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 薬学部 医療薬学教育センター/薬物治療学研究室
 Department of Pharmacology and Therapeutics

教授:
  高原 章
■ 概要
1.薬物によるQT延長リスクの評価
抗ヒスタミン薬、消化管機能改善薬、統合失調症治療薬などの非循環器用薬に、副作用として心筋のカリウムチャネルに対する抑制作用が報告され、心電図のQT間隔延長および致死性不整脈発生の危険性が指摘されている。ところがこの副作用は発生頻度が低いため、従来の安全性薬理試験の手法ではその危険性を検出できなかった。私達は薬物性QT延長症候群の患者の特徴に関する情報からモルモットを用いた評価モデルを考案し、QT延長症候群の症例報告がある薬物の催不整脈作用を高感度で検出することに成功した。さらに、小動物の生体位心臓から単相性活動電位(MAP)を記録できる電極カテーテルを開発し、心筋再分極に与える薬物作用を高精度で研究する手法を確立した。本評価システムを用い、欧州で小児に鎮咳薬として用いられてきたクロブチノールがQT延長作用を示すことを確認した。
2.心房細動の発生メカニズム
肺静脈心筋の静止膜電位は心房筋より浅いことが知られている。肺静脈で電気刺激により誘発される撃発活動の電気薬理学的特性を検討した。モルモットから肺静脈および左心房を摘出し、Krebs-Henseleit液中で微小電極法を適用して心筋活動電位を記録した。標本に高頻度電気刺激(周期長100−200 ms、n=100)を与え、撃発活動の誘発性および薬物応答性を評価した。周期長100 msの頻回刺激を与えたところ、最終刺激に対する応答後に第4相の緩徐脱分極とそれに引き続く自発興奮が観察された。この刺激条件下では46/48例の肺静脈にこのような撃発活動が観察されたが、左心房標本には認められなかった(0/8例)。また、撃発活動の発生率は4本の肺静脈でほぼ同程度であった。肺静脈の撃発活動の発生率および自発興奮の発生数は刺激頻度に依存して増加し、連結周期長は刺激頻度に応じて短縮した。頻回刺激後の自発興奮の発生数はベラパミル(1 μM)、リアノジン(0.1 μM)およびピルジカイニド(10 μM)により有意に減少した。また、肺静脈心筋ではカルバコール(0.3 μM)により静止膜電位の過分極および活動電位持続時間の短縮が認められ、撃発活動の発生はカルバコール処置により完全に抑制された。肺静脈は撃発活動が誘発されやすい電気生理学的性質を有することが示された。撃発活動に対する薬物応答性は心室筋における従来の報告と同様であり、細胞内Ca2+の過負荷が撃発活動の発生に関与することが推定された。また、肺静脈における撃発活動の発生に静止膜電位の違いが寄与する可能性が考えられた。
3.動物を用いたCAVI計測システムの構築
動脈硬化の発生メカニズム解明や合併症の発生予測には、動脈硬化の程度を経時的に繰り返し計測することは極めて重要であり、非侵襲的で簡便な手法であるCAVI(cardio-ankle vascular index)が注目されている。CAVIの生理学的あるいは病態生理学的な意義に関する研究は臨床の場を中心に進められているが、実験動物を用いたCAVI計測システムが開発されれば、これらの意義の解明に向けてさらなる進展が期待される。私たちの今年度の検討により麻酔ウサギを用いてCAVIの計測が可能になった。今後、CAVIの薬物に対する応答性について調べていく予定である。
■ Keywords
心房細動, QT延長症候群, 心筋イオンチャネル, 心肥大, 高血圧,動脈硬化, CAVI
■ 当該年度の研究費受入状況
1.  平成23年度 科学研究費補助金 基盤研究(C)  (研究課題番号:21590602)
 研究課題:肺静脈の電気的興奮を制御する心房細動治療標的分子に関する研究  (研究代表者:高原 章)
 研究補助金:1000000円  (代表)
その他
1.  東邦大学共同研究費補助金
 研究課題:慢性心房細動に対する新規治療薬:強力かつ安全な停止薬の開発  (研究分担者:高原 章)
 研究補助金:1750000円  (分担)
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  高原 章 :日本薬理学会 代議員・学術評議員
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















高原 章   教授
博士(薬学)
 1 1 1 2    1      1
 10
 
 1
 3
(1)
 1
 1 1  0 1  0  1
(0)
 0
(0)
 3
(1)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














高原 章   教授
博士(薬学)
 1 1   1    1
 
 3
(1)
 1 1  0 1  0  1
(0)
 0
(0)
 3
(1)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. 星合清隆, 中村裕二, 岩﨑宏, 高原章, 杉山篤:  ピンク・グレープフルーツジュースは日本人成人男性ボランティアの心電図QTcを延長しない.  FOOD FUNCTION  7 :19-22 , 2011
2. Yamamoto T, Ohno S, Niwa S, Tokumasu M, Hagiwara M, Koganei H, Fujita S, Takeda T, Saitou Y, Iwayama S, Takahara A, Iwata S, Shoji M:  Asymmetric synthesis and biological evaluations of (+)- and (-)-6-dimethoxymethyl-1,4-dihydropyridine-3-carboxylic acid derivatives blocking N-type calcium channels.  Bioorganic & medicinal chemistry letters  21 (11) :3317-3319 , 2011
3. Nishi I, Sugiyama A, Takahara A, Watabe H, Kuroki K, Igawa M, Enomoto T, Iida K, Koseki S, Aonuma K:  Utility of short-term variability of repolarization as a marker for monitoring a safe exercise training in patients with cardiac diseases.  International heart journal  52 (5) :304-307 , 2011
4. Takahara A, Wagatsuma H, Aritomi S, Konda T, Akie Y, Nakamura Y, Sugiyama A:  Measurements of cardiac ion channel subunits in the chronic atrioventricular block dog.  Journal of pharmacological sciences  116 (1) :132-135 , 2011
その他
1. 高原章, 中村裕二, 杉山篤:  心臓突然死のリスク予測に有用な新指標:beat-to-beat variability of repolarization.  日本薬理学雑誌  138 (1) :43-44 , 2011
■ 著書
1. Takahara A:  Dual L/N-Type Ca2+ Channel Blocker: Cilnidipine as a New Type of Antihypertensive Drug.  Antihypertensive Drugs  29-44.  InTech - Open Access Publisher,  Rijeka, Croatia, 2012
■ 学会発表
国内学会
1. ◎中村裕二, 北原健, 佐々木梨江子, 赤羽悟美, 田中光, 高原章, 杉山篤: オセルタミビルはQT延長症候群を誘発しない.  第85回日本薬理学会年会,  京都,  2012/03
2. ◎北原健, 中村裕二, 恒岡弥生, 鈴木早苗, 赤羽悟美, 田中光, 高原章, 山崎純一, 杉山篤: オセルタミビルの生体に対する電気薬理学的作用.  第85回日本薬理学会年会,  京都,  2012/03
3. ◎米山 史陽, 萩原 美帆子, 千葉 俊樹, 高原 章: 麻酔ウサギを用いた心房・心室の電気生理学的特性の同時評価モデル.  第85回日本薬理学会年会,  京都,  2012/03
4. ◎荻原 琢男, 瀧本 紫乃芙, 茂木 利充, 井戸田 陽子, 叶 隆, 森本 かおり, 高原 章, 柿沼 千早: 脳虚血時におけるシルニジピンの脳保護作用とP-糖タンパク質の関与.  日本薬学会第132年会,  札幌,  2012/03
5. ◎松尾 和廣, 植草 秀介, 木村 伊都紀, 矢部 いつか, 平山 忍, 笠井 真樹, 小杉 隆祥, 藤原 香織, 佐々木 英久, 渡辺 朋子, 篠原 悦子, 西澤 健司, 高原 章, 吉尾 隆: シプロフロキサシンの心臓電気薬理学的作用を考慮した適正使用の検討.  日本薬学会第132年会,  札幌,  2012/03
6. ◎米山 史陽, 萩原 美帆子, 千葉 俊樹, 高原 章: ハロセン麻酔ウサギを用いた心房細動治療薬の心臓に対する安全性薬理評価法に関する検討.  第3回日本安全性薬理研究会,  東京,  2012/02
7. ◎有冨 静, 新沼 多美, 川上 麻衣, 北原 吉朗, 高原 章: アドリアマイシン誘発心腎障害モデルラットに対するL/N型カルシウム拮抗薬シルニジピンの効果.  第34回日本高血圧学会総会,  宇都宮,  2011/10
8. ◎本間 邦恵 , 田中 光 , 高原 章: マウス心筋の再分極過程の特徴:心電図と単相性活動電位を用いた評価.  第55回日本薬学会関東支部大会,  船橋,  2011/10
9. ◎藤原 香織, 木村 伊都紀, 松尾 和廣, 田中 光, 高原 章: シプロフロキサシンの心臓電気薬理学的作用:ハロセン麻酔モルモットモデルによる検討.  次世代を担う創薬・医療薬理シンポジウム 2011,  東京,  2011/08
10. ◎鈴木 早苗, 恒岡 弥生, 田中 光, 高原 章: モルモット心房におけるoseltamivirの電気生理作用特性.  次世代を担う創薬・医療薬理シンポジウム 2011,  東京,  2011/08
11. 藤原 香織, 大槻 篤史, 岡 貴之, 行方 衣由紀, 田中 光, ◎高原 章: ハロセン麻酔モルモットモデルにおけるジフェンヒドラミンおよびクロペラスチンの心臓電気薬理学的作用.  第124回日本薬理学会関東部会,  東京,  2011/06
国際学会
1. ◎Yamamoto T, Niwa S, Ohno S, Koganei H, Fujita S, Takeda T, Saitou Y, Iwayama S, Takahara A, Iwata S, Shoji M: Discovery of novel analgesic compound that inhibits Cav2.2 channels.  8th AFMC International Medicinal Chemistry Symposium,  Tokyo, Japan,  2011/11
その他
1. ◎杉山篤, 高原章: 慢性心房細動に対する新規治療薬:強力かつ安全な停止薬の開発.  第8回東邦大学4学部合同学術集会,  東京,  2012/03
2. ◎高原 章: CAVI基礎実験〜動物実験報告.  第8回血管バイオメカニクス研究会,  東京,  2011/11
3. ◎高原 章: 小型動物を用いた持続型心房細動モデル.  千葉エリア産学官連携オープンフォーラム2011,  習志野,  2011/09
4. ◎高原 章: 心臓突然死の危険を回避する治療戦略の構築に向けて 〜N型Ca2+チャネル阻害の可能性〜.  第12回東邦薬物治療研究会,  佐倉,  2011/07
  :Corresponding Author
  :本学研究者