2008年度
 薬学部 薬化学教室
 Department of Organic Chemistry

教授:  秋田 弘幸
准教授: 加藤 恵介
講師:  藤井 幹雄
■ 概要
生体触媒及び金属触媒を用いる新規反応の開発とその生理活性化合物合成への応用
近年,不斉炭素を有する医薬品が創製されるとその光学活性体の合成が必要とされ,その重要性は過去の薬害事例からも今後益々大きくなることが予想されます。本研究室の研究方針は生理活性を有する多官能性光学活性天然物を合成の標的化合物として選び,合成にあたつては基礎研究の一面から高い選択性を示す新反応の開拓,更に生体触媒(例えば微生物や酵素)の持つ優れた物質変換機能を相補的に利用して,より有効な化合物の創製へ努め,その間に見出された基礎的な反応を普遍化することです。本年度は更に金属触媒と生体触媒を相補的に組み合わせることにより複数の不斉炭素を有する光学活性な生理活性化合物の合成研究を行ないました。
 平成20 年度は次のような研究を行いました。
1.光学活性テルペン類の合成研究
デカリン骨格を有する光学活性で生物活性を有するテルペン類の合成を目的として,その重要な合成中間体を酵素化学的手法を用いて効率的に合成し,それより(+)-albaconol,(-)-copalic acid等の生理活性天然物の合成を行つた。
2.隣接基関与を利用した末端アセチレンのオキシカルボニル化反応とその不斉触媒化及び天然物合成への応用
 4-イン-1-オール類,4-イン-1-オン類及びプロパギルアセテートをPd(Ⅱ)/p- ベンゾキノン/CO 条件下で処理すると分子内の酸素原子の隣接基関与により環化ーカルボニル化反応が起こり,その不斉触媒化を行なつた。その応用研究として (+)-bakkenolide A の全合成を達成した。
3.酵素反応の物質変換を基盤とする複素環含有の天然物合成
 粘液細菌より単離された抗真菌抗生物質(+)-myxothiazol A, (+)-myxothiazol Z, 及びcystothiazol A からの代謝産物、抗菌活性物質(+)-asperlin, (-)-indolmycin, (-)-5-methoxyindolmycin の全合成を達成した。
4.金属触媒(Pt, Au)によりアセチレン系化合物に対する新規反応の開拓
■ Keywords
光学活性化合物,全合成,新反応の開拓,生体触媒,金属触媒,抗生物質
■ 当該年度の研究費受入状況
1.  平成20 年度学術研究高度化推進経費―オープン・リサーチ・センター
 研究課題:細胞機能制御システムの破綻による老化関連疾患発症の分子機構と予防・治療に関する研究  (研究分担者:秋田弘幸)
 研究補助金:7300000円  (分担)
■ 教授・准教授・講師の公的役職
1.  秋田弘幸 :厚生労働省薬事,食品衛生審議会臨時委員
■ 当該年度の主催学会・研究会
1.  第12回生体触媒化学シンポジウム  (実行委員長 : 生体触媒化学研究会シンポジウム実行委員会代表 秋田弘幸 )  ,船橋  2008/12
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  秋田弘幸 :生体触媒化学シンポジウム幹事,有機合成化学協会関東支部幹事
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















秋田 弘幸   教授
  1  13    2      4
 23
 1
 
 
 
加藤 恵介   准教授
薬学博士
 1  3 3          2
 10
 
 
 
 
藤井 幹雄   講師
博士(理学)
  1 2           5
 6
 
 
 
 
 1 5  0 2  0  11
(0)
 1
(0)
 0
(0)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














秋田 弘幸   教授
     2    4
 1
 
加藤 恵介   准教授
薬学博士
 1 3       2
 
 
藤井 幹雄   講師
博士(理学)
  2       5
 
 
 1 5  0 2  0  11
(0)
 1
(0)
 0
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. 田中佐知子,渡辺紫織,古谷恵子,野村琢磨,貝崎明日香,伊藤克俊,藤井幹雄,堀由美子,Nasrin Actor,青木公子,沼澤聡,鳥居塚和生,荒川秀俊,伊田喜光,吉田武美:  メチレンジオキシアンフェタミン(MDA)抗体の作製とその抗体の関連化合物との反応性.  法科学技術  13 (2) :125-132 , 2008
2. K. Takahashi, M. Midori, K. Kawano, J. Ishihara, S. Hatakeyama,:  Entry to heterocycles based on indium-catalyzed Conia-ene reactions: asymmetric synthesis of (-) salinos-poramide A.  Angewandte Chemie International Edition  47 :6244 , 2008
3. T. Kusakabe, K. Kato, S. Motodate, S. Takaishi, H. Akita:  Conversion of Optically Active Hydrindanone to (+)-Bakkenolide-A.  Chemical & Pharmaceutical Bulletin  56 :1436-1437 , 2008
4. K. Kato, R. Teraguchi, S. Motodate, A. Uchida, T. Mochida, T. A. Peganova, N. V. Vologdin, H. Akita:  meso-Phbox-Pd(II) Catalyzed Tandem Carbonylative Cyclization of 1-Ethynyl-1- propargyl AcetateK.  Chemical communications (Cambridge, England)  :3687-3689 , 2008
5. M. Fujii, K. Egawa, Y. Hirai, M. Kondo, H. Akita, , K. Nose, K. Toriizuka, Y. Ida:  First synthesis of racemic methylophiopogonanone B and its inhibitory activity of hypoxia-induced factor-1alpha.  Heterocycles  78 :207-212 , 2009
6. I. Araya and H. Akita:  Applicability of Methyl 2,3,4-tri-O-benzoyl-1-methanesulfonyl--D- glucopyranuronate as a novel quaternary glucuronyl reagent for tertiary amines.  Heterocycles  Heterocycles :1213-1223 , 2008
7. K. Kato, T. Kobayashi, T. Fujinami, S.Motodate, T. Kusakabe, T. Mochida, H. Akita:  New Cationic Bisoxazoline-Au(III) Complex Catalyzed Cycloisomerization of 1-Allenyl-1-ethynyl Acetate.  Synlett  (7) :1081-1085 , 2008
8. K. Kato, S.Motodate, S. Takaishi, T. Kusakabe, H. Akita:  Parallel Kinetic Resolution of Propargyl Ketols: Formal Synthesis of (+)-Bakkenolide-A

2008, 64, 4627-4636.  Tetrahedron  64 (20) :4627-4636 , 2008
9. Fujii M, Ishii S, Saito R, Akita H,:  Determination of the absolute structure of albaconol.  Tetrahedron  64 :5147-5149 , 2008
10. Y. Iwaki, M. Kaneko, H. Akita:  Total Synthesis of (+)-Myxothiazols A and Z.  Tetrahedron Asymmetry  20 :298-304 , 2009
11. Y. Iwaki, M. Kaneko, H. Akita:  First Synthesis of (+)-Myxothiazol A.  Tetrahedron Letters  49 :7024-7026 , 2008
12. S. Nagumo, Y. Ishii, G. Sato, M. Mizukami, M. Imai, N. Kawahara, H. Akita:  8-Endo-Selective Friedel-Crafts Cyclization of Vinyloxiranes with Co2(CO)6-Complexed Acetylene.  Tetrahedron Letters  50 :26-28 , 2009
13. H. Akaike, H. Horie, K. Kato, H. Akita:  Total synthesis of (+)-asperlin.  Tetrahedron:Asymmetry  19 (9) :1100-1105 , 2008
14. N. Sutou, K. Kato, H. Akita:  A concise synthesis of (−)-indolmycin and (−)-5-methoxyindolmycin.  Tetrahedron:Asymmetry  19 :1833-1838 , 2008
15. Y. Iwaki, S. Yamamura, H. Akita:  Asymmetric Syntheses and Structure Elucidation of Cystothiazole A Metabolites of the Myxobacterium Cystobacter fuscus.  Tetrahedron:Asymmetry  19 :2192-2200 , 2008
総説及び解説
1. 加藤恵介, 秋田弘幸:  末端アセチレンの分子内オキシ-カルボニル化反応:不斉触媒化およびタンデム型反応への応用.  有機合成化学協会誌  67 :14 -23 , 2009
2. 加藤恵介、秋田弘幸:  末端アセチレンの分子内オキシーカルボニル化反応:不斉触媒化
およびタンデム型反応への応用.  有機合成化学協会誌  67 :14-23 , 2009
3. H. Akita:  Syntheses of Peptidyl Nucleoside Antibiotic.  Heterocycles  77 :67-83 , 2009
■ 学会発表
国内学会
1. ◎藤原直子、風野弥生、君島有俊、尾能満智子、秋田弘幸: Bis-osmundalactone の合成研究.  第129 回日本薬学会,  京都,  2009/03
2. ◎菊池良輔、藤井幹雄,秋田弘幸: Piericidin A1 および B1 の合成研究.  第129 回日本薬学会年会,  京都,  2009/03
3. ◎石井脩悠、藤井幹雄,秋田弘幸: 酵素反応を基盤としたTauranin の合成.  第129 回日本薬学会年会,  京都,  2009/03
4. ◎藤井幹雄,秋田弘幸: 芳香環の転移反応を利用したビサボラン型セスキテルペンの合成研究.  第129 回日本薬学会年会,  京都,  2009/03
5. ◎藤井幹雄, 石井脩悠, 秋田弘幸: 酵素反応による光学分割を基盤とする複合型テルペンBE-40644の合成研究.  第89回日本化学会年会,  船橋,  2009/03
6. ◎秋田弘幸: 加水分解酵素を用いる生理活性天然物の合成.  日本化学会 第89 春季年会,  船橋,  2009/03
7. ◎小林卓也、加藤恵介、本舘諭、持田智行、秋田弘幸: Box-PdII錯体によるプロパルギルアルコールの分子間メトキシ-カルボニル化反応とこれを利用した(±)-Annularin Gの合成.  日本薬学会第129年会,  京都,  2009/03
8. ◎日下部太一、加藤恵介、持田智行、秋田弘幸: プロパルギルケトンの環化異性化反応.  日本薬学会第129年会,  京都,  2009/03
9. ◎彦坂 律子, 張 淑芸, 菅野 裕一郎, 加藤 恵介, 秋田 弘幸, 井上 義雄: 新規合成ステロイド化合物の性ホルモン受容体への影響.  日本薬学会第129年会,  京都,  2009/03
10. ◎本舘諭、加藤恵介、小林卓也、持田智行、秋田弘幸: Box-PdII錯体によるホモプロパルギルアルコールの分子間メトキシ-カルボニル化反応.  日本薬学会第129年会,  京都,  2009/03
11. 加藤恵介、◎本舘諭、小林卓也、持田智行、秋田弘幸: Box-PdII錯体による単純な末端アルキンの分子間メトキシ-カルボニル化反応とこれを利用した(±)-Annularin Gの合成.  日本薬学会第129年会,  京都,  2009/03
12. ◎菊地良輔, 藤井幹雄, 秋田弘幸: Piericidin A1およびB1の合成研究.  第12回生体触媒化学シンポジウム,  千葉,  2008/12
13. ◎藤井幹雄, 北澤 悠, 秋田弘幸: リパーゼによる光学分割を利用したビサボラン型セスキテルペンの合成研究.  第12回生体触媒化学シンポジウム,  千葉,  2008/12
14. 岩城雪、金子正廣、◎秋田弘幸: Myxothiazols A 及び Z の全合成.  第34回反応と合成の進歩シンポジウム,  京都,  2008/11
15. ◎日下部太一、藤波赳生、本舘諭、加藤恵介、秋田弘幸、持田智行: カチオニックビスオキサゾリン-Au(III)錯体によるアレニン類の環化-異性化反応.  第34回反応と合成の進歩シンポジウム,  京都,  2008/11
16. 須藤規之、加藤恵介、秋田弘幸: (-)-Indolmycin, (-)-5-Methoxyindolmycin 及び (+)-Cystothiazole A の全合成.  第38回複素環化学討論会,  福山,  2008/11
17. ◎加藤恵介、寺口流平、内田朗、持田智行、秋田弘幸: Boxリガンドにより制御される1,4-および1,5-ジイン構造を有するプロパルギルアセテートのタンデム型カルボニル化環化反応.  第94回有機合成シンポジウム,  東京,  2008/11
18. ◎日下部太一,加藤恵介,本舘諭、秋田弘幸: 不斉環化―カルボニル化反応を利用した(+)-BakkenolideAの全合成.  第52回香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会,  板倉,  2008/10
19. 秋田弘幸: 加水分解酵素による物質変換を基盤とした天然物合成.  第52回香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会,  板倉,  2008/10
20. ◎石井脩悠、藤井幹雄、秋田弘幸: 酵素化学的なTauraninの合成研究.  第52回香料・テルペンおよび精油に関する討論会,  板倉,  2008/10
21. ◎藤井幹雄、秋田弘幸: リパーゼによる光学分割を利用したビサボラン型セスキテルペンの合成研究.  第52回香料・テルペンおよび精油に関する討論会,  板倉,  2008/10
22. ◎日下部太一、加藤恵介、小林卓也、秋田弘幸: アセチル基を有するプロパルギルアセテートの環化反応.  第52回日本薬学会関東支部シンポジウム,  野田,  2008/10
23. ◎本舘諭、加藤恵介、小林卓也、秋田弘幸: ホモプロパルギルアルコールの分子間メトキシ‐カルボニル化反応.  第52回日本薬学会関東支部シンポジウム,  野田,  2008/10
24. ◎藤井幹雄,三宅隆弘, 石井脩悠,宇田圭佑,木越英夫,秋田弘幸: 加水分解酵素の物質変換機能を基盤とする生理活性を有するデカリン型テルペン類の合成.  第50回天然有機化合物討論会,  福岡,  2008/09
25. ◎日下部太一、加藤恵介、本館諭、持田智行、秋田弘幸: 金触媒を用いた1,1-ジエチニルアセテートのダブルWackerタイプの反応および1-アレニル-1-エチニルアセテートの環化-異性化反応.  第55回有機合成化学協会関東支部シンポジウム,  野田,  2008/05
26. ◎石井脩悠・藤井幹雄、秋田弘幸: 酵素化学反応を基盤とするalbaconolの両鏡像体の全合成.  第55回有機合成化学協会関東支部会,  千葉,  2008/05
27. ◎石井脩悠, 藤井幹雄, 秋田弘幸: 酵素化学的なTauraninの合成研究.  第12回生体触媒化学シンポジウム,  千葉,  2008/12
国際学会
1. ◎Akita Hiroyuki: Total synthesis of (-)-Indolmycin and (+)-Cystothiazole A.  XXth French-Japanese Symposium on Medicinal and Fine Chemistry (FIS-2008),  Bordeaux, France,  2008/09
  :Corresponding Author
  :本学研究者