アリタ ミチツネ   Arita Michitsune
  有田 通恒
   所属   東邦大学  医学部 医学科
   職種   助教
言語種別 日本語
発表タイトル N-myc非増幅神経芽腫細胞株SK-N-SHの低酸素応答性の多様性
会議名 第56回日本小児血液・がん学会学術集会
学会区分 国内学会
発表形式 ポスター掲示
講演区分 一般
発表者・共同発表者◎有田通恒, 黒岩実, 上條岳彦, 近藤元就, 逸見仁道
発表年月日 2014/11/28
開催地
(都市, 国名)
岡山
概要 【背景】固型腫瘍の低酸素癌微小環境では糖代謝系や運動・遊走能,血管新生などの活性化による転移・浸潤の亢進が起こり,腫瘍の悪性化が引き起こされると考えられている.我々はこれまで,N-myc遺伝子非増幅細胞株SK-N-SHが低酸素下で複数のMAPK経路の活性化を介したN-myc発現上昇を示すことを報告し,N-myc遺伝子非増幅例の悪性化獲得機構に関してN-mycの役割の重要性を提示してきた.今回,SK-N-SHの低酸素応答性が維持施設により異なることが明らかとなったので,その詳細と意義を報告する.
【目的】複数の施設で維持されているSK-N-SHの低酸素応答について普遍的性質と可変的性質に注目して,低酸素による悪性化獲得に寄与する特性を明らかとする.
【材料と方法】我々が所有する株 (DMB) と千葉がんセンター (CHB),理研 (RCB),ATCCから分与された合計4株を用い,通常酸素濃度 (21%) と低酸素濃度 (0.1%) とで培養し,N-myc遺伝子発現の亢進,形態や細胞増殖などを指標として,株間の低酸素応答性の違いや程度を調べた.
【結果と考察】低酸素で培養したDMB株とATCC株のN-myc mRNAレベルは通常酸素濃度に比べてそれぞれ2.4倍と3.7倍に上昇した.一方,CHB株とRCB株での発現は酸素濃度の違いでほとんど変化しなかった.細胞増殖に対する低酸素の影響をそれぞれの酸素濃度での培養3日目の細胞数で比較したところ,CHB株では低酸素下で明らかな増殖低下が認められたのに対し,DMB株とATCC株では低酸素による有意な抑制は認められず,これら2つの株ではN-myc発現亢進による低酸素性細胞増殖抑制の解除が示唆された.株間での細胞形態を比較したところ,DMB株はほぼすべての細胞がN-type様であり,他の株はS, N混在であった.これら施設株間の違いは神経芽腫の多様性を反映するとともに,N-myc遺伝子非増幅例では低酸素下でN-myc亢進能を獲得することにより悪性化する可能性が示唆された.