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 医学部 医学科 口腔外科学研究室(大森)
 Department of Oral Surgery (Omori)

准教授:
  関谷 秀樹
■ 概要
口腔がんに対する研究
1)実験的口腔癌モデルにおけるchemoradiotherapyの効果:化学誘導発癌により確立した実験的口腔癌モデルにおいて抗癌剤と放射線照射の組み合わせ(薬剤,用量,投与スケジュール,照射タイミング,照射量,他)に関する至適な条件を検討している。
2)術後機能を重視した再建法の検討:口腔癌切除再検症例について、口腔機能(咀嚼・嚥下・発音)の評価を行い、切除後の欠損部位によって分類を行い、選択した再建法の妥当性についてレトロスペクティブに検討を行う。
2)術後のリハビリテーション法に関する研究:切除後の機能ごとに、回復期間やリハビリテーション前後の機能を調査することで、リハビリテーションの効果について検討する。
3)術後軟口蓋欠損患者に対する顎補綴を用いた回復法の検討:発音・嚥下機能の回復を効果的に行うために、鼻咽腔補綴をどのように調整するか、VF(嚥下造影)を用いて検討する。
4)舌・口底欠損患者の嚥下障害に対する舌接触補助床の効果に関する検討:舌接触補助床の嚥下障害に対する効果を、障害分類(テストフード法、VF)ごとに検討し、治療効果のメカニズムを解明する。
5)舌・口底欠損患者の発音・嚥下機能の関係とその同時回復に関する検討:われわれの今までの調査で、発音と嚥下機能の両立は難しいことが判明しつつあるが、双方を同時にあるレベルまで回復させる機能再建法を工夫、検討している。
顎関節鏡視下洗浄療法の有効性と顎関節内障発症メカニズムについての研究
顎関節内症において顎関節洗浄療法が用いられているが、適応症例に施設による差がある。病態の進行ステージを的確に診断することが重要であるが、具体的な方法が示されていない。そこで開口障害を有する、顎関節内症症例(MPS症例は省く)に対し、細径硬性鏡を使った有視下洗浄療法を行い、関節内部の病態を観察、洗浄時関節腔内の滑液から、炎症性サイトカイン、ヒアルロン酸分子量、細胞成分を抽出し、洗浄前と後との比較を行い、顎関節内症のステージ分類を化学的に行い、各ステージごとの洗浄療法に対する効果を判定する。これにより洗浄療法の適応症例が明確になると同時に、そのメカニズムも解明される。
人工歯根療法に付随する顎骨再生治療に関する基礎的研究
当科では歯槽骨の欠損に対する補填法として臨床的に、整形外科領域で行われている仮骨延長法を口腔に応用している。その際仮骨に対して延長を行う=伸展メカニカルストレスを加えることに注目し、細胞のメカニカルストレスに対する骨形成効果を細胞分子生物学的に検討している。COX2が大きな役割を担っていることが判明しつつある。さらに、低出力超音波(LIPUS)の骨形成促進効果についても多くの報告をしており、これを人工歯根に照射することで、早期の固定や動揺の回復を得られるか否かを動物実験にて検討中である。
並行して、これらより得られた骨形成のメカニズムを薬理的に増強するべく、仮骨形成部位に骨形成遺伝子を電気的・物理的に遺伝子導入し、その効果を観察している。
顎変形症手術の改良
顎位を変更する手術においてしばしば問題となる、顎関節への負担を軽減する方法を検討している。既に当科で開発したpositioning法を実施し、悪影響のないことを確認しているが、そのための手術時間の延長が問題で、短縮するために専用機械の改良と術式の工夫を臨床的に検討している。また、上顎狭窄歯列弓の側方拡大において、急速拡大装置の無効例に対する新しい低侵襲の外科的補助法を検討している。側方拡大量と後戻りについて臨床統計的に考察し、従来法と比較してその有効性を検討中である。
口腔期嚥下障害に対する治療方法の検討
当科は大森病院嚥下障害対策チームにおいて、口腔期起因嚥下障害の評価と治療を担っている。脳血管障害や膠原病、精神疾患など多彩な原因を有する嚥下障害に対し、綿密に評価し、口腔期障害の全体に対する比率やその回復期間・治療法を、臨床統計学的手法を用いて解析し、さらに有効で効率のよい治療法を見いだすことを目標としている。さらに、院内連携における関連他科・部署との臨床的改善も推進している。舌接触補助床の有効性についての臨床的検討も行う。
睡眠時無呼吸症候群の補綴的治療
可撤式補綴装置により下顎位を誘導して閉塞型睡眠時無呼吸症候群の上気道拡大をはかる手段、およびその評価方法を検討している。当科で開発した調節型prosthetic mandibular advancement(OA)の治療効果を簡易型PSG、セファロメトリ、咽頭軟組織X線規格撮影法などにより解析し、よりよい治療成績を得るための工夫を検討している。
医科疾患と口腔環境・嚥下障害との関係についての研究
循環器疾患と口腔感染源による炎症、呼吸器疾患と食道疾患、嚥下障害の関連性、人工呼吸器管理後の廃用障害の進行と嚥下障害、口腔乾燥と嚥下障害、周術期口腔管理による手術合併症の軽減など、医科と歯科(口腔外科)が連携して研究しなければならないテーマを、各診療科との共有データにて解析を行い、報告する。
口腔扁平苔癬の発症メカニズムと免疫応答
口腔扁平苔癬の発症については不明確なことが多く、何かを抗原としたいわゆるアレルギー疾患である可能性が高い。その発症原因を免疫学的手法により解明する。
周術期口腔機能管理による外科手術後合併症減少効果と入院日数短縮に関する研究
周術期口腔機能管理(口腔感染源除去、気管内挿管時脱落・破折歯牙保護、咀嚼・嚥下機能評価と摂食嚥下・構音機能維持)による外科手術後合併症減少効果と入院日数短縮に関する統計学的検討を行う。
■ Keywords
口腔癌,術後機能,OSAS(閉鎖型睡眠時無呼吸症候群),OA(口腔内装置),顎変形症,顎関節症,関節鏡視下洗浄療法,顎骨再生,人工歯根(インプラント),嚥下障害,口腔ケア,周術期口腔機能管理,医科歯科連携
■ 当該年度の研究費受入状況
1.  科学研究費補助金基盤研究C  (研究課題番号:24592074)
 研究課題:動脈硬化病変進行・大動脈瘤増大のメカニズムと歯周囲疾患の関与  (研究分担者:関谷秀樹)
 研究補助金:4100000円  (分担)
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  准教授:関谷秀樹 :日本顎顔面補綴学会評議員・理事 日本口腔外科学会評議員 日本口腔科学会評議員 日本口腔腫瘍学会評議員 日本顎顔面インプラント学会評議員 歯科医師の摂食嚥下を考える会(のもう会)幹事
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















関谷 秀樹   准教授
 1 3  1          2
(1)
 16
(2)
 
 
 
 
福井 暁子   助教
  2            1
 8
(1)
 
 
 
 
堀江 彰久   助教
 1 2            4
 10
(1)
 
 
 
 
 2 0  0 0  0  7
(1)
 0
(0)
 0
(0)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














関谷 秀樹   准教授
 1        2
(1)
 
 
福井 暁子   助教
         1
 
 
堀江 彰久   助教
 1        4
 
 
 2 0  0 0  0  7
(1)
 0
(0)
 0
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. 園山智生 濱田良樹 堀内俊克 関谷秀樹:  上顎欠損患者に対するキックスプリング式可動性栓塞部付き顎義歯の有用性.  日本顎顔面補綴学会雑誌  35 (1) :36 -43 , 2012
総説及び解説
1. 久保田 玲子, 藤本 慶子, 堀江 彰久:  糖尿病を有する患者へ行った歯周治療について ペリオドンタルメディシンを考慮して.  DHstyle  6 (8) :72 -78 , 2012
2. 隅田由香 関谷秀樹:  第17回教育研修会座長総括
多施設研究に(を)学ぶ.  日本顎顔面補綴学会雑誌  35 (2) :110 -110 , 2012
3. 関谷 秀樹, 福井 暁子, 堀江 彰久:  周術期における口腔機能管理の意義と実際 東邦大学医療センター大森病院周術期センターの取り組みから 周術期センターにおける口腔機能管理の実際.  日本歯科評論  72 (6) :141 -145 , 2012
4. 堀江 彰久, 福井 暁子, 関谷 秀樹:  周術期における口腔機能管理の意義と実際 東邦大学医療センター大森病院周術期センターの取り組みから 放射線治療や化学療法を実施する患者の口腔機能管理.  日本歯科評論  72 (6) :145 -146 , 2012
■ 学会発表
国内学会
1. ◎山口祐佳 堀江彰久 関谷秀樹: 東邦大学医療センター大森病院周術期センターに おける歯科衛生士の役割とその注意点 ~当科の周術期口腔機能管理システムについて~.  第31回日本口腔腫瘍学会学術大会,  東京,  2013/01
2. ◎堀江 彰久、川口 浩司、熊谷 賢一、美島 健二、濱田 良樹、関谷 秀樹: サイバーナイフを適用した上顎線維肉腫の1例.  第31回日本口腔腫瘍学会学術大会,  東京,  2013/01
3. ◎輿 圭一郎、佐藤 徹、井出 信次、舘原 誠晃、神谷 洋子、堀江 彰久、関谷 秀樹、河原 博、里村 一人: 顔面リンパ節に後発転移をきたした上顎歯肉癌の1例.  第31回日本口腔腫瘍学会学術大会,  東京,  2013/01
4. ◎小山修示、堀江彰久、米山勇哉、金 佑謙、藤本慶子、塚越 好、福井暁子、関谷秀樹: 東邦大学医療センター大森病院・周術期センターにおける口腔管理開始後の口腔外科外来受診状況に関する検討.  第76回鶴見歯学会例会,  横浜,  2012/12
5. ◎臼井真理子,難波未央,鷲崎久美子,関東裕美,米山勇哉,福井暁子,関谷秀樹,林 健,山口 潤,石河 晃: 鼻翼基部に結節を生じた上顎外歯瘻の2例.  第846回日本皮膚科学会東京地方会,  東京,  2012/12
6. ◎藤本慶子 米山勇哉 堀江彰久 小山修示 金佑謙 福井暁子 関谷秀樹 笹井大督 澁谷和俊: 上顎骨内に発生した血管平滑筋腫の1例.  (公社)日本口腔外科学会関東支部学術集会,  東京,  2012/12
7. ◎関谷秀樹,木村香代,池田三香,藤本慶子,飯塚よう子,中村芽以子,土田泰子,下田正人,鷲澤尚宏: 要望演題:主題3 誤嚥性肺炎の予防対策;嚥下障害対策チームによる入院患者の嚥下評価・治療と退院時の在宅支援.  第9回日本在宅静脈経腸栄養研究会,  名古屋,  2012/10
8. ◎堀江彰久、米山勇哉、小山修示、金 佑謙、藤本慶子、塚越 好、福井暁子、関谷秀樹: 東邦大学大森病院周術期センター設立後の口腔機能管理部門としての口腔外科受診状況.  第57回日本口腔外科学会総会,  横浜,  2012/10
9. ◎堀江彰久 山口祐佳 長谷川哲也 吉田実知 関谷秀樹 落合亮一: 東邦大学医療センター大森病院・周術期センターにおける口腔機能管理の現状.  第34回日本手術医学会総会,  東京,  2012/10
10. ◎八木正聡, 金井郁代、 中谷安典、 堀江彰久、 濱田良樹: 診断に苦慮した巨大な舌孤在性線維腫の1例.  日本口腔外科学会,  神奈川・横浜,  2012/10
11. ◎福井暁子, 堀江彰久, 小山修示, 藤本慶子, 米山勇哉, 金佑謙, 塚越好, 渡邊正志, 寺田享志, 落合亮一, 関谷秀樹: 気管内挿管時の歯牙脱落・損傷防止に対する東邦大学医療センター大森病院周術期センター口腔機能管理部門設置の効果.  第25回日本口腔診断学会 第22回日本口腔内科学会 合同学術大会,  東京都,  2012/09
12. ◎堀江彰久、山口祐加、寺田享志、落合亮一,関谷秀樹: 東邦大学医療センター大森病院・周術期センターにおける口腔機能管理.  日本麻酔学会関東甲信越・東京支部第52回合同学術集会,  長野,  2012/09
13. ◎関谷 秀樹,木村 香代,藤本 慶子,青木 育代: 原因不明の重篤な嚥下障害にチーム医療が奏功した1例.  第46回NPO法人日本口腔科学会関東地方部会,  所沢,  2012/09
14. ◎米山勇哉,堀江彰久,山口祐佳,小山修示、金佑謙、塚越好、藤本慶子、福井暁子,関谷秀樹: 東邦大学医療センター大森病院・周術期センターにおける口腔管理開始後の口腔外科外来受診状況に関する検討.  第46回日本口腔科学会関東地方部会,  所沢,  2012/09
15. ◎塩野則次、原真範、藤井毅郎、大熊新之介、佐々木雄毅、片柳智之、益原大志、小澤 司、川崎宗泰、横室浩樹、徳弘圭一、小山信彌、堀江彰久、福井暁子、関谷秀樹、渡邉善則: 感染性心内膜炎手術症例における口腔内病変細菌の出現頻度.  第12回 日本抗加齢医学会総会,  横浜,  2012/06
16. ◎鷲澤尚宏, 関谷秀樹, 村田貴代子, 藤本慶子, 青木育代, 谷島聡, 山崎有浩, 島田英昭, 金子弘真: 内視鏡的修復術と多職種共同のチーム医療が奏功した滑脱型食道裂孔ヘルニアの1 例.  第66回日本食道学会学術集会,  軽井沢,  2012/06
17. 堀江彰久,山口祐佳,福井暁子,藤本慶子,塚越好,関谷秀樹: 東邦大学医療センター大森病院周術期センターにおける口腔ケアの現状.  第9回日本口腔ケア学会学術大会,  愛知・名古屋,  2012/06
18. ◎小山修示 堀江彰久 福井暁子 藤本慶子 米山優也 金佑謙 関谷秀樹 渡邊正志 寺田亨志 落合亮一: 気管内挿管時の歯牙脱落・損傷防止に対する東邦大学大森病院周術期センター口腔機能管理部門設置の効果.  第140回東邦医学会例会,  東京,  2012/06
  :Corresponding Author
  :本学研究者