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 薬学部 薬品製造学教室
 Department of Synthetic Organic Chemistry

教授:
  横山 祐作
准教授:
  鈴木 英治
講師:
  氷川 英正
■ 概要
天然物や創薬のためにリード化合物の合成を通して新しい反応性,合成法の開発を中心として研究を行っている。アミノ酸,糖を原料とする新規反応の開発,水を溶媒としたPd触媒を用いた新反応の開発、およびアルツハイマー症に関わるアミロイドタンパクや標的化DDS を目指した機能性化合物の設計,合成と生物評価を行っている。さらに,アルカロイドなどの天然物や医薬品の中に多く出現するインドール骨格の合成,インドール骨格への側鎖の導入等も行っている。具体的なテーマを以下に示す。
1.水溶性化合物の水溶液中での反応の開発
アミノ酸の様に極性が高く水溶性の低分子生体成分を原料とした合成は,官能基を保護した後,有機溶媒中で反応を行うのが常識であった。我々はこの常識に反して,アミノ酸を保護することなくしかも水溶液中での反応を行えば,天然物の全合成の行程数が大幅に短縮出来ることを見いだした。この研究を通して,保護基を用いない有機合成化学の新しい分野を開拓しようとしている。
2.アミロイドタンパク凝集阻害剤の研究
アミロイドタンパクの凝集が,アルツハイマー症発現に深く関わることが知られている。我々は、アミロイドβを認識する化合物に水溶性ユニットが結合した化合物を有機合成し、これらに強いアミロイドタンパクの凝集阻害作用,さらに生成した凝集体を溶解する活性があることを見出した。このコンセプトに従い,より強く,脳内移行可能な凝集阻害物質を設計,合成し,生物評価を通じて治療薬候補化合物を見いだすことを目指している。
3.機能性脂質分子の合成と標的化DDS への応用に関する研究
分子認識能を付与した機能性脂質の設計と効率的な合成が進行中である。それらを応用し,標的細胞や臓器に適切な薬物を送り込む方法の開発を意図している。
4.インドールアミン 2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤の開発
インドールアミン 2,3-ジオキシゲナーゼは,トリプトファン代謝酵素である。トリプトファンは免疫細胞の活性化には必須のアミノ酸であるため,この酵素が必要以上に活性化すると免疫機能の低下をきたす。従って,この酵素の強力な阻害剤開発は,新しい作用機序による抗癌剤の開発につながる。我々の開発した新しいトリプトファン合成法を利用して,この阻害剤の開発を試みる。
5.抗MRSA 活性を有するブロモメチルチオインドール類の合成研究
我々が開発した全く無臭な位置選択的メチルチオ化反応,及びインドール骨格への位置選択的なブロモ基導入反応を組み合わせ,海草から得られた非常に強い抗MRSA 活性を示すブロモメチルチオインドール類(MC5-8)類の全合成に成功した。合成化合物は共同研究により詳細な抗菌活性を評価し,その抗菌活性の本態を解明する予定である。現在,より有効な化合物の創製を目指した新規化合物の合成を検討している。
6.水を溶媒としたPd触媒を用いた新反応の開発
保護基を用いない有機合成を達成するためには、反応性の高い官能基に対する選択性や水溶液中での新規な反応の開発が必要になる。我々は反応性の低いアリルアルコールの水酸基を水和により活性化することでπ-アリルパラジウム中間体を形成し、様々な無保護アミノ酸およびアントラニル酸へのモノ-N-アリル化反応及び官能基選択的な反応へ応用した。最近、ベンジルアルコールに応用し、N-ベンジル化/ベンジル位C-Hベンジル化反応が進行することを見出した。金属触媒を用いた反応において水は排除すべきものと考えられていたが、逆に水を積極的に利用する新規反応の開発であり、これまでの有機溶媒中での知見とは異なる新しい発見またはユニークな反応性、選択性を見出せる可能性を秘めている。
■ 教授・准教授・講師の公的役職
1.  横山祐作 :公益財団法人微生物化学研究会 理事
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  横山祐作 :薬学会構造活性相関部会常任幹事, 薬学会関東支部会幹事
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















横山 祐作   教授
薬学博士
   1 1          
 11
 
 
 
 
鈴木 英治   准教授
博士(薬学)
              1
 2
 
 
 
 
氷川 英正   講師
博士(薬学)
   1           1
 8
 
 
 
 
 0 2  0 0  0  2
(0)
 0
(0)
 0
(0)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














横山 祐作   教授
薬学博士
  1       
 
 
鈴木 英治   准教授
博士(薬学)
         1
 
 
氷川 英正   講師
博士(薬学)
  1       1
 
 
 0 2  0 0  0  2
(0)
 0
(0)
 0
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. Yuusaku Yokoyama, Masamichi Nakakoshi, Hiroaki Okuno, Yohko Sakamoto, Satoshi Sakurai:  Mechanism for the direct synthesis of tryptophan from indole and serine: a useful NMR technique for the detection of a reactive intermediate in the reaction mixture.  Magnetic Resonance in Chemistry  48 (10) :811–817 , 2010
2. Hikawa H., Yokoyama Y.:  Cross-coupling reaction on N-(3,5-dibromo-2-pyridyl)piperazines: regioselective synthesis of 3,5-disubstituted pyridylpiperazines.  Tetrahedron  66 :9552-9559 , 2010
総説及び解説
1. 滝川修:  インドールアミン酸素添加酵素(IDO)の病態生理学的意義と阻害剤の開発.  ファルマシア  46 (3) :241-246 , 2010
■ 学会発表
国内学会
1. ◎安田佑也,清水愛菜,田中実,氷川英正,横山祐作: Benz[e]tryptophan の新合成法とIDO 阻害剤の開発への応用.  日本薬学会 第131年会,  静岡,  2011/03
2. ◎瀬下麻衣子,増子亜矢,氷川英正,横山祐作: インドールとセリンによるトリプトファン不斉合成への試み (Part 2).  日本薬学会 第131年会,  静岡,  2011/03
3. ◎西村淳,松田直也,氷川英正,横山祐作: 無保護アミノ酸の反応:赤堀反応の展開 partII.  日本薬学会 第131年会,  静岡,  2011/03
4. ◎藤岡秀輔,氷川英正,横山祐作: 水溶液中でのアシル化反応 : PartIII.  日本薬学会 第131年会,  静岡,  2011/03
5. 鈴木英治, ◎今井雅之, 松山明弘, 奥野友哉梨, 中越雅道, 高橋良哉, 石神昭人, 氷川英正, 横山祐作: アルツハイマー病治療薬を指向したアミロイドベータ凝集阻害剤の開発:アリー
ルベンゾフラン誘導体.  日本薬学会第131年会,  静岡,  2011/03
6. 鈴木英治, ◎真中恵理, 澤田和紀, 濱島利彦, 横山祐作: 海藻由来の抗MRSA物質MC 5-8:水溶性誘導体の合成研究.  日本薬学会第131年会,  静岡,  2011/03
7. ◎今井 涼介,真坂 亙,八木 信宏,川飛 翔,横山 祐作: リポソームへの効率的導入のためのVIP-Lipopeptide の改良.  日本薬学会 第131年会(静岡),  静岡,  2011/03
8. ◎松田卓也,氷川英正,八木信宏,川飛翔,横山祐作: バイオ医薬品開発に有用な親水性リンカーの合成とDDSへの応用.  日本薬学会 第131年会,  静岡,  2011/03
9. ◎松山明弘, 中越雅道, 横山祐作, 奥野洋明, 奥野友哉梨, 石神昭人, 高橋良哉, 鈴木英治: アルツハイマー病治療薬を指向したアミロイドβ 凝集阻害剤の開発.  第29回 メディシナルケミストリーシンポジウム,  京都,  2010/11
10. ◎氷川英正,横山祐作: 3,5-ジ置換ピリジルピペラジン誘導体の位置選択的な合成.  第29回 メディシナルケミストリーシンポジウム,  京都,  2010/11
11. ◎松田卓也, 氷川英正, 八木信宏, 横山祐作: バイオ医薬品開発に有用な親水性リンカーの合成研究.  第54回日本薬学会関東支部大会,  東京,  2010/10
12. ◎藤岡秀輔, 氷川英正, 横山祐作: 水溶液中でのアシル化反応( Part II ).  第54回日本薬学会関東支部大会,  東京,  2010/10
  :Corresponding Author
  :本学研究者