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 医学部 医学科 生化学講座/生化学分野
 Department of Biochemistry Division of Medical Biochemistry

教授:
  中野 裕康
講師:
三宅 早苗
土屋 勇一
■ 概要
1. 死細胞貪食とその後の炎症収束における組織常在マクロファージと骨髄由来細胞の役割の解明
アポトーシスや計画的ネクローシスに陥った細胞は速やかに貪食され排除されることが生体の恒常性の維持に必須である。死細胞の貪食には組織の常在マクロファージや骨髄から浸潤してくる単球由来のマクロファージが関与すると考えられるが、それらの役割については十分に解明されていない。我々はこれまでにcellular FLICE-inhibitory protein (cFLIP)と呼ばれる細胞死抑制に関与する遺伝子(遺伝子名はCflar)を肝細胞で欠損した(CflarHep-KO)、あるいは低下したマウスを樹立し(CflarHep-lowマウス)、cFLIPが肝臓で完全に消失したマウスは出生直後に致死となること、またcFLIP低下マウスは正常に発育するものの、TNFαなどのデスリガンドによる細胞死が亢進し、一過性に肝障害が誘導され、24時間後には肝死細胞はほぼ完全に消失することを報告した(Piao et al, Sci Signaling 2012)。
今回我々はCflarHep-lowマウスを用いて、肝死細胞の排除におけるkupffer 細胞(KCs)と骨髄から浸潤してくるミエオロイド細胞(単球や好中球)の役割を検討した。そのためにクロドロネートリポソームをCflarHep-lowマウスに投与することで、一過性に肝臓のKCsを除去したマウス、またジフテリアトキシン投与により骨髄由来細胞を除去できるマウス(Lysozyme M-diphteria toxin receptor (LysM-DTR)トランスジェニックマウス)の骨髄を移植したCflarHep-lowマウスを樹立した。予想外なことにクロドロネートリポソームによりKCsを除去しても、TNFα投与による肝障害の増悪は認められず、24時間後には肝死細胞はほぼ消失していた。一方で、LysM-DTRマウス骨髄移植後にジフテリアトキシンを投与し、骨髄由来の単球や好中球を除去したCflarHep-lowマウスでは、TNFαにより誘導される肝炎が劇症化し、多くのマウスが6時間以内に死亡することが明らかとなった。肝臓の組織学的な所見では著明なアポトーシスの亢進と出血が認められた。この肝炎の劇症化に肝死細胞から放出されたDanger-associated molecular pattern (DAMP)sに肝臓のKCが反応し、TNFαなどの炎症性サイトカインを放出した結果である可能性を検討するために、骨髄移植マウスにジフテリアトキシンと同時にクロドロネートリポソームを投与し、さらにその後にTNFαを投与した。予想外なことにクロドロネートリポソーム投与によりKCsを除去しても、肝炎は改善しないばかりか、むしろ増悪した。骨髄由来ミエロイド細胞除去による肝炎の劇症化が、CflarHep-lowマウスに特異的な現象なのか、あるいは野生型マウスでも見られる現象なのかを検討するために、野生型マウスにLysM-DTRマウス骨髄を移植し、ジフテリアトキシンにより骨髄由来ミエロイド細胞除去後に、抗Fas抗体を投与して、肝炎を誘導した。このマウスでも同様に肝炎の劇症化が認められた。さらにこのメカニズムを明らかにするために、血中に放出されると考えられる幾つかのDAMPsをWestern blot法で検討したところ、Histone H3が骨髄由来ミエロイド細胞除去マウスでは大量に存在していることが明らかとなった。Histone H3はこれまでの研究から血管内皮細胞障害を誘導することが知られている。そこでHistoneを野生型マウスに静脈内投与したところ、著明な肺出血が誘導され、免疫組織学的な解析から肺血管内皮細胞は活性化型カスパーゼ3染色は陰性であるものの、TUNEL染色陽性であり、アポトーシスではなくネクローシスに陥っていることが明らかとなった。以上より骨髄由来のミエオロイド細胞は肝死細胞からのヒストンH3の放出を抑制あるいは血清中での分解を促進することで、肝細胞死の増悪や出血を抑制していることが初めて明らかとなった(Piao et al, Hepatology, 2016 in press)。
2. 親電子分子によるインターロイキン11発現誘導における転写因子NRF2の役割
我々はこれまで酸化ストレス依存性に発現が誘導され、細胞増殖に関与する遺伝子としてIL-11を同定した。本研究では酸化ストレスと密接に関与する親電子分子がIL-11の発現を誘導するかについて検討した。1,2-naphthoquinone (1,2-NQ), 15d-prostaglandin (PG)J2, tert-buthyl hydroxyquinone (tBHQ)の3種類の親電子分子刺激で、IL-11の発現が誘導されるかを検討したところ1,2-NQのみがIL-11の発現をmRNAレベル及びタンパク質レベルで誘導していることが明らかとなった。そのメカニズムを解析したところERKの活性化及びFra-1の発現上昇が関与していることが判明した。親電子分子により活性化される転写因子としてNRF2経路が知られていることから、NRF2のIL-11発現誘導についての役割を検討したところ、予想外なことにNRF2をノックダウンすることで1,2-NQ誘導性のIL-11の発現誘導が消失することが明らかとなった。そのメカニズムを解析したところNRF2はFra-1のmRNAレベルの発現を制御するのではなく、Fra-1 mRNAの翻訳を促進することで、Fra-1の発現を上昇させる働きのあることが初めて明らかとなった。さらに1,2-NQにより誘導されるIL-11の生体における役割を検討したところ1,2-NQ投与により腸管でIL-11の産生が誘導されること、さらにIL-11受容体欠損マウスではI1,2-NQによるマウスの体重減少が野生型に比較して増悪することが判明した。以上より、IL-11は1,2-NQの消化管毒性を軽減することで、腸管の恒常性維持に関与していることが初めて明らかとなった(Nishina et al, J Biol Chem 2016, in press)
■ Keywords
cFLIP, アポトーシス, 劇症肝炎, TNFα, ジフテリアトキシン, ヒストンH3, クッパー細胞, インターロイキン11, 親電子分子, NRF2, Fra-1
■ 当該年度の研究費受入状況
1.  平成28年文部科学省科学研究費 新学術領域研究  (研究課題番号:26110003)
 研究課題:計画的ネクローシスが担う生体応答機構の解明  (研究代表者:中野裕康)
 研究補助金:19700000円  (代表)
2.  平成28年文部科学省科学研究費 新学術領域研究 (国際共同研究加速基金「国際活動支援班」)  (研究課題番号:15K21753)
 研究課題:日豪細胞死研究協議会を核とした細胞死研究国際コミュニテイの形成  (研究分担者:中野 裕康)
 研究補助金:4500000円  (分担)
3.  平成28年日本学術振興会 ひらめきときめきサイエンス〜ようこそ大学の研究室へ〜KAKENHI  (研究課題番号:H28117)
 研究課題:細胞の「死」が生命(いのち)を支えていることを学ぼう  (研究代表者:中野 裕康)
 研究補助金:309000円  (代表)
4.  平成28年文部科学省科学研究費 基盤研究(C)  (研究課題番号:16K01378)
 研究課題:計画的ネクローシスのライブセルイメージング  (研究代表者:村井晋)
 研究補助金:1500000円  (代表)
5.  平成28年文部科学省科学研究費 挑戦的萌芽研究  (研究課題番号:16K15681)
 研究課題:敗血症におけるヒストン誘導性細胞死の機構解明  (研究代表者:中林修)
 研究補助金:1300000円  (代表)
6.  平成28年文部科学省科学研究費 奨励研究  (研究課題番号:16H00591)
 研究課題:Reg3ファミリー分子による腸管の恒常性維持機構の解明  (研究代表者:駒澤幸子)
 研究補助金:570000円  (代表)
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















中野 裕康   教授
    5   1       1
(1)
 6
 
 4
 
 3
三宅 早苗   講師
理学博士
    1          1
 2
 
 
 
 1
土屋 勇一   講師
              1
 
 
 
 
 
出口 裕   助教
薬学博士
    1  1        
 1
 
 1
 
 
村井 晋   助教
理学博士
    1          1
 
 
 
 
 
中林 修   助教
    1          
 2
 
 
 
 
 0 0  1 0  0  4
(1)
 0
(0)
 0
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. Shindo R, Yamazaki S, Ohmuraya M, Araki K, Nakano H.:  Short form FLICE-inhibitory protein promotes TNFalpha-induced necroptosis in fibroblasts derived from CFLARs transgenic mice.  Biochem Biophys Res Commun  480 (1) :23 -28 , 2016
2. Piao X, Yamazaki S, Komazawa-Sakon S, Miyake S, Nakabayashi O, Kurosawa T, Mikami T, Tanaka M, Van Rooijen N, Ohmuraya M, Oikawa A, Kojima Y, Kakuta S, Uchiyama Y, Tanaka M, Nakano H.:  Depletion of myeloid cells exacerbates hepatitis and induces an aberrant increase in histone H3 in mouse serum.  Hepatology  65 :237 -252 , 2017
3. Nishina, T. Deguchi, Y. Miura, R. Yamazaki, S. Shinkai, Y. Kojima, Y. Okumura, K. Kumagai, Y. Nakano, H.:  Critical contribution of NRF2 to an electrophile-induced interleukin-11 production.  J Biol Chem  292 :205 -216 , 2017
4. Shibata Y, Tokunaga F, Goto E, Komatsu G, Gohda J, Saeki Y, Tanaka K, Takahashi H, Sawasaki T, Inoue S, Oshiumi H, Seya T, Nakano H, Tanaka Y, Iwai K, Inoue J.:  HTLV-1 Tax Induces Formation of the Active Macromolecular IKK Complex by Generating Lys63- and Met1-Linked Hybrid Polyubiquitin Chains.  PLoS Pathog  13 :e1006162 , 2017
5. Sakata K, Araki K, Nakano H, Nishina T, Komazawa-Sakon S, Murai S, Lee GE, Hashimoto D, Suzuki C, Uchiyama Y, Notohara K, Gukovskaya AS, Gukovsky I, Yamamura KI, Baba H, Ohmuraya M.:  Novel method to rescue a lethal phenotype through integration of target gene onto the X-chromosome.  Sci Rep  6 :37200 , 2016
■ 学会発表
国内学会
1. ◎三宅早苗, 角田宗一郎, 小池正人, 内山安男, 中野裕康: 電子顕微鏡を用いたネクロプトーシスの微細構造の解析.  第39回日本分子生物学会年会,  横浜,  2016/12
2. ◎進藤綾大、大村谷昌樹、駒澤幸子、三宅早苗、山崎創、仁科隆史、小西博之、木山博資、三上哲夫、荒木喜美、中野裕康: アポトーシス細胞は腸内細菌非依存的にReg3βを産生し腸管の恒常性を維持する.  第89回日本生化学会大会,  宮城県仙台市,  2016/09
3. ◎土屋勇一, 田中稔, 鶴崎慎也, 及川彰, 駒澤幸子, 三上哲夫, 中野裕康: 肝細胞死亢進マウスを用いた肝幹細胞増殖因子同定の試み.  第89回日本生化学会大会,  仙台,  2016/09
4. 朴 雪花, ◎山﨑 創, 駒澤-左近 幸子, 三宅 早苗, 中林 修, 田中 稔, 大村谷 昌樹, 及川 彰, 角田 宗一郎, 内山 安男, 田中 正人, 中野 裕康: 細胞死制御因子cFLIPの肝細胞特異的欠損マウスを用いた肝障害モデルにおけるクッパー細胞および骨髄由来細胞の役割.  第89回日本生化学会大会,  仙台国際センター/東北大学川内北キャンパス,  2016/09
5. ◎中野裕康: 肝細胞死亢進マウスモデルを用いた肝再生や炎症制御のメカニズムの解明.  第89回日本生化学会大会,  宮城県仙台市,  2016/09
6. ◎仁科 隆史、出口 裕、三浦 亮介、新開 泰弘、小島 裕子、熊谷 嘉人、中野 裕康: 親電子リガンドによるIL-11産生機構とその生体における役割の解明.  第89回日本生化学大会,  仙台,  2016/09
7. ◎村井 晋, 山口 良文, 中林 修, 冨田 太一郎, 赤羽 悟美, 三浦 正幸, 中野 裕康: ネクロプトーシスをモニターするFRETプローブの開発.  第25回 日本Cell Death学会学術集会,  東京,  2016/09
国際学会
1. ◎Ryodai Shindoa, Soh Yamazakia, Masaki Ohmuraya, Kimi Araki, Hiroyasu Nakano.: Short form FLICE-inhibitory protein promotes TNFα-induced necroptosis in fibroblasts derived from CFLARs transgenic mice.  Keystone Symposia on Molecular and Cellular Biology,  Keystone, Colorado, USA,  2017/02
2. ◎Hiroyuki Nagashima, Yuko Okuyama, Takaya Hayashi, Atsuko Asao, Takeshi Kawabe, Satoshi Yamaki, Hiroyasu Nakano, Michael Croft, Naoto Ishii, Takanori So.: CD4+ T cell-intrinsic TRAF5 negatively regulates Th17 cell-dependent experimental autoimmune encephalomyelitis.  第16回国際免疫学会議,  メルボルン、オーストラリア,  2016/08
3. ◎Takanori So, Hiroyuki Nagashima, Yuko Okuyama, Takaya Hayahi, Atsuko Asao, Takeshi Kawabe, Satoshi Yamaki, Hiroyasu Nakano, Michael Croft, Naoto Ishii.: TRAF adaptors limit the IL-6 receptor signaling through an unexpected binding to the signaling transducer receptor gp130.  第16回国際免疫学会議,  メルボルン、オーストラリア,  2016/08
その他
1. ◎三浦亮介、朴雪花、三宅早苗、駒沢幸子、小池正人、内山安男、中野裕康: Deletion of Cflar in the epidermis results in TNFR1-dependent and -independent lethal dermatitis.  細胞競合・ダイイングコード合同若手ワークショップ,  大阪府大阪市ホテルコスモスクエア国際交流センター,  2017/01
2. ◎進藤綾大、山崎創、大村谷昌樹、荒木喜美、中野裕康: Short form FLICE-inhibitory protein promotes TNFα-induced necroptosis in fibroblasts derived from CFLARs transgenic mice.  細胞競合・ダイイングコード合同若手ワークショップ,  大阪府大阪市ホテルコスモスクエア国際交流センター,  2017/01
3. ◎片桐翔治、朴雪花、中野 裕康: Intestinal epithelial cell (IEC)-specific Cflar-deficient mice spontaneously develop TNFR1-independent ileitis.  細胞競合・ダイイングコード合同若手ワークショップ,  大阪府大阪市ホテルコスモスクエア国際交流センター,  2017/01
  :Corresponding Author
  :本学研究者