薬学部 薬品物理分析学教室
Department of Biophysical Chemistry
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■ 概要
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本教室では、光感受性タンパク質を用いて様々な生体機能の光制御を実現し、創薬・医療への応用を図るべく、主として微生物由来の光センサータンパク質に関する基礎研究を行っている。
【光活性化アデニル酸シクラーゼの構造と機能】
光活性化アデニル酸シクラーゼ(PAC, Photoactivated Adenylyl Cyclase)は、単細胞鞭毛藻ミドリムシ(Euglena gracilis)の光回避反応センサーとして発見されたフラビンタンパク質である(Iseki et al. (2002) Nature 415, 1047-1051)。PACはGタンパク質等を介することなく光で直接活性化される特異なアデニル酸シクラーゼであり、これを任意の細胞に発現させることにより、その細胞のcAMP応答現象を光で人為的に制御することができると期待される。実際、これまでに神経細胞、卵母細胞、ヒト培養細胞、ショウジョウバエ個体等においてPACの機能的発現が試みられ、その成功例が報告されてきた(Nagahama et al. (2007) Neurosci. Res. 59, 81-88; Schröder-Lang et al. (2007) Nat. Methods. 4, 39-42)が、医療分野への応用を推進するためにはさらに精緻な制御の実現が望まれており、そのためには原子レベルでの構造解明とそれに基づく機能改変が必要だが、ミドリムシのPACでは様々な困難があり実現していない。そこで我々は、最近バクテリアゲノム上に見出された光活性化アデニル酸シクラーゼ様配列に注目し、それらの大量発現系を構築するとともに、生化学的特性の解明を進めている。
【新規チャネルロドプシンの探索と機能解析】
チャネルロドプシン(Channelrhodopsin)は、単細胞緑藻クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)の走光性センサーとして発見された古細菌型ロドプシンである(Nagel et al. (2002) Science 296:2395-2398; Sineshchekov et al. (2002) PNAS 99:8689-8694; Suzuki et al. (2003) BBRC 301:711-717)。チャネルロドプシンは光依存的に開口する陽イオンチャネルとして機能することが知られ、これを発現させた神経細胞では光照射により脱分極を引き起こすことが可能で、新しい神経刺激ツールとして脚光を浴びている(Deisseroth (2011) Nat Methods 8, 26-29)。これまでに、遺伝子工学的改変により波長特性や開口キネティクスの異なるチャネルロドプシンが作り出されているほか、クラミドモナス近縁生物から幾つかの新しいチャネルロドプシンが得られているが、より優れた特性を持つチャネルロドプシンが天然資源中に存在することは想像に難くない。そこで我々は様々な藻類からチャネルロドプシンを探索・同定し、その電気生理学的特性の解明を進めている。
【未解明光センサータンパク質の探索】
現在、光制御ツールとして注目を集めている上記2種類の光感受性タンパク質は、微生物の光応答現象の追究という純粋な基礎研究の結果としてもたらされたものである。我々は、これらに続く真に新しい光感受性タンパク質を見出すべく、未解明の光応答現象に注目し、その光センサー同定に向けて研究を進めている。特に注目すべきはPACの働き(ミドリムシの光忌避反応)とは対を為すと考えられるミドリムシの光集合反応で、このセンサーは光が消えた時に駆動されるOFFスイッチとしての機能を有するものと考えられ、もし新規な制御メカニズムが存在すれば新しい光制御ツール創成につながるものと期待される。
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■ Keywords
光生物学, 生体機能光制御, オプトジェネティクス, 光受容体, cAMP, アデニル酸シクラーゼ, ロドプシン, 藻類
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■ 当該年度の研究費受入状況
1.
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科学研究費補助金 基盤研究(C)
(研究課題番号:22570159)
研究課題:光活性化アデニル酸シクラーゼの活性化機構の解明
(研究代表者:伊関峰生)
研究補助金:1040000円 (代表)
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■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 |
刊行論文 |
著書 |
その他 |
学会発表 |
その他 発表 |
和文 | 英文 |
和文 | 英文 |
国内 | 国際 |
筆 頭 | 共 著 | 筆 頭 | 共 著 |
筆 頭 | 共 著 | 筆 頭 | 共 著 |
筆 頭 | 共 著 |
演 者 | 共 演 | 演 者 | 共 演 |
演 者 | 共 演 |
高橋 哲郎
教授
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| 1 | | 1 |
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伊関 峰生
准教授
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3
(1)
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黒田 潤
助教
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計 |
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研究者名 |
刊行論文 |
著書 |
その他 |
学会発表 |
その他 発表 |
和 文 | 英 文 |
和 文 | 英 文 |
国 内 | 国 際 |
筆 頭 | 筆 頭
| 筆 頭 | 筆 頭
| 筆 頭 |
演 者 | 演 者
| 演 者 |
高橋 哲郎
教授
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伊関 峰生
准教授
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黒田 潤
助教
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計 |
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( ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
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( ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
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■ 刊行論文
原著
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1.
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Tanimoto S, Sugiyama Y, Takahashi T, Ishizuka T, Yawo H.:
Involvement of glutamate 97 in ion influx through photo-activated channelrhodopsin-2.
Neuroscience Research
75
:13
-22
, 2013
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2.
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Yasukawa Hiro, Konno Noriko, Haneda Yukari, Yamamori Baku, Iseki Mineo, Shibusawa Mami, Ono Yasushi, Kodaira Ken-ichi, Funada Hisashi, Watanabe Masakatsu:
Photomanipulation of antibiotic susceptibility and biofilm formation of Escherichia coli heterologously expressing photoactivated adenylyl cyclase.
The Journal of General and Applied Microbiology
58
(3)
:183
-190
, 2012
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総説及び解説
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1.
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八尾寛,谷本早希,石塚徹,高橋哲郎:
光電変換タンパク質チャネルロドプシンの動作メカニズム.
生物物理
52
(5)
:226
-229
, 2012
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■ 学会発表
国内学会
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1.
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伊関峰生, 松永 茂, 渡辺正勝:
光センサーとしてのフラビンタンパク質: 光活性化アデニル酸シクラーゼの構造と機能を中心に.
日本植物生理学会,
岡山,
2013/03
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2.
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Tatsuya Iwata, Shota Ito, Mineo Iseki, Masakatsu Watanabe, Hideki Kandori:
Structural changes of hydrogen-bonding environment upon the photoreaction of the BLUF domains.
The Biophysical Society of Japan,
Nagoya,
2012/09
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3.
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Naoyuki Miyazaki, Mineo Iseki, Kohji Hasegawa, Akihiro Narita, Shin-ichi Adachi, Masakatsu Watanabe, Kenji Iwasaki:
From purified protein structures to in situ structures using EM.
The Biophysical Society of Japan,
Nagoya,
2012/09
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