オバラ ケイスケ   Obara Keisuke
  小原 圭将
   所属   東邦大学  薬学部 薬学科
   職種   准教授
言語種別 日本語
発表タイトル 各種統合失調症治療薬による膀胱収縮抑制作用の検討-アセチルコリン誘発性収縮及び脱分極性収縮に対する影響-
会議名 第15回東邦大学5学部合同学術集会
主催者 東邦大学
発表形式 ポスター掲示
講演区分 一般
発表者・共同発表者◎松岡佑佳†, 岩田直也†, 塩田菜々子†, 阿部友佳子†, 池上陽平†, 服部幸芽†, 濱松笙子†, 班允峰†, 八巻史子†, 小原圭将†, 田中芳夫†
発表年月日 2019/03/09
開催地
(都市, 国名)
東邦大学習志野キャンパス(船橋市, 千葉県)
学会抄録 第15回東邦大学5学部合同学術集会抄録集 22-22
概要 【背景・目的】統合失調症(SZ)は比較的若年層で発症する精神疾患であり、その主たる治療は SZ 治療薬を用いた薬物療法である。日本では高齢化に伴い SZ 患者の高齢化も進んでおり、高齢患者に対する SZ 治療薬の処方機会が増加している。これに加えて、SZ 治療
薬はアルツハイマー型認知症(AD)の妄想・幻覚等の周辺症状に奏功することから、高齢の AD 患者に対する処方機会も増加している。しかしながら、高齢者は下部尿路機能が低下しているケースが多く、高齢の SZ 患者や AD 患者のなかにも排尿障害を抱えるひとが
少なくないと思われる。そのような患者が、膀胱平滑筋の収縮抑制をもたらす抗コリン作用を有する薬物を服用すると、加齢に起因する排尿障害の悪化をもたらす可能性が高い。
したがって、基礎疾患として排尿障害を抱える高齢の SZ 患者や AD 患者に対しては、強い抗コリン作用を有する治療薬は回避し可能な限り抗コリン作用を有さない薬物を処方することが求められる。しかし、SZ 治療薬について、この目的を満たすための薬品情報は十
分には蓄積していない。そこで本研究では、膀胱平滑筋の収縮抑制に起因する尿排出機能障害を引き起こす可能性が高い SZ 治療薬を明らかにし、高齢者にも推奨できる SZ 治療薬を見出すことを目指した。
【結果】1)今回検討した 26 種類の SZ 治療薬のうち、17 種類の SZ 治療薬は ACh による収縮反応に対する有意な抑制効果を認めた。このうち、クロルプロマジン、レボメプロマジン、ゾテピン、オランザピン、クエチアピン、クロザピンは、ACh の濃度反応曲線の解析結果から算出された pA2 値が臨床血中濃度(負の対数値)の範囲内にあった。2)ACh誘発性収縮を抑制した薬物の大部分は、高濃度(10–5 M)で脱分極性収縮を抑制したが、臨床で到達しうる血中濃度範囲よりも明らかに高い濃度であった。
【考察】クロルプロマジン、レボメプロマジン、オランザピン、クエチアピン、クロザピン、ゾテピンは、臨床で想定される血中濃度範囲内で、抗コリン作用に起因する膀胱平滑筋の収縮力低下、さらにはこれに引き続く尿排出機能障害を誘発する可能性がある。した
がって、これら 6 種類の SZ 治療薬は、基礎疾患として排尿障害を抱える高齢の SZ 患者やAD 患者に対しては、処方を回避することが望ましいと判断された。