2008年度
 理学部　物理学科　宇宙・素粒子教室
 Cosmology and Particle Physics Group

教授：
　　上村　潔
准教授：
　　北山　哲
■ 概要
研究目的
宇宙は微視的スケールから巨視的スケールにわたる多くの物理過程が複雑に絡まり合った物理系である。当研究室では，微視的な素粒子に働く力を統一する理論を構築すること，および巨視的な宇宙の進化と銀河・銀河団などの形成過程を統一して理解すること，を主目標として研究を進めている。また，理論研究に限らず，国内外の望遠鏡や衛星を用いた観測，検出器の開発にも携わっている。
超弦理論の研究
重力相互作用まで含めた量子場の理論は、宇宙の始まりを解明すると共に時間、空間、そして素粒子の基本的な振る舞いを支配している。この統一理論と考えられているのが超弦理論である。われわれは超弦理論の構造を、おもに代数的な面から研究している。特に超弦理論の持つ超対称性とゲージ対称性、そしていくつかのdualityは、力学系を強く支配しており、理論の構成において本質的な役割を果たしている。
非相対論的弦理論の研究
弦理論の非相対論的極限は近似として意味を持つと同時に、群論的にも興味深い。我々はすでGreen―Schwarz超弦理論やブレンを、超対称性とカッパ対称性を保ったまま、非相対論的極限に移行する方法を見出している。　平坦背景場での非相対論的超弦理論は、可積分であることは、既に示したが、曲がった背景場での非相対論的超弦理論においても可積分であるかどうか、またそこでカッパ対称性がどのような役割を果たしているかを明らかにする。　非相対論的弦理論はＭ理論のもうひとつの側面としても考えられる。ここで、デュアリティー、AdS/CFT　対応の成立の可否を明らかにすることにより、弦理論およびＭ理論の理解を深める。
銀河団と宇宙論
銀河団は、現在の宇宙における最大スケールの自己重力系であり、その性質には宇宙全体の進化の影響が強く反映されていると考えられる。我々はこれまでに、大規模数値シミュレーションの結果をもとに、銀河団ガスの密度・温度の非一様性を解析的に記述する新しいモデルを構築してきたが、今回それを実際の観測データと比較・検証するための手法を開発した。この結果をX線衛星Chandra による銀河団Abell 3667 の高解像度X線データと比較したところ、非常に良い一致が得られ、モデルの正しさが実証された。
銀河・銀河団の多波長観測
Ｘ線や可視光、電波など多波長における観測データは、銀河･銀河団の形成や宇宙の進化についての豊かな情報源となる。そこで我々は、国内外の衛星や望遠鏡による観測データの解析と考察を進めている。今回、米国の赤外線衛星Spitzerを用いた観測の結果、かみのけ座銀河団からの広がったダスト放射に対して従来で最も厳しい制限を得た。この結果は、銀河間空間にダストが存在するか否かに関して、５０年以上にわたり続けられてきた論争に、一定の決着をつけたものと言える。また、遠方銀河団RX J1347.5－1145 に温度３億度の宇宙で最も高温のガス塊が存在することを、日本のX線衛星Suzakuを用いた硬X線観測によって確証することにも成功した。
サブミリ波検出器の開発
サブミリ波長帯は、検出技術が未発達であるため天文学において未開拓な波長帯である。我々は、国立天文台において進められているサブミリ波検出器の開発に参加し、チリに建設されたASTE望遠鏡に搭載するボロメータの冷却系作成や、現地における試験観測に携わっている。また、さらなる検出精度向上（高感度化、多画素化）を目指して、超伝導素子を用いたサブミリ波カメラの開発も進めている。
■ Keywords
宇宙論、素粒子論
■ 当該年度の研究費受入状況
1.  科学研究費補助金（基盤研究（B））
 研究課題：バリオン宇宙の理論的探求と次世代X線衛星  (研究分担者：北山哲)
 研究補助金：390000円  (分担)
2.  科学研究費補助金（若手研究（B））
 研究課題：銀河・銀河団の多波長データに基づいた遠方宇宙の探究  (研究代表者：北山哲)
 研究補助金：650000円  (代表)
■ 教授・准教授・講師の公的役職
1.  北山哲 ：科学研究費補助金「特定領域研究」専門委員会委員
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  北山哲 ：ASTRO-H衛星計画 Selected Science Working Group Member
2.  北山哲 ：日本天文学会研究奨励賞選考委員
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
筆
頭		共
著		筆
頭		共
著		 筆
頭		共
著		筆
頭		共
著		 筆
頭		共
著		 演
者		共
演		演
者		共
演		 演
者		共
演
上村　潔   教授
理学博士
    1 2          
  
  
  1
  
  
北山　哲   准教授
理学博士
     5          
  1
  
  
  
  
計  0／ 1／  0／ 0／  0／  0
(0)		／  0
(0)		／  0
(0)		／
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和
文		英
文		 和
文		英
文		 国
内		国
際
筆
頭		筆
頭 		筆
頭		筆
頭 		筆
頭		 演
者		演
者 		演
者
上村　潔   教授
理学博士
   1       
  
  
北山　哲   准教授
理学博士
          
  
  
計  0 1  0 0  0  0
(0)		  0
(0)		  0
(0)
(  )：発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  )：発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. N. Ota, K. Murase, T. Kitayama, E. Komatsu, M. Hattoti, H. Matsuo, T. Oshima, Y. Suto, K. Yoshikawa：  Suzaku broad-band spectroscopy of RXJ1347.5-1145: constraints on the extremely hot gas and non-thermal emission.  Astronomy and Astrophysics  491 ：363-377 , 2008
2. Casalbuoni R, Gomis J, Kamimura K, Longhi G：  Space-time Vector Supersymmetry and Massive Spinning Particle.  Journal of High Energy Physics  0802 ：094 , 2008
3. G.W. Wilson, 8名、T. Kitayama, 他17名：  A bright, dust-obscured, millimetre-selected galaxy beyond the Bullet Cluster (1E0657-56).  Monthly Notices of the Royal Astronomical Spciety  390 ：1061-1070 , 2008
4. Hatsuda M, Kamimura K：  Projective coordinates and projective space limit.  Nuclear Physics  B798 ：310-322 , 2008
5. Kamimura K, Shiseki D：  Massive Rigid String Model and its Supersymmetric Extension.  Nuclear Physics  B806 ：489-503 , 2009
6. H. Kaneda, T. Onaka, I. Sakon, T. Kitayama, Y. Okada, T. Suzuki：  Properties of Polycyclic Aromatic
Hydrocarbons in Local Elliptical Galaxies Revealed by the Infrared Spectrograph on Spitzer.  The Astrophysical Journal  684 ：270-281 , 2008
7. H. Kawahara, E. D. Reese, T. Kitayama, S. Sasaki, Y. Suto：  Extracting Galaxy Cluster Gas Inhomogeneity from X-ray Surface Brightness: A Statistical Approach and Application to Abell 3667.  The Astrophysical Journal  687 ：936-950 , 2008
総説及び解説
1. N. Ota, T. Kitayama, K. Masai, K. Mitsuda：  L_X-T Relation and Thermal Evolution of Galaxy Clusters.  Chinese Journal of Astronomy & Astrophysics Suppliment  8 ：84-92 , 2008
■ 学会発表
国内学会
1. 河原創、E. Reese, 北山哲、他２名： Ｘ線輝度分布を用いた銀河団ガス内不均一性の探索.  日本天文学会2008年秋季年会,  日本、岡山,  2008/09
国際学会
1. Casalbuoni R, ◎Elmetti F, Gomis J, Kamimura K, Tamassia L, Proeyen A.V.： Vector Supersymmetry from OSp(3,2|2).  4-th EU RTN Workshop 2008,  Verna, Bulgaria,  2008/10
  ＊：Corresponding Author
  †：本学研究者