オバラ ケイスケ   Obara Keisuke
  小原 圭将
   所属   東邦大学  薬学部 薬学科
   職種   准教授
言語種別 日本語
発表タイトル ムスカリン受容体に対する各種統合失調症治療薬の結合性の評価-マウス大脳を用いた検討-
会議名 第15回東邦大学5学部合同学術集会
主催者 東邦大学
発表形式 ポスター掲示
講演区分 一般
発表者・共同発表者◎堀口早紀†, 島田刀摩†, 五十嵐巧†, 八巻史子†, 小原圭将†, 田中芳夫†
発表年月日 2019/03/19
開催地
(都市, 国名)
東邦大学習志野キャンパス(船橋市, 千葉県)
学会抄録 第15回東邦大学5学部合同学術集会抄録集 40-40
概要 【背景・目的】アルツハイマー型認知症(AD)は、認知機能の低下を引き起こす精神疾患
であり、高齢化の進展に伴い全世界でその患者数は著しく増加している。AD の主たる治
療は、ChE 阻害薬を用いた薬物療法であり、脳内の ACh 量を増加させることで AD の進
行を抑制する。AD の主要な症状は認知機能の低下であるが、その進行に伴い妄想、幻覚
等の周辺症状(BPSD)が出現する。この BPSD に対しては、統合失調症治療薬(AP)の
投与が有効とされており、治療のファーストラインとして使用されることがある。しかし、
AP が抗ムスカリン作用を有している場合、ChE 阻害薬による ACh の増加を介した治療効
果を減弱させてしまう可能性がある。そこで、本研究では、マウス大脳を用いて、ムスカ
リン受容体に対する 26 種類の AP の結合性を調べるとともに、その効力を臨床血中濃度と
比較することで、ChE 阻害薬の治療効果を減弱させる可能性が高い治療薬の探索を試みた。
【方法】マウス大脳皮質ホモジネートを用いて[N-Methyl-3H]scopolamine([3H]NMS)の
ムスカリン受容体の特異的結合に対する各種 AP(10−5 M)の抑制効果を検討した。
【結果・考察】クロルプロマジン、レボメプロマジン、プロクロルペラジン、チミペロン、
ブロナンセリン、オランザピン、クエチアピン、クロザピン、ゾテピン、ピモジドは、[
3H]NMS
(0.5 nM)の特異的結合を約 50%以上抑制した。また、これらの AP について、[
3H]NMS
の特異的結合に対する濃度依存性の抑制効果から pKi 値を算出したところ、クロルプロマ
ジン、レボメプロマジン、ゾテピン、オランザピン、クロザピンについては、pKi 値は臨
床で到達し得る血中濃度(の負の対数値)の範囲内にあった。したがって、これら 5 つの
AP は、臨床用量範囲内で抗ムスカリン作用を発揮する可能性が高いと考えられた。即ち、
ChE 阻害薬の AD に対する治療効果を減弱させてしまう可能性があるため、BPSD に対す
る治療に対しては積極的に推奨されるとは言い難いと判断された。