2008年度
 医学部 医学科 耳鼻咽喉科学講座(佐倉)
 Department of Otolaryngology (Sakura)

教授:
  山本 昌彦
教授(難聴・めまい回復センター):
  鈴木 光也
講師:
  吉田 友英
■ 概要
1.耳科学
a.神経耳科学(平衡神経学)
めまい・平衡障害は、診断と治療を含めた臨床研究と新しい検査法の研究開発をすすめている。研究面では、体平衡機能に関した研究が長年にわたり行われている。静的体平衡をみるための重心動揺検査においては、新しい解析法の研究が行われており、高位中枢の体平衡機能の関与に関して重心動揺の面から解析を行っている。また、動的体平衡機能を評価するために私どもが開発しているBody Tracking Test(BTT)は、平衡機能や平衡機能回復の状態をみるために、基礎的研究を含めて行われている。新しい定量的評価法の確立、静的体平衡機能検査との関連性を検討してきた。前庭神経炎などの急性前庭神経炎障害での動的体平衡機能の変化の検討をおこなっている。左右前庭障害とリハビリテ-ションへの応用など、さらなる研究成果に期待がもたれている。半規管の内リンパ流についての模型による実験が始められ、リンパ流動態の解明が進められている。良性発作性頭位めまい症における内リンパ流の変化についても内耳病態のシュミレーションモデルを使って解析検討を行い臨床応用にも期待されている。これらの研究成果は、めまい平衡医学会、姿勢と歩行の研究会、さらには2年に1回開催される国際学会であるISPGRにおいて積極的に発表をしている。
また、眼球運動については、眼振も含めて、画像を使った検査法の開発を行っている。そのために、眼振のデータはVTRに常におさめられている。
臨床面では、めまい疾患についての診断についてはほぼ全例に対して電気眼振図検査を行い,客観的でかつ論理的に行っている。また診断のみでなく治療法にも重点を置いて行っており,特に良性発作性頭位めまい症の理学療法については、東邦大佐倉病院方式の非特異的運動療法を確立して成果を上げている。また、過去10年間に当科を受診されためまい患者についての解析検討を行っているところである。
b.耳科学・聴覚医学
聴覚の研究は、主に内耳障害症例データの検討を続けており、障害の程度、部位など生理的異常状態を知るために行っている。また、内耳性難聴の予後についても、多数の症例について検討をしている。特に入院加療を行った突発性難聴のデ-タをはじめとして、難聴を主訴に受診した過去10年間の分析検討をすすめている。
臨床面では、慢性中耳炎・中耳真珠腫の手術は聴力改善に向けた手術治療を行っており、手術法の工夫が為されている。聴力の改善も良好で、鼓膜形成術は、短期入院やday surgeryにて行ってゆく方向ですすめている。CTの解像度向上、3次元構築によって先天性外耳道閉鎖や中耳奇形についても、術前の評価が向上しており、良好な手術結果につながっている。また補聴器適合検査の認可施設であり、難聴者のQOL向上に貢献している。
2.鼻科学
研究面では、アレルギー性鼻炎が花粉症も含めて年々増加傾向にある。当病院の屋上にも花粉測定器を設置し,リアルタイムな花粉情報を外来で提供している。慢性副鼻腔炎についてはマクロライド治療と手術療法の双方による治療法の検討が為されており、長期治療による改善の程度を比較して保存的治療を探っている。
慢性副鼻腔炎の手術療法は、症例数が多く内視鏡による術式(ESS)により良好な成績をおさめている。
3.頭頸部・口腔咽頭科学
臨床面が主体になっている。アデノイド、慢性扁桃炎、喉頭ポリ-プなど症例に応じて積極的に手術加療を行っている。また、頭頸部腫瘍の手術は、甲状腺腫瘍、唾液腺腫瘍、その他の頸部良性腫瘍の手術が主体になっている。腫瘍の手術については、客員教授をまねきさらなる手術成績の向上を目指している。腫瘍、感染、変性など種々の珍しい症例も多く経験されるため学会で報告され、レポートとして投稿されている。
難聴・めまい回復センター
1)外来診療
毎週水曜日午後に難聴・めまい専門外来を非常勤医師1名とともに行い、難聴・めまい疾患の診療を専門的に行っている。専門外来終了後にカンファレンスを開き、各症例について詳細に検討し、診断と今後の治療方針を決定している。
2)手術
人工内耳手術認可の施設基準の申請に必要な鼓室形成術の件数を確保するため、これまで行ってきた診療経験を病院内外に広く啓蒙した結果、中耳手術の紹介例が増加し、施設基準に十分達したため、次年度には認可申請を行う予定である。
3)臨床・基礎 研究
ヒトを対象とした研究としては、めまい急性期における抗酸化ストレスの関連について研究をはじめている。またこれまで行ってきたヒトにおける視覚―平衡覚―聴覚―深部知覚の干渉作用の研究を更に推進させている。動物を対象とした基礎研究としては、文部科研費基盤C研究課題名「蝸牛有毛細胞の再生にかかわる支持細胞の分裂・増殖・分化とアポトーシスの機構の解明」について東京大学耳鼻咽喉科と共同研究を継続している。また「点耳液であるブロー氏液の内耳毒性の発生機序とその予防」についての研究も行い、それらの成果を日本耳鼻咽喉科学会総会、日本耳科学会、日本聴覚医学会、日本めまい平衡医学会、米国基礎耳鼻咽喉科学会などで口演し、またその内容は耳鼻咽喉科の一流英文誌に受理されている。
■ Keywords
耳鼻咽喉科:めまい・平衡障害, 重心動揺, BTT(Body Tracking Test), 眼球運動, 内耳生理, 慢性中耳炎, 聴力回復手術, 内・中・外耳奇形, 慢性副鼻腔炎, ESS,難聴・めまい回復センター:難聴・めまい専門外来,鼓室形成術,人工内耳,内耳再生,耳毒性,難聴予防,中耳炎
■ 教授・准教授・講師の公的役職
1.  山本昌彦 :厚生労働省DPC耳鼻咽喉科班員
■ 当該年度の主催学会・研究会
1.  第25回日本めまい平衡医学会医師講習会  (教授 : 山本昌彦 )  ,東京  2008/07
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  山本昌彦 :日本耳鼻咽喉科学会評議員・社会医療委員会委員・編集委員会査読委員, 千葉県地方部会会長・千葉県地方部会常任理事・千葉県地方部会学術委員会委員・社会医療委員会委員, 日本めまい平衡医学会理事・診断基準化委員会担当理事・社会医療担当理事, 日本鼻科学会評議員, 日本耳科学会評議員・編集委員会査読委員, 日本耳鼻咽喉科感染症研究会運営委員, 姿勢と歩行研究会世話人, 千葉県めまい・平衡障害研究会世話人
2.  鈴木 光也 :日本耳鼻咽喉科学会評議員・会報編集委員, 日本耳科学会評議員, 日本めまい平衡医学会評議員・医療保委員会委員, 日本聴覚医学会評議員, 東京都地方部会代議員
3.  吉田友英 :日本耳鼻咽喉科学会千葉県地方部会常任理事・千葉県地方部会社会医療委員, 日本めまい平衡医学会評議員, 姿勢と歩行研究会事務局長, 千葉県めまい・平衡障害研究会事務局長
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















山本 昌彦   教授
医学博士
 3 3            2
 7
 
 
 5
(5)
 
吉田 友英   講師
医学博士
 3 5            2
 7
 
 
 3
(3)
 
野村 俊之   助教
  3            
 9
 
 
 
 
 6 0  0 0  0  4
(0)
 0
(0)
 8
(8)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














山本 昌彦   教授
医学博士
 3        2
 
 5
(5)
吉田 友英   講師
医学博士
 3        2
 
 3
(3)
野村 俊之   助教
         
 
 
 6 0  0 0  0  4
(0)
 0
(0)
 8
(8)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. 重田芙由子, 山本昌彦, 吉田友英, 野村俊之, 高澤玲緒, 池宮城慶寛:  鼻中隔穿孔をきたした小児のボタン型アルカリ電池鼻腔異物例.  耳鼻咽喉科臨床  101 (9) :679-683 , 2008
2. 吉田友英, 山本昌彦, 野村俊之, 大和田聡子, 高澤玲緒, 池宮城慶寛, 重田芙由子:  前庭神経炎のBody Tracking Testを用いた動的体平衡機能の検討.  日本耳鼻咽喉科学会会報  111 (9) :617-622 , 2008
総説及び解説
1. 山本昌彦, 吉田友英:  加齢と身体動揺.  ENTONI  87 :43-49 , 2008
2. 吉田友英:  花粉症治療における患者とのコミュニケーション.  MEDICO  39 :56-59 , 2008
3. 吉田友英:  花粉症治療における患者とのコミュニケーション-抗ヒスタミン薬に対する患者満足度調査.  MEDICO  40 (2) :46-50 , 2009
4. 山本昌彦, 吉田友英:  耳鼻咽喉科生理機能検査の発展と将来.  検査と技術  36 :1167-1170 , 2008
5. 山本昌彦, 吉田友英:  耳鼻咽喉科領域の3D-CT.  耳鼻咽喉科臨床  101 (12) :887-894 , 2008
症例報告
1. 池宮城慶寛,山本昌彦, 吉田友英, 野村俊之, 高澤玲緒, 重田芙由子:  水痘に合併した小児顔面神経麻痺例.  耳鼻咽喉科臨床  101 (11) :841-844 , 2008
■ 学会発表
国内学会
1. ◎重田芙由子, 田村裕也, 池宮城慶寛, 高澤玲緒, 大和田聡子, 野村俊之, 吉田友英, 山本昌彦: 外傷性喉頭浮腫の二症例.  第74回日本耳鼻咽喉科学会千葉県地方部会,  千葉,  2009/01
2. ◎池宮城慶寛, 田村裕也, 重田芙由子, 高澤玲緒, 大和田聡子, 野村俊之, 吉田友英, 山本昌彦, 蛭田啓之: 顎下腺に発生したoncocytic lipoadenomaの一例.  第74回日本耳鼻咽喉科学会千葉県地方部会,  千葉,  2009/01
3. ◎山本昌彦: 小児のめまい.  第40回日本耳鼻咽喉科学会新潟県地方部会学校保健研修会,  新潟,  2008/10
4. ◎吉田友英, 田村裕也, 池宮城慶寛, 重田芙由子, 高澤玲緒, 大和田聡子, 野村俊之, 山本昌彦: 前庭神経炎患者のBody Tracking Test(BTT)について(6).  第67回日本めまい平衡医学会,  秋田,  2008/10
5. ◎田村裕也, 池宮城慶寛, 重田芙由子, 大和田聡子, 野村俊之, 吉田友英, 山本昌彦, 徳山美香: 幼児に発生した急性喉頭蓋炎の1例.  第73回日本耳鼻咽喉科学会千葉県地方部会,  千葉,  2008/06
6. ◎池宮城慶寛, 重田芙由子, 高澤玲緒, 大和田聡子, 野村俊之, 吉田友英, 山本昌彦, 蛭田啓之: 中耳より乳突蜂巣・外耳道へと広がるcappillary hemangioma(pyogenic granuloma)の1例.  第70回耳鼻咽喉科臨床学会,  長崎,  2008/06
7. ◎重田芙由子, 池宮城慶寛, 高澤玲緒, 大和田聡子, 野村俊之, 吉田友英, 山本昌彦,徳山美香: 小児と高齢者の耳後部膿瘍症例.  第70回耳鼻咽喉科臨床学会,  長崎,  2008/06
8. ◎吉田友英, 池宮城慶寛, 重田芙由子, 高澤玲緒, 大和田聡子, 野村俊之, 山本昌彦: 前庭神経炎患者のBody Tracking Test(BTT)について(5).  第109回日本耳鼻咽喉科学会総会,  大阪,  2008/05
9. ◎山本昌彦, 池宮城慶寛, 重田芙由子, 高澤玲緒, 大和田聡子, 野村俊之, 吉田友英: 半規管内リンパ流動態の模型シミュレーション実験-半規管の回転時リンパ流について-.  第109回日本耳鼻咽喉科学会総会,  大阪,  2008/05
その他
1. ◎吉田友英: 救急病棟より依頼の注視眼振がみられた2症例.  第7回千葉めまい・平衡障害研究会,  千葉,  2008/12
2. ◎吉田友英: めまい症 あれこれ.  山武郡市薬剤師会学術講演会,  千葉,  2008/11
3. ◎山本昌彦: こんな生活がめまいを起こす.  筑波学術講演会,  筑波,  2008/11
4. ◎山本昌彦, 田村裕也, 池宮城慶寛, 重田芙由子, 高澤玲緒, 大和田聡子, 野村俊之, 吉田友英: 半規管膨大部内の内リンパ圧変化について-半規管模型実験-.  第67回日本めまい・平衡医学会,  秋田,  2008/10
5. ◎山本昌彦: 「めまいの鑑別診断」について.  第9回京滋めまいカンファレンス,  京都,  2008/10
6. ◎山本昌彦: 手早くめまいを診断するために.  第31回香川めまい研究会,  高松,  2008/09
7. ◎吉田友英: メニエール病コントロール不良例の背景.  第6回千葉めまい・平衡障害研究会,  千葉,  2008/04
8. ◎山本昌彦: めまい症状の起こり方とその鑑別診断について.  第8回群馬めまい研究会,  群馬,  2008/04
  :Corresponding Author
  :本学研究者