2008年度
 理学部 生物分子科学科 分子医学部門
 Division of Molecular Medicine

教授:
  小林 芳郎
准教授:
  永田 喜三郎
  柳内 和幸
■ 概要
アポトーシス細胞の取り込みに伴う生体の応答とその調節(小林)
(1)骨髄細胞からIL-12p40を産生するM1とIL-10を産生するM2をそれぞれ誘導するか、肺胞マクロファージと腹腔マクロファージを得るかして、後期アポトーシス細胞の取り込みとその後のMIP-2産生を比較したところ、肺胞マクロファージがあまり取り込めないことを除き、違いはなかった。(2)後期アポトーシス細胞を腹腔に投与すると、単球と好中球がおもに取り込んで、傍胸腺リンパ節、末梢血、脾臓の順に抗原を運ぶとともに、それらの細胞は共刺激分子を発現した。(3)IL-10 KOマウスと野生型マウスで放射線全身照射に伴う胸腺アポトーシスと好中球浸潤を比較したところ、野生型マウスではIL-10が産生されたにもかかわらず、両者に違いはなかった。
ネクローシス細胞に対する生体の応答(永田)
ネクローシスさせた P388細胞、および TG 誘導好中球を腹腔内へ投与すると、多量の好中球浸潤が認められ 、MIP-2および KC 産生は好中球浸潤ピーク前に多量に認められた。このとき MIP-2 よりも KC が多量に産生された。一方、ネクローシス胸腺細胞を投与すると好中球浸潤はほとんど認められず、また MIP-2およびKC 産生も認められなかった。このように、投与するネクローシス細胞の違いにより応答が異なることが分かった。投与するネクローシス細胞により生体の応答が異なるのは、ネクローシスを起こした際に放出される内容物、およびそれが好中球浸潤を伴う炎症応答を引き起こす機構に違いがあるためだと考えられた。しかし、まだ詳細は不明である。
個人の体質を左右する遺伝子多型情報の解析(柳内)
我々は、酵母を使った改良型Y1H法を開発に成功しており、抵コストで効率的なヒトゲノムの機能解析を進めている。特に、転写因子が結合する部位の遺伝的個人差に着目し、遺伝子診断の実用化に貢献できるような転写因子結合部位の解析を進めている。
■ Keywords
小林、永田:アポトーシス細胞, マクロファージ, 好中球, ケモカイン, マウス , 柳内:エストロゲン, SNP, 遺伝子多型, 遺伝子診断, テーラーメイド医療
■ 当該年度の研究費受入状況
1.  平成20年度文部科学省科学研究費 基盤研究(C)  (研究課題番号:19590083)
 研究課題:好中球による自然免疫応答活性化の仕組みの解明とその応用  (研究代表者:永田喜三郎)
 研究補助金:1300000円  (代表)
2.  科学研究費補助金・若手研究A
 研究課題:発生・分化・癌化に関わるゲノムネットワークの解析  (研究代表者:柳内和幸)
 研究補助金:5900000円  (代表)
その他
1.  日本化学工業協会第9期長期自主研究
 研究課題:接触過敏症における浸潤好中球の役割  (研究代表者:小林芳郎)
 研究補助金:3500000円  (代表)
2.  東邦大学理学部・奨励研究費
 研究課題:Hepatocyte Nuclear Factor 4の標的遺伝子の系統的同定  (研究代表者:柳内和幸)
 研究補助金:1000000円  (代表)
3.  双葉電子財団・自然科学研究助成
 研究課題:プロゲステロン受容体ゲノムネットワークの解析  (研究代表者:柳内和幸)
 研究補助金:1500000円  (代表)
4.  平成20年度東邦大学理学部促進研究
 研究課題:ネクローシス細胞による炎症応答の発症機構の解明  (研究代表者:永田喜三郎)
 研究補助金:1000000円  (代表)
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  小林芳郎 :日本マクロファージ分子細胞生物学研究会(幹事), 日本アポトーシス研究会(評議員)
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















小林 芳郎   教授
薬学博士
    5          
 7
 
 
 
 
永田 喜三郎   准教授
薬学博士
    3          1
 6
 
 
 
 
柳内 和幸   准教授
農学博士
    3          
 3
 
 
 
 1
(1)
 0 0  0 0  0  1
(0)
 0
(0)
 0
(0)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














小林 芳郎   教授
薬学博士
         
 
 
永田 喜三郎   准教授
薬学博士
         1
 
 
柳内 和幸   准教授
農学博士
         
 
 
 0 0  0 0  0  1
(0)
 0
(0)
 0
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. Umemoto, T., Yamato, M., Shiratsuchi, Y., Terasawa, M., Yang, J., Nishida, K., Kobayashi, Y., and Okano, T.:  CD61 enriches long-term repopulating hematopoietic stem cells.  Biochemical and biophysical research communications  365 :176-182 , 2008
2. Fujiwara, H., Yamazaki, T., Uzawa, A., Nagata, K., and Kobayashi, Y.:  Transient infiltration of neutrophils into the thymus following whole-body X-ray irradiation in IL-10 knockout mice.  Biochemical and biophysical research communications  369 :432-436 , 2008
3. Terasawa, M., Nagata, K., and Kobayashi, Y.:  Neutrophils and monocytes transport tumor cell antigens from the peritoneal cavity to secondary lymphoid tissues.  Biochemical and biophysical research communications  377 :589-594 , 2008
4. Yamazaki, T., Nagata, K., and Kobayashi, Y.:  Cytokine production by M-CSF- and GM-CSF-induced mouse bone marrow-derived macrophages upon coculturing with late apoptotic cells.  Cellular immunology  251 :124-130 , 2008
5. Hatano, M., Sasaki, S., Ohata, S., Shiratsuchi, Y., Yamazaki, T., Nagata, K., and Kobayashi, Y.:  Effects of Kupffer cell-depletion on Concanavalin A-induced hepatitis.  Cellular immunology  251 :25-30 , 2008
6. Kato N, Miyata T, Tabara Y, Katsuya T, Yanai K, Hanada H, Kamide K, Nakura J, Kohara K, Takeuchi F, Mano H, Yasunami M, Kimura A, Kita Y, Ueshima H, Nakayama T, Soma M, Hata A, Fujioka A, Kawano Y, Nakao K, Sekine A, Yoshida T, Nakamura Y, Saruta T, Ogihara T, Sugano S, Miki T, Tomoike H.:  High-density association study and nomination of susceptibility genes for hypertension in the Japanese National Project.  Hum Mol Genet.  17 (4) :617-27 , 2008
7. Shang, Yi., Kakinuma, S., Amasaki, Y., Nishimura, M., Kobayashi, Y., and Shimada, Y.:  Aberrant activation of Interleukin-9 receptor and downstream Stat3/5 in primary T-cell lymphomas in vivo in susceptible B6 and resistant C3H mice.  In vivo (Athens, Greece)  22 :713-720 , 2008
8. Tanimoto K, Sugiura A, Kanafusa S, Saito T, Masui N, Yanai K, Fukamizu A.:  A single nucleotide mutation in the mouse renin promoter disrupts blood pressure regulation.  J Clin Invest.  118 (3) :1006-16 , 2008
9. Takeuchi F, Ochiai Y, Serizawa M, Yanai K, Kuzuya N, Kajio H, Honjo S, Takeda N, Kaburagi Y, Yasuda K, Shirasawa S, Sasazuki T, Kato N.:  Search for type 2 diabetes susceptibility genes on chromosomes 1q, 3q and 12q.  J Hum Genet.  53 (4) :314-24 , 2008
■ 学会発表
国内学会
1. ◎豊島拓也, 青木淳一, 平本隆祐, 谷口圭子・柳内和幸, 渡邊総一郎: DNA-タンパク相互作用検出のための新しいクロスリンカーの合成.  日本化学会第89春季年会,  船橋,  2009/03
2. ◎柳内圭子, 高橋磨理子, 古田裕一, 長谷川貴志, 大島範子, 柳内和幸: ヒトゲノムからのエストロゲン受容体結合配列の系統的な同定と結合配列上のSNPsの解析.  第31回日本分子生物学会年会,  神戸,  2008/12
3. ◎金野なつみ、永田喜三郎、小林芳郎: 未熟樹状細胞のアポトーシス細胞貪食時における好中球の役割.  日本免疫学会,  京都,  2008/12
4. ◎佐々木宗一郎、永田喜三郎、小林芳郎: 好中球によるオピオイドペプチド産生を介した性周期の維持.  日本免疫学会,  京都,  2008/12
5. ◎山崎貴裕、永田喜三郎、小林芳郎: 接触過敏症における浸潤好中球の役割.  日本免疫学会,  京都,  2008/12
6. ◎柴田岳彦、永田喜三郎、小林芳郎: 好中球のアポトーシスを伴う炎症の終息における一酸化窒素の役割.  日本免疫学会,  京都,  2008/12
7. ◎中村美保、永田喜三郎、小林芳郎: ネクローシス細胞に対する生体の応答.  日本免疫学会,  京都,  2008/12
8. ◎坪井久美子、永田喜三郎、小林芳郎: マクロファージによるアポトーシス細胞の貪食における消化の意義.  日本免疫学会,  京都,  2008/12
9. ◎柳内圭子, 高橋磨理子, 古田裕一, 長谷川貴志, 大島範子, 柳内和幸: 改良型Yeast One-Hybrid法を用いたヒトゲノムからのエストロゲン受容体結合配列の系統的な同定と解析.  日本人類遺伝学会第53回大会,  横浜,  2008/09
10. ◎永田喜三郎、中村美保、小林芳郎: 死細胞に対する生体の応答〜アポトーシスからネクローシスまで〜.  日本アポトーシス研究会,  京都,  2008/08
その他
1. 小林芳郎: 好中球による生体応答の調節:新たな性周期の調節を中心に.  第133回東邦医学会例会特別講演,  東京,  2009/02
2. ◎ 豊島拓也,谷口圭子,柳内和幸,渡邊総一郎: DNA-タンパク相互作用検出のための新しいクロスリンカーの合成.  複合物性研究センターシンポジウム,  船橋,  2008/10
  :Corresponding Author
  :本学研究者