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 医学部 医学科 生化学講座/生化学分野
 Department of Biochemistry Division of Medical Biochemistry

教授:
  中野 裕康
准教授:
  森脇 健太
講師:
  土屋 勇一
■ 概要
Cellular FLICE-inhibitory protein (cFLIP)はTNFなどによるアポトーシスの阻害に中心的な役割を果たすタンパク質である。我々はこれまでcFLIP遺伝子を組織特異的に欠損させることにより細胞死が亢進し、その結果様々な病態が誘導されることを報告してきた (Piao, Sci Signal 2012; Piao, Hepatology 2017; Piao, J Allergy and Clin Immunol 2019)。cFLIPはアポトーシスの実行に必要なカスパーゼ8と会合することで、その活性を阻害すると考えられていたが、そのメカニズムの詳細は不明だった。一方でcFLIPは非常に不安定なタンパク質であることから、ユビキチン化による制御を受けているだろうということが推測され、これまでに複数のユビキチン化酵素(ユビキチンリガーゼ)が報告されていたが、ユビキチン化修飾がcFLIPの機能に及ぼす影響の詳細は解明されていなかった。そこで我々はcFLIPタンパク質をユビキチン化する新たな酵素を同定することを試みた。cFLIP遺伝子からは長いタンパク質であるcFLIP long (cFLIPLと略す)とcFLIP short (cFLIPsと略す)の2種類のタンパク質が生成するが、細胞の中で優位に働いているのはcFLIPLの方であることから、この分子に注目した。cFLIPLの制御に関与するユビキチンリガーゼをタンパク質の直接の結合を指標とした網羅的スクリーニング系を用いて探索した。約250個のユビキチン化酵素とcFLIPLが会合するかを検討し、上位7個の酵素を細胞培養系で検討したところこれまでノッチシグナルに関与すると考えられてきた酵素Mind bomb (MIB)2がcFLIPLを効率よくユビキチン化することが明らかとなった。MIB2は構造的に類似しているカスパーゼ8やcFLIPsにはユビキチン化を誘導しなかった。またMIB2によるcFLIPLのユビキチン化にはMIB2とcFLIPLが会合することが必須であること、両者の会合する部位を各々に関して決定した。MIB2によりcFLIPLがユビキチン化されても、cFLIPLの分解には影響しなかった。予想外なことにMIB2を欠損させた細胞を樹立したところcFLIPLのユビキチン化は減少したにもかかわらず、TNFにより誘導されるアポトーシスが亢進していた。逆にMIB2によりユビキチン化されないcFLIPLの変異体を発現する細胞を作成して解析したところ、cFLIPLによるアポトーシス阻害活性は顕著に低下していた。そのメカニズムを解析したところMIB2によりユビキチン化されたcFLIPLはカスパーゼ8と会合すると、高次構造を変化させてカスパーゼ8の多量体化を抑制し、その結果としてアポトーシスを阻害している可能性が示唆された (Nakabayashi, Commun Biol 2021)。
■ 当該年度の研究費受入状況
1.  国立研究開発法人日本医療研究開発機構 革新的先端研究開発支援事業  (研究課題番号:20gm1210002s0103)
 研究課題:NASHにおける肝リモデリングを制御する細胞間相互作用の解明と革新的診断・治療法創出への応用  (研究分担者:中野 裕康)
 研究補助金:14000000円  (分担)
2.  2020年度文部科学省科学研究費 基盤研究(B)  (研究課題番号:20H03475)
 研究課題:新規細胞死ネクロプトーシスの新たな制御機構の解明  (研究代表者:中野 裕康)
 研究補助金:4400000円  (代表)
3.  国立研究開発法人日本医療研究開発機構 糖鎖利用による革新的創薬技術開発事業  (研究課題番号:20ae0101042h9905)
 研究課題:高感受性フコシル化TRAIL受容体を標的とした新たな癌治療戦略の開発  (研究代表者:森脇 健太)
 研究補助金:9500000円  (代表)
4.  2020年度文部科学省科学研究費 基盤研究(C)  (研究課題番号:19K07399)
 研究課題:新規炎症性細胞死ネクロプトーシスを可視化する生体イメージング技術の開発  (研究代表者:森脇 健太)
 研究補助金:1100000円  (代表)
5.  2020年度文部科学省科学研究費 基盤研究(B)  (研究課題番号:18H02594)
 研究課題:細胞の極性を制御する遺伝子の組織、個体での機能とその分子機構の解明  (研究分担者:森脇 健太)
 研究補助金:500000円  (分担)
6.  2020年度文部科学省科学研究費 基盤研究(C)  (研究課題番号:20K11589)
 研究課題:非アルコール性脂肪性肝炎に対する増殖因子を介した肝臓修復機構の解明と治療への応用  (研究代表者:土屋 勇一)
 研究補助金:1100000円  (代表)
7.  2020年度文部科学省科学研究費 基盤研究(C)  (研究課題番号:20K05238)
 研究課題:敗血症モデルにおける計画的ネクローシスのFRETイメージング  (研究代表者:村井 晋)
 研究補助金:1400000円  (代表)
8.  2020年度文部科学省科学研究費 基盤研究(C)  (研究課題番号:20K09231)
 研究課題:膜透過性ペプチドを用いた細胞死抑制による新たな抗敗血症薬の提案  (研究代表者:中林 修)
 研究補助金:1100000円  (代表)
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  中野 裕康 :日本Cell Death学会理事長
2.  中野 裕康 :日本免疫学会評議委員
3.  中野 裕康 :日本生化学会代議員
4.  森脇 健太 :日本Cell Death学会評議委員
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















中野 裕康   教授
 1   7          
 3
 
 
 
 
森脇 健太   准教授
 1  2 2   1       3
(2)
 2
 
 
 
 
土屋 勇一   講師
    1          
 1
 
 
 
 
中林 修   助教
   1           2
 
 
 
 
 
村井 晋   助教
    2    1      
 1
 
 
 
 
 2 3  0 1  0  5
(2)
 0
(0)
 0
(0)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














中野 裕康   教授
 1        
 
 
森脇 健太   准教授
 1 2       3
(2)
 
 
土屋 勇一   講師
         
 
 
中林 修   助教
  1       2
 
 
村井 晋   助教
     1    
 
 
 2 3  0 1  0  5
(2)
 0
(0)
 0
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. Miyake S, Murai S, Kakuta S, Uchiyama Y, Nakano H:  Identification of the hallmarks of necroptosis and ferroptosis by transmission electron microscopy.  Biochemical and biophysical research communications  527 :839 -844 , 2020
2. Nakabayashi O, Takahashi H, Moriwaki K, Komazawa-Sakon S, Ohtake F, Murai S, Tsuchiya Y, Koyahara Y, Saeki S, Yoshida Y, Yamazaki S, Tokunaga F, Sawasaki T, Nakano H.:  MIND bomb 2 prevents RIPK1 kinase activity-dependent and -independent apoptosis through ubiquitylation of cFLIPL.  Communications Biology  4 (1) :80 , 2021
3. Kojima Y, Nishina T, Nakano H, Okumura K, Takeda K.:  Inhibition of Importin β1 Augments the Anticancer Effect of Agonistic Anti-Death Receptor 5 Antibody in TNF-Related Apoptosis-Inducing Ligand-Resistant Tumor Cells.  Molecular Cancer Therapeutics  19 :1123 -1133 , 2020
4. Torii S, Yamaguchi H, Nakanishi A, Arakawa S, Honda S, Moriwaki K, Nakano H, and Shimizu, S.:  Identification of a novel phosphorylation site of Ulk1 that is required for genotoxic stress-induced alternative autophagy.  Nature Communications  11 (1) :1754 , 2020
5. Hildebrand J, Kauppi M, Majewski I, Liu Z, Cox A, Miyake S, Petrie E, Silk M, Li Z, Tanzer M, Brumatti G, Young S, Hall C, Garnish S, Corbin J, Stutz M, Rago L, Gangatirkar P, Josefsson E, Rigbye K, Anderton H, Rickard J, Tripaydonis A, Sheridan J, Scerri T, Czabotar P, Zhang J, Varghese L, Allison C, Pellegrini M, Tannahill G, Hatchell E, Willson T, Stockwell D, de Graaf C, Collinge J, Hilton A, Silke N, Spall S, Chau D, Athanasopoulos V, Metcalf D, Laxer R, Bassuk A, Darbro B, Singh M, Vlahovich N, Hughes D, Kozlovskaia M, Ascher D, Warnatz K, Venhoff N, Thiel J, Blum S, Reveille J, Hildebrand M, Vinuesa C, McCombe P, Brown M, Kile B, McLean C, Bahlo M, Masters S, Nakano H, Ferguson P, Murphy J, Alexander W, Silke J.:  The inflammatory consequences of MLKL brace region mutations in mice and humans.  Nature Communications  11 (1) :3150 , 2020
6. Moriwaki K, Balaji S, Chan FK.:  The death-inducing activity of RIPK1 is regulated by the pH environment.  Science Signaling  13 (631) :eaay7066 , 2020
7. Iwaki A, Moriwaki K, Sobajima T, Taniguchi M, Yoshimura S, Kunii M, Kanda S, Kamada Y, Miyoshi E, Harada A:  Loss of Rab6a in the small intestine causes lipid accumulation and epithelial cell death from lactation.  The FASEB journal : official publication of the Federation of American Societies for Experimental Biology  :in press , 2020
8. Takeda W, Nishina T, Deguchi Y, Kawauchi M, Mikami T, Yagita H, Nishiyama C, Nakano H:  Stromal fibroblasts produce interleukin 11 in the colon of TNBS-treated mice.  Toho J Med  6 (3) :111 -120 , 2020
総説及び解説
1. 森脇健太:  制御性ネクローシスと炎症.  臨床免疫・アレルギー科  74 (6) :543 -549 , 2020
2. 中野 裕康、駒澤 幸子、進藤 綾大:  胎児期の小腸上皮細胞のネクロプトーシスは3型リンパ球を過剰に活性化し、重篤な回腸炎を誘導する.  臨床免疫・アレルギー科  74 (6) :566 -572 , 2020
3. Katagiri T, Kameda H, Nakano H, Yamazaki S:  Regulation of T cell differentiation by the AP-1 transcription factor Jun B.  Immunological Medicine  44 (3) :197 -203 , 2021
■ 著書
1. 秋山泰身, 堀江健太, 石川龍也, 関崇生, 秋山伸子:  シングルセルRNA-seqによる細胞ヘテロジェナイティの探索.  臨床免疫・アレルギー科  204-209.  科学評論社,  東京, 2020
2. 水島昇、稲田利文、田口英樹、宮澤恵二、三善英知、村上誠、吉澤史昭:    ミースフェルド生化学  507-542.  東京化学同人,  東京、日本, 2020
■ 学会発表
国内学会
1. ◎中林修: cFLIPのユビキチン化による制御.  第1回 細胞死コロキアム,  Web開催、日本,  2020/11
2. 森脇 健太: 糖鎖によるデス受容体シグナルの制御機構について.  第1回 細胞死コロキアム,  オンライン,  2020/11
3. ◎片桐翔治, 進藤綾大, 駒澤幸子, 仁科隆, 山崎創, 亀田秀人, 中野裕康: CタイプレクチンReg3βは大腸炎に防御的に働く. CタイプレクチンReg3βは大腸炎に防御的に働く.  第48回日本臨床免疫学会総会,  Web開催,  2020/10
4. ◎Tomoya Fukuoka, Kenta Moriwaki, Miki Komatsu, Emika Noda, Shinji Takamatsu, Yoshihiro Kamada, Masahiro Inoue, Eiji Miyoshi: Identification of characteristic oligosaccharide structures and molecular mechanisms that regulate TRAIL sensitivity.  第79回 日本がん学会学術集会,  オンライン,  2020/10
5. ◎中林修, 高橋宏隆, 村井晋, 大竹史明, 駒澤幸子, 土屋勇一, 佐伯泰, 吉田雪子5, 山崎創, 徳永文稔, 森脇健太, 澤崎達也, 中野裕康: CFLIPのユビキチン化による新たなアポトーシス抑制機構の解析.  第93回日本生化学会大会,  Web開催、日本,  2020/09
6. 森脇健太: RIPK1による細胞死と炎症の制御について.  第93回日本生化学会大会,  オンライン,  2020/09
7. 森脇健太: デス受容体のシグナル伝達制御機構とその病理的意義に関する研究.  第93回日本生化学会大会,  オンライン,  2020/09
8. ◎片桐翔治, 進藤綾大, 駒澤幸子, 竹田若水, 仁科隆史, 山崎創, 亀田秀人, 中野裕康: CタイプレクチンReg3タンパク質による大腸炎の制御.  第41回日本炎症・再生医学会,  東京,  2020/07
  :Corresponding Author
  :本学研究者