路・機構を研究している。
両者間における興奮性単シナプス性フィードバック・ループの証明は,この興奮性反響回路が作業(短期)記憶の
保持に貢献しているという仮説を大きく後押ししている。現在,この興奮性ループの制御系,特に皮質内抑制性イ
ンターニューロンおよび腹側被蓋野の関与について検索中である。
MD 核神経終末は前頭前皮質第I 層または第Ⅲ層のGABA 陽性細胞に終わり,GABA 陽性神経終末はMD 核に線維を送
る深層皮質視床細胞細胞体に対称性シナプスを形成して終わる電顕像を多く観察した。以上の結果は,前頭前皮質
とMD核間の興奮性反響回路によって保持される作業記憶を皮質内抑制性インターニューロンによるfeedforward お
よびfeedback inhibition が調整していることを示唆している。さらに,皮質外抑制系として腹側被蓋野からの皮
質入力が参画していることも証明した。この腹側被蓋野からの皮質入力の多くは、ドーパミン(DA)作動性であり
特異抗体を用いた免疫染色法によって前頭前皮質におけるDA 作動性システムを光顕および電顕的に検索中である。
前頭前皮質におけるドーパミン受容体分布の解析
ラットの前頭前皮質におけるドーパミン受容体D5の分布を共焦点顕微鏡レベルで詳細に解析した。その結果、興奮性の錐体細胞と抑制性のパルバルブミン含有細胞の両方の細胞グループにおいて、ほとんど全ての細胞がD5受容体を有するものの、その細胞内の局在パターンが両グループ間で大きく異なることを明らかにした。このD5受容体の細胞内分布の違いは、前頭前皮質におけるドーパミン作動性調節システムに深くかかわることが強く示唆される。
体重制御・睡眠・報酬行動に関わる神経回路の研究
体重制御、睡眠覚醒行動および報酬獲得行動は個体の生命維持に不可欠な行動である。いずれも一見単純な行動に見えるが、視床下部-脳幹を中心に大脳から脊髄、さらには末梢組織を含めた複雑な階層的ネットワークによって制御されていることがわかってきている。オレキシンなどの神経ペプチド遺伝子改変マウスやGABA作動性神経を可視化したマウスを用いて、体重、睡眠覚醒および報酬行動を制御する神経機構の研究を行っている。
■ Keywords
前頭前皮質, 視床, シナプス, 電子顕微鏡, 腹側被蓋野, 皮質視床路, 動脈幹隆起, 体重, 睡眠覚醒, オレキシン, 視床下部, 報酬系, 心球隆起, ドーパミン受容体
■ 当該年度の研究費受入状況
1.  平成21年度文科省科学研究費補助金 基盤研究(C)  (研究課題番号:19500300)
 研究課題:作業記憶神経回路におけるドーパミン作動性入力の分布とシナプス形態  (研究代表者:黒田 優)
 研究補助金:650000円  (代表)
2.  平成21年度文科省大学院教育研究高度化支援研究科特別経費
 研究課題:前頭前野皮質細胞におけるドーパミン受容体の局在に関する形態学的研究  (研究代表者:黒田 優)
 研究補助金:2515000円  (代表)
3.  平成21年度東邦大学医学部プロジェクト研究  (研究課題番号:21-3)
 研究課題:報酬獲得行動後の個体行動におけるオレキシンの役割  (研究代表者:船戸弘正)
 研究補助金:500000円  (代表)
その他
1.  平成21年度タニタ健康体重基金研究助成金
 研究課題:オレキシンによる肥満抵抗性の研究  (研究代表者:船戸弘正)
 研究補助金:500000円  (代表)
2.  平成21年度東邦大学医学部プロジェクト研究  (研究課題番号:21-29)
 研究課題:タンパク質複合体を介したリン脂質結合タンパク質PCTP-Lの生理機能の研究  (研究分担者:小田哲子)
 研究補助金:0円  (分担)
■ 教授・准教授・講師の公的役職
1.  黒田 優 :財団法人大学基準協会判定委員会・相互評価委員会分科会評価委員
■ 当該年度の主催学会・研究会
1.  第42回神経解剖懇話会  (世話人 : 黒田 優, 金子武嗣 )  ,盛岡  2010/03
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  黒田 優 :日本解剖学会評議員・神経解剖懇話会世話人
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















黒田 優   教授
医学博士
              
 2
 
 1
 
 
五十嵐 広明   講師
医学博士
              
 2
 
 
 1
 
小田 哲子   講師
博士(医学)
              1
 2
 
 
 
 
船戸 弘正   講師
博士(医学)
              3
(1)
 4
 1
 1
 
 
横藤田 純子   助教
博士(医学)
              1
 1
 
 
 
 
 0 0  0 0  0  5
(1)
 1
(0)
 1
(0)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














黒田 優   教授
医学博士
         
 
 
五十嵐 広明   講師
医学博士
         
 
 1
小田 哲子   講師
博士(医学)
         1
 
 
船戸 弘正   講師
博士(医学)
         3
(1)
 1
 
横藤田 純子   助教
博士(医学)
         1
 
 
 0 0  0 0  0  5
(1)
 1
(0)
 1
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
総説及び解説
1. 高瀬堅吉:  空間認知能力の性差は氏か育ちか?-性差形成要因をめぐるヒトとラットにおける研究の動向-.  行動科学  48 (1) :69-82 , 2009
■ 著書
1. 高瀬堅吉、近藤保彦:  神経・生理領域.  心理学検定 基本キーワード集  161-186.  実務教育出版,  東京、日本, 2009
2. 高瀬堅吉、近藤保彦:  神経・生理領域.  心理学検定 公式問題集  224-259.  実務教育出版,  東京、日本, 2009
■ 学会発表
国内学会
1. ◎小田哲子, 船戸弘正, 五十嵐広明, 横藤田純子, 黒田 優: ラットの内側前頭前野におけるドーパミンD5受容体の局在分布.  第115回日本解剖学会総会・全国学術集会,  盛岡,  2010/03
2. ◎守本慎一, 小田哲子, 黒田優, 伊藤雅方, 水流弘通, 赤羽悟美: マウス脊髄結紮モデルにおけるガバペンチンの鎮痛効果と脊髄内メカニズム.  第83回日本薬理学会年会,  大阪,  2010/03
3. ◎藤田恵、田路千明、澤田京子、山本泰弘、高瀬堅吉、矢上達郎、岡村昇: 腎臓がん細胞におけるトログリタゾンの抗腫瘍活性の検討.  第130回日本薬学会年会,  岡山、日本,  2010/03
4. ◎Yamamoto Y, Takase K, Matsumoto J, Yoshida T, Nakamura T, Okamura N, Sakaeda T, Okumura K, Yagami T: Hypoxia induced upregulation of VEGF in renal cell carcinoma via VHL-independent pathways.  日本薬理学会主催 第83回日本薬理学会年会,  大阪、日本,  2010/03
5. ◎伊藤雅方, 小田哲子: カルシウムシグナル伝達におけるリン脂質結合タンパク質PCTP-L複合体の研究.  第135回東邦医学会例会,  東京,  2010/02
6. ◎Miyazaki T, Takase K, Tada H, Mitsushima D, Takahashi T: Social isolation produces glucocorticoid-mediated disruption of cortical circuit formation.  日本神経科学学会主催 第32回日本神経科学大会,  名古屋、日本,  2009/09
7. ◎Takase K, Yamamoto Y, Yagami T: Early maternal deprivation enhances anxiety and stereotypy, but reduces sociality in adult male rats.  日本神経科学学会主催 第32回日本神経科学大会,  名古屋、日本,  2009/09
8. ◎Yagami T, Takase K, Yamamoto Y: Identification of protein targets for 15-deoxy-Δ12,14-prostaglandin J2 in neuronal plasma membranes.  日本神経科学学会主催 第32回日本神経科学大会,  名古屋、日本,  2009/09
9. ◎高瀬堅吉: 男のこころ、女のこころ-その生物学的基盤を探る(記憶の性差の生物学的基盤).  日本心理学会第73回大会,  京都、日本,  2009/08
その他
1. ◎五十嵐広明: E-PTA染色を施したシナプスの超高圧電子顕微鏡観察.  2009年度生理学研究所研究会 「医学生物学用超高圧電子顕微鏡(H-1250M)の30年」,  岡崎,  2010/03
  :Corresponding Author
  :本学研究者