2008年度
 医学部 医学科 解剖学講座/生体構造学
 Division of Neuroanatomy, Department of Anatomy
■ 概要
1.神経系に関する研究
a.大脳基底核を中心とした運動系の神経回路網の研究
 大脳皮質—基底核—視床—大脳皮質のループにおいて,大脳基底核を構成するさまざまな核の相互間の連絡様式および視床を介するフィードバック経路について,光顕および電顕レベルで解析を行っており,大脳基底核が運動制御に果たす役割について形態学的な面からアプローチしている。
b.前脳基底部の神経回路網の研究
 前脳基底部(BF)コリン作動性皮質投射線維と帯状皮質細胞との直接的シナプス結合を電子顕微鏡的に証明した。
c.嗅覚系の研究
 嗅上皮の嗅い物質に対する反応機構の一部を量子化学的にコンピュータ演算を行って解析している。また嗅球におけるニューロンの種類と分布を系統発生的に解析するために,鳥類および哺乳類の嗅球を免疫組織化学的方法で検索している。さらに,嗅皮質の神経回路についても研究している。
d.聴覚系の研究
 聴覚伝導路における皮質視床間の神経線維連絡を解明するために,免疫組織化学的手法および軸索トレーサーによる標識法を用いて皮質視床投射神経の形態について研究している。
e.末梢神経系の研究
 ラット陰茎に分布する神経について,免疫組織化学的手法で研究している。
2.肺の比較解剖学的研究
平成3年(1991年)から,ベルギー・アントワープ大学(University of Antwerp, RUCA)と共同研究を行っている。
a.気道上皮系におけるneuroepithelial endocrine cellの免疫細胞学的研究
 両生類有尾目は気道系においてimmunoreactive cellの出現,分布について系統発生学的見地より検索した。
b.哺乳動物肺の個体発生学的研究
 ラット胎仔・新生仔肺,クジラ胎仔肺について個体発生学的見地より検索した。ラット肺との比較でクジラ妊娠月齢を判定しうることを報告した。
3.肉眼解剖学的研究
a.注射部位の局所解剖学
 静脈注射部位および筋肉注射部位において注射部位の周囲に存在する神経,深部動脈との関連に関し検索を行っている。
b.解剖学実習中にみられる変異
 人体構造には多くの変異がみられる。特に腹腔動脈系の変異は腹部外科において留意しなければならないし,また内科学においても超音波診断の際には留意しなければならない。解剖学実習中においてみられた腹腔動脈系の変異を中心に,人体構造の変異を検索している。
4.解剖学教育に関する研究
a.実習ご遺体の防腐保存処置にはホルマリンを用いるため,解剖学実習時にはホルムアルデヒドに曝露されてしまう。実習時のホルムアルデヒド曝露濃度を低減するための研究を行っている。
b.看護学生の解剖学教育効果を高めるために,ブタ心臓の未固定標本を用いて解剖学実習を行っている。この学習効果等についての質問紙調査を続けている。
■ Keywords
大脳基底核, 前脳基底部, 嗅覚, 聴覚, 神経回路, 肺, 系統発生, 局所解剖, ニオイ分子, 解剖学教育
■ 当該年度の研究費受入状況
1.  平成19-22年度文部科学省科学研究費補助金 基盤研究(B)  (研究課題番号:19340159)
 研究課題:構造不斉を有する粘土鉱物の探索と同定  (研究代表者:山岸晧彦)
 研究補助金:4160000円  (代表)
2.  平成19-21年度文部科学省科学研究費補助金 基盤研究(B)  (研究課題番号:18310072)
 研究課題:酸化チタンの光触媒効果による有機分子の分解過程の原子レベルでの解析  (研究分担者:山岸晧彦)
 研究補助金:1000000円  (分担)
その他
1.  平成20年度東邦大学医学部プロジェクト研究  (研究課題番号:20-26)
 研究課題:聴視床におけるcalbindin含有細胞とparvalbumin含有細胞のシナプス接続  (研究代表者:高柳雅朗)
 研究補助金:450000円  (代表)
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  佐藤二美 :篤志解剖全国連合会監事, 日本解剖学会評議員
2.  角田幸子 :日本解剖学会評議員
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















佐藤 二美   教授
医学博士
  3  1          
 7
 
 
 
 
角田 幸子   准教授
  3            
 6
 
 
 
 
木村 明彦   助教
  3    1 1       1
 6
 
 
 
 
高柳 雅朗   助教
博士(農学)
 3             3
 4
 
 
 
 
村上 邦夫   助教
学士(理学)
  3            3
(1)
 2
 
 
 
 
 3 0  1 0  0  7
(1)
 0
(0)
 0
(0)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














佐藤 二美   教授
医学博士
         
 
 
角田 幸子   准教授
         
 
 
木村 明彦   助教
    1     1
 
 
高柳 雅朗   助教
博士(農学)
 3        3
 
 
村上 邦夫   助教
学士(理学)
         3
(1)
 
 
 3 0  1 0  0  7
(1)
 0
(0)
 0
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. 高柳雅朗, 藤田俊雄, 三國常文, 酒井真, 石川陽一, 村上邦夫, 木村明彦, 角田幸子, 佐藤二美:  肉眼解剖学実習室における垂直方向のホルムアルデヒド濃度分布と数値流体力学による温度及び風速分布.  解剖学雑誌  83 (1) :7-13 , 2008
2. 高柳雅朗, 酒井真, 石川陽一, 村上邦夫, 木村明彦, 角田幸子, 佐藤二美:  天井給気口からの冷やされた新鮮空気の吹き下ろしによる肉眼解剖学実習時の医学生の呼吸域でのホルムアルデヒド曝露濃度低減の試み.  解剖学雑誌  83 (3) :87-93 , 2008
3. 高柳雅朗, 酒井真, 石川陽一, 村上邦夫, 木村明彦, 角田幸子, 佐藤二美:  解剖学実習時の医学生の呼吸域におけるホルムアルデヒド曝露濃度低減のために扇風機を用いた試み.  東邦医学会雑誌  55 (2) :110-117 , 2008
4. 五味敏昭, 寺嶋美帆, 國澤尚子:  採血・静脈注射の実施に関して確認しておきたい血管の基礎知識.  臨床看護  34 (1) :2-7 , 2008
5. Sato H, Hori K, Sakurai T, Yamagishi A:  Long Distance Chiral Transfer in a Gel: Experimental and ab initio Analyses of Vibrational Circular Dichroism Spectra of R-and S-12 Hydroxyoctadecanoic Acid Gels.  Chem Phys Lett  467 :140-143 , 2008
6. Sato H, Kameda J, Fukuda Y, Haga M, Yamagishi A:  Chiral Bead-like Trimer of Tris (2,4-pentaedioneate) ruthenium (III).  Chemistry Letters  37 :720-721 , 2008
7. Ashizawa M, Yamg L, Kobayashi K, Sato J, Yamagishi A, Okuda F, Harada T, Kuroda R, Haga M:  Syntheses and Photophysical Properties of Optical-active Blue-phosphorescent Iridium Complexes bearing Asymmetric Tridentate Ligand.  Dalton transactions (Cambridge, England : 2003)  :1700-1702 , 2009
8. Nishihara K, Kawai H, Gomi T, Terajima M, Chiba Y:  Investigation of optimum electrode locations by using an automatized surface electromyography analysis technique.  IEEE transactions on bio-medical engineering  55 (2) :636-642 , 2008
9. Fujieda H, Bremner R, Mears AJ, Sasaki H:  Retinoic acid receptor-related orphan receptor α regulates a subset of cone genes during mouse retinal development.  Journal of neurochemistry  108 (1) :91-101 , 2009
10. Kawasaki T, Omine T, Suzuki K, Sato H, Yamagishi A, Soai K:  Highly enantioselective asymmetric autocatalysis using chiral ruthenium complex-ion-exchanged synthetic as a chiral initiator.  Organic & biomolecular chemistry  7 :1703-1705 , 2009
11. Yokofujita J, Oda S, Igarashi H, Sato F, Kuroda M:  Synaptic characteristics between cortical cells in the rat prefrontal cortex and axon terminals from the ventral tegmental area that utilize different neurotransmitters.  The International Journal of Neuroscience  118 :1443-1459 , 2008
12. Yoshida J, Sato H, Hoshino N, Yamagishi A:  Induction and Structure Control of Chiral Nematic Phases by the use of Photo-Responsive tris (b-diketonato) Co(III) and Ru(III) Complexes.  The journal of physical chemistry. B  112 :9677-9683 , 2008
■ 著書
1. 高久史麿, 佐藤二美、小田哲子他:    ステッドマン ポケット医学略語辞典  1-526.  メジカルビュー社,  東京, 2009
2. 木村明彦(監修); 木村明彦, 成瀬秀夫, 杉崎哲朗, 石川陽一, 林弘之, 小川綾乃, 原田恵, 太田香菓子, 橋本涼子, 清水友歌, 飯塚勇太, 山田由香理, 高橋愛, 内藤飛鳥, 山田涼子, 黒田隆喜, 五反田尚子, 寺嶋美帆, 園津尚子, 西原賢, 岡本順子, 五味敏昭:    看護国試問題(解剖学・生理学)17年間(1992-2008)解答と解説(○×式)(問題分類別)2009年(平成21年)版.  p.213.  犀書房,  東京, 2008
3. 成瀬秀夫, 木村明彦, 杉崎哲郎, 石川陽一, 岡本順子, 林弘之, 森山英樹, 五味敏昭:    「理学療法士・作業療法士」「柔道整復師」 「はり師・きゆう師」 「あん摩マッサージ指圧師」国家試験問題(解剖学・生理学) 10年間 解説と解答 2009年版.  p.309.  犀書房,  東京, 2008
■ 学会発表
国内学会
1. ◎高柳雅朗, 酒井真, 石川陽一, 村上邦夫, 木村明彦, 角田幸子, 五味敏昭, 佐藤二美: 解剖学実習室への新しい換気系の導入による気中ホルムアルデヒド曝露濃度の低減.  第114回日本解剖学会総会・全国学術集会,  岡山,  2009/03
2. ◎高柳雅朗, 酒井真, 石川陽一, 村上邦夫, 木村明彦, 角田幸子, 佐藤二美: 肉眼解剖学実習室に導入したマルチメディアシステムとeラーニング.  第114回日本解剖学会総会・全国学術集会,  岡山,  2009/03
3. ◎村上邦夫, 木村明彦, 高柳雅朗, 角田幸子, 石川陽一, 酒井真, 佐藤二美: ラット膨大部後皮質顆粒部のGABA作動性インターニューロンに共存するαサブユニットニコチン性アセチルコリン受容体.  第114回日本解剖学会総会・全国学術集会,  岡山,  2009/03
4. 五味敏昭, ◎木村明彦, 成瀬秀夫, 林弘之, 寺嶋美帆, 西原賢, 森山英樹, 井所拓哉, 坂田悍教, 角田幸子, 高柳雅朗, 佐藤二美, 足立和隆, 佐々木清三, 田中淳司: MRIを用いた三角筋注射部位における皮膚厚・皮下脂肪厚の映像解剖学的研究.  第114回日本解剖学会総会・全国学術集会,  岡山,  2009/03
5. ◎村上邦夫: 神経細胞の変性を選択的に誘導するimmunotoxinは順行性トレーサーとして有効か.  日本解剖学会,  岡山,  2009/03
6. ◎石川陽一, 角田幸子, 木村明彦, 高柳雅朗, 酒井真, 五味敏昭, 佐藤二美: 木イチゴ関連化合物のニオイ変化に対する量子化学的解析.  第114回日本解剖学会総会・全国学術集会,  岡山,  2009/03
7. ◎佐藤久子, 斉藤真莉子, 森幸恵, 福田豊, 山岸晧彦: 振動円二色性分光法によるビナフチルシッフ塩基金属錯体の研究.  日本化学会第89回春季年会,  船橋,  2009/03
8. ◎山岸晧彦, 佐藤久子, 田村堅志: 粘土-イリジウム錯体付加物からの発光を用いたキラルセンシング.  日本化学会第89回春季年会,  船橋,  2009/03
9. ◎松永怜也, 山木博史, 鈴木康孝, 川俣純, 小暮敏博, 佐藤久子, 山岸晧彦: 波長変換のための有機物-粘土鉱物ハイブリッド材料の作製.  日本化学会第89回春季年会,  船橋,  2009/03
10. ◎藤本慎子, 佐藤久子, 森幸恵, 福田豊, 山岸晧彦: スターバースト型Ru(III)四核錯体の合成と性質.  日本化学会第89回春季年会,  船橋,  2009/03
11. ◎高柳雅朗, 澤佳世: モルモット聴視床におけるGABA含有細胞とparvalbumin含有神経要素の免疫組織化学的研究.  第62回東邦医学会総会,  東京,  2008/11
12. ◎村上邦夫, 木村明彦: 前脳基底部コリナージック細胞の制御を受ける帯状皮質インターニューロン.  東邦医学会,  東京,  2008/11
13. ◎西原賢, 河合恒, 細田昌孝, 千葉有, 寺嶋美帆, 五味敏昭, 須永康代, 荒木智子, 鈴木陽介, 森山英樹, 井上和久, 田口孝行, 久保田章仁, 原和彦, 藤縄理: 構造の推定による最適な筋電図電極位置の調査.  第43回理学療法学術大会,  札幌,  2008/10
14. ◎坂田悍教, 細川武, 小牧宏一, 岡本順子, 五味敏昭: 介護予防における運動機能チェックリストと実測体力評価.  第67回日本公衆衛生学会総会,  福岡,  2008/10
15. ◎佐藤久子, 森幸恵, 福田豊, 山岸晧彦: 混合配位子金属錯体の振動円二色性スペクトルによる研究.  第58回錯体化学討論会,  金沢,  2008/09
16. ◎山岸晧彦, 佐藤久子, 橋口桂子, 福田豊: 両親媒性イリジウム(Ⅲ)錯体の合成とLB膜への応用.  第58回錯体化学討論会,  金沢,  2008/09
17. ◎芳賀正明, 芦澤美佐, 小林克彰, 佐藤久子, 山岸晧彦, 黒田玲子: Ir-C結合を有する非対称三座配位子を含む青色リン光性イリジウム錯体の光学分割と円偏光発光.  第58回錯体化学討論会,  金沢,  2008/09
18. ◎佐藤久子, 田村堅志, 山田裕久, 小暮敏博, 山岸晧彦: 粘土鉱物の電子デバイスへの応用:ヘテロ界面の形成.  第52回粘土科学討論会,  那覇,  2008/09
19. ◎山岸晧彦, 佐藤久子, 谷口昌弘, 田村堅志, 山田裕久: 発光性イリジウム錯体と粘土との複合膜の製造.  第52回粘土科学討論会,  那覇,  2008/09
20. ◎佐藤久子, 福田豊, 山岸晧彦: キラルな金属錯体をドーパントに用いた光応答性液晶.  第21回配位化合物の光化学討論会,  相模原,  2008/08
21. ◎五味敏昭, 寺嶋美帆, 佐野恵美香, 小川綾乃, 國澤尚子, 西原賢, 木村明彦, 高柳雅朗, 角田幸子, 佐藤二美: 三角筋注射部位におけるMRIを用いた皮脂厚の観察.  日本看護学教育学会第18回学術集会,  つくば,  2008/08
22. ◎並木 温, 松橋正和, 佐藤二美, 岸 太一, 藤代健太郎, 坪井康次, 高松 研: 東邦大学医学部医学教育研究会(TOHO-WS)で盛り上がった教育への熱意は持続したか.  第132回東邦医学会例会,  東京,  2008/06
23. ◎五島稔, 町田保, 金井哲夫, 栗林智子, 遊佐貴司, 中村ゆり, 小原明, 五味敏昭: 手背静脈を用いた採血の現状調査と穿刺静脈の選択、局所解剖学習の重要性.  第57回日本医学検査学会,  札幌,  2008/05
国際学会
1. ◎Nishihara K, Suzuki Y, Hosoda M, Kido S, Sunaga Y, Araki T, Moriyama H, Kanemura N, Inoue K, Taguchi T, Kubota A, Hara K, Maruoka H, Ito T, Hoshi F, Takayanagi K, Fujinawa O, Hosoda K, Naruse H, Gomi T: Direction of Action Potential Propagation and innervation Zone in Skeletal Muscle.  10th International Congress of the Asian Confederation for Physical Therapy,  Chiba, JAPAN,  2008/08
その他
1. ◎五味敏昭, 今井美佳奈, 林弘之: 肘窩の採血部位の痛点分布.  東邦大学医療センター大森病院輸血部中央採血室,  東京,  2008/12
  :Corresponding Author
  :本学研究者