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 理学部 物理学科 量子エレクトロニクス教室
 Quantum Electronics Laboratory

教授:
  金 衛国
准教授:
  箕輪 達哉
■ 概要
量子エレクトロニクスは原子,分子,イオン等と電磁波との相互作用を利用するエレクトロニクスで,レーザーを中心に非常に広範囲の分野が含まれている。当教室では「レーザーによる分光計測とその応用」に重点を置いて研究を進めている。
現在の主要な研究課題は下記の通りである。
1.高分解能原子線半導体レーザー分光
 本研究室では,現在,高分解能原子線半導体レーザー分光装置を開発し,高分解能レーザー核分光を行っている。今年度は, K原子のD2線のゼーマン効果を調べた。超微細構造スペクトルを観測すると共に,強さ46 Gから173 Gまでの磁場をかけK原子のゼーマンスペクトルを観測した。また,直線偏光,円偏光を用い,スペクトルのΔm=+1, -1の成分を選択的に観測し,基底状態4s 2S1/2と上準位4p 2P3/2g因子を決定した。
2.原子のシュタルク効果の研究
 これまでに,高分解能レーザー分光法によりアルカリ原子及びBa原子のシュタルク効果の研究をしてきた。今年度は,高励起状態におけるBa原子のシュタルク効果を調べた。電気放電を用いてBa原子を基底状態から準安定状態に占有させ,強さ41 kV/cmまでの電場を印加し,6s5d 3D1― 5d6p 3F2遷移のシュタルクスペクトルを観測した。シュタルクシフトや分岐の観測により,同遷移におけるスカラーとテンソル分極率を高精度で決定した。
3.質量分離共鳴イオン化分光
 本研究室の主な研究課題として,共鳴イオン化分光法により原子の同位体を分離し,同位体シフトや原子の励起状態の寿命を測定している。今年度は前年度に改良した遅延パルス制御装置を利用し,NaとMoのオプトガルバニック分光を行った。第一励起レーザー光,及び,第二励起レーザー光を照射してNa,Moを励起し,オプトガルバニック分光により,Naの5s 2S1/2準位とMoの4d55d 7D3準位の励起寿命を測定した。
4.リモートセンシングの研究
 本研究室では,レーザーレーダーやデジタルカメラを用いたリモートセンシングの研究を実施している。今年度は地表付近の大気中物質N2,O2,H2Oのラマン散乱の実験を行った。背景光を減少させるため,レーザーパルスに同期したメカニカルシャッターを作成し,屋内ではN2とO2 とH2Oのラマン散乱光,屋外ではN2とO2のラマン散乱光をそれぞれ観測することに成功し,得られた画像からN2の分極率を求めることができた。
5.マイクロ光ビームの開発研究
 本研究室では,現在,ガラスキャピラリーを用いたマイクロ光ビーム生成の研究を行っている。今年度は,キャピラリーにおけるレーザー光の透過を調べた。411 nm,488 nm,633 nm,670 nmのレーザー光に対し,透過率のキャピラリー出口径への依存性を測定した。特に,光学レンズとキャピラリーを組み合せて,光学レンズの焦点位置による透過率の変化を詳しく測定し,その組み合せにより高い透過率が得られた。
■ Keywords
レーザー分光,超微細構造,同位体シフト,シュタルク効果,共鳴イオン化,質量分離,リモートセンシング,ガラスキャピラリー,マイクロ光ビーム
■ 教授・准教授・講師の公的役職
1.  金 衛国 :核融合科学研究所共同研究員, 東京大学原子核科学研究センター共同研究員
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















金 衛国   教授
理学博士
   2           
 3
 
 
 
 
箕輪 達哉   准教授
理学博士
    2          
 3
 
 
 
 
 0 2  0 0  0  0
(0)
 0
(0)
 0
(0)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














金 衛国   教授
理学博士
  2       
 
 
箕輪 達哉   准教授
理学博士
         
 
 
 0 2  0 0  0  0
(0)
 0
(0)
 0
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
1. 稲場肇,中嶋善晶,保坂一元,大苗敦,洪鋒雷:  光コムによる精度19桁級の周波数合成.  レーザー研究  39 :819 -824 , 2011
2. 保坂一元,安田正美,河野託也,稲場肇,中嶋善晶,大苗敦,赤松大輔,洪鋒雷:  光格子時計と狭線幅レーザ.  光アライアンス  22 :45 -51 , 2011
3. 安田 正美,河野 託也,保坂 一元,稲場 肇,中嶋 善晶,赤松 大輔,大苗 敦,洪 鋒雷:  産総研におけるイッテルビウム光格子時計開発の現状.  電気学会研究会資料. ECT, 電子回路研究会  2011 (61) :7 -10 , 2011
4. 赤松 大輔,中嶋 善晶,安田 正美,保坂 一元,稲場 肇,大苗 敦,洪 鋒雷:  28aRD-5 狭線幅光周波数コムを利用したSrスピン禁制遷移MOTの生成(28aRD 量子エレクトロニクス(周波数標準・イオントラップ),領域1(原子・分子,量子エレクトロニクス,放射線物理)).  日本物理学会講演概要集  66 (0) : , 2011
5. 保坂 一元,稲場 肇,中嶋 善晶,岩國 加奈,安田 正美,河野 託也,赤松 大輔,大苗 敦,洪 鋒雷:  28aRD-4 高速制御可能な光周波数コムを用いた光格子時計用超安定化レーザー光源の開発(28aRD 量子エレクトロニクス(周波数標準・イオントラップ),領域1(原子・分子,量子エレクトロニクス,放射線物理)).  日本物理学会講演概要集  66 (0) : , 2011
6. Feng-Lei Hong,Masami Yasuda,Takuya Kohno,Kazumoto Hosaka,Daisuke Akamatsu,Hajime Inaba,Yoshiaki Nakajima,Kana Iwakuni,Atsushi Onae:  Optical frequency metrology with ytterbium and strontium optical lattice clocks.  2011 30th URSI General Assembly and Scientific Symposium, URSIGASS 2011  : , 2011
7. Masami Yasuda,Takuya Kohno,Kazumoto Hosaka,Hajime Inaba,Yoshiaki Nakajima,Daisuke Akamatsu,Feng-Lei Hong:  Current status of the Yb-171 optical lattice clock at NMIJ, AIST.  TIME AND FREQUENCY METROLOGY III  8132 : , 2011
原著
1. Jin WG, Ono H, Minowa T:  Isotope shifts in high lying levels of Dy I and Er I by high-resolution UV laser spectroscopy.  International Journal of Spectroscopy  2011 :578374 , 2011
2. Jin WG, Ono H, Minowa T:  Hyperfine structure and isotope shift in high-lying levels of Gd I.  J Phys Soc Jpn  80 :124301-4 , 2011
■ 学会発表
国内学会
1. 菅野修太郎,川村将行,小林二千翔,神谷義一,鈴木翔,箕輪達哉,金衛国: Ba原子の高励起状態におけるシュタルクシフトの測定..  日本物理学会第67回年次大会,  西宮市,  2012/03
2. 加藤恭平,金衛国,関口達也,箕輪達哉,池田時浩,小林知洋: ガラスキャピラリーを用いたマイクロレーザービームの生成.  平成23年度日本分光学会年次講演会,  横浜,  2011/12
3. 小林二千翔,川村将行,菅野修太郎,箕輪達哉,金衛国: 高分解能レーザー分光を用いた2電子原子のシュタルク効果の研究.  平成23年度日本分光学会年次講演会,  横浜,  2011/12
その他
1. 金 衛国: 放射能・放射線の基礎知識.  サイエンスセミナー「放射能講座」.千葉サイエンススクールネット主催,  船橋,  2011/11
2. 中嶋善晶,稲場肇,岩國加奈,保坂一元,大苗敦,洪鋒雷: 高速制御によるファイバコムの低位相雑音化.  応用物理学会,第58回応用物理学関係連合講演会,    2011
3. 保坂一元,稲場肇,中嶋善晶,岩國加奈,安田正美,河野託也,赤松大輔,大苗敦,洪鋒雷: 高速制御可能な光周波数コムを用いた光格子時計用超安定化レーザー光源の開発.  日本物理学会,第66回年次大会,    2011
4. 赤松大輔,中嶋善晶,安田正美,保坂一元,稲場肇,大苗敦,洪鋒雷: 狭線幅光周波数コムを利用したSrスピン禁制遷移MOTの生成.  物理学会,第66回年次大会,    2011
  :Corresponding Author
  :本学研究者