2008年度
 理学部 化学科 生物有機化学教室
 Bioorganic Chemistry Laboratory
■ 概要
有機合成を通じて生命現象を考える
研究室紹介
当研究室では大きく分けて次の二つのテーマを中心に研究を行っている。
1.生命を支える生理活性ペプチド独特の、しかもきわめて広範囲な作用を示す生理活性ペプチドの構造と生理活性の関係について研究を行っています。加えて生体内で行われている様々な反応を模倣した有機反応を行っています。
2.「複素環化学」、「光化学」、「不斉化学」をキーワードに「生命現象の解明」から「生活水準の向上」までを視野に入れた新しい基本概念の確立と、「人と環境に優しい」優れた機能材料の開発を行っています。

研究内容
1.生理活性ペプチドに関する研究
現在、独特で、しかもきわめて広範囲な生理活性を示すペプチドの化学は重要な研究対象として様々な研究者の興味を呼び起こしています。当教室では以下の3項目を取り上げ、研究を行っています。
· 1)人の細胞膜は破壊せず、細菌の膜のみを壊する抗菌性ペプチドの合成
· 2)生理活性ペプチドの高次構造モデルのデザインとその合成
· 3)生合成経路を模倣した新規抗菌性環状ペプチドの合成法の開発
2.発光から薬効まで:多機能複素環を開発する
1)生物・化学発光の分子機構の解明
本研究室では、ウミホタルやオワンクラゲ、ホタルイカなど海産発光生物の発光物質に多く含まれる「イミダゾピラジン」と呼ばれる複素環化合物に着目しています。これらの発光物質が化学反応によって光エネルギーを生み出す仕組みの解明と、その知見を基により強く光らせるための条件探索を行っています。
2)生物発光を基盤とした新規機能性発光材料の開発
上記の発光生物がもつ発光物質は、老化や癌の原因となる活性酸素と反応して発光するので活性酸素の検出・定量にも応用できます。そこでこの発光系を利用して細胞内活性酸素の開発を行っています。また、これらの生物発光にみられる優れた発光特性を基礎として、生命現象の可視化プローブや発光デバイスへの応用を視野に入れた新規発光材料の開発を行っています。
3)新規複素環化合物の合成とその生理活性の検討
複素環の適切な位置に水酸基を導入すると極性官能基をもった分子や金属イオンと相互作用できるようになります。この特性を利用して生体必須成分の認識や輸送を行うことができる新しい薬剤の開発を目指しています。
4)熱及び光不斉反応における立体選択性の精密制御
高立体選択的不斉反応の開発は世界中で多くの研究者が取り組んでいます。その多くは反応に直接関与する物質の安定性によって選択性を発現していましたが、分子の会合状態や立体配座、溶媒和構造の変化などの「系全体の秩序」に着目して反応の制御を行おうとする研究はあまり多くありません。このような観点から、当研究室では超臨界流体中を媒体とした不斉光化学反応の研究を行っています。この研究の社会的波及効果は高く、媒体に不活性な二酸化炭素や水を用いてかつクリーンな光エネルギーを利用しているので、究極の環境無負荷型不斉反応系に成り得ると考えています。
■ Keywords
アミノ酸、ペプチド、生理活性、複素環化学、光化学、不斉化学
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















田巻 誠   教授
理学博士
   1         3  
 6
 
 
 
 
齋藤 良太   講師
理学博士
   1 2          1
 6
 
 
 
 
 0 2  0 0  0  1
(0)
 0
(0)
 0
(0)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














田巻 誠   教授
理学博士
  1       
 
 
齋藤 良太   講師
理学博士
  1       1
 
 
 0 2  0 0  0  1
(0)
 0
(0)
 0
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. Tamaki M, Kokuno M, Sasaki I, Suzuki Y, Iwama M, Saegusa K, Kikuchi Y, Shindo M, Kimura M, Uchida Y.:  Syntheses of Low-hemolytic antimicrobial gratisin peptides.  Bioorganic & medicinal chemistry letters  19 :2856-2859. , 2009
2. Saito R, Machida S, Suzuki S, Katoh A:  Synthesis and Spectroscopic Properties of 2,5-Bis(benzoazol-2-yl)pyrazines.  Heterocycles  75 (3) :531-536 , 2008
3. Fujii M, Ishii S, Saito R, Akita H,:  Determination of the absolute structure of albaconol.  Tetrahedron  64 :5147-5149 , 2008
その他
1. Sasaki I, Shirane A, Nakao Y, Hirochi S, Fujita S, Shindo M, Kimura M, Uchida Y, Tamaki M:  Syntheses of gramicidin S analogues consisting of eleven amino acid residues.  Peptide Science 2008  :211-212 , 2009
2. Sasaki I, Kokuno M, Shindo M, Kimura M, Uchida Y, Tamaki M:  Syntheses of gramicidin S analogues containing cis-D-Phe-Pro peptide bond.  Peptide Science 2008  :213-214 , 2009
3. Uchida Y, Kimura M, Shindo M, Sasaki I, Fujita S, Shirane A, Hirochi S, Tamaki M.:  Syntheses and properties of gratisin analogues containing Ala residue.  Peptide Science 2008  :215-216 , 2009
■ 学会発表
国内学会
1. ◎佐々木一郎・中尾由紀・広地咲恵・神藤光野・木村雅浩・打田良樹 田巻 誠: ぺプチド抗生物質グラミシジンSのポリカチオン類似体の合成と性質.  日本化学会第89回春季年会,  千葉,  2009/03
2. 佐々木一郎・藤田真悟・◎田邉智史・神藤光野・木村雅浩・打田良樹・田巻 誠: 新規ターン構造を持つグラミシジンS関連環状ウンデカペプチドの合成と性質.  日本化学会第89回春季年会,  千葉,  2009/03
3. 田巻 誠、佐々木一郎、白根 綾、◎今関雪絵、神藤光野、木村雅浩、打田良樹: ペプチド抗生物質グラチシンの新規類似体の合成とその性質.  日本化学会第89回春季年会,  千葉,  2009/03
4. ◎松村有里子, 岡崎直樹, 齋藤良太, 加藤明良: 2,5-ビス(ベンゾイミダゾール-2-イル)ピラジン類の合成とそれらの蛍光特性.  日本化学会第89春季年会,  千葉,  2009/03
5. 齋藤良太, ◎宇田圭佑, 鴇田麻衣, 石川稚佳子, 佐藤光利: Coelenteramide類縁体のアルドース還元酵素阻害活性.  日本化学会第89春季年会,  千葉,  2009/03
6. 齋藤良太, ◎星麻衣子, 鴇田麻衣, 石川稚佳子, 佐藤光利: 4-アリリデン-1H-イミダゾール-5(4H)-オン類のアルドース還元酵素阻害活性.  日本化学会第89春季年会,  千葉,  2009/03
7. 齋藤良太, ◎鴇田麻衣, 石川稚佳子, 佐藤光利: Botryllazine B類縁体のアルドース還元酵素阻害活性に及ぼす6-アリール基の置換基効果.  日本化学会第89春季年会,  千葉,  2009/03
8. 齋藤良太, ◎宇田圭佑, 鴇田麻衣, 石川稚佳子, 佐藤光利: オワンクラゲ由来発光物質類縁体のアルドース還元酵素阻害活性.  第38回複素環化学討論会,  広島,  2008/11
9. ◎打田 良樹、木村 雅浩、神藤 光野、佐々木一郎、藤田 真悟、白根 綾、
広地 咲恵、田巻 誠: Ala残基を含むグラチシン類似体の合成と性質.  第45回ペプチド討論会,  東京,  2008/11
10. 齋藤良太, ◎鴇田麻衣, 石川稚佳子, 佐藤光利: Botryllazine B誘導体のアルドース還元酵素阻害活性.  第56回有機合成化学協会関東支部シンポジウム,  新潟,  2008/11
11. ◎齋藤良太, 大野綾子: ボロンジピロメテンで修飾した活性酸素検出プローブの合成と化学発光.  第55回有機合成化学協会関東支部シンポジウム,  千葉,  2008/05
12. ◎佐々木一郎、穀野 学、木村 雅浩、神藤 光野、打田 良樹、田巻 誠: cis-D-Phe-Proペプチド結合を含むグラミシジンS類似体の合成.  第45回ペプチド討論会,  東京,  2008/11
13. ◎佐々木一郎、藤田 真悟、白根 綾、広地 咲恵、中尾 有希、木村 雅浩、
神藤 光野、打田 良樹、田巻 誠: 11アミノ酸残基よりなるグラミシジンS類似体の合成と性質.  第45回ペプチド討論会(2008. 11)(東京),  東京,  2008/11
  :Corresponding Author
  :本学研究者