2008年度
 薬学部 薬品製造学教室
 Department of Synthetic Organic Chemistry
■ 概要
アルツハイマー症に関わるアミロイドタンパクや標的化DDS を目指した機能性化合物の設計,合成と生物評価を行っている。さらに,アルカロイドなどの天然物や医薬品の中に多く出現するインドール骨格の合成,インドール骨格への側鎖の導入,および天然物や創薬のためにリード化合物の合成を通して新しい反応性,合成法の開発を中心として研究を行っている。またアミノ酸,糖を原料とする,新規反応の開発,および関連する化合物のキラリティーに関する研究も行っている。
1.アミロイドタンパク凝集阻害剤の研究
 アミロイドタンパクの凝集が,アルツハイマー症発現に深く関わることが知られている。我々が開発した独自の評価法を用いることで,その凝集阻害物質を設計,合成し生物評価を行い,治療薬候補化合物を見いだすことを目指している。
2.機能性脂質分子の合成と標的化DDS への応用に関する研究
 分子認識能を付与した機能性脂質の設計と効率的な合成が進行中である。それらを応用し,標的細胞や臓器に適切な薬物を送り込む方法の開発を意図している。
3.インドールアミン 2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤の開発
 インドールアミン 2,3-ジオキシゲナーゼは,トリプトファン代謝酵素である。トリプトファンは免疫細胞の活性化には必須のアミノ酸であるため,この酵素が必要以上に活性化すると免疫機能の低下をきたす。従って,この酵素の強力な阻害剤開発は,新しい作用機序による抗癌剤の開発につながる。我々の開発した新しいトリプトファン合成法を利用して,この阻害剤の開発を試みる。
4.水溶性化合物の水溶液中での反応の開発
 アミノ酸の様に極性が高く水溶性の低分子生体成分を原料とした合成は,官能基を保護した後,有機溶媒中で反応を行うのが常識であった。我々はこの常識に反して,アミノ酸を保護することなくしかも水溶液中での反応を行えば,天然物の全合成の行程数が大幅に短縮出来ることを見いだした。この研究を通して,保護基を用いない有機合成化学の新しい分野を開拓しようとしている。
5.抗MRSA 活性を有するブロモメチルチオインドール類の合成研究
 我々が開発した全く無臭な位置選択的メチルチオ化反応,及びインドール骨格への位置選択的なブロモ基導入反応を組み合わせ,海草から得られた非常に強い抗MRSA 活性を示すブロモメチルチオインドール類(MC5-8)類の全合成に成功した。合成化合物は共同研究により詳細な抗菌活性を評価し,その抗菌活性の本態を解明する予定である。現在,より有効な化合物の創製を目指した新規化合物の合成を検討している。
■ Keywords
アルツハイマー症,アミロイドタンパク,凝集阻害剤,機能性脂質,標的化薬物送達法,インドール, アミノ酸,水,インドール 2,3-ジオキシゲナーゼ,トリプトファン
■ 当該年度の研究費受入状況
1.  科学研究費基盤C  (研究課題番号:20590014)
 研究課題:無保護アミノ酸とアルデヒドの反応:立体選択的1,2-アミノアルコールの新合成法  (研究代表者:横山祐作)
 研究補助金:1300000円  (代表)
その他
1.  オープンリサーチセンター
 研究課題:加齢と環境による疾患発症の分子機構と予防・治療に関する基盤研究  (研究分担者:横山祐作)
 研究補助金:4000000円  (分担)
■ 教授・准教授・講師の公的役職
1.  奥野洋明 :産業技術総合研究所客員研究員, カイロ大学理学部学位審査海外委員
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  横山祐作 :構造活性相関部会常任幹事 ・ 第37回構造活性相関シンポジウム実行委員長、ファルマシア編集アドバイザー
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















奥野 洋明   教授
              
 
 
 
 
 
横山 祐作   准教授
薬学博士
              1
()
 6
()
 1
()
 1
()
 
()
 
()
鈴木 英治   講師
博士(薬学)
              2
(1)
 
()
 1
()
 
()
 
()
 
()
 0 0  0 0  0  3
(1)
 2
(0)
 0
(0)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














奥野 洋明   教授
         
 
 
横山 祐作   准教授
薬学博士
         1
()
 1
()
 
()
鈴木 英治   講師
博士(薬学)
         2
(1)
 1
()
 
()
 0 0  0 0  0  3
(1)
 2
(0)
 0
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. Makoto Shirakawa, Tetsuya Yamamto, Kei Nakai, Kenichi Aburai, Sho Kawatobi, Takao Tsurubuchi, Yohei Yamamoto, Yuusaku Yokoyama, Hiroaki Okuno and Akira Matsumura:  Synthesis and evaluation of a novel liposome containing BPA-peptide conjugate for BNCT.  Applied Radiation and Isotopes  67 (1) :S88-90 , 2009
■ 学会発表
国内学会
1. ◎川飛翔, 八木信宏, 横山祐作, 奥野洋明: VIP修飾リポソームによる腫瘍細胞選択的な薬物送達.  日本薬学会第129年会,  京都,  2009/03
2. ◎村上 泰興,今井 信行,三浦 剛,杉村 隆,若林 敬二,戸塚 ゆ加里,
羽田 紀康,横山 祐作,鈴木 英治,満長 克祥: Norharman とアニリン由来の変異原性物質、9-(4-Aminophenyl)-9H-β-carboline、1の化学的構造決定.  日本薬学会第129年会,  京都,  2009/03
3. ◎白川 真,山本 哲哉,中井 啓,横山 祐作,奥野 洋明: ホウ素中性子補足療法(BNCT)における新規薬剤ホウ素リポソームの開発と評価.  日本薬学会第129年会,  京都 日本,  2009/03
4. ◎鈴木 貴文,横山 祐作,滝川 修,奥野 洋明: Indoleamine 2,3-Dioxygenase(IDO)阻害剤の開発 Part 2.  日本薬学会第129年会,  京都 日本,  2009/03
5. ◎鈴木貴文, 横山祐作, 滝川修, 奥野洋明: Indoleamine 2,3-Dioxygenase(IDO)阻害剤の開発Part2.  日本薬学会第129年会,  京都,  2009/03
6. 白川真, 山本哲哉, 中井啓, 横山祐作, 奥野洋明: ホウ素中性子補足療法(BNCT)における新規薬剤ホウ素リポソームの開発と評価.  日本薬学会第129年会,  京都,  2009/03
7. ◎前田 梨紗,横山 祐作,奥野 洋明: 多価アルコールの水溶液中のエステル化; Part3.  日本薬学会第129年会,  京都 日本,  2009/03
8. ◎前田梨紗, 横山祐作, 奥野洋明: 多価アルコールの水溶液中でのエステル化:Part3.  日本薬学会第129年会,  京都,  2009/03
9. ◎鈴木英治, 中越雅道, 近藤正次, 奥野洋明: DSB(EEX)3のAβ凝集および繊維化阻害作用のTEMならびにAFMによる観察.  日本薬学会第129年会,  京都,  2009/03
10. ◎横山祐作、堤勝彦、鈴木貴文、奥野洋明、滝川 修、秋元秀俊: beta-カルボリン骨格を有する新規五環性化合物の合成と
Indoleamine 2,3-Dioxygenase (IDO) 阻害活性.  日本トリプトファン研究会 第30回学術集会,  倉敷市 日本,  2008/12
11. ◎横山祐作,氷川英正,村上泰興,奥野洋明: アシラーゼを用いた光学活性トリプトファン合成法の開発と
光学活性Clavicipitic Acidの3行程全合成.  第12回生体触媒化学シンポジウム -生体触媒による物質変換-,  習志野(東邦大学),  2008/12
12. ◎鈴木貴文、堤勝彦、山口智之、横山祐作、滝川修※、奥野洋明: ndoleamine 2,3-Dioxygenase (IDO) 阻害剤の合成.  第12回生体触媒化学シンポジウム -生体触媒による物質変換-,  船橋(東邦大学),  2008/12
13. ◎鈴木英治, 濱島利彦, 藤田由紀子, 森善昭, 松原浩子,
Davaapurev Bekh-Ochira, 加藤文男, 亀井勇統, 奥野洋明: 紅藻から単離された強力な抗MRSA物質MC 7, 8の全合成.  第50回天然有機化合物討論会,  博多,  2008/10
国際学会
1. ◎Yuusaku Yokoyama, Katsuhiko Tsutsumi, Hidetoshi Akimoto,
Osamu Takikawa, Hiroaki Okuno: Synthesis and Inhibitory Activity of Indoleamine 2, 3-Dioxygenase.  The Eighth China-Japan Joint Symposium on Drug Desigh and Development,  Kobe, Japan,  2008/11
2. ◎Okuno H, Orimoto A, Suzuki H, Ishigami A: Development of amyloid-β aggregation inhibitors.  EFMC-ISMC 2008 XXth International Symposium on Medicinal Chemistry,  Vienna, Austria,  2008/09
3. ◎Risa Maeda, Yuusaku Yokoyama, Hiroaki Okuno: Esterification of Polyalcohol in Water.  The First International Symposiumu on Process Chemistry (ISPC08),  kyoto, Japan,  2008/07
4. ◎Suzuki, H., Hamashima, T., Fujita, Y., Mori, Y., Bekh-Ochir, D., Kato, F., Kamei, Y., Okuno, H.: First total synthesis and anti-MRSA activities of bromomethylthioindoles MC 5-8.  235rd ACS National Meeting, New Orlearns, LA,  New Orlearns, LA, USA,  2008/04
  :Corresponding Author
  :本学研究者