2008年度
 理学部 化学科 構造有機化学教室
 Structural Organic Chemistry Laboratory

教授:
  幅田 揚一
講師:
  桑原 俊介
■ 概要
食虫植物型分子の動的挙動を利用した機能物質の開発
銀イオンと錯体を形成すると芳香環側鎖が銀イオンを包むように構造が変化する食虫植物型分子(銀食い分子)について研究している.この挙動を応用して,錯体を形成するとキラリティーを増大する分子,金属センサーになる分子,二次的包接部位を形成する分子の開発を行っている.食虫植物型分子を「超分子集合体」を構築するための部品として利用する研究も行っている.
直鎖状配位子による超分子集合体の構築
ピリジン配位子を合成し,新しい超分子集合体をつくる研究を行っている.その一例として,ベンゼンをスペーサーとして持つ化合物とCu(hfac)2の2:3錯体は超分子の空孔内にテトラヒドロフランやクロロホルムを二分子包接することを見出している.
新規分子マシンの開発と応用
分子マシンとは, ナノスケールの分子構造体に一定の機械的運動をさせ, その動作により意図した仕事をさせるシステムであり, ナノテクノロジーの究極の目標と考えられている. 本研究では, 分子マシンの構成部品の一つであり, 光で回転する「分子モーター」の新規誘導体の開発を行っている. また, 分子モーターを生体高分子である DNA に結合させ, その高次構造を光照射によって自由に制御すること目指している.
キラル化合物の合成, 絶対配置決定法の開発
近年, 医薬品, 農薬, 食品, さらには機能性材料など, あらゆる分野でキラル化合物を扱うことの重要性が認識されている. 従って, キラル化合物をどのように効率的に合成するか, どのようにその光学純度, 絶対配置を決定するかということは重要な課題である. 本研究では, キラルアミン類, アルコール類の合成法の開発や, NMR, CD を用いた新規絶対配置決定法の開発を行っている.
■ Keywords
超分子化学, 分子認識, 自己組織化, キラル増幅, 分子マシン, 分子モーター, フォトクロミズム
■ 当該年度の研究費受入状況
1.  科学研究費補助金, 若手研究 (B)
 研究課題:分子モーターによる DNA のらせん構造制御  (研究代表者:桑原俊介)
 研究補助金:900000円  (代表)
2.  三菱化学研究奨励基金
 研究課題:DNAのらせん構造制御を目指した新規分子モーターの開発  (研究代表者:桑原俊介)
 研究補助金:1000000円  (代表)
3.  泉科学技術振興財団研究助成金
 研究課題:DNAのらせん構造制御を目指した新規分子機械の開発  (研究代表者:桑原俊介)
 研究補助金:1000000円  (代表)
■ 教授・准教授・講師の公的役職
1.  幅田揚一 :2008 International Izatt-Christensen Award in Macrocyclic Chemistry 選考委員
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  幅田揚一 :社団法人私立大学情報教育協会化学教育FD/IT活用研究委員会委員
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















幅田 揚一   教授
理学博士
   1           
 19
 1
 4
 5
(5)
 
桑原 俊介   講師
博士(理学)
    2          1
(1)
 14
 
 
 
 
 0 1  0 0  0  1
(1)
 1
(0)
 5
(5)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














幅田 揚一   教授
理学博士
  1       
 1
 5
(5)
桑原 俊介   講師
博士(理学)
         1
(1)
 
 
 0 1  0 0  0  1
(1)
 1
(0)
 5
(5)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. Naito J, Kuwahara S, Watanabe M, Decatur J, Bos P H, Van Summeren R P, Ter Horst B, Feringa B L, Minnaard A J, Harada N:  Stereoselective Synthesis of 2,3,7-Trimethylcyclooctanone and Related Compounds and
Determination of Their Relative and Absolute Configurations by the MαNP Acid Method.  Chirality  20 (9) :1053-1065 , 2008
2. Habata Y:  Ten-membered rings or larger with one or more oxygen and sulfur atoms.  Comprehensive Heterocyclic Chemistry III 14  :829-862 , 2008
3. Zhou Y, Kijima T, Kuwahara S, Watanabe M, Izumi T:  Synthesis of Ethyl 5-Cyano-6-hydroxy-2-methyl-4-(1-naphthyl)-nicotinate.  Tetrahedron letters  49 (23) :3757-3761 , 2008
■ 学会発表
国内学会
1. ◎岡崎千瑞子, 細井康弘, 桑原俊介, 幅田揚一: 側鎖にビフェニル基を導入した光学活性な銀食い分子によるキラリティーの増幅.  日本化学会第89春季年会,  船橋,  2009/03
2. ◎霞優希, 桑原俊介, 幅田揚一: 二つのカルボキシフェニル基を配位部位として持つ第三級アミンの合成と各種金属イオンに対する錯形成挙動.  日本化学会第89春季年会,  船橋,  2009/03
3. ◎小倉絹子, 松浦綾, 桑原俊介, 幅田揚一: 配位部位として2個のビフェニルピリジン基を持つキラルな三級アミドの合成とキラリティーの増幅.  日本化学会第89春季年会,  船橋,  2009/03
4. ◎小林麻衣子, 永谷直人, 桑原俊介, 原田宣之, 永次史: DNAの構造制御を目指したペプチド導入分子モーターの開発.  日本化学会第89春季年会,  船橋,  2009/03
5. ◎池田茉莉, 小倉絹子, 桑原俊介, 幅田揚一: 配位部位として二つのピリジン環を持つ光学活性な第三級アミンの水銀錯体によるキラリティーの変化.  日本化学会第89春季年会,  船橋,  2009/03
6. ◎内山 芽育,平岡 孝夫,幅田 揚一: 2本のエチレンオキシド鎖によって二次認識場を形成するテトラアームドサイクレンの合成とアルカリ金属イオン捕捉能.  日本化学会第89春季年会,  船橋,  2009/03
7. ◎熱田裕之, 前原幸枝, 市川健晃, 桑原俊介, 渡辺政隆, 木村純二: MαNP acidを用いた海洋天然物caminosideのアグリコン部の合成研究 (3).  日本化学会第89春季年会,  船橋,  2009/03
8. ◎木崎樹里, 細井康弘, 桑原俊介, 幅田揚一: 側鎖に2-ピリジルメチル基を導入したキラルなテトラアームドサイクレンの合成と金属錯体のキラリティー変化.  日本化学会第89春季年会,  船橋,  2009/03
9. 永谷直人, ◎桑原俊介, 原田宣之, 永次史: 分子モーターを組み込んだオリゴDNAの合成とその機能評価.  日本化学会第89春季年会,  船橋,  2009/03
10. 幅田揚一, ◎菊川薫, 鶴岡弓子, 桑原俊介: 側鎖にフェニルアントラセンを導入したテトラアームドサイクレンの合成と Ag+に対する錯形成挙動.  日本化学会第89春季年会,  船橋,  2009/03
11. 幅田揚一, ◎石井雄大, 岡崎千瑞子, 桑原俊介: 架橋した芳香環側鎖を持つテトラアームドサイクレンの合成と錯形成挙動.  日本化学会第89春季年会,  船橋,  2009/03
12. 幅田揚一, ◎茶村理絵, 池田茉莉, 桑原俊介: α-ピリジルメチルアミノ基を含む光学活性な二座配位子の合成とその金属錯体によるキラリティー変化.  日本化学会第89春季年会,  船橋,  2009/03
13. ◎桑原俊介: DNAの構造制御を目指した新規分子モーター誘導体の合成.  有機合成化学協会関東支部2008年度若手研究者のためのセミナー,  東京,  2008/10
14. ◎池田茉莉, 小倉絹子, 松浦綾, 桑原俊介, 幅田揚一: 二つのピリジルメチル基を配位部位として持つ光学活性な第三級アミンの水銀錯体によるキラリティー変化.  第19回基礎有機化学連合討論会,  大阪,  2008/10
15. ◎鶴岡弓子, 大山洋介, 桑原俊介, 幅田揚一: ナノ三つ葉による有機分子の認識.  第19回基礎有機化学連合討論会,  大阪,  2008/10
16. ◎小林麻衣子, 永谷直人, 桑原俊介, 永次史: DNA の構造制御を目指した新規分子モーターの設計と合成.  第3回バイオ関連化学合同シンポジウム,  横浜,  2008/09
17. ◎岡崎 千瑞子,細井 康弘,幅田 揚一: 光学活性な銀食い分子によるキラリティーの増幅と銀錯体の構造.  第3回ホストゲストシンポジウム,  東京,  2008/06
18. ◎霞 優希,小倉 絹子,松浦 綾,幅田 揚一: 3-ピリジルメチル基を配位部位として持つ配位子の水銀錯体の構造.  第3回ホストゲストシンポジウム,  東京,  2008/06
19. ◎小倉 絹子,松浦 綾,幅田 揚一: アキラルな配位子によるキラリティーの増幅.  第3回ホストゲストシンポジウム,  東京,  2008/06
20. ◎池田 茉莉,小倉 絹子,松浦 綾,幅田 揚一: ピリジルベンジル基を配位部位として持つ光学活性な第三級アミンの水銀錯体によるキラリティー変化.  第3回ホストゲストシンポジウム,  東京,  2008/06
21. ◎池田茉莉,小倉絹子,松浦 綾,幅田揚一: 側鎖としてピリジルベンジル基と3,5-ジフルオロ基を対面に持つテトラアームドサイクレンの金属錯体の構造.  第3回ホストゲストシンポジウム,  東京,  2008/06
22. ◎内山 芽育,平岡 孝夫,幅田 揚一: 銀食い分子の構造変化によって誘起された二次認識場におけるアルカリ金属イオンの認識.  第3回ホストゲストシンポジウム,  東京,  2008/06
23. ◎木崎 樹里,細井 康弘,幅田 揚一: トリアームドサイクレンの銀錯体の構造.  第3回ホストゲストシンポジウム,  東京,  2008/06
24. ◎鶴岡 弓子,大山 洋介,阿部 智子,幅田 揚一: テトラアームドサイクレンの銀錯体による可逆的な錯形成反応.  日本化学会第89春季年会,  船橋,  2009/03
国際学会
1. ◎C. Okazaki, Y. Hosoi, and Y. Habata: SILVER-VOROUS MOLECULES (2): ENHANCEMENT OF CHIRALITY BY THE CHIRAL TETRA-ARMED CYCLENS BEARING A CHIRAL CENTER ON THE SIDE-ARM.  International Symposium on Macrocyclic and Supramolecular Chemistry 2008,  Las Vegas, USA,  2008/07
2. ◎J. Kizaki, Y. Hosoi, and Y. Habata: SILVER-VOROUS MOLECULES (4): SYNTHESIS OF TRI-ARMED CYCLENS AND THE STRUCTURES OF THE SILVER COMPLEXES.  International Symposium on Macrocyclic and Supramolecular Chemistry 2008,  Las Vegas, USA,  2008/07
3. ◎K. Ogura, A. Matsu-ura, and Y. Habata: AMPLIFICATION OF CHIRALITY BY ACHIRAL LIGAND.  International Symposium on Macrocyclic and Supramolecular Chemistry 2008,  Las Vegas, USA,  2008/07
4. ◎M. Uchiyama, T. Hiraoka, and Y. Habata: SILVER-VOROUS MOLECULES (3): BINDING OF ALKALI METAL CATIONS BY THE SECONDARY RECOGNITION SITE.  International Symposium on Macrocyclic and Supramolecular Chemistry 2008,  Las Vegas, USA,  2008/07
5. ◎Y. Habata and Y. Hosoi: SILVER-VOROUS MOLECULES (1): ENHANCEMENT OF CHIRALITY BY THE CHIRAL TETRA-ARMED CYCLENS.  International Symposium on Macrocyclic and Supramolecular Chemistry 2008,  Las Vegas, USA,  2008/07
  :Corresponding Author
  :本学研究者