東邦大学 教育・研究業績データベース   
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 医学部 医学科 生化学講座/生化学分野
 Department of Biochemistry Division of Medical Biochemistry

教授:
  中野 裕康
講師:
  土屋 勇一
  三宅 早苗
■ 概要
ネクロプトーシスをライブセルでイメージングする技術の開発
ネクロプトーシスはアポトーシスと同様に制御された細胞死だが、アポトーシスとは異なり細胞膜が早期に破裂することから死細胞の周囲に強い炎症を誘導することが知られている。ネクロプトーシスは最近の研究から心筋梗塞や脳梗塞などの虚血性疾患の悪化に寄与することが明らかにされている。これらの細胞死の進行を生きた培養細胞の細胞内で可視化する技術の開発は、細胞死がどのような状況で起こっているのか、またその結果としてどのような反応を周囲の細胞に誘導するのかを解析する上で非常に重要である。我々はネクロプトーシスが誘導される際に細胞膜障害を誘導する分子であるMLKLという分子を利用してFRET用のプローブを作成し、世界で初めてネクロプトーシスの様子を蛍光イメージングする技術を開発した(Murai et al, Nat Commun 2018)。ネクロプトーシス誘導時にMLKL分子に起こる構造変化に合わせてFRET反応が起こるように蛍光タンパク質とMLKLの断片を組み合わせ、マウスやヒトの細胞でTNFなどの刺激によりネクロプトーシスが誘導された際にネクロプトーシスの誘導の様子をリアルタイムで可視化できるプローブを開発することに成功した。このプローブをSMART(a Sensor for MLKL activation by RIPK3 based on FRET)と命名した。どのようなメカニズムでこのプローブにおいてFRET反応が起こっているかを様々な手法により検討したところ、このプローブは細胞質から細胞膜へのMLKL分子の移行の様子を検出している事が明らかとなった。
 一方で、細胞膜が早期に破綻することの知られているネクロプトーシスが起こるときには、DAMPsと呼ばれる核内あるいは細胞内に存在するタンパク質やDNAなどが放出され、強い炎症を周囲の生きた細胞に誘導することが知られている。そこで、ネクロプトーシスに伴うDAMPsの放出のメカニズムを解明するために、DAMPsとして知られるHMGB1という核内のタンパク質に注目し、SMARTとHMGB1の細胞死に伴う挙動を観察した。この際、SMARTを発現した細胞内で、HMGB1を可視化するためにmCherryと呼ばれる蛍光タンパク質と融合させた形で発現させた。この細胞にネクプトーシスを誘導すると、SMARTのシグナルが上昇したのちに、HMGB1は細胞膜の障害が現れる前に核内から細胞質内に放出されており、その後すぐに細胞外に放出されることを見出した。すなわち、ネクロプトーシスに伴ったDAMPsの放出は2段階で行われることが明らかとなり、最初はMLKLにより核膜が障害され、その後に細胞膜が障害されることが明らかとなった。
 最後に1細胞分泌実時間イメージング法という新しい技術を用いてDAMPsを1細胞レベルでイメージングする事に成功した。この手法を用いてネクロプトーシスに陥った細胞からのHMGB1の放出を観察したところ、意外な事に細胞死に伴うHMGB1の放出が100分以上もかかる遷延モードと、放出が10分以内に終了するという破裂モードが存在することが初めて明らかになった。またCHMP4Bというタンパク質の発現を低下させるような処理をしたところ、遷延モードの細胞は消失し、全ての細胞が破裂モードになることを見出した。このことは、CHMP4Bが、遷延モードと破裂モードの選択に必須のタンパク質であることを示している。現在DAMPsのこの2つの放出モードの意義については解析中である。
■ 当該年度の研究費受入状況
1.  平成30年文部科学省科学研究費 新学術領域研究  (研究課題番号:26110003)
 研究課題:計画的ネクローシスが担う生体応答機構の解明  (研究代表者:中野裕康)
 研究補助金:17900000円  (代表)
2.  平成30年文部科学省科学研究費 基盤研究(B)  (研究課題番号:17H04069)
 研究課題:新生児期における上皮バリア維持機構の解明  (研究代表者:中野裕康)
 研究補助金:4000000円  (代表)
3.  平成30年文部科学省科学研究費 挑戦的萌芽研究  (研究課題番号:17K19533)
 研究課題:ネクロプトーシスとDAMPs放出のライブセルイメージング  (研究代表者:中野裕康)
 研究補助金:2500000円  (代表)
4.  平成30年文部科学省科学研究費 基盤研究(C)  (研究課題番号:17K08994)
 研究課題:肝細胞死亢進マウスを用いた非アルコール性脂肪性肝炎のバイオマーカーと治療法の開発  (研究代表者:土屋勇一)
 研究補助金:1100000円  (代表)
5.  平成30年文部科学省科学研究費 基盤研究(C)  (研究課題番号:16K01378)
 研究課題:計画的ネクローシスのライブセルイメージング  (研究代表者:村井晋)
 研究補助金:800000円  (代表)
6.  平成30年文部科学省科学研究費 新学術領域研究 (国際共同研究加速基金「国際活動支援班」)  (研究課題番号:15K21753)
 研究課題:日豪細胞死研究協議会を核とした細胞死研究国際コミュニテイの形成  (研究分担者:中野裕康)
 研究補助金:1400000円  (分担)
7.  国立研究開発法人日本医療研究開発機構 革新的先端研究開発支援事業  (研究課題番号:18gm1210002s0101)
 研究課題:NASHにおける肝リモデリングを制御する細胞間相互作用の解明と革新的診断・治療法創出への応用  (研究分担者:中野裕康)
 研究補助金:3000000円  (分担)
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  中野裕康 :日本免疫学会評議委員
2.  中野裕康 :日本Cell Death学会理事
3.  中野裕康 :日本生化学会代議員
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















中野 裕康   教授
  1 1 4          
 7
(1)
 1
 4
(1)
 
 1
(1)
土屋 勇一   講師
              
 
 
 
 
 
三宅 早苗   講師
    1          
 
 
 1
 
 
出口 裕   助教
   1           
 3
(1)
 
 1
 
 1
(1)
中林 修   助教
    2          1
 1
 
 
 
 
村井 晋   助教
   1 1          1
 
 1
(1)
 
 
 
 0 3  0 0  0  2
(0)
 2
(1)
 0
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. Deguchi Y, Nishina T, Asano K, Ohmuraya M, Nakagawa Y, Nakagata N, Sakuma T,
Yamamoto T, Araki K, Mikami T, Tanaka M, Nakano H.:  Generation of and characterization of anti-IL-11 antibodies using newly established Il11-deficient mice.  Biochemical and Biophysical Research Communications  505 (2) :453 -459 , 2018
2. Xuehua Piao, Ryosuke Miura, Sanae Miyake, Sachiko Komazawa-Sakon, Masato Koike, Ryodai Shindo, Junji Takeda, Akito Hasegawa, Riichiro Abe, Chiharu Nishiyama, Tetsuo Mikami, Hideo Yagita, Yasuo Uchiyama, and Hiroyasu Nakano:  Blockade of TNFR1-dependent and -independent cell death is crucial for normal epidermal differentiation.  Journal of Allergy and Clinical Immunology  143 (1) :213 -228 , 2019
3. Shin Murai, Yoshifumi Yamaguchi, Yoshitaka Shirasaki, Mai Yamagishi, Ryodai Shindo, Joanne M. Hildebrand, Ryosuke Miura, Osamu Nakabayashi, Mamoru Totsuka, Taichiro Tomida, Satomi Adachi-Akahane, Sotaro Uemura, John Silke, Hideo Yagita, Masayuki Miura, Hiroyasu Nakano:  A FRET biosensor for necroptosis uncovers two different modes of the release of DAMPs.  Nature Communications  9 :4457 , 2018
総説及び解説
1. 進藤綾大、中野裕康:  細胞死制御のキー蛋白質.  週刊医学のあゆみ  267 (13) :1136 -1142 , 2018
その他
1. Nakano H, Murai S, Yamaguchi Y, Shirasaki Y, Nakabayashi O, Yamazaki S:  Development of novel methods that monitor necroptosis and the release of DMAPs at the single cell resolution.  Cell Stress  :in press , 2019
■ 学会発表
国内学会
1. ◎竹田 若水, 仁科 隆史, 出口 裕, 西山 千春, 中野 裕康: 家族性大腸腺腫症モデルマウスにおけるインターロイキン-11産生細胞の解析.  第41回日本分子生物学会年会,  パシフィコ横浜,  2018/11
2. ◎村井 晋, 山口 良文, 白崎 義隆, 進藤 綾大, 中林 修, Hildebrand Joanne, 冨田 太一郎, 赤羽 悟美, Silke John, 三浦 正幸, 中野 裕康: FRETバイオセンサーによるネクロプトーシス実行の1細胞イメージング.  第91回日本生化学会大会,  京都,  2018/09
3. ◎片桐 翔治, 山﨑 創, 三上 哲夫, 遠藤 昌吾, 住本 英樹, 亀田 秀人, 中野 裕康: 腸管上皮バリアにおける転写因子JunBの役割.  第91回日本生化学会,  京都, 日本,  2018/09
4. ◎中林修, 高橋宏隆, 澤崎達也, 中野裕康: MIND BOMB-2はcFLIPLを安定化することにより細胞死を抑制する.  第91回日本生化学会大会,  京都,  2018/09
5. ◎仁科隆史、出口裕、竹田若水、中野裕康: インターロイキン(IL)-11は大腸癌形成を促進するstromal fibroblastのマーカーとなる.  第27回日本 Cell Death学会 学術集会,  京都、日本,  2018/07
6. ◎Yamazaki S., Katagiri T., Sumimoto H., Nakano H.: A crucial role of JunB in attenuating epithelial damage-induced colitis through induction of regulatory T cells.  第47回日本免疫学会学術集会,  福岡, 日本,  2018/12
7. ◎Takashi Nishina, Yutaka Deguchi, Wakami Takeda, Tetuo Mikami, Hiroyasu Nakano: IL-11 is a novel marker of stromal fibroblasts that promote tumors in a murine model of colitis-associated cancer.  第77回日本癌学会学術総会,  Osaka International Convention Center,  2018/09
国際学会
1. ◎Murai S, Nakano H: A Novel FRET Biosensor for Necroptosis Uncovers Two Different Modes of the Release of DAMPs.  Gordon Research Conference,  Newry, USA,  2018/08
2. ◎Ryosuke Miura, Xuehua Piao, Sanae Miyake, Sachiko Komazawa-Sakon, Chiharu Nishiyama, Hiroyasu Nakano.: Blockade of TNFR1-dependent and -independent cell death is crucial for normal epidermal differentiation.  Gordon Research Conference,  Newry, USA,  2018/08
3. ◎Hiroyasu Nakano: Development of a novel FRET biosensor, SMART that monitors necroptosis.  Australia-Japan Meeting on Cell Death,  東京、日本,  2018/05
4. ◎Shindo R., Ohmuraya M., Komazawa-Sakon S., Miyake S., Yamazaki S., Nishina T., Pasparakis M., Araki K., Nakano H.: RIPK3-dependent necroptosis of intestinal epithelial cells results in RORgt+ innate lymphoid cell-dependent lethal ileitis.  Australia-Japan Meeting on Cell Death,  東京, 日本,  2018/05
5. ◎Takashi Nishina, Yutaka Deguchi, Wakami Takeda, Tetsuo Mikami, Hiroyasu Nakano: Analysis of Interleukin-11-producing cells in a colitis-associated cancer model using IL-11 reporter mice.  Australia-Japan Meeting on Cell Death,  Tokyo, Japan,  2018/05
その他
1. ◎竹田 若水、仁科 隆史、出口 裕、西山 千春、中野 裕康: 家族性大腸腺腫症モデルマウスにおけるインターロイキン-11 産生細胞の解析.  平成30 年度研究ブランディング事業リトリート,  湯河原、神奈川,  2018/08
2. ◎山﨑 創: 転写因子JunBによるエフェクターCD4陽性細胞の調節.  Expert Seminar of Immunology (ブリストルマイヤーズスクイブ・小野薬品工業),  東京, 日本,  2018/05
  :Corresponding Author
  :本学研究者