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 医学部 医学科 産科婦人科学講座(佐倉)
 Department of Obstetrics and Gynecology (Sakura)

■ 概要
① 所属教員名(助教(任期)以上)
高島明子  / 准教授
石田洋昭  / 院内講師
萬来めぐみ  / 助教・医局長
田杭千穂 / 助 教

②運営責任者
高島明子  / 准教授

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③講座(研究室)概要
講座の概要
平成3年9月に東邦大学医学部付属佐倉病院が開院し同時に当産婦人科も開講しました。初代教授伊藤元博(平成2年~平成17年)、2代教授木下俊彦(平成17年~令和2年)、高島明子准教授(令和2年~)が教室を主宰しています。教室員は開講当時5名で始まり、令和5年現在12名の講座員で診療・研究・教育にあたっています。

④ 研究の概要
研究の概要
1. 子宮内膜への受精卵の着床に関する研究をマウスを用いてNK細胞の動態から解明しました。妊娠は、母体にとって異物である胚、すなわち胎児が拒絶されずに子宮内で発育するという、免疫学的にきわめて奇妙な現象であることが知られております。妊娠脱落膜では全細胞の約半数までが免疫細胞で占められており、しかも、これら浸潤細胞の中でも最大の細胞集団がnatural killer(NK)細胞であることが知られております。妊娠の早期段階から出産後期まで、子宮に浸潤する免疫細胞の動態を広範囲に調べたところ、妊娠6日目でNK細胞が一過性に消失することを発見しました。しかも、消失後に再び出現するNK細胞は、それまでのものと異なるNK細胞集団でした。このような妊娠日齢に伴うNK細胞の変動やその消失メカズム、そして、その機能について、検討をおこないました。1)BALBマウスにおいてCD45+CD11b-及びGr1-細胞は妊娠6日目に著明に減少しました。2)この妊娠6日目に著明に減少した白血球は妊娠12日目には再び増殖をしていました。3)この妊娠6日目に著明に減少した白血球はCD49b+のNK細胞であり、他のT,Bといったリンパ球やマクロファージ、樹状細胞は妊娠6日目に著明な変化は認めませんでした。5)妊娠後増加するNK細胞は非妊娠時と異なるサブセットでした。6)IL-15は妊娠時のNK細胞の遊走、増殖に関与している可能性が示唆されました。7)妊娠後の子宮NK細胞内にはIL-15及びINFγの産生を認めました。
>以上の結果から非妊娠時にもともと存在するNK細胞は着床期に著明に減少します。その後に子宮に遊走されるNK細胞は非妊娠時とは異なるより成熟したNK細胞であり、INFγを産生し妊娠維持をサポートしていると考えられました。
このことが受精卵の着床を母体が寛容する機序の一つであることが示唆される結果です。
2. 妊娠高血圧腎症は妊娠時に特異的な病態で高血圧と尿蛋白を発症し、さまざまな臓器障害を引き起こします。妊娠高血圧腎症の発症メカニズムは螺旋動脈のリモデリング不全による血管内皮障害が原因であることが明らかになってきており、妊娠高血圧腎症では妊娠初期より、胎盤循環不全の低酸素状態の悪循環を来し、母体血中に炎症基質を放出し、最終的に血管内皮細胞の過剰な炎症状態を介し、高血圧、尿蛋白を引き起こします。LR11(Low-density lipoprotein receptor relative with 11 ligand-binding repeats)はLDL (Low-density lipoprotein)受容体類似タンパクであり正常の血管壁には発現しないが、動脈硬化巣の血管細胞表面に発現します。LR11は切断され可溶性LR11として血中に放出されることから、血中可溶性LR11を測定することで血管細胞の分化程度をあらわす新たなバイオマーカーであることが最近明らかになっています。妊娠高血圧腎症における血管細胞の分化に関わる血中可溶性LR11の病的意義を、血中IL-6、TNF-αと比較して解析検討したところ、 血漿中可溶性LR11値は、妊娠初期と比較して妊娠後期で有意に上昇し、妊娠高血圧腎症患者での可溶性LR11値は妊娠初期、中期、後期の対象者と比較して上昇していました。妊娠高血圧腎症患者での血漿中IL-6値も、妊娠のいずれの時期の値より有意に高く、一方で妊娠高血圧腎症患者のTNF-α値は妊娠中期の値より有意に高かったが、妊娠高血圧腎症患者と妊娠初期、後期の対象者との間の比較では差がありませんでした。このようにして、血中可溶性LR11値は、IL-6値とともに、妊娠高血圧腎症患者において、正常妊娠のどの時期の値と比較しても上昇していており、私たちは、妊娠高血圧腎症の患者と正常妊娠の対象者を判別するための可溶性LR11、IL-6、TNF-αの血漿濃度の効果を調べました。妊娠後期の対象者の中から妊娠高血圧腎症を検出するためのReceiver operating characteristic (ROC) 解析により、可溶性LR11は、感度0.64とカットオフ値23.82ng/mlにおいて、 最大曲線下面積(AUC)は0.84で、IL-6の値と同等であり、TNF-αの値より明らかに優っていました。正常妊娠と妊娠高血圧腎症で可溶性LR11が上昇する病的意義を解明するために、3つの血中バイオマーカーのそれぞれ2つずつ関連があるか否かをピアソンの相関分析で検討したところ、可溶性LR11とIL-6の間では相関を認めなかったが、可溶性LR11とIL-6はTNF-αとの間で正の相関を認めました。重要な点として、妊娠高血圧腎症患者で可溶性LR11とIL-6は、TNF-αとの間の相関を認めませんでした。以上の事より可溶性LR11は妊娠週数が進むにつれ徐々に上昇し、妊娠高血圧腎症でさらに急増する。可溶性LR11の測定は、正常妊娠における血管細胞の適応と妊娠高血圧腎症における病的変化の病態生理をさらによく理解することに貢献する可能性があると考えています。

⑤ 近年の論文
代表論文



⑥教育の概要
教育の概要
学部
医学部4,5年生の臨床実習産婦人科においては東邦大学医療センター佐倉病院産婦人科での3週間の臨床実習を担当しています。
医学部6年生の3月~5月に4週間を1ブロックとした選択制臨床実習(必修)を行っています。

大学院
生体応答系産科・婦人科学の担当をしています。
最近のトピックスをメインに講義を行い、最先端の論文を読み、内容をプレゼンテーションすることでより知識を深めます。これらの習得した知識や実験技術を駆使して、研究テーマを立案して研究を行い、最終的には学位論文を作成します。

⑦ 診療の概要
診療の概要
産婦人科全般にわたっての疾患に対して対応することを心がけています。各分野における専門医のライセンス取得、認定施設登録は後進を育成し、地域医療に貢献できる大学病院として多様化し目まぐるしくバージョンアップされる情報を適切に更新しつつ、臨床、教育、研究の3本柱を見据えてより良い医療を提供できますよう心がけています。
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  高島明子 :日本子宮鏡研究会理事, 日本産科婦人科内視鏡学会評議員, 千葉産科婦人科学会理事
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















高島 明子   准教授
 2 1            7
(2)
 5
 
 
 2
 
石田 洋昭   助教
  1            
 8
 
 
 
 
田杭 千穂   助教
  1            
 6
 
 
 
 
萬来 めぐみ   助教
  1            
 9
 
 
 
 
 2 0  0 0  0  7
(2)
 0
(0)
 2
(0)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














高島 明子   准教授
 2        7
(2)
 
 2
石田 洋昭   助教
         
 
 
田杭 千穂   助教
         
 
 
萬来 めぐみ   助教
         
 
 
 2 0  0 0  0  7
(2)
 0
(0)
 2
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. 〇高島明子、江頭大樹、後藤彩:  子宮鏡下筋腫摘出術の術前薬物療法におけるジエノゲストとGnRHアンタゴニストの比較検討.  日本子宮鏡研究会雑誌  5 (1) :12 -17 , 2024
症例報告
1. 弓立 大、石田洋昭、萬来めぐみ、野中みづき、田杭千穂、田中悠子、江頭大樹、清水聖奈、杉浦善弥、蛭田啓之、高島明子:  陰核腫大により判明した子宮頚部胃型腺癌陰核転移の1例.  千葉県産婦人科医学会雑誌  17 :173 -178 , 2024
その他
1. 高島明子、片桐由起子:  保険適応になった不妊治療ーできること・できないことー II 保険適応になった治療・手技
6. 不妊検査、AMH, 子宮内膜着床能検査.  産科と婦人科  90 (4) :363 -366 , 2023
■ 学会発表
国内学会
1. ○江頭大樹、小宮山朋美、麻野徳仁、後藤彩、佐藤悠子、清水聖奈、野中みづき、田杭千穂、萬来めぐみ、石田洋昭、高島明子: TCR(STORTZ バイポーラレゼクトスコープ)における自動灌流装置の有効性.  第12回千葉産婦人科内視鏡手術研究会,  千葉,  2024/03
2. ○高島明子、江頭大樹、麻野徳仁、小宮山朋美、後藤彩、佐藤悠子、清水聖奈、野中みづき、田杭千穂、萬来めぐみ、石田洋昭: ロボット支援子宮全摘術の第1術者の経験を通して感じた、新規技術の導入とスキルアップ法.  第12回千葉産婦人科内視鏡手術研究会,  千葉,  2024/03
3. 佐藤悠子1) 石田洋昭1) 萬来めぐみ1) 田杭千穂1) 野中みづき1) 江頭大樹1) 清水聖奈1) 武井友理1) 麻野徳仁1) 後藤彩1) 小宮山朋美1) 蛭田啓之2) 高島明子1)
東邦大学医療センター佐倉病院 産婦人科1) 病院病理部2): 分娩停止での緊急帝王切開を契機に診断された卵巣未分化胚細胞腫の一例.  千葉県産科婦人科医学会 令和5年度冬季学術講演会,  千葉,  2024/01
4. 〇麻野徳仁、萬来めぐみ、江頭大樹、小宮山朋美、井上大幹、後藤彩、弓立大、野中みづき、田杭千穂、石田洋昭、高島明子: 新型コロナウィルス(COVID-19)感染後 COVID-19重症肺炎により人工呼吸器管理を要した妊婦の1例.  第148回関東連合産科婦人科学会学術講演会,  浜松,  2023/11
5. 後藤彩, 石田洋昭, 萬来めぐみ, 田杭千穂, 野中みづき, 江頭大樹, 弓立大, 麻野徳仁, 井上大幹, 高島明子: HELLP症候群に対して緊急帝王切開を施行し, 術後3日目に産科DICによる大量の腹腔内出血と筋膜下血腫を来した1例.  第148回関東連合産科婦人科学会学術講演会,  浜松,  2023/11
6. 高島明子: 簡便なレゼクトスコープ手術のためのちょっとした工夫.  第68回日本生殖学会学術講演会,  金沢,  2023/11
7. 〇高島明子、石田洋昭、萬来めぐみ、田杭千穂、野中みづき、江頭大樹、佐藤悠子、清水聖奈、麻野徳仁、後藤彩、小宮山朋美: 腹腔鏡下子宮内膜症摘出術に不妊治療で妊娠に至った症例の周産期予後.  第63回日本産科婦人科内視鏡学会,  滋賀,  2023/09
8. 高島明子: 手術療法も多様性の時代へ.  第63回日本産科婦人科内視鏡学会,  滋賀,  2023/09
9. 〇高島明子、田杭千穂、萬来めぐみ、横山安哉美: 腹腔鏡下子宮内膜症手術の周産期予後~一般不妊治療とART妊娠の比較~.  第50回日本周産期・新生児医学会学術講演会,  名古屋,  2023/07
10. 高島明子: 目指せ、合格!-認定医取得の心得ー.  2023年度第1回日本子宮鏡研究会オンライン教育セミナー,  東京,  2023/07
11. 〇高島明子, 麻野徳仁, 井上大幹, 後藤彩, 弓立大, 江頭大樹, 清水聖奈, 佐藤悠子, 野中みづき, 田杭千穂, 萬来めぐみ, 石田洋昭: 超低用量ピルの連続投与が奏功した家族性地中海熱の1例.  第75回日本産科婦人科学会学術講演会,  東京,  2023/05
12. 〇野中みづき 石田洋昭 井上大幹 麻野徳仁 後藤彩 弓立大 江頭大樹 佐藤悠子 清水聖奈 田杭千穂 萬来めぐみ 高島明子: 進行卵巣癌を疑い施行した審査腹腔鏡で 結核性腹膜炎と診断した一例.  第75回日本産科婦人科学会学術講演会,  東京,  2023/05
その他
1. 高島明子: 長期維持療法としてのGnRHantagonist.  第1回CHEUDカンファレンス,  千葉,  2023/08
2. 高島明子: 鉄欠乏性貧血の代表疾患 子宮筋腫の治療戦略.  日本科研製薬株式会社 社内研修会,  千葉,  2023/04
  :Corresponding Author
  :本学研究者