2008年度
 理学部 生物分子科学科 分子生物学部門
 Division of Molecular Biology

教授:
  渡辺 直子
准教授:
  大冨 美智子
  岸本 利彦
  藤崎 真吾
■ 概要
1. 耳の肥厚を伴うマウス <I>in vivo</I> 皮膚炎症性反応の解析
マウスの耳にクロトンオイルを塗布することにより炎症が誘導され、耳の肥厚が観察される。炎症に伴って、炎症性サイトカインや好中球、マクロファージに対して走化性を有するケモカインの mRNA 発現が誘導されることが明らかになり、好中球の浸潤を反映したミエロペルオキシダーゼ活性の増加が認められた。また、酸化ストレス防御に関わる細胞内グルタチオン量が一過的に減少し、その後回復したことから、炎症に伴って酸化ストレスが誘導されていることが示唆された。
2. 細胞の機能分化制御に関わる転写因子 Dve の解析
SELEX 法を用いて単離した結合候補配列から、in vitro で合成した Dve タンパク質と特異的に結合するクローンを見いだした。Dve タンパク質は K50 タイプのホメオドメインを有しており、結合したクローンには K50 タイプのホメオドメインが認識する配列として知られる K50 element が含まれていた。そこで、K50 element に変異を導入することにより Dve との結合に重要であることを明らかにした。
神経突起伸張におけるLECT2の役割:神経栄養因子の発現調節と細胞骨格形成へのLECT2の関与
これまでに我々は、好中球走化性因子LECT2の欠損が生体脳においてニューロンの発達を抑制すること、およびLECT2-KOマウスの海馬由来培養ニューロンの形態学的観察でLECT2の欠損が特に成長初期のニューロンの神経突起(軸索と樹状突起)の伸張を抑制することを明らかにした(論文投稿中および投稿準備中)。ところで、神経突起の伸張は神経栄養因子によるニューロンへの刺激、細胞内へのシグナル伝達、チューブリンなどから構成される細胞骨格のダイナミックな形成により調節されている。そこで本年度は、神経突起伸張におけるLECT2の役割を具体的に明らかとすることを目的とし、LECT2の欠損が神経栄養因子(NGF,BDNF.NT-3)および神経栄養因子受容体(TrkA, B, C およびp75NTR)の発現と細胞骨格の形成に与える影響について検討した。その結果、LECT2の欠損は神経栄養因子および神経栄養因子受容体の発現動態に影響を与え、また、カタニンP60の発現を増加させて正常な微小管の形成を阻害することが判った(論文投稿中)。
1. 大腸菌耐熱進化過程の解析
45℃以上の高温で生育可能な耐熱性大腸菌を創出し、その適応・進化過程をゲノム、プロテオーム解析により分子レベルで解析し、適応進化過程で現れる特徴的な相互作用等を明らかとすることで、進化メカニズムを解明する。今年度は、46℃適応大腸菌の創出と高温適応に関わるタンパク質の同定、45℃適応進化時に現れる相互作用因子の大腸菌への影響を明らかとした。
2. 微小管切断因子Kataninの機能解析
微笑管切断因子Kataninは紡錘体極で機能することが知られているが、新たな細胞質分裂部での局在を明らかとし、Kataninが細胞質分裂部で収縮環による分裂を促進し、正常な細胞質分裂に寄与していることを明らかとした。
多糖生合成に関わる糖キャリアリピドの代謝
多糖生合成に関わる糖キャリアリピドの代謝について大腸菌を用いて研究している。ウンデカプレニル二リン酸が蓄積する変異株から得られたホスミドマイシン超感受性株を用いて、P1形質導入により超感受性の原因遺伝子の特定を試みた。変異は染色体地図上91.2分付近と示唆された。ウンデカプレニル二リン酸ホスファターゼでとされているbacA遺伝子産物の酵素活性を調べるため、bacA遺伝子を低温ショックプロモーターの下流につなぎ大腸菌中で発現させてNi-NTAアガロースカラムクロマトグラフィーにより遺伝子産物を精製し電気泳動で単一のバンドを与えるタンパク質を得た。
■ Keywords
炎症, 酸化ストレス, 転写因子, ホメオボックス, LECT2, hippocampal neuron, neurotrophins, dendrite, axon, 耐熱進化, 相互作用, プロテオーム解析, Katanin, 細胞質分裂, ウンデカプレニル二リン酸, 糖キャリアリピド, リピドホスファターゼ
■ 当該年度の研究費受入状況
1.  科学研究費補助金 基盤B
 研究課題:耐熱化過程におけるゲノムネットワークの解析  (研究分担者:岸本利彦)
 研究補助金:1450000円  (分担)
2.  科学研究費補助金 基盤研究C
 研究課題:耐熱進化時に発現する新規クオラムセンシング機構の解析  (研究代表者:岸本利彦)
 研究補助金:1300000円  (代表)
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















渡辺 直子   教授
理学博士
              1
 2
 
 
 
 
大冨 美智子   准教授
       1       
 1
 
 
 
 
岸本 利彦   准教授
理学博士
    1          1
 6
 
 
 1
 
藤崎 真吾   准教授
理学博士
    1       1   
 1
 
 
 
 
 0 0  0 0  1  2
(0)
 0
(0)
 1
(0)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














渡辺 直子   教授
理学博士
         1
 
 
大冨 美智子   准教授
         
 
 
岸本 利彦   准教授
理学博士
         1
 
 1
藤崎 真吾   准教授
理学博士
       1  
 
 
 0 0  0 0  1  2
(0)
 0
(0)
 1
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. Inoue A, Murata Y, Takahashi H, Tsuji N, Fujisaki S, Kato J:  Involvement of an essential gene, mviN, in murein synthesis in Escherichia coli.  Journal of bacteriology  190 (21) :7298-7301 , 2008
2. Hideki Yashiroda, Tsunehiro Mizushima, Kenta Okamoto, Tomie Kameyama, Hidemi Hayashi, Toshihiko Kishimoto, Shin-ichiro Niwa, Masanori Kasahara, Eiji Kurimoto, Eri Sakata, Kenji Takagi, Atsuko Suzuki, Yuko Hirano, Shigeo Murata, Koichi Kato, Tokashi Yamane, Keiji Tanaka:  Crystal structure of a chaperone complex that contributes to the assembly of yeast 20S Proteasome.  Nature structural & molecular biology  15 :228-236 , 2008
その他
1. 藤崎真吾, 石井規雄:  高等学校生物におけるトレーサ実験.  Isotope news  659 :12-13 , 2009
■ 著書
1. 大富美智子:    時間生物学事典  220-221.  朝倉書店,  東京, 2008
■ 学会発表
国内学会
1. ◎三浦 宣夫、佐藤紀子、永井美沙、岸本利彦: グリシン抱合酵素ファミリーrat GATF-Cの機能解析.  BMB2008(第81回日本生化学会大会),  神戸,  2008/12
2. ◎松尾 萌、新井一也、内薗 有美、牧野泰孝、丹羽真一郎、岸本 利彦: Katanin p60の分裂期における局在及び機能解析.  BMB2008(第81回日本生化学会大会),  神戸,  2008/12
3. ◎大山敦子、川崎景子、林秀美、岸本利彦、加藤誠志、岩室祥一: ヒト細胞骨格関連タンパク質CskAP21の機能解析.  BMB2008(第81回日本生化学会大会),  神戸,  2008/12
4. ◎内薗 有美、松尾 萌、岸本 利彦: 微小管切断因子Katanin p60の分裂期における局在機構の解析.  BMB2008(第81回日本生化学会大会),  神戸,  2008/12
5. ◎飯島玲生、小野直亮、鈴木真吾、岸本利彦、イン ベイウェン、古澤力、四方哲也: 耐熱性を進化させた大腸菌のゲノム変異の解析.  BMB2008(第81回日本生化学会大会),  神戸,  2008/12
6. ◎北原和樹、イン ベイウェン、小野直亮、鈴木真吾、岸本利彦、古澤力、四方哲也: 耐熱進化させた大腸菌のトランスクリプトーム解析.  BMB2008(第81回日本生化学会大会),  神戸,  2008/12
7. ◎山崎 小織, 依光 武志, 中川 嘉規, 遠藤 司, 矢田 和貴, 渡辺 直子, 中越 英樹: ショウジョウバエ Dve の機能ドメイン解析.  第 31 回日本分子生物学会・第 81 回日本生化学会合同大会 (BMB2008),  神戸,  2008/12
8. ◎糸川 靖英, 渡辺 直子, 小原 收, 長瀬 隆弘: KRAB-ZNFタンパク質の遺伝子発現制御に関する機能分類.  第 31 回日本分子生物学会・第 81 回日本生化学会合同大会 (BMB2008),  神戸,  2008/12
9. 入江智比呂, 渡邊雅司, 岡田卓巳, 柴和之, 佐藤英世, ◎渡辺直子: 皮膚炎症反応におけるシスチントランスポーターの影響.  第 31 回日本分子生物学会・第 81 回日本生化学会合同大会 (BMB2008),  神戸,  2008/12
10. ◎谷恵栄子, 富岡優介, 古屋隆, 中島洋太, 藤崎真吾: In vitro 合成により得られた大腸菌のBacAタンパク質の酵素活性.  第31回日本分子生物学会年会・第81回日本生化学会大会合同大会(ポスター:一般演題),  神戸,  2008/12
11. ◎岸本利彦、四方哲也: 大腸菌を使った耐熱化実験進化系の中で出現した相互作用を中心とした現象の解析.  日本進化学会第10回大会,  東京,  2008/08
12. ◎輿水洋平, 大富美智子: LECT2 regulates cytoskeletal formation in neuron.  第31回日本神経科学会大会,  東京,  2008/07
  :Corresponding Author
  :本学研究者