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 薬学部 医療薬学教育センター/薬物治療学研究室
 Department of Pharmacology and Therapeutics

教授:
  高原 章
講師:
  永澤 悦伸
助教:
  相本 恵美
■ 概要
1.心房細動の発生メカニズム
心房への伸展刺激は心房組織に様々な変化を生じさせ、心房細動の発生や維持に関与すると考えられている。当研究室では心房に対して慢性的な容量負荷を与えるモデル動物を作製し、心臓の形態的変化、電気生理学的変化および心房細動の持続性について検討している。容量負荷に加えてアルドステロンを投与すると心房細動持続時間が延長することを見出したので、そのメカニズムを解析している。
2.薬物によるQT間隔延長リスクの評価
抗ヒスタミン薬、消化管機能改善薬、統合失調症治療薬などの非循環器官用薬に、副作用として心筋のカリウムチャネルに対する抑制作用が報告され、心電図のQT間隔延長および致死性不整脈発生の危険性が指摘されている。ところがこの副作用は発生頻度が低いため、従来の安全性薬理試験の手法ではその危険性を検出できなかった。私達は薬物性QT延長症候群の患者の特徴に関する情報を基にしてモルモットやウサギを用いた評価モデルを考案し、QT延長症候群が症例報告されている薬物による催不整脈作用を検出することに成功している。小動物の生体位心臓から単相性活動電位(MAP)を記録できる電極カテーテルの開発や完全房室ブロックウサギの作成などの技術開発を通じ、薬物が生体心臓に及ぼす作用を高精度で検出することが可能となっている。
3.動物を用いたCAVI計測システムの構築
動脈硬化の発生メカニズム解明や合併症の発生予測には、動脈硬化の程度を経時的に繰り返し計測することは極めて重要であり、非侵襲的で簡便な手法であるCAVI(cardio-ankle vascular index)が注目されている。私たちは実験動物を用いたCAVI計測システムを開発し、CAVIが弾性動脈から筋性動脈にかけての血管緊張性を反映する指標として利用可能であることを明らかにした。動脈血管の構造と血管の生理機能や薬理作用との関係性が明確にされたことで、臨床生理検査で得られるCAVI値の変化と病態生理学との関係性を議論することが可能になった。CAVIが動脈硬化に関連した疾患のリスク指標として期待できる知見が蓄積されている。
■ Keywords
心房細動, QT延長症候群, 心筋イオンチャネル, 心不全, 心肥大, 高血圧, 動脈硬化, CAVI
■ 教授・准教授・講師の公的役職
1.  高原 章 :東邦大学医療センター佐倉病院 安全管理委員会委員・薬事審議会委員
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  高原 章 :日本薬理学会 学術評議員, 第93回日本薬理学会年会 プログラム委員,薬理学エデュケーター
2.  永澤 悦伸 :日本薬理学会 学術評議員,薬理学エデュケーター
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















高原 章   教授
    3  1 1       
 14
 
 3
 1
(1)
 1
永澤 悦伸   講師
   2 3  1        
 10
 1
 1
 
 2
(1)
相本 恵美   助教
    3          
 10
 
 2
 
 2
(1)
 0 2  2 0  0  0
(0)
 1
(0)
 1
(1)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














高原 章   教授
    1     
 
 1
(1)
永澤 悦伸   講師
  2  1     
 1
 
相本 恵美   助教
         
 
 
 0 2  2 0  0  0
(0)
 1
(0)
 1
(1)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. Kurakami K, Norota I, Nasu F, Ohshima S, Nagasawa Y, Konno Y, Obara Y, Ishii K.:  KCNQ1 is internalized by activation of α1 adrenergic receptors.  Biochemical Pharmacology  169 :10.1016/j.bcp.2019.113628 , 2019
2. Sakuma K, Shimoda A, Shiratori H, Komatsu T, Watanabe K, Chiba T, Aimoto M, Nagasawa Y, Hori Y, Shirai K, Takahara A:  Angiotensin II acutely increases arterial stiffness as monitored by cardio-ankle vascular index (CAVI) in anesthetized rabbits.  Journal of Pharmacological Sciences  140 (2) :205 -209 , 2019
3. Cao X, Nagasawa Y, Zhang C, Zhang H, Aimoto M, Takahara A:  Electropharmacological profile of an atrial-selective sodium channel blocker acehytisine assessed in the isoflurane-anesthetized guinea-pig model.  Journal of Pharmacological Sciences  141 (4) :153 -159 , 2019
4. Cao X, Nagasawa Y, Zhang C, Zhang H, Aimoto M, Takahara A:  Acehytisine suppresses atrial fibrillation in rats with dilated atria caused by chronic volume overload.  Journal of Pharmacological Sciences  142 (1) :34 -40 , 2020
5. Okamoto Y, Nagasawa Y, Obara Y, Ishii K, Takagi D, Ono K:  Molecular identification of HSPA8 as an accessory protein of a hyperpolarization-activated chloride channel from rat pulmonary vein cardiomyocytes.  The Journal of Biological Chemistry  :10.1074/jbc.RA119.007416 , 2019
■ 著書
1. 高原 章:  概説:CAVI計測で判明した血管弾性能の役割.  CAVIから眺める血管機能学  162-164.  株式会社コンパス,  東京, 日本, 2019
2. 永澤 悦伸:  動脈弾性能の血圧調節機構への関与.  CAVIから眺める血管機能学  165-168.  株式会社コンパス,  東京, 日本, 2019
3. 清水一寛, 山本智幸, 高原章:  CAVIの持つ器質的弾性と機能的弾性.  CAVIから眺める血管機能学  54-58.  株式会社コンパス,  東京, 日本, 2019
■ 学会発表
国内学会
1. ◎川上 聡士, 永澤 悦伸, 相本 恵美, 高原 章: 麻酔下ウサギにおける特異的Ifチャネル遮断薬ivabradineの心臓作用:心房および心室自動能の同時評価.  第93回日本薬理学会年会,  横浜,  2020/03
2. ◎草間 尚人, 永澤 悦伸, 川上 聡士, 相本 恵美, 高原 章: 陽性変時作用を有する薬物のQT延長評価に対するイソフルラン麻酔モルモットの有用性.  第93回日本薬理学会年会,  横浜,  2020/03
3. ◎光井英晃, 長澤(萩原)美帆子, 神林隆一, 布井啓雄, 千葉浩輝, 後藤愛, 中瀬古(泉)寛子, 坂本憲吾, 高原章, 松本明郎, 杉山篤: 完全房室ブロックカニクイザルにおける薬物性TdP発生の形態学的・機能的・電気生理学的必要条件.  第141回日本薬理学会関東部会,  東京,  2019/10
4. ◎佐久間 清, 永澤 悦伸, 佐藤 修司, 高橋 真生, 小松 哲也, 渡辺 研人, 白取 広芸, 霜田 晃, 千葉 達夫, 相本 恵美, 高原 章: 血管作動薬が動脈血管の硬さに与える影響は大動脈領域と大腿動脈領域で異なる:麻酔ウサギを用いた検討.  第141回日本薬理学会関東部会,  東京,  2019/10
5. ◎市川 智彬, 神林 隆一, 長澤(萩原)美帆子, 高原 章, 杉山 篤: 慢性房室ブロック犬は発作性心房細動に対する有効な薬物を検出可能なモデルとして有用である.  第141回日本薬理学会関東部会,  東京,  2019/10
6. ◎小松 哲也, 柴 友明, 佐久間 清, 永澤 悦伸, 相本 恵美, 千葉 達夫, 松本 直, 堀 裕一, 高原 章: 白色家兎の網膜血管および脈絡膜のアドレナリン受容体刺激薬に対する応答性の差異:レーザースペックルフローグラフィーによる分析.  第141回日本薬理学会関東部会,  東京,  2019/10
7. ◎川上 聡士, 永澤 悦伸, 長澤(萩原) 美帆子, 大村 賢介, 小林 加寿子, 相本 恵美, 高原 章: 古典的抗ヒスタミン薬クレマスチンの催不整脈作用 −ウサギ催不整脈モデルを用いた致死性不整脈の発生およびその前兆現象の分析−.  第141回日本薬理学会関東部会,  東京,  2019/10
8. ◎光井英晃, 長澤(萩原)美帆子, 神林隆一, 布井啓雄, 千葉浩輝, 後藤愛, 中瀬古(泉)寛子, 坂本憲吾, 高原章, 松本明郎, 杉山篤: 完全房室ブロックサルにおける薬物性TdP発生の必要条件.  第21回応用薬理シンポジウム,  静岡,  2019/09
9. ◎種市 佑香, 相本 恵美, 永澤 悦伸, 高原 章: 心房拡大モデルにおけるIK.ACh遮断薬tertiapin の催不整脈・抗不整脈作用の特性分析.  第63回日本薬学会関東支部大会,  東京,  2019/09
10. ◎浅田 真佑, 相本 恵美, 永澤 悦伸, 高原 章: 動静脈瘻ラットにおける心房細動の発生メカニズム -抗線維化薬Pirfenidone を用いた検討-.  第63回日本薬学会関東支部大会,  東京,  2019/09
11. ◎村井 里帆, 相本 恵美, 永澤 悦伸, 高原 章: 慢性容量負荷に伴う心房拡大に対するRho キナーゼ阻害薬fasudil の効果 -電気的リモデリングと構造的リモデリングの両者からの分析-.  第63回日本薬学会関東支部大会,  東京,  2019/09
12. ◎佐藤 修司, 高橋 真生, 永澤 悦伸, 相本 恵美, 高原 章, 白井 厚治: 薬物処置または体液量増減に伴う CAVI の変化は血管内超音波法による血管断面積から求めたstiffness parameterβを反映する ―麻酔ウサギを用いた検討―.  第51回日本動脈硬化学会総会・学術集会,  京都,  2019/07
13. ◎光井英晃, 長澤(萩原)美帆子, 神林隆一, 布井啓雄, 千葉浩輝, 後藤愛, 中瀬古(泉)寛子, 坂本憲吾, 高原章, 杉山篤: 薬物性torsade de pointes(TdP)発生に必要な個体側の素因:房室ブロックカニクイザルモデルでの検討.  第140回日本薬理学会関東部会,  東京,  2019/07
国際学会
1. ◎Kambayashi R, Hagiwara-Nagasawa M, Goto A, Chiba K, Ichikawa T, Izumi-Nakaseko H, Naito AT, Takahara A, Sugiyama A: Electrophysiological profile and proarrhythmic potential of atrial selective anti-atrial fibrillatory drug AVE0118 in the anesthetized chronic atrioventricular block dogs.  第66回日本不整脈心電学会,  横浜,  2019/07
2. Yoshinobu Nagasawa, Hiroki Shiratori, Sachie Takagi, Kiyoshi Sakuma, Tatsuo Chiba, Tetsuya Komatsu, Kento Watanabe, Megumi Aimoto, Mao Takahashi, Kazuhiro Shimizu, Kohji Shirai, Akira Takahara: Biological significance of acute responses of arterial stiffness monitored with cardio-ankle vascular index (CAVI) to the various vascular loadings in rabbit model.  The 29th European Meeting on Hypertension and Cardiovascular Protection,  Milan, ITALY,  2019/06
3. ◎Komatsu T, Shiba T, Nagasawa Y, Aimoto M, Sakuma K, Chiba T, Cao X, Takahara A, Matsumoto T, Hori Y: Real-time evaluation of systemic-ocular microcirculation using laser speckle flowgraphy in white rabbits.  Annual Meeting of the Association-for-Research-in-Vision-and-Ophthalmology,  Vancouver, CANADA,  2019/04
その他
1. ◎渡辺 研人, 柴 友明, 小松 哲也, 佐久間 清, 相本 恵美, 永澤 悦伸, 高原 章, 堀 裕一: 新しい循環評価の指標としての眼血流測定
-白色家兎を用いた出血性ショックでの検討-.  第16回5学部合同学術集会,  東京,  2020/03
2. ◎高原 章, 佐久間 清, 千葉 達夫, 相本 恵美, 永澤 悦伸, 佐藤 修司, 高橋 真生, 清水 一寛, 白井 厚治: 血管弾性の薬理学:リアルタイムCAVI計測システムを用いて.  第2回臨床血管健康研究会,  東京,  2019/06
  :Corresponding Author
  :本学研究者