2008年度
 医学部 医学科 法医学講座
 Department of Legal Medicine
■ 概要
1.生体試料中の薬毒物の系統的で簡便な一斉分析法の確立
今日,薬毒物が関与した犯罪,乱用,自殺あるいは医療事故等は,依然として減少しておらず,大きな社会問題となっている。これら問題となっている薬毒物を対象とし,生体試料中(血液,尿,臓器等)から,汎用されている分析手法を用い中毒の対象となる薬毒物(局所麻酔薬,解熱鎮痛薬,向精神薬,乱用薬物,抗生物質,ガス体,有機溶剤,農薬など)を対象とし,ガスクロマトグラフィー(GC)・窒素リン検出法,GC・電子捕獲型検出法,高速液体クロマトグラフィー(HPLC),高性能薄層クロマトグラフィーなどの簡易な分祈手法を用いて,生体試料中から系統的な分析法の確立を行っている。また,薬毒物検査結果の信頼性を保証するために,国際的に認められている欧米の分析法のガイドラインに匹敵するような,本法によるガイドラインの作成にも着手している
2.最新の機器分析による薬毒物の高選択性・高感度分析法の開発に関する研究
近年の分析技術の進歩は目覚ましく,より高感度でしかも特異性の高い種々の分祈機器が開発されている。これらの最新の分祈機器(GC-MS/MS,LC-MS/MS など)を活用し,より低用量で薬効を示す乱用薬物・向精神薬,ショックを引き起こすような薬物を対象とし,生体試料中の微量な薬物を迅速で高精度・高感度な分析法の確立に従事している。
3.古代遺跡出土人骨に関する遺伝的系統分析
日本(縄文,弥生時代)および海外(中国,東南アジア,メキシコ等)の古代遺跡より出土した古人骨集団について,ミトコンドリアDNA 多型を用いた遺伝的系統解析を行っている。世界的に蓄積された現代人集団および古代人集団に関する多型データとの比較検討を行うことにより,対象集団の時代的,地域的位置づけに関する興味深い知見が得られている。なお,本研究は東京大学,国立遺伝学研究所,中国遺伝研究所など国内外の複数の機関との共同研究の形で行われている。
4.古代遺跡出土人骨に見られる損傷に関する法医病理学的研究
中国商代(殷墟)やメキシコ(テオティワカン)の古代遺跡からは,大量の生贄と推測される人骨が出土している。これらの人骨には様々な切痕などの損傷が見られるが,その形状が極めて特異なため,当時使用された石器や青銅器では形成できないと思われるものが多く含まれている。これらの損傷について,各種の再現実験や病理組織学的解析を用いることにより,その成傷機序の解明を行っている。
5.死体血におけるウイルス感染能に関する研究
法医解剖では,対象となる遺体が身元不明などの理由で病的背景も不明であることが多く,肝炎やAIDS などのウイルス感染症罹患者の場合には,死体血を通して解剖従事者に感染を起こす危険が高い。そこで,ウイルスの種類や死後経過時間の違いが,死体血中におけるウイルスの感染能にどのような影響を及ぼすかについてin vivo およびin vitro におけるウイルス学的検討を行っている。
■ Keywords
法医中毒学,薬毒物分析,古人骨,DNA 多型,法医病理学,骨損傷,感染法医学
■ 当該年度の研究費受入状況
1.  文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究 (研究課題提案型)  (研究課題番号:20200041)
 研究課題:1492年前後の新大陸の人々を探る:コロンブス到来による遺伝的多様性への影響  (研究代表者:黒崎 久仁彦)
 研究補助金:6630000円  (代表)
2.  文部科学省科学研究費補助金 基盤研究(S)  (研究課題番号:18107007)
 研究課題:古代中国人類集団の遺伝的多様性とその変遷ならびに生活史の解明  (研究分担者:黒崎 久仁彦)
 研究補助金:1300000円  (分担)
■ 教授・准教授・講師の公的役職
1.  黒崎久仁彦 :東京都監察医
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  黒崎久仁彦 :日本法医学会評議員,日本人類学会評議員,日本DNA 多型学会評議員
2.  寺田  賢 :日本法医学会評議員・薬毒物検査マニュアル小委員会委員長・法医中毒学ガイドライン小委員会委員, 日本法中毒学会評議員, 日本中毒学会評議員, 日本薬学会環境・衛生部会試験法委員会薬毒物試験法専門委員
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















黒崎 久仁彦   教授
医学博士
 1             1
 
 
 1
 1
 
寺田 賢   准教授
医学博士
  2  2          1
 4
 
 1
 
 
 1 0  0 0  0  2
(0)
 0
(0)
 1
(0)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














黒崎 久仁彦   教授
医学博士
 1        1
 
 1
寺田 賢   准教授
医学博士
         1
 
 
 1 0  0 0  0  2
(0)
 0
(0)
 1
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. Saito M, Terada M, Kawata T, Ito H, Shigematsu N, Kromkhun P, Yokosuka M, Saito TR:  Effects of single or repeated administration of methamphetamine on immune response in mice.  Exp Anim.  57 :35-43 , 2008
2. Nakamae T, Shinozuka T, Sasaki C, Ogamo A, Murakami-Hashimoto C, Irie W, Terada M, Nakamura S, Furukawa M, Kurihara K:  Case report: Etizolam and its major metabolites in two unnatural at death cases.  Forensic Sci Int  182 (e) :1-6 , 2008
その他
1. 黒崎久仁彦,王瀝:  中国古人類集団の DNA 多型分析に基づく遺伝的系統解析.  国際学術研究助成 研究成果報告書(平成 17〜19 年度)財団法人 平和中島財団  :96-98 , 2008
2. 吉田武美,角田紀子,井上博之,鈴木康男,田中栄之介,土橋均,寺田賢,山田英之,山本郁男,高山成明,成松鎮雄,篠塚達雄:  薬毒物化学試験法 麻薬試験法 フェネチルアミン誘導体 トリメトキシアンフェタミン(2C-T類),メチロン.  日本薬学会128年会,環境・衛生部会資料  :35-37, 38-39 , 2008
3. 影浦光義,仁平信,工藤恵子,寺田賢,権守邦夫,斉藤剛,守屋文夫,木村恒二郎:  法医中毒学研究室ガイドラインの導入に関する戦略研究.  平成18年度〜平成19年度科学研究費補助金(基盤研究C)研究成果報告書  :1-115 , 2008
■ 学会発表
国内学会
1. 寺田 賢,田中榮之介,篠塚達雄,殿岡恵子,長谷川智華,黒崎久仁彦: 薬毒物試験法 Ⅱ-4 向精神薬試験法 抗うつ薬..  日本薬学会129年会,  京都,  2009/03
2. ◎長谷川智華, 熊澤武志,佐藤啓造: 生体試料中のGC/MS分析における固相抽出チップの開発と応用.  第33回日本医用マススペクトル学会,  東京,  2008/09
3. ◎池上仰,黒崎久仁彦,友田あき夫,青柳星見,花見真理,安本順,黒崎直子: フェノキサジン化合物による HTLV-I の発現阻害効果とアポトーシス誘導機構の検討.  第31回日本分子生物学会年会・第81回日本生化学会大会合同大会,  神戸,  2008/04
4. ◎黒崎久仁彦,白岩浩志: X線画像による生体個人識別が可能であった3例.  第92次日本法医学会総会,  長崎,  2008/04
5. ◎寺田 賢,篠塚達雄,田中栄之介,本田克也,黒崎久仁彦: キャピラリーGC/MSによる抗うつ薬の一斉分析.  第92次日本法医学会総会,  秋田,  2008/04
6. ◎長谷川智華, 熊澤武志, 李 暁鵬, 澤口聡子, 佐藤啓造: 特別刑法における医療関係者に対する処罰規定と問題点..  第92次日本法医学会総会,  長崎,  2008/04
7. ◎梅澤宏亘, 李 暁鵬, 有馬由子, 長谷川智華, 丸茂明美, 熊澤武志, 佐藤啓造: HPLC-MS/MSによる尿中ジアゼパム及び関連代謝物の簡易分析法.  第92次日本法医学会総会,  長崎,  2008/04
8. ◎林田真喜子,植草協子,大野曜吉,栗崎恵美子,寺田 賢,工藤恵子,吉田一匡, 滝埜昌彦: エチゾラムとトリアゾラム及び代謝物のLC/MS-MSによる識別と定量.  第92次日本法医学会総会,  長崎,  2008/04
9. ◎佐々木千寿子,寺田 賢,吉村久仁子,入江 渉,村上千香子,中丸尚美,古川理孝,中村茂基,栗原克由,篠塚達雄: ハルシオン単剤服用剖検例におけるトリアゾラムのGC/MSおよびHPLC分析事例.  日本法中毒学会第27年会,  東京,  2008/04
10. ◎田中栄之介,中村貴子,寺田賢,本田克也: エタノールとイミプラミンの中毒学的相互作用について.  日本法中毒学会第27年会,  東京,  2008/04
国際学会
1. ◎Hayashida M, Takino M, Uekusa K, Terada M, Kurisaki E, Kudo K: TOF-MS accurate database for benzodiazepine screening.  7th International Symposium Advances in Legal Medicine (ISALM),  Osaka,  2008/04
2. ◎M. Iida, S. Tsujimoto, T. Matsuiki, K. Kurosaki: Death from psoriasis: a case of social withdrawal and self-incarceration.  7th International Symposium on Advances in Legal Medicine (ISALM),  Osaka,  2008/04
その他
1. ◎黒崎久仁彦,黒崎直子,遠藤任彦: フェノキサジン化合物によるマウス肺転移腫瘍抑制効果.  東京医科大学ハイテク・リサーチ・センター最終研究成果公開シンポジウム,  東京,  2008/04
  :Corresponding Author
  :本学研究者