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 医学部 医学科 解剖学講座/生体構造学
 Division of Neuroanatomy, Department of Anatomy
■ 概要
1. 神経系に関する研究
a.大脳基底核を中心とした運動系の神経回路網の研究
 大脳皮質—基底核—視床—大脳皮質のループにおいて,大脳基底核を構成するさまざまな核の相互間の連絡様式および視床を介するフィードバック経路について,光顕および電顕レベルで解析を行っており,大脳基底核が運動制御に果たす役割について形態学的な面からアプローチしている。
b.前脳基底部の神経回路網の研究
 前脳基底部(BF)コリン作動性皮質投射線維と帯状皮質細胞との直接的シナプス結合を電子顕微鏡的に証明した。
c.嗅覚系の研究
 嗅上皮の嗅い物質に対する反応機構の一部を量子化学的にコンピュータ演算を行って解析している。また嗅球におけるニューロンの種類と分布を系統発生的に解析するために,鳥類および哺乳類の嗅球を免疫組織化学的方法で検索している。さらに,嗅皮質の神経回路についても研究している。
d.聴覚系の研究
 聴覚伝導路における皮質視床間の神経線維連絡を解明するために,免疫組織化学的手法および軸索トレーサーによる標識法を用いて皮質視床投射神経の形態について研究している。
e.末梢神経系の研究
 ラット陰茎に分布する神経について,免疫組織化学的手法で研究している。
2. 局所解剖学的研究
a.心臓制御構造の形態学的研究
 心臓の内在性制御構造である刺激伝導系と外来性制御構造である自律神経系の形態に関して、局所解剖学的、比較解剖学的、ならびに画像解剖学的観点から解析を行っている。それらの立体配置やその解剖学的多様性を個体発生・系統発生学的な観点から理解を試みるとともに、心機能温存の観点から現在の様々な術式を臨床解剖学的に評価と提案を行うことを最終的な目標としている。
b.注射部位の局所解剖学
 静脈注射部位および筋肉注射部位において注射部位の周囲に存在する神経,深部動脈との関連に関し検索を行っている。
c.解剖学実習中にみられる変異
 人体構造には多くの変異がみられる。特に腹腔動脈系の変異は腹部外科において留意しなければならないし,また内科学においても超音波診断の際には留意しなければならない。解剖学実習中においてみられた腹腔動脈系の変異を中心に,人体構造の変異を検索している。
3. 解剖学教育に関する研究
a.看護学生の解剖学教育効果を高めるために,ブタ内臓の未固定標本を用いて解剖学実習を実施している。この学習効果等に関する質問紙調査を行っている。
b.実習ご遺体の防腐保存処置にはホルマリンを用いるため,解剖学実習時にはホルムアルデヒドに曝露されてしまう。実習時のホルムアルデヒド曝露濃度を低減するための研究を行っている。
■ Keywords
大脳基底核, 前脳基底部, 嗅覚, 聴覚, 神経回路, 局所解剖, 比較解剖, 画像解析, ニオイ分子, 解剖学教育
■ 当該年度の研究費受入状況
1.  平成23-26年度文部科学省科学研究費補助金 若手研究(B)  (研究課題番号:23791579)
 研究課題:弁膜症外科治療のための臨床解剖学的解析  (研究代表者:川島友和)
 研究補助金:4030000円  (代表)
2.  平成22-23年度日本学術振興会グローバルCOE若手科学研究費
 研究課題:心臓再生医療・従来型心臓外科治療のための心臓制御神経に関する臨床解剖学的研究  (研究代表者:川島友和)
 研究補助金:2200000円  (代表)
3.  化学物質リスク研究事業  (研究課題番号:H22-化学-若手-009)
 研究課題:中枢神経系の発達に及ぼす化学物質の影響に関する試験法に関する研究  (研究分担者:井上由理子)
 研究補助金:1000000円  (分担)
4.  平成21-23年度文部科学省科学研究費補助金 基盤研究(C)  (研究課題番号:21592705)
 研究課題:MRIを用いた肘窩の注射部位の安全領域に関する映像解剖学的研究  (研究代表者:五味敏昭)
 研究補助金:1300000円  (代表)
その他
1.  平成23年度東邦大学医学部プロジェクト研究  (研究課題番号:23-29)
 研究課題:大動脈弁置換術における機能温存のための臨床解剖学的解析  (研究代表者:川島友和)
 研究補助金:300000円  (代表)
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  佐藤二美 :篤志解剖全国連合会監事, 日本解剖学会評議員
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















佐藤 二美   教授
医学博士
    1          
 8
(1)
 
 
 
 1
(1)
井上 由理子   助教
博士(理学)
    2          
 2
 
 
 1
(1)
 1
(1)
高柳 雅朗   助教
博士(農学)
              3
 4
 
 
 
 1
(1)
村上 邦夫   助教
学士(理学)
    1          1
 2
 
 
 
 1
(1)
川島 友和
博士(医学)
   3           1
 1
 
 
 1
 1
(1)
 0 3  0 0  0  5
(0)
 0
(0)
 2
(1)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














佐藤 二美   教授
医学博士
         
 
 
井上 由理子   助教
博士(理学)
         
 
 1
(1)
高柳 雅朗   助教
博士(農学)
         3
 
 
村上 邦夫   助教
学士(理学)
         1
 
 
川島 友和
博士(医学)
  3       1
 
 1
 0 3  0 0  0  5
(0)
 0
(0)
 2
(1)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. Kawashima T, Thorington RW.:  Comparative morphological configuration of the cardiac nervous system in lorises and galagos (Lorisiformes, Strepsirrhini, Primate) with evolutionary perspective.  Anatomical Record  294 (3) :412-426 , 2011
2. Inaba N, Fujioka K, Saito H, Kimura M, Ikeda K, Inoue Y, Ishizawa Sho and Manome Yoshinobu:  Down-regulation of EGFR Prolonged Cell Growth of Glioma but Did Not Increase the Sensitivity to Temozolomide.  Anicancer Research  31 (10) :3253-3257 , 2011
3. Akiyoshi K, Fujioka K, Ikeda K, Inoue Y, Inaba N, Manome Y:  The Effect of PTEN on Proliferation and Drug-, and Radiosensitivity in Malignant Glioma Cells.  Anticancer Res.  31 (5) :1653-1658 , 2011
4. Sato H, Yajima T, Yamagishi A:  Molecular origin for helical winding of fibrils formed by perfluorinated gelators.  Chemical communications  47 :3736-3738 , 2011
5. Morimoto K, Tamura K, Umemura Y, Sato H, Yamagishi A:  Capture of radioactive nuclear wastes from sea water by use of clay minerals.  Chemistry Letters  40 (8) :867-869 , 2011
6. Sato H, Sakurai T, Yamagishi A:  Comparison of vibrational circular dichroism between the Langmuir-Blodgett films and gels of 12-hydroxyoctadecanoic acid.  Chemistry Letters  40 :25-27 , 2011
7. Sato H, Tamura K, Aoki R, Kato M, Yamagishi A:  Enantioselective sensing by luminescence from cyclometalated iridium (III) complexes adsorbed on a colloidal saponite.  Chemistry Letters  40 :65-67 , 2011
8. Sato H, Sato F, Taniguchi T, Yamagishi A:  Chirality effects on core-periphery connection in a star-burst type tetranuclear Ru(III) complex: Application of vibrational circular dichroism spectroscopy.  Dalton Transactions  41 :1709-1712 , 2012
9. Sato H, Takase R, Mori Y, Yamagishi A:  Can a meso-type dinuclear complex be chiral?: Dinuclear beta-diketonato Ru(III) complexes.  Dalton Transactions  41 :747-751 , 2012
10. Ojima H, Murakami K.:  Triadic synaptic interactions of large corticothalamic terminals in non-lemniscal thalamic nuclei of the cat auditory system.  Hearing Research  274 (1-2) :40-47 , 2011
11. Mori H, Yamagishi A, Sato H:  Theoretical study on vibrational circular dichroism spectra of Tris(acetylacetonato)metal(III) complexes: Anharmonic effects and low-lying excited states.  Journal of Chemical Physics  135 :084506 , 2011
12. Sato H, Nakao A, Yamagishi A:  Formation of chiral heterometallic oligomers by combination of inert Ru(III) tectons and labile Ni(II) connectors.  New Journal of Chemistry  35 (9) :1823-1828 , 2011
13. Sato H, Tamura K, Ohara K, Nagaoka S, Yamagishi A:  Hybridization of clay minerals with the floating film of a cationic Ir(III) complex at an air-water interface.  New Journal of Chemistry  35 :394-399 , 2011
総説及び解説
1. Kawashima T.:  Anatomy of the Cardiac Nervous System with Clinical and Comparative Morphological Implications.  Anatomical Science International  86 (1) :30-49 , 2011
2. Kawashima T, Sasaki H.:  Human gross anatomy of cardiac conduction system with comparative morphological and developmental implications for human application.  Annals of Anatomy  193 (1) :1-12 , 2011
その他
1. 五味敏昭, 佐野恵美香, 國澤尚子, 西原賢:  超音波エコー装置を用いた肘窩の注射部位近傍の立体構造の解析.  埼玉県立大学奨励研究報告書IIC平成23年度  :75-76 , 2012
■ 著書
1. 成瀬秀夫, 木村明彦, 杉崎哲郎, 石川陽一, 岡本順子, 林弘之, 森山英樹, 西原賢, 金村尚彦, 五味敏昭:    「柔道整復師」「はり師・きゅう師」「あん摩マッサージ指圧師」「看護師」「理学療法士・作業療法士」国家試験問題(解剖学・生理学)10年間、解説と解答、2012年版  1-329.  犀書房,  東京, 2011
2. 五味敏昭, 木村明彦, 坂井泰, 足立和隆, 今井常彦, 草地信也, 田淵健一, 小出清一, 田中康文, 下地秀和, 高根沢公一, 中澤正孝, 佐藤康宏, 櫻井敬晋, 山口竜彦, 小山浩司:    柔道整復師国家試験傾向と対策2012  1-706.  南江堂,  東京, 2011
■ 学会発表
国内学会
1. ◎五味敏昭, 木村明彦, 成瀬秀夫, 井所拓哉, 金村尚彦, 西原賢, 高柳雅朗, 佐藤二美, 林弘之, 伊藤展江: 肘窩の採血・静脈注射部位の映像解剖学的(MRI).  第117回日本解剖学会総会・全国学術集会,  甲府,  2012/03
2. ◎川島友和 村上邦夫 高柳雅朗 井上由理子 石川陽一 佐藤二美: 大型類人猿心臓の自律神経分布に関する比較形態とその生後変化について.  第117回日本解剖学会全国学術集会,  甲府,  2012/03
3. ◎高柳雅朗, 石川陽一, 椎野瑞穂, 井上由理子, 村上邦夫, 川島友和, 木村明彦, 五味敏昭, 佐藤二美: モルモット内側膝状体においてGABA免疫陽性細胞に近接するparvalbumin免疫陽性神経終末.  第117回日本解剖学会総会・全国学術集会,  甲府,  2012/03
4. ◎金村尚彦, 森山英樹, 高柳清美, 林弘之, 五味敏昭: 走行運動によるラット脊髄GDFN-受容体mRNAの発現に与える影響.  第117回日本解剖学会総会・全国学術集会,  甲府,  2012/03
5. ◎林弘之, 木村明彦, 成瀬秀夫, 柏谷江奈, 金村尚彦, 佐野恵美香, 五味敏昭: 肘窩部における痛点分布について.  第117回日本解剖学会総会・全国学術集会,  甲府,  2012/03
6. ◎高柳雅朗, 小川麻里子: 内側膝状体へのGABA性投射神経細胞の免疫組織化学的研究.  第139回東邦医学会例会,  東京,  2012/02
7. ◎村上邦夫, 五十嵐広明: Amyloid β1-42脳室内注入ラットにおける膨大部後皮質のインターニューロンとα7 ニコチン性アセチルコリンレセプターの影響.  第139回東邦医学会例会,  東京, 日本,  2012/02
8. ◎金村尚彦, 高柳清美, 国分貴徳, 西川裕一, 島村亮太, 西原賢, 五味敏昭: 廃用性萎縮に対する荷重運動の評価.  第30回関東甲信越ブロック理学療法士学会,  新潟,  2011/09
9. ◎五味敏昭, 佐野恵美香, 國澤尚子, 清水友歌, 木村明彦, 成瀬秀夫, 寺嶋美帆, 林弘之, 高柳雅朗, 佐藤二美: 肘窩皮静脈の映像解剖学的(MRI)研究.  日本看護学教育学会第21回学術集会,  さいたま,  2011/08
10. ◎高柳雅朗, 木村明彦, 成瀬秀夫, 五味敏昭, 佐藤二美: 人体解剖学実習を行えない看護学生向けに動物標本を用いた解剖学実習の試みー脳および眼球を用いてー.  日本看護学教育学会第21回学術集会,  さいたま,  2011/08
11. ◎佐野恵美香, 五味敏昭, 國澤尚子, 清水友歌, 木村明彦, 成瀬秀夫, 寺嶋美帆, 林弘之: アンケートからみた肘窩における採血および静脈注射の現状.  日本看護学教育学会第21回学術集会,  さいたま,  2011/08
12. ◎成瀬秀夫, 木村明彦, 町田保, 林弘之, 寺嶋美帆, 佐野恵美香, 高柳雅朗, 佐藤二美, 西原賢, 五味敏昭: 静脈可視化装置を用いた肘窩の皮静脈の映像解剖学的研究.  日本看護学教育学会第21回学術集会,  さいたま,  2011/08
13. ◎木村明彦, 成瀬秀夫, 林弘之, 寺嶋美帆, 高柳雅朗, 佐藤二美, 西原賢, 五味敏昭: 顕微解剖学(人体微細構造学・組織学)実習におけるバーチャルスライドの試み.  日本看護学教育学会第21回学術集会,  さいたま,  2011/08
14. ◎林弘之, 五味敏昭, 佐野恵美香, 寺嶋美帆, 西原賢, 木村明彦, 成瀬秀夫: 肘窩における痛点分布.  日本看護学教育学会第21回学術集会,  さいたま,  2011/08
15. ◎國澤尚子, 五味敏昭, 佐野恵美香, 清水友歌, 木村明彦, 成瀬秀夫, 寺嶋美帆, 林弘之: 三角筋への筋肉内注射の看護師の判断基準と安全性の検討.  日本看護学教育学会第21回学術集会,  さいたま,  2011/08
16. 並木 温,本間 栄,土井範子,岸 太一,藤代健太郎,佐藤二美,坪井康次,高松 研: 東邦大学におけるAdvanced OSCEの現状と問題点.  第43回日本医学教育学会,  広島,  2011/07
国際学会
1. ◎Isho T, Nishihara K, Gomi T: Inter-method measurement variability of muscle fiber conduction velocities during isometric fatigue contraction.  16th International World Confederation for Physical Therapy,  Amsterdam,  2011/06
2. ◎Muto T, Okuma K, Gomi T: Factors affecting postural sway in the early postoperative period of patients who underwent total knee arthroplasty due to knee osteoarthritis.  16th International World Confederation for Physical Therapy,  Amsterdam,  2011/06
その他
1. ◎川島友和: 心臓制御構造の臨床解剖学・比較解剖学的研究.  第17回グローバルCOE若手研究発表会,  東京,  2011/07
2. ◎Akiyoshi K, Fujioka K, Ikeda K, Inoue Y, Inaba N, Manome Y: Effects of moduration of intracellular on sensitivity to antineoplastic agent.  第10回 CBSM,  長野 日本,  2011/06
3. ◎Inoue Y, Aoyagi R, Kawashima T, Murakami K, Takayanagi M, Fujioka K, Manome Y, Sato F: Homer1a regulates the activity-induced remodeling of synaptic structures in cultured hippocampal neurons.  第10回 CBSM,  長野 日本,  2011/06
  :Corresponding Author
  :本学研究者