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 医学部 医学科 産科婦人科学講座(大橋)
 Department of Obstetrics and Gynecology (Ohashi)

教授:
  久布白 兼行
教授:
  久具 宏司
助教:
  田岡 英樹
助教:
  山本 泰弘
助教:
  福田 麻実
■ 概要
1.内視鏡手術
①腹腔鏡手術
 子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣腫瘍、子宮外妊娠などの良性疾患を中心に腹腔鏡下手術の症例数が増加した。現在、大橋病院産婦人科では3名が日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医の資格を有しているが、さらに1名が本技術認定医の資格取得に向けて修練中であり、手術チーム全体として技術の向上を図った。また「婦人科悪性腫瘍に対する腹腔鏡下手術」を倫理委員会に申請し承認された。一方平成21年3月、外科系保険連合(外保連)手術委員会において外保連試案(第8版)(平成22年発刊予定)に向けて「腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術」が新たに新術式として承認された。
以上を踏まえて平成22年度は子宮がんに対する腹腔鏡下手術の実施に向けてさらに準備を行う予定である。

②子宮鏡手術
 子宮筋腫などが原因となる過多月経に対して、新しい診療技術としてマイクロ波を用いた子宮内膜焼灼術を開始した。なお本手術は厚生労働省の先進医療に認定されている。平成22年度は本手術の症例数を増加させるとともに適応症例の抽出や術後の治療効果の評価に関する検討を行う予定である。
2.婦人科腫瘍
①子宮頸がんに対する新しい診断法に関する検討
 細胞診の新しい方法として液状処理細胞診の精度に関する検討、またヒトパピローマウイルス(HPV)タイピング検査に関する検討を発展させた。液状処理細胞診については、従来法と同等以上の精度であることを明らかにした。また液状処理細胞診の検体を用いてHPVタイピング検査の解析可能な条件を検討した。

②子宮体癌に対する術後化学療法の検討
 子宮体癌術後の再発高危険群を対象として補助化学療法の第Ⅲ相ランダム化比較試験に参加、症例を登録し治療を行った(婦人科悪性腫瘍化学療法研究機構)。本試験の登録期間が延長され、目標症例数が780症例となり、平成22年度も引き続き適応症例に対して積極的に症例登録ならびに治療を実施する予定である。

③卵巣癌に対する組織型に特化した化学療法ならびに再発卵巣癌に対する化学療法の検討
 上皮性悪性卵巣腫瘍のうち標準化学療法に抵抗性である明細胞腺癌を対象に、初回化学療法の第Ⅲ相ランダム化比較試験に参加、症例を登録し治療を行った(婦人科悪性腫瘍化学療法研究機構)。また再発卵巣癌を対象として、関東婦人科化学療法研究グループの第Ⅲ相比較試験に参加し、レジメの検討を行った。ひき続き再発卵巣癌の症例に対して本臨床試験に登録して治療を行う予定である。

④婦人科悪性腫瘍に対するMRI拡散強調画像(MRIDWI)を用いた画像解析法の開発
 子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌などの婦人科悪性腫瘍を対象に、病変の広がりや腫瘍の質的診断を目的としてMRIDWIを基に新たに画像解析システムのプロトタイプを確立した。本システムは造影MRIやMRIDWIの情報に加えて病変の広がりなどをより明瞭に可視化したシステムとして有用となる可能性を秘めている。平成22年度は本画像システムについて、さらに症例数を集積して検討を進める予定である。
3.周産期
平成21年度に引き続いて小児科と共同研究で、「アレルゲンに対する臍帯血単核球の応答の特徴とアレルギー発症との関連性」について検討を行った。本研究の目的は食物による乳児期アトピー性皮膚炎の発症を予測可能な方法を明らかにすることである。方法としては分娩時臍帯血を採取検体として血液よりリンパ球を分離し解析を行うコホート研究である。分娩時に臍帯血から検体採取を行っており、平成22年度はさらに症例を集積する予定である。
4.生殖・内分泌医療
おもに子宮内膜症、卵巣子宮内膜症嚢胞の症例を対象に、腹腔鏡下手術を施行後の卵巣機能に関する検討を着手した。本年度はおもに卵巣嚢胞摘出術や嚢胞摘出術後の凝固・焼灼などの術式と卵巣機能に関する解析を行った。平成22年度は卵巣のagingの観点から内分泌環境の検討を行う予定である。
5.抗加齢医学
閉経期あるいは婦人科悪性腫瘍手術後の患者を対象に卵巣機能を評価する目的で各種性ホルモンやアンチミューラー管ホルモンに関する検討を開始した。大橋病院産婦人科では平成20年度、1名が抗加齢医学会専門医の資格を取得している。今後はアンチミューラー管ホルモンの解析をはじめとして卵巣機能とagingに関する評価項目を設定し検討を進める予定である
■ Keywords
腹腔鏡下手術,TLM,TLH,婦人科悪性腫瘍,卵巣チョレート嚢腫,婦人科手術療法,化学療法,臨床試験,液状処理細胞診,HPV(ヒトパピローマウィルス),妊孕性温存治療,糖鎖生物学
■ 当該年度の主催学会・研究会
1.  第4回城南・多摩婦人科腫瘍講演会  ,東京  2011/05
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  久布白 兼行 :日本産科婦人科学会代議員、日本産科婦人科学会社会保険委員会委員、日本婦人科腫瘍学会理事、日本婦人科腫瘍学会子宮頸癌治療ガイドライン作成委員、日本婦人科腫瘍学会 専門医制度試験作成委員、日本婦人科腫瘍学会 社会保険委員会委員、婦人科悪性腫瘍研究機構理事・施設認定委員会委員長、日本産科婦人科内視鏡学会理事、日本臨床細胞学会評議員・日本臨床細胞学会施設認定委員会委員、日本レーザー治療学会評議員、外科系学会社会保険委員会連合手術委員、外科系保険連合 日本産科婦人科学会、日本婦人科腫瘍学会手術委員
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















久布白 兼行   教授
医学博士
 1 3 1 1          
 12
(12)
 1
(1)
 
 3
(3)
 
田岡 英樹   助教
  3  2          
 10
(10)
 
 
 
 
福田 麻実   助教
学士(医学)
  1            1
(1)
 9
(9)
 
 
 
 
山本 泰弘   助教
  3  2          3
(3)
 7
(7)
 
 
 
 
 1 1  0 0  0  4
(4)
 1
(1)
 3
(3)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














久布白 兼行   教授
医学博士
 1 1       
 1
(1)
 3
(3)
田岡 英樹   助教
         
 
 
福田 麻実   助教
学士(医学)
         1
(1)
 
 
山本 泰弘   助教
         3
(3)
 
 
 1 1  0 0  0  4
(4)
 1
(1)
 3
(3)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. 久布白兼行:  子宮頸がんワクチン対象になったら 特集思春期女子への診療─ティーンズとどう向き合いますか「ティーンズ女子への介入」.  Journal of Integrated Medicine  21 (10) :820-822 , 2011
2. 久布白兼行,田岡英樹,山本泰弘:  これだけは知っておきたい子宮頸癌の診断・治療と予防 液状化検体細胞診(解説/特集).  産婦人科治療  102 (6) :930-36 , 2011
総説及び解説
1. 小宮山慎一, 宇田川康博:  原発性腹膜癌の病態と管理指針.  産婦人科の実際  61 (3) :433 -437 , 2012
2. 久布白兼行,田岡英樹,山本泰弘,櫻井信行:  子宮頸部初期がんに対するレーザー治療.  日本レーザー医学会誌  31 (4) :394-399 , 2011
3. Kubushiro K, Taoka H, Sakurai N, Yamamoto Y, Kurasaki A, Asakawa Y, Iwahara M ,Takahashi K.:  Newly developed liquid-based cytology. TACAS: cytological appearance and HPV testing using liquid-based sample.  Human Cell  24 (3) :115-20 , 2011
症例報告
1. 櫻井信行, 山本泰弘, 倉﨑昭子, 田岡英樹, 福田麻実, 浅川恭行, 久布白兼行, 田口勝二, 大原関利章, 高橋啓:  子宮頸部細胞診を契機に発見された性器結核の1例.  日本産科婦人科学会東京地方部会会誌  60 (2) :243-247 , 2011
2. Sakurai N, Yamamoto Y, Asakawa Y, Taoka H, Takahashi K, Kubushiro K.:  Laparoscopically resected uterine adenomatoid tumor with coexisting endometriosis: case report.  Journal of Minimally Invasive Gynecology  18 (2) :257-61 , 2011
■ 著書
1. 宇田川康博 小宮山 慎一:  原発性腹膜癌の病態と管理指針.  産婦人科の実際  433-437.  金原出版,  東京, 2012
■ 学会発表
国内学会
1. ◎山本泰弘,浅川恭行,福田麻実,田岡英樹,久具宏司,久布白兼行: 腹腔鏡手術でのセプラフィルムの体腔内搬入および使用における工夫-Sliding technique.  第24 回日本内視鏡外科学会総会,  大阪,  2011/12
2. ◎浅川恭行,山本泰弘,福田麻実,田岡英樹,久具宏司,久布白兼行: 過多月経に対するMicrowave Endometrial Ablationの合併症回避の工夫.  第24 回日本内視鏡外科学会総会,  大阪,  2011/12
3. ◎福田麻実,山本泰弘,田岡英樹,浅川恭行,久具宏司,久布白兼行: 腟分泌物培養検査からみた加齢による腟内環境の変化についての検討.  第360回東京産科婦人科学会例会,  東京,  2011/12
4. ◎長崎澄人,田岡英樹,安達知弘,福田麻実,山本泰弘,浅川恭行,大原関利章,高橋啓,久布白兼行: 帝王切開時に摘出した子宮腺瘤を契機に発見された卵巣癌の一例.  第122回 関東連合産科婦人科学会総会学術集会,  横浜,  2011/10
5. ◎山本泰弘,福田麻実,田岡英樹,浅川恭行,久具宏司,久布白兼行: 進行再発卵巣癌患者における腹水濾過濃縮再静注法(CART)の施行経験.  第49回日本癌治療学会学術集会,  名古屋,  2011/10
6. ◎藤田正志, 田口勝二, 岩原実, 村石佳重, 川畑智子, 高橋啓, 大原関俊章, 横内幸, 安田貢, 久布白兼行: 子宮頸部塗抹細胞診標本中に出現する異型扁平上皮細胞集塊の検討.  第50回日本臨床細胞学会秋期大会,  東京,  2011/10
7. ◎安達知弘,山本泰弘,長崎澄人,福田麻実,浅川恭行,田岡英樹,久具宏司,久布白兼行: TC療法が奏効したと考えられる子宮体部原発小細胞癌の1例.  第359回東京産科婦人科学会例会,  東京,  2011/09
8. ◎山本泰弘,福田麻実,田岡英樹,浅川恭行,久布白兼行: セプラフィルムの腹腔鏡手術での利用における当科での工夫.  第51回日本産科婦人科内視鏡学会学術講演会,  大阪,  2011/08
9. ◎山本泰弘,倉崎昭子,福田麻実,櫻井信行,田岡英樹,浅川恭行,久布白兼行: MRI 拡散強調画像の卵巣腫瘍術前診断における有用性の検討―充実性部分のADC値は良悪性診断に利用できるか?.  第63回日本産科婦人科学会総会学術講演会,  大阪,  2011/08
10. ◎倉崎昭子,櫻井信行,山本泰弘,田岡英樹,福田麻実,浅川恭行,甲田英一,閔 栄根,安藤正浩,濱口宏夫,久布白兼行: 近赤外線励起ラマン分光法を用いた婦人科腫瘍の解析.  第63回日本産科婦人科学会総会学術講演会,  大阪,  2011/08
11. ◎久布白兼行: 子宮頸部腺癌Ia期の改訂ポイント (子宮頸癌治療ガイドライン解説).  第50回日本婦人科腫瘍学会学術講演会,  札幌,  2011/07
12. ◎櫻井信行, 山本泰弘, 福田麻実, 倉崎昭子, 浅川恭行, 田岡英樹, 久布白兼行, 田口勝二, 大原関利章, 高橋啓: 子宮頚部細胞診を契機に発見された性器結核の1例.  第52回日本臨床細胞学会総会,  福岡,  2011/05
国際学会
1. ◎Kaneyuki kubushiro: Laparoscopic management and hysterectomy in patients with endometrial cancer.  6th AAGL International Congress on Minimally Invasive Gynecology/12th APAGE Annual Congress,  Osaka,Japan,  2011/12
その他
1. ◎久具宏司: 「第三者が関わる生殖医療―産婦人科医の考えるべき論点―」.  青森県臨床産婦人科医会,  青森,  2012/01
2. ◎久布白兼行: 子宮頸部初期病変の取り扱い.  第282回東京産婦人科医会臨床研究会,  東京,  2012/01
3. ◎久布白兼行: 「子宮頸がんの診療における最新知見」―『産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2011』の発刊、『子宮頸癌治療ガイドライン』の改訂を踏まえて―.  船橋産婦人科講演会,  埼玉,  2011/11
4. ◎久布白兼行: 子宮頸がんに関する最近の話題 -『婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2011』の発刊を踏まえて-.  第58回埼玉リプロダクティブヘルス研究会,  埼玉,  2011/11
5. ◎久具宏司: Ovarian agingの評価.  産婦人科Up dateセミナー,  東京,  2011/10
6. ◎久具宏司: 第三者が関わる生殖医療の論点.  第159回新潟産科婦人科集談会,  新潟,  2011/10
7. ◎久具宏司: PCOS と月経異常.  第38回日本産婦人科医会学術集会静岡県大会,  静岡,  2011/10
  :Corresponding Author
  :本学研究者