<<< 前 2010年度 | 2011年度 | 2012年度
 理学部 物理学科 原子過程科学教室
 Atomic Process Science Laboratory
■ 概要
1.原子・分子の励起,電離,解離過程に関する研究
電子衝撃による水素,メタン,アンモニア,さらには水など簡単な分子の解離性イオン化の実験を行っている。これらの研究には、最近完成させた散乱電子‒生成イオンの同時測定実験装置を用い、散乱電子のエネルギー分析により励起状態を選択し、その状態からイオン化解離するフラグメントイオンの種類や並進運動エネルギー、そして解離断面積を測定することで,解離過程についての知見を得ている。また、電気通信大学のレーザー新世代研究センター,及び中国合肥の中国科学技術大学,上智大学との共同研究としても行われていて、これまでに,一酸化窒素(NO)の励起微分断面積と一般化振動子強度の測定を行うとともに,希ガスの副殻励起領域,He の2 電子励起領域におけるFano効果に注目した散乱実験を行っている。
2.イオン付着飛行時間法による呼気分析の研究
一般の質量分析では試料をイオン化する必要があるため,その際に親分子を壊してしまうフラグメンテーション(イオン化解離)がおきることがある。本研究では試料のイオン化にイオン付着法を用い,飛行時間型質量分析器を利用したフラグメントフリー(標的親分子を壊さない)分析装置の開発を行っている。これまでの研究で,質量分解能等には不満が残るもの,フラグメントフリー計測に成功し,気相を対象としたフラグメントフリー計測法としての可能性を示すことができた。その結果を踏まえて、我々は本装置を呼気分析のための装置として本格的な開発に着手し、プロトタイプといえる装置の開発に成功した。
3.多価イオン‒レーザー励起原子衝突における電荷交換反応の研究
半導体レーザーを利用して標的原子を励起させての多価イオン衝突実験である。核融合プラズマ中では,多価イオンと励起原子の関わる衝突過程はプラズマの冷却機構として重要であり,またプラズマ診断のひとつとしても使われていることから,本研究は核融合科学研究所との共同研究として行われている。我々は,励起原子の生成のパートを受け持ち,励起原子生成部を半導体レーザーと共に核融合研究所の多価イオンビームラインへ接続し,励起原子を対象とした多価イオン衝突実験を行っている。励起したルビジウム(Rb)を標的としたヨウ素の30 価以上の多価イオンとの衝突実験では,励起原子からの電荷交換信号が基底状態のそれよりも増加することを定性的に示す結果を得た。
概要
原子過程は,宇宙空間における分子の生成から,身近にある燃焼や化学反応など,そして核融合プラズマ中の反応においても重要な過程の1 つであり,それらを取り巻く物理学のキーを司っている。それらのうち本研究室では,主に電子衝撃による原子や分子の励起や電離,そして解離の過程を中心に研究を行っている。これらは電気通信大学レーザー新世代研究センターや東北大学多元物質研究所,そして中華人民共和国の中国科学技術大学(合肥)とも共同研究を行うなど積極的な外部協力体制を敷いている。また,その実験技術を活かし,新しい先端的な化学計測装置の開発にも取り組んでおり,これまでにもいくつかの助成金を受けてフラグメントフリー質量分析装置を開発し,これを呼気分析装置として完成させるべく研究を行っている。この研究については,本学医学部および薬学部との共同研究を模索中である。さらに,核融合科学研究所,原子分子データセンターとの共同研究により多価イオン衝突、イオン-表面衝突の実験的研究も行っていて,核融合研究の基礎研究として位置づけられる電荷移行の断面積の絶対測定、スパッタリング粒子の運動量測定に挑戦している。
4.イオン衝撃による固体表面からの発光分光の研究
本研究は核融合科学研究所との共同研究である。同研究所の大強度イオン源ビームラインで実験を行っている。イオンビームを固体表面に入射させ、スパッタリングあるいは後方散乱された粒子からの発光を観測する実験で、表面からの距離を変えた実験を行っている。固体表面としてはタングステンを選んでいるが、これはタングステンが核融合炉の炉壁材料として期待されているからである。我々は、発光強度の距離依存性とスペクトルのドップラー形状から粒子の速度を求め、スパッタリングの基本的なメカニズムについての情報を得た。
■ Keywords
電子衝突,イオン化解離,解離過程,同時計測,質量分析,フラグメントフリー,呼気分析,多価イオン衝突, スパッタリング
■ 当該年度の研究費受入状況
1.  平成24年度科学研究費補助金 基盤研究1(A)  (研究課題番号:23246165)
 研究課題:プラズマ中のタングステンイオン不純物挙動研究への原子過程からのアプローチ  (連携研究者:酒井康弘)
 研究補助金:0円  (連携)
2.  平成24年度核融合科学研究所共同研究  (研究課題番号:NIFS12KBAF008)
 研究課題:イオン衝撃により金属表面からスパッタされた励起原子の発光分光でさぐるプラズマ原子過程  (研究代表者:酒井康弘)
 研究補助金:300000円  (代表)
■ 教授・准教授・講師の公的役職
1.  酒井康弘 :核融合科学研究所共同研究員, 電気通信大学レーザー新世代研究センター共同研究員
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  酒井康弘 :日本物理学会物理教育委員会委員・JABEE委員会委員, JABEE物理・応用物理学関係分野審査委員会委員, TMS研究会運営委員
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















酒井 康弘   教授
理学博士
 2  1 3          1
(1)
 7
(1)
 1
(1)
 1
(1)
 
 
 2 1  0 0  0  1
(1)
 1
(1)
 0
(0)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














酒井 康弘   教授
理学博士
 2 1       1
(1)
 1
(1)
 
 2 1  0 0  0  1
(1)
 1
(1)
 0
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. Motohashi K, Nogami K, Sakai Y, Sakaue H. A, Kato D, Kenmotsu T:  Mean velocity of 5d56p excited tungsten atoms sputtered by Kr+ ion bombardment.  Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B  283 :59 -62 , 2012
2. Sakai Y, Kato D, Kenmotsu T, Sakaue H. A, Nogami K, Furuya K, Motohashi K:  Light emission from sputtered or backscattered atoms on tungsten surfaces under ion irradiation.  Research Report NIFS-PROC  91 :1 -6 , 2013
3. Takahashi K, Sakata Y, Hino Y, Sakai Y:  Doubly Excited States and their Dissociation Processes of Simple molecules.  Research Report NIFS-PROC  91 :42 -49 , 2013
総説及び解説
1. 酒井康弘:  (原子衝突のキーワード)振動子強度.  原子衝突学会誌 しょうとつ  9 (3) :12 -12 , 2012
2. 酒井康弘:  (原子衝突のキーワード)一般化振動子強度.  原子衝突学会誌 しょうとつ  9 (4) :33 -33 , 2012
その他
1. Motohashi K, Furuya K, Kato D, Kenmotsu T, Nogami K, Sakai Y, Sakaue H.A:  Kinetic and Potential Energy of Excited Atoms and Molecules on Wall Surfaces Bombarded with Light Ions.  Annual Report of National Institute for Fusion Science April 2011–March 2012  :446 -446 , 2012
■ 学会発表
国内学会
1. ◎日野雄太 , 高橋果林(立教大理), 青池祐馬, 酒井康弘: 散乱電子-イオン同時計測による窒素分子のイオン化解離過程の研究.  日本物理学会第68回年次大会,  東広島市, 日本,  2013/03
2. ◎野上慶祐, 加藤太治, 剣持貴弘, 酒井康弘, 坂上裕之, 古屋謙治, 本橋健次: イオンビーム照射によりタングステン表面からスパッタリングあるいは後方散乱される励起原子の発光分光.  日本物理学会第68回年次大会,  東広島市, 日本,  2013/03
3. ◎吉井裕, 今関等, 濱野毅, 鈴木敏和, 田嶋克史, 杉浦紳之, 柳原孝太 , 山西弘城, 稲垣昌代, 酒井康弘: 蛍光 X 線分析による創傷部鉛体表面汚染評価;蛍光 X 線分析による創傷部アクチニド汚染評価法の確立.  日本原子力学会2013年春の年会,  東大阪市, 日本,  2013/03
4. ◎酒井康弘: 可視光計測によるタングステンスパッタリング過程の研究.  原子分子データ応用フォーラムセミナー,  土岐市, 日本,  2012/12
5. ◎坂上裕之、加藤太治、村上泉、森田繁、本橋健次、酒井康弘、山本則正、中村信行: 多価イオン分光計測による対向壁からのタングステン不純物の放出および電離過程の分析.  第29回プラズマ・核融合学会 年会,  春日市,日本,  2012/11
6. ◎高谷一成, 出口裕理, 鈴木雅之, 平野明日香,酒井康弘: RFカーペットを用いたイオン付着飛行時間質量分析計による呼気分析.  原子衝突学会第37回年会,  調布市, 日本,  2012/07
7. ◎柳原孝太, 吉井裕, 今関等, 濱野毅, 鈴木敏和, 田嶋克史, 杉浦紳之, 酒井康弘: 鉛体表面汚染の蛍光X線分析.  原子衝突学会第37回年会,  調布市, 日本,  2012/07
8. ◎野上慶祐, 加藤太治, 剣持貴弘, 酒井康弘, 坂上裕之, 古屋謙治, 本橋健次: アルゴンイオンビーム照射タングステン表面上におけるスパッタリング粒子の発光分光.  原子衝突学会第37回年会,  調布市, 日本,  2012/07
国際学会
1. ◎Sakai Y, Kato D, Kenmotsu T, Sakaue H. A, Nogami K, Furuya K, Motohash K: Light emission from sputtered or backscattered atoms on tungsten surfaces under ion irradiation.  The 4th China-Japan Symposium on Atomic and Molecular Processes in Plasma (AMPP2012),  Lanzhou, China,  2012/07
2. ◎Takahashi K, Sakata Y, Hino Y, Sakai Y: Doubly Excited States and their Dissociation Processes of Simple molecules.  The 4th China-Japan Symposium on Atomic and Molecular Processes in Plasma (AMPP2012),  Lanzhou, China,  2012/07
  :Corresponding Author
  :本学研究者