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 薬学部 微生物学教室
 Department of Microbiology

教授:
  安齊 洋次郎
講師:
  飯坂 洋平
  福本 敦
■ 概要
Micromonospora属放線菌によるマクロライド系抗生物質の生合成機構の解明とその応用
Micromonospora属が生産する16員環マクロライド系抗生物質mycinamicnとrosamicinの生合成に関与するチトクロームP450酵素MycG, RosCは単一酵素でありながら、多段階の酸化反応を行うユニークな特徴を有する。我々はこれらの酵素のアミノ酸残基を改変することで多段階酸化反応が制御可能であることを明らかにした。これらの変異体を生産菌で再構成することで希少な生合成中間体を効率的に生産させることができる。現在はMycG、RosCが多様な酸化修飾を可能とするメカニズムを明らかにすべく、結晶構造解析を含めた詳細な機能解析を進めている。
また、異種生合成遺伝子の導入によるハイブリッド型マクロライド系抗生物質の生産系の確立を検討している。

放線菌のセシウム蓄積及び耐性に関する研究
チェルノブイリ原子力発電所や福島第一原子力発電所の事故で放出された放射性Csは土壌に蓄積し、深刻な環境汚染を引き起こしている。放射性Csの農作物等への蓄積は、特に野生キノコにおいて周辺植物と比べて高いことが明らかとなっている。我々は細胞内にCsを蓄積する放線菌Streptomyces sp. K202をキノコ生育土壌から分離した。この放線菌はK輸送系を介してCsを取り込み、細胞内のポリリン酸に局在させることが示唆されている。そこで、放線菌におけるCsの蓄積機構を解明するために、放線菌のモデル菌株の1つであるStreptomyces lividans TK24とStreptomyces sp. K202を用いてKチャネル、K移送系、ポリリン酸のCs蓄積への影響を検討している。また、これらの放線菌は突然変異の誘発により、野生株と比較して10倍以上のCs耐性を示した。取得した変異株のゲノム解析により、Cs耐性に関与する遺伝子を同定し、Cs耐性機構を解明することに着手している。

放線菌を探索源とした生物活性物質のスクリーニング
放線菌は、抗菌作用、免疫抑制作用、抗腫瘍作用をはじめとする種々の生物活性を示す多様な二次代謝産物を生産するため、医薬品シード化合物の探索源として重要な菌群である。しかしながら、近年、既存の細菌感染症治療薬に対する耐性菌が蔓延する一方で、放線菌由来の新規抗生物質の報告が極度に減っている。そこで我々は、細菌の病原性遺伝子の発現に関与する細菌細胞間の情報伝達機構quorum sensingに着目し、その阻害作用を有する化合物の生産菌を探索している。これらの化合物は抗菌活性を有さないため、細菌の薬剤耐性化を防ぎつつ、病原性の発現を抑制することが期待される。
スクリーニングに供試する放線菌の採集は国内土壌だけでなく、モンゴル国立大学との共同研究のもと、未開の地であるゴビ砂漠等も含めて取り組んでいる。
■ 当該年度の研究費受入状況
その他
1.  令和5年度 TUGRIP 東邦大学重点領域研究補助金
 研究課題:新規創薬プラットフォーム構築 −成人型組織細胞の代替細胞の開発−  (研究分担者:安齊洋次郎、飯坂洋平)
 研究補助金:750000円  (分担)
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  安齊 洋次郎 :日本放線菌学会 学術企画委員会 アドバイザー
2.  飯坂 洋平 :日本放線菌学会 学術企画委員
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















安齊 洋次郎   教授
    1  1        1
(1)
 9
 
 
 
 
飯坂 洋平   講師
   1    1       1
 7
 
 
 
 
福本 敦   講師
    1   1       
 4
 
 
 
 
 0 1  1 0  0  2
(1)
 0
(0)
 0
(0)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














安齊 洋次郎   教授
    1     1
(1)
 
 
飯坂 洋平   講師
  1       1
 
 
福本 敦   講師
         
 
 
 0 1  1 0  0  2
(1)
 0
(0)
 0
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. Tanaka Y, Nagano H, Okano M, Kishimoto T, Tatsukawa A, Kunitake H, Fukumoto A, Anzai Y, Arakawa K.:  Isolation of Hydrazide-alkenes with Different Amino Acid Origins from an Azoxy-alkene-Producing Mutant of Streptomyces rochei 7434AN4.  Journal of natural products  86 (9) :2185 -2192 , 2023
その他
1. Yohei Iizaka:  Study on multistep and multifunctional cytochrome P450 enzymes from actinomycetes.  ACTINOMYCETOLOGICA  37 (1) :32 -42 , 2023
■ 著書
1. 安齊洋次郎, 福本敦, 飯坂洋平:    バイオフィルム革新的制御技術  276-283.  株式会社エヌ・ティー・エス,  東京, 2023
■ 学会発表
国内学会
1. ◎清水彩名, 井能碧, 石田小奈, 福本敦. 飯坂洋平, 安齊洋次郎: 放線菌Streptomyces lividans TK24のCs耐性関連遺伝子の解析.  日本薬学会 第144年会,  横浜,  2024/03
2. ◎曾嘉昊, 大内保博, 飯坂洋平, 安齊洋次郎: 放線菌が生産する緑膿菌Las系クオラムセンシング阻害物質の探索.  日本薬学会 第144年会,  横浜,  2024/03
3. ◎白沢桃香, 岩崎遼, Ayushjav Nomin-Erdene, Chimeddeleg Sod-Erdene, Bech-Ochir Davaapurev, 飯坂洋平, Javzan batkhuu, 安齊 洋次郎: モンゴルから分離した放線菌の分類学的解析とその代謝産物の生物活性評価.  日本薬学会 第144年会,  横浜,  2024/03
4. ◎末永修一, 實川智貴, 田熊ゆい, 大村梨沙子, 宮奈々恵, 飯坂洋平, 安齊洋次郎, 藤崎真吾: 大腸菌におけるウンデカプレニルリン酸生成への大腸菌及び黄色ブドウ球菌のリピドホスファターゼ遺伝子の寄与の解析.  第46回日本分子生物学会年会,  神戸,  2023/12
5. ◎安齊洋次郎: 多機能型シトクロムP450酵素MycGの機能解析と反応制御による抗生物質生産.  日本生薬学会 第69回年会,  仙台,  2023/09
6. ◎曾嘉昊, 笠原安純, 竹内陸, 飯坂洋平, 福本敦, 安齊洋次郎: 放線菌が産生するα-ピリドン環構造を有するクオラムセンシング阻害物質について.  第37回 日本放線菌学会,  広島,  2023/09
7. ◎長野遥, 田中悠, 岡野芽衣, 岸本拓也, 岸本拓也, 達川綾香, 國武博文, 福森海人, 福本敦, 安齊洋次郎, 荒川賢治: Streptomyces rochei遺伝子変異株 KA57 が生産する新規ヒドラジド化合物の構造・生合成解析.  第37回 日本放線菌学会,  広島,  2023/09
8. ◎飯坂洋平, 鈴木浩典, 川崎陽生, 藤本果のん, 福本敦, 野口修治, 安齊洋次郎: 基質同⼀部位多段階酸化型シトクロムP450酵素RosCの結晶構造解析.  第37回 日本放線菌学会,  広島,  2023/09
9. ◎田熊ゆい, 末永修一, 實川智貴, 大村梨沙子, 宮奈々恵, 飯坂洋平, 安齊洋次郎, 藤崎真吾: 黄色ブドウ球菌リピドホスファターゼ遺伝子発現の大腸菌のキャリアリピド含量および薬剤感受性への影響の解析.  日本生物高分子学会2023年度大会,  京都,  2023/09
10. 木下雅子, 山岸莉奈, 田中博之, 瀧川正紀, 飯坂洋平, 安齊洋次郎, 浦野敦, 増田雅行, 石井敏浩: 異なる方法で調製したブロー氏液の評価.  日本病院薬剤師会関東ブロック第53回学術大会,  新潟県,  2023/08
  :Corresponding Author
  :本学研究者