<<< 前 2019年度 | 2020年度 | 2021年度
 薬学部 医療薬学教育センター/薬物治療学研究室
 Department of Pharmacology and Therapeutics

教授:
  高原 章
講師:
  永澤 悦伸
助教:
  相本 恵美
■ 概要
1.心房細動の発生メカニズム
心房への伸展刺激は心房組織に様々な変化を生じさせ、心房細動の発生や維持に関与すると考えられている。当研究室では心房に対して慢性的な容量負荷を与えるモデル動物を作製し、心臓の形態的変化、電気生理学的変化および心房細動の持続性について検討している。容量負荷に加えてアルドステロンを投与すると心房細動持続時間が延長することを見出したので、そのメカニズムを解析している。
2.薬物によるQT間隔延長リスクの評価
抗ヒスタミン薬、消化管機能改善薬、統合失調症治療薬などの非循環器官用薬に、副作用として心筋のカリウムチャネルに対する抑制作用が報告され、心電図のQT間隔延長および致死性不整脈発生の危険性が指摘されている。ところがこの副作用は発生頻度が低いため、従来の安全性薬理試験の手法ではその危険性を検出できなかった。私達は薬物性QT延長症候群の患者の特徴に関する情報を基にしてモルモットやウサギを用いた評価モデルを考案し、QT延長症候群が症例報告されている薬物による催不整脈作用を検出することに成功している。小動物の生体位心臓から単相性活動電位(MAP)を記録できる電極カテーテルの開発や完全房室ブロックウサギの作成などの技術開発を通じ、薬物が生体心臓に及ぼす作用を高精度で検出することが可能となっている。
3.動物を用いたCAVI計測システムの構築
動脈硬化の発生メカニズム解明や合併症の発生予測には、動脈硬化の程度を経時的に繰り返し計測することは極めて重要であり、非侵襲的で簡便な手法であるCAVI(cardio-ankle vascular index)が注目されている。私たちは実験動物を用いたCAVI計測システムを開発し、CAVIが弾性動脈から筋性動脈にかけての血管緊張性を反映する指標として利用可能であることを明らかにした。動脈血管の構造と血管の生理機能や薬理作用との関係性が明確にされたことで、臨床生理検査で得られるCAVI値の変化と病態生理学との関係性を議論することが可能になった。CAVIが動脈硬化に関連した疾患のリスク指標として期待できる知見が蓄積されている。
■ Keywords
薬物性QT延長症候群, トルサード・ド・ポアント, 心房細動, 心筋イオンチャネル, 心血管リモデリング, 心肥大, 高血圧, 動脈硬化, 血管弾性, CAVI
■ 当該年度の研究費受入状況
1.  文部科学省科学研究費(研究活動スタート支援)  (研究課題番号:20K22924)
 研究課題:Trigger-based AF発生基盤の構築に関わるメカニズムの解明  (研究代表者:相本 恵美)
 研究補助金:1100000円  (代表)
その他
1.  東邦大学ダイバーシティ推進センター事業
 研究課題:英文校閲経費支援制度  (研究代表者:相本 恵美)
 研究補助金:13274円  (代表)
■ 教授・准教授・講師の公的役職
1.  高原 章 :東邦大学医療センター佐倉病院 安全管理委員会委員・薬事審議会委員
■ 教授・准教授・講師の学会・研究会の役員
1.  高原 章 :日本薬理学会 代議員, 学術評議員, 薬理学エデュケーター
2.  永澤 悦伸 :日本薬理学会 学術評議員, 薬理学エデュケーター
■ 当該年度研究業績数一覧表
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表
和文英文 和文英文 国内国際
















高原 章   教授
   1 7  1 1 1 3     1
(1)
 17
(3)
 
 
 
 1
永澤 悦伸   講師
   1 5  1  1      2
(1)
 15
(2)
 
 
 
 1
相本 恵美   助教
    7          1
 16
(3)
 
 
 
 1
 0 2  2 2  0  4
(2)
 0
(0)
 0
(0)
研究者名 刊行論文 著書 その他 学会発表 その他
発表














高原 章   教授
  1  1 1    1
(1)
 
 
永澤 悦伸   講師
  1  1 1    2
(1)
 
 
相本 恵美   助教
         1
 
 
 0 2  2 2  0  4
(2)
 0
(0)
 0
(0)
(  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会 (  ):発表数中の特別講演、招請講演、宿題報告、会長講演、基調講演、受賞講演、教育講演(セミナー、レクチャーを含む)、シンポジウム、パネル(ラウンドテーブル)ディスカッション、ワークショップ、公開講座、講習会
■ 刊行論文
原著
1. Takahara A, Kawakami S, Aimoto M, Nagasawa Y:  Torsadogenic potential of HCN channel blocker ivabradine assessed in the rabbit proarrhythmia model.  Biological & Pharmaceutical Bulletin  44 (11) :1796 -1799 , 2021
2. Harada E, Sugino K, Aimoto M, Takahara A:  Effects of the L/N-type Ca2+ channel blocker cilnidipine on the cardiac histological remodelling and inducibility of atrial fibrillation in high-salt-fed rats.  Biological & Pharmaceutical Bulletin  44 (5) :707 -713 , 2021
3. Cao X, Aimoto M, Nagasawa Y, Zhang HX, Zhang CS, Takahara A:  Electrophysiological response to acehytisine was modulated by aldosterone in rats with aorto-venocaval shunts.  Biological & Pharmaceutical Bulletin  44 (8) :1044 -1049 , 2021
4. Miyazaki C, Shimizu K, Nagasawa Y, Chiba T, Sakuma K, Aimoto M, Yamamoto T, Takahashi M, Sugo N, Takahara A, Shirai K:  Effects of enhanced intracranial pressure on blood pressure and the cardio-ankle vascular index in rabbits.  Journal of Atherosclerosis and Thrombosis  28 (11) :1241 -1249 , 2021
5. Nagasawa Y, Shimoda A, Shiratori H, Morishita T, Sakuma K, Chiba T, Cao X, Kawakami S, Aimoto M, Miyazaki C, Sato S, Takahashi M, Shimizu K, Shirai K, Takahara A:  Analysis of effects of acute hypovolemia on arterial stiffness in rabbits monitored with cardio-ankle vascular index.  Journal of Pharmacological Sciences  148 (3) :331 -336 , 2022
6. Watanabe K, Shiba T, Komatsu T, Sakuma K, Aimoto M, Nagasawa Y, Takahara A, Hori Y:  The influence of hemorrhagic shock on ocular microcirculation by obtained by laser speckle flowgraphy in a white rabbit model.  Microcirculation (New York, N.Y. : 1994)  :e12716 , 2021
7. Komatsu T, Shiba T, Watanabe K, Sakuma K, Aimoto M, Nagasawa Y, Takahara A, Hori Y:  Real-Time Evaluation of Regional Arterial Stiffening, Resistance, and Ocular Circulation During Systemic Administration of Adrenaline in White Rabbits.  Translational vision science & technology  10 (9) :11 , 2021
■ 著書
1. 杉山篤, 高原章:  第6節 薬物誘発性 torsade de pointes 不整脈検出モデル.  疾患モデルの作製と利用-循環器疾患 2021  364-373.  株式会社エル・アイ・シー,  東京, 2021
2. 永澤悦伸(第39章翻訳). 橋本敬太郎, 赤池昭紀, 石井邦雄, 川西徹(監訳):  第39章 ヒスタミン、ブラジキニン、およびそれらの拮抗薬.  グッドマン・ギルマン薬理書〔上〕-薬物治療の基礎と臨床-[第13版]  1161-1186.  廣川書店,  東京, 2022
3. 高原章(第22章翻訳). 橋本敬太郎, 赤池昭紀, 石井邦雄, 川西徹(監訳):  第22章 局所麻酔薬.  グッドマン・ギルマン薬理書〔上〕-薬物治療の基礎と臨床-[第13版]  655-679.  廣川書店,  東京, 2022
4. Kazuhiro Shimizu, Mao Takahashi, Shuji Sato, Atsuhito Saiki, Daiji Nagayama, Masashi Harada, Chikao Miyazaki, Akira Takahara, Kohji Shirai:  Smooth muscle cell contraction theory for cardiovascular events.  CARDIO-ANKLE VASCULAR INDEX OVERVIEW & CLINICAL APPLICATION  339-344.  COMPASS Co., Ltd,  Tokyo, Japan, 2021
5. Saiki A, Takahara A:  Part 2, Basic properties of CAVI. Chapter 5, CAVI and other physiological parameters: Changes of CAVI with heart rate, diurnal variation.  Cardio-Ankle Vascular Index Overview & Clinical Application  55-56.  COMPASS Co.,Ltd.,  Tokyo, Japan, 2021
6. Koji Shirai, Akira Takahara:  Chapter 1: The principle of cardio-ankle vascular index (CAVI) and its features; Part 1: The principle of CAVI and its measuring methods.  Cardio-Ankle Vascular Index - Overview & Clinical Application –  19-24.  Compass Co., Ltd.,  Tokyo, Japan, 2021
7. Akira Takahara:  Chapter 37: Overview; Part 7: The role of arterial stiffness in vascular function -From animal study-.  Cardio-Ankle Vascular Index - Overview & Clinical Application –  257-260.  Compass Co., Ltd.,  Tokyo, Japan, 2021
8. Yoshinobu Nagasawa:  Chapter 38: CAVI during bleeding; Part 7: The role of arterial stiffness in vascular function -From animal study-.  Cardio-Ankle Vascular Index - Overview & Clinical Application –  261-263.  Compass Co., Ltd.,  Tokyo, Japan, 2021
9. Tatsuo Chiba:  Chapter 39: Effects of nitroglycerin on CAVI in rabbits; Part 7: The role of arterial stiffness in vascular function -From animal study-.  Cardio-Ankle Vascular Index - Overview & Clinical Application –  264-265.  Compass Co., Ltd.,  Tokyo, Japan, 2021
10. Kiyoshi Sakuma:  Chapter 40: Effects of angiotensin II infusion on CAVI, aortic Beta and femoral Beta in rabbits; the presence of crosstalk between elastic artery and muscular artery; Part 7: The role of arterial stiffness in vascular function -From animal study-.  Cardio-Ankle Vascular Index - Overview & Clinical Application –  266-267.  Compass Co., Ltd.,  Tokyo, Japan, 2021
■ 学会発表
国内学会
1. ◎永澤 悦伸, 佐久間 清, 千葉 達夫, 霜田 晃, 白取 広芸, 鈴木 保菜実, 日髙 太路, 森下 武則, 松田 凌地, 高木 幸恵, 山中 茉莉, 佐藤 啓, 川上 聡士, 相本 恵美, 高原 章: 大動脈領域の血管弾性調節機構の解明-in vivoウサギモデルでの検討.  第95回日本薬理学会年会,  福岡,  2022/03
2. ◎川上 聡士, 佐藤 修司, 戸谷 俊介, 伊藤 拓朗, 美甘 周史, 飯塚 卓夫, 高橋 真生, 相本 恵美, 永澤 悦伸, 清水 一寛, 高原 章: 虚血性心疾患患者において血管弾性指標cardio-ankle vascular index(CAVI)が経皮的冠動脈形成術の予後に与える影響.  日本循環器学会 第263回関東甲信越地方会,  オンライン開催,  2022/02
3. ◎相本 恵美, 永澤 悦伸, 高原 章: 心房におけるトリガー発生は慢性的なaldosterone負荷と容量負荷の共存により増強する.  第145回日本薬理学会関東部会,  オンライン,  2021/10
4. ◎清水一寛, 高橋真生, 佐藤修司, 永山大二, 原田雅史, 宮崎親男, 高原章, 白井厚治: CAVI as a predictor of cardiovascular events.  第3回 臨床血管健康WEB研究会,  本郷、東京,  2021/10
5. ◎永澤 悦伸, 佐久間 清, 千葉 達夫, 霜田 晃, 白取 広芸, 鈴木 保菜実, 日髙 太路, 森下 武則, 松田 凌地, 高木 幸恵, 山中 茉莉, 川上 聡士, 相本 恵美, 高原 章: 血管拡張剤、収縮剤投与時の心・血管クロストーク.  第3回臨床血管健康Web研究会,  東京,  2021/10
6. ◎高橋真生, 宮崎親男, 曹新, 佐藤修司, 清水一寛, 千葉達夫, 津熊久幸, 小松哲也, 相本恵美, 永澤悦伸, 高原章, 白井厚治: 家兎におけるカテコラミン投与時のたこつぼ様心筋運動とCAVI.  第3回臨床血管健康Web研究会,  東京,  2021/10
7. ◎伊藤 愛, 相本 恵美, 永澤 悦伸, 高原 章: 高血圧発症早期における心房の電気生理学的特性 ~ L-NAME誘発高血圧ラットを用いた検討~.  第65回日本薬学会関東支部大会,  オンライン,  2021/09
8. ◎関 翔太, 永澤 悦伸, 小林 加寿子, 相本 恵美, 高原 章: 止瀉薬loperamideによる心室再分極遅延作用にμ受容体は関与しない.  第65回日本薬学会関東支部大会,  オンライン,  2021/09
9. ◎古宮 健一郎, 相本 恵美, 永澤 悦伸, 高原 章: MEK阻害薬selumetinibが心房細動の持続性に与える影響 ~新規心房細動モデルラットを用いた検討~.  第65回日本薬学会関東支部大会,  オンライン,  2021/09
10. ◎篠﨑 達朗, 永澤 悦伸, 相本 恵美, 高原 章: 抗精神病薬fluphenazineによる心室再分極遅延作用の評価 ~ Isoflurane麻酔モルモットを用いた検討~.  第65回日本薬学会関東支部大会,  オンライン,  2021/09
11. ◎松崎 陽香, 永澤 悦伸, 小林 加寿子, 相本 恵美, 高原 章: 心室再分極異常を伴う有害事象が報告された12種の抗ヒスタミン薬の非臨床in vivo研究を通じたQT延長リスクの検証.  第65回日本薬学会関東支部大会,  オンライン,  2021/09
12. ◎倉茂 美里, 相本 恵美, 永澤 悦伸, 高原 章: 肺高血圧症の発症初期における心房細動持続性に関する検討 ~モノクロタリン肺高血圧症モデルラットを用いて~.  第65回日本薬学会関東支部大会,  オンライン,  2021/09
13. ◎高原 章, 川上 聡士, 相本 恵美, 永澤 悦伸: 摘出心臓組織標本およびウサギin vivoモデルを用いた薬物誘発性torsade de pointes不整脈の検出法.  第22回応用薬理シンポジウム,  オンライン,  2021/09
14. ◎先崎 希恵, 永澤 悦伸, 八尾 雅, 佐藤 修司, 高橋 真生, 相本 恵美, 高原 章: 循環血液量変化が大動脈と大腿動脈の血管弾性と末梢循環動態に与える影響 ーstiffness parameter β法を用いた検討ー.  第144回日本薬理学会関東部会,  オンライン,  2021/06
15. ◎川上 聡士, 永澤 悦伸, 相本 恵美, 高原 章: HCNチャネル阻害薬ivabradineの催不整脈作用 ー急性房室ブロックウサギを用いた評価ー.  第144回日本薬理学会関東部会,  オンライン,  2021/06
16. ◎渡辺研人, 柴 友明, 小松哲也, 相本恵美, 永澤悦伸, 高原 章, 堀 裕一: 出血性ショック白色家兎における、眼血流と全身臓器血流の関係性.  第125回日本眼科学会総会,  大阪,  2021/04
17. ◎川上 聡士, 長澤(萩原) 美帆子, 高田 一唐, 石丸 雄己, 相本 恵美, 永澤 悦伸, 高原 章: 薬物性QT延長症候群の発生機構におけるL型Ca2+チャネルの意義 -急性房室ブロックウサギを用いた検討-.  第95回日本薬理学会年会,  福岡,  2022/03
18. ◎相本 恵美, 宇都宮 藍, 菊池 梨奈, 永澤 悦伸, 高原 章: アルドステロンは心房細動の持続性を増大させるー慢性容量負荷モデルラットを用いた検討-.  第95回日本薬理学会年会,  福岡,  2022/03
その他
1. ◎佐藤 啓, 鈴木 保菜実, 日高 太路, 佐久間 清, 千葉 達夫, 相本 恵美, 永澤 悦伸, 高原 章: 血管弾性の機能的制御は大動脈領域と大腿動脈領域で異なる -ニフェジピンとシルニジピンの作用比較から得られた知見-.  第18回東邦大学5学部合同学術集会,  東邦大学,  2022/03
  :Corresponding Author
  :本学研究者