2008年度
 理学部 化学科 錯体化学教室
 Laboratory of Coordination Chemistry

准教授:
  北澤 孝史
講師:
  加知 千裕
■ 概要
錯体化合物の合成と物性評価
北澤は、金属錯体の新機能発現を指向した化学と現代の錬金術の側面をもつ放射化学との融合をめざして研究を行っていきたいと考えている。すなわち、特定の金属元素にとらわれることなく、3dブロック元素から、4fブロック元素(ランタノイド)および5fブロック元素(アクチノイド)を中心金属とする新規錯体の合成およびその新機能物性の発現を指向した化学と、錬金術的色彩を持つ放射化学を融合し、新しい研究分野を開拓したいと考えている。主な研究テーマは、配位高分子スピンクロスオーバー錯体である。圧力等の外部環境応答性を有するポリマー金属錯体化合物は、光学的および磁性的複合機能性材料として注目されており、化合物に超分子機能を付加することにより、さらに高機能および多機能となる可能性が高い化合物である。超分子機能を有すことにより、スピンクロスオーバー挙動は、ゲスト化学種の有無およびゲスト化学種により誘起される微細なホスト金属錯体の構造変化により大きな変化が期待され、さらに微細な制御が可能となると期待される。この分野において、今後において、解決・実現が望まれる課題としては、ゲスト分子の出し入れにより、スピンクロスオーバー挙動を微細に制御すること。ゲスト分子を制御することにより、微細にスピンクロスオーバー挙動を制御することを可能にすることが,あげられる。さらに、温度、圧力、光などの外部環境変化によるスピンクロスオーバー挙動とゲスト分子に由来するスピンクロスオーバー挙動を微細に統合することも重要な課題である。

加知の研究テーマは、①遅い磁化緩和現象を示す新規分子磁性体の設計と磁性評価、②ランタノイド錯体の合成と発光である。①金属錯体から構成される新しい分子磁性体を創製し、その磁化のダイナミクスに焦点を当てて研究を行なっている。遅い磁化緩和を示す化合物の一つに、「単分子磁石」がある。単独の磁性分子が、あたかも磁石のように振舞う。単分子磁石が示す特徴的な磁化のダイナミクスを、どのように制御できるのか、様々な分子設計・合成から研究を進めている。
1)分子間の相互作用の制御による磁性変換に注目している。分子環境を変える一つの方法として、多孔性化合物の空孔に単分子磁石を配列する方法の開発を行なっている。多孔性化合物の空孔は分子レベルでは非常に特殊な空間であるため、磁性がどのような影響を受けるかを明らかにする。
2)金属錯体では、金属イオンと多様な有機配位子との組み合わせは無限にあり、様々な構造体を自在に構築できる。1次元~3次元のネットワーク構造の分子磁性体を設計・合成し、構造によって磁化の緩和現象がどのように変遷していくかを明らかにする。
②ランタノイド錯体の合成を行い、発光特性を調べている。イミダゾール系配位子を用いた錯体で発光が観測され、配位子の違いで発光特性をどう変化させることができるかに注目して研究を行っている。
■ Keywords
遷移金属錯体、集積型金属錯体、スピンクロスオーバー錯体、分子磁性体、磁性
■ 当該年度の研究費受入状況
1.  科学研究費補助金 若手研究(B)  (研究課題番号:20750051)
 研究課題:多孔性金属錯体空隙でのナノサイズ磁石構築と磁性制御  (研究代表者:加知千裕)
 研究補助金:1600000円  (代表)
2.  私学助成 大学院教員高度化支援研究科特別経費 学生分
 研究課題:配位高分子スピンクロスオーバー錯体の新規物性発現  (研究代表者:小曾根崇(D2))
 研究補助金:600000円  (代表)
3.  文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業「ハイテク・リサーチ・センター整備事業」
 研究課題:新規多機能誘起素材の創製と評価  (研究分担者:北澤 孝史、 加知 千裕)
 研究補助金:5000000円  (分担)
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  北澤孝史 :第58回錯体化学討論会講演賞選考委員
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















北澤 孝史   准教授
理学博士
 1   4       1   3
 15
 
()
 4
 
 
加知 千裕   講師
博士(理学)
    5          
 2
 1
 
 1
 2
 1 0  0 0  1  3
(0)
 1
(0)
 1
(0)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














北澤 孝史   准教授
理学博士
 1      1  3
 
()
 
加知 千裕   講師
博士(理学)
         
 1
 1
 1 0  0 0  1  3
(0)
 1
(0)
 1
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. 北澤孝史、嶋友樹子:  [Fe(CN)6]3-を連結ユニットとする新規なはしご状カドリニウムポリマー錯体のメスバウアースペクトル.  京都大学原子炉実験所 KUR Report  (145) :34-36 , 2009
2. Kawasaki T, Kitazawa T:  Aquadioxodobis(pentane-2,4-dionato)uranium(VI)pyrazine solvate.  Acta Crystallogarahica Section E  2008 (E64) :m673 -m674 , 2008
3. Kawasaki T, Kitazawa T:  Dioxidobis(pentane-2,4-dionato-κ2O,O')(pyridine-4-carbaldehyde oxime-κN1)uranium(VI).  Acta Crystallograhica Section E  2008 (E64) :m788 , 2008
4. Takeshi Kawasaki, Chihiro Kachi-Terajima, Toshiaki Saito, and Takafumi Kitazawa:  Triply Interpenetrated Structure of {MnII(L2)[AgI(CN)2]2}-{MnII(H2O)2[AgI(CN)2]2} (L = 4-CNpy or py-4-aldoxime).  Bulletin of the Chemical Society of Japan  81 :268-273 , 2008
5. Kosone T, Suzuki Y, Kanadani C, Saito T, Kitazawa T:  Structural Isomers of {MnII(L)2[AgI(CN)2]2} (L = 3=methylpyridine or 4-Methypyridine), Bilayer Structure with Binuclear Argentophilic Interaction and Interpenetrated Structure with 1 D Chain Argentophilic Interaction; Synthesis, crystal Structure, and Magnetic Properties.  Bulletin of the Chemical Society of Japan  82(2009) (3) :347-351 , 2009
6. Takashi Kosone, Chihiro Kachi-Terajima, Chikahide Kanadani, Toshiaki Saito, Takafumi Kitazawa:  Isotope Effect on Spin-crossover Transition in New Two-Dimensional Coordination Polymer [FeII(C5H5N)2][AuI(CN)2]2, [FeII(C5D5N)2][AuI(CN)2]2, and [FeII(C5H515N)2][AuI(CN)2]2.  Chemistry Letters  37 (7) :754-755 , 2008
7. Takashi Kosone, Chihiro Kachi-Terajima, Chikahide Kanadani, Toshiaki Saito, and Takafumi Kitazawa:  A Two-step and Hysteretic Spin-crossover Transition in New Cyano-bridged Hetero-metal FeIIAuI 2-Dimensional Assemblage.  Chemistry Letters  37 :422-423 , 2008
8. Xu Q, Zou R.-Q, Zhong R.-Q, Kachi-Terajima C, Takamizawa S:  Cubic Metal-Organic Polyhedrons of Nickel(II) Imidazoledicarboxylate Depositing Protons or Alkali Metal Ions.  Crystal Growth & Design.  8 (7) :2458-2463 , 2008
9. Takamizawa S, Nakata E, Akatsuka T, Kachi-Terajima C, Miyake R:  Structural and Magnetic Study of O2 Molecules Arranged along a Channel in a Flexible Single-Crystal Host Family.  Journal of the American Chemical Society  130 (52) :17882-17892 , 2008
■ 学会発表
国内学会
1. ◎小曾根崇、友利格、 吉田和喜、小野聖太、 金谷親英、 齊藤敏明、北澤孝史: アルキルピリジンを用いたホフマン型類似配位高分子FeII(Alkyl-pyridine)2[AuI(CN)2]2の設計的合成および構造とスピンクロスオーバー挙動の検討.  日本化学会第89春季年会,  船橋,  2009/03
2. ◎友利格, 北澤孝史, 小曾根崇, 金谷親英, 齊藤敏明: Fe2+, [Au(CN)2]-を用いたホフマン型類似配位高分子錯体の合成およびそれらの結晶構造、スピンクロスオーバー挙動の考察.  日本化学会第89春季年会,  船橋,  2009/03
3. ◎齊藤敏明, 加知千裕, 金谷親英, 西尾 豊, 北澤孝史, 宮坂 等: 異方性と交換相互作用の競合によるフラストレーションを持つ層状2次元分子
磁石ネットワーク化合物のダイナミクスII.  日本物理学会第64回年次大会,  東京,  2009/03
4. ◎猿田槙吾, 小曾根崇、 北澤孝史、 稲垣尭、持田智行: デカメチルフェロセニウム塩における分子運動と相転移.  第2回分子科学討論会,  福岡,  2008/09
5. ◎北澤孝史、嶋友樹子: シアノ架橋Fe(III)-Gd(III) 錯体のGd-155およびFe-57メスバウアースペクトル.  2008年日本放射化学会年会第52回放射化学討論会,  広島,  2008/09
6. ◎北澤孝史、川﨑武志: 2,2'-bpyを含むウラン(VI)錯体の合成と結晶構造.  2008年日本放射化学年会第52回放射化学討論会,  広島,  2008/09
7. ◎岸田貴範、小曾根崇、金谷親英、 斉藤敏明、 北澤孝史: ホフマン型スピンクロスオーバー錯体 Fe(pyridine)2M(CN)4 (M = Pd, Pt)  の磁気挙動.  第2回分子科学討論会,  福岡,  2008/09
8. ◎岸田貴範, 小曾根崇, 金谷親英, 斉藤敏明、北澤孝史: Spin Crossover 挙動を示すFeII-M(M=PdII,PtII)系配位高分子の合成及び物性評価.  第58回錯体化学討論会,  金沢,  2008/09
9. ◎齊藤敏明、加知千裕、金谷親英、北澤孝史、宮坂 等: 異方性と交換相互作用の競合によるフラストレーションを持つ層状2次元分子磁石ネットワーク化合物のダイナミクス.  日本物理学会2008年秋季大会,  盛岡,  2008/09
10. ◎北澤孝史、 嶋友樹子: [Fe(CN)6]3-を連結ユニットとする新規なはしご状カドリニウムポリマー錯体のメスバウアースペクトル.  平成20年度KUR専門研究会「短寿命核および放射線を用いた物性研究(I)」,  熊取,  2008/11
11. ◎猿田慎吾, 小曾根崇, 北澤孝史、 持田智行: デカメチルフェロセニウム塩における相転移ダイナミックス.  第58回錯体化学討論会,  金沢,  2008/09
国際学会
1. ◎Rodriguez-Valamanzan J.A, Castro M, Palacios E, Kitazawa T: Structural origin of the spin crossover properties in cyanide bridged polymeric compounds.  The 11th International Conference on Molecule-based Magnets,  florence, Italy,  2008/10
2. ◎Kachi-Terajima C, Saito T, Kanadani C, Kitazawa T, Miyasaka H: MnIII salen-type single-molecule magnet fixed in a two-dimensional network.  The 11th International Conference on Molecule-based Magnets,  Florence, Italy,  2008/09
3. ◎Kosone T, Kanadani C, Saito T, KItazawa T: Synthesis, crystal structures, magnetic properties and fluoresent emission of two-dimesnional bimetallic coordination frameworks FeII(3-floropyridine)2[AuI(CN)2]2 and MnII(3-fluoropyridine)2[AuI(CN)2]2.  The 11th International Conference on Molecule-based Magnets,  Florence, Italy,  2008/09
4. ◎Kosone T, Kanadani C, Saito T, Kitazawa T: Spin crossover behavior in two-dimensional bimetallic polymer FeII(3-bromo-4-picoline)2[AuI(CN)2]2: synthesis, crystal structure, and magnetic properties.  The 11th International Conference on Molecule-based Magnets,  Florence, Italy,  2008/09
その他
1. ◎加知千裕, 齊藤敏明, 金谷親英, 北澤孝史, 宮坂等: 二次元ネットワーク構造に埋め込まれたMnサレン錯体の単分子磁石挙動.  第2回 東邦大学複合物性研究センターシンポジウム(新規多機能有機素材の創成と評価),  船橋,  2008/10
2. ◎齊藤敏明,加知千裕,金谷親英,北澤孝史,宮坂等: フラストレーションを持つ2次元強磁性的分子磁石ネットワークのダイナミクス.  第2回 東邦大学複合物性研究センターシンポジウム(新規多機能有機素材の創成と評価),  船橋,  2008/10
3. ◎猿田槙吾,小曾根崇,北澤孝史,持田智行: デカメチルフェロセニウム塩における相転移挙動および結晶構造.  第2回東邦大学複合物性研究センターシンポジウム「新規多機能有機素材の創成と評価」文部科学省ハイテク・リサーチ・センター整備事業,  船橋,  2008/10
4. ◎岸田貴範,小曾根崇,金谷親英,齊藤敏明,北澤孝史: スピンクロスオーバー挙動を示すホフマン型配位高分子Fe(py)2M(CN)4 (M=Ni,Pd,Pt)の結晶構造と同位体効果.  第2回東邦大学複合物性研究センターシンポジウム「新規多機能有機素材の創成と評価」文部科学省ハイテク・リサーチ・センター整備事業,  船橋,  2008/10
5. ◎山田大介,北澤孝史: Cu(CN)42-ユニットを含むスピンクロスオーバー錯体の合成.  第2回東邦大学複合物性研究センターシンポジウム「新規多機能有機素材の創成と評価」文部科学省ハイテク・リサーチ・センター整備事業,  船橋,  2008/10
6. ◎佐藤ひとみ,加知千裕,高垣秀次,北澤孝史: 新規スピンクロスオーバー配位高分子 {Fe(L)2[Cu(CN)2]2}n の合成およびニトロオキサイドラジカル配位子 NIT4Py の合成.  第2回東邦大学複合物性研究センターシンポジウム「新規多機能有機素材の創成と評価」文部科学省ハイテク・リサーチ・センター整備事業,  船橋,  2008/10
7. ◎北澤孝史,川﨑武志: 2,2-bpyを結晶溶媒とするU(VI)錯体.  2回東邦大学複合物性研究センターシンポジウム「新規多機能有機素材の創成と評価」文部科学省ハイテク・リサーチ・センター整備事業,  船橋,  2008/10
  :Corresponding Author
  :本学研究者