オバラ ケイスケ   Obara Keisuke
  小原 圭将
   所属   東邦大学  薬学部 薬学科
   職種   准教授
言語種別 日本語
発表タイトル アンジオテンシンⅡによる神経伝達物質の遊離調節を介した膀胱・胃底平滑筋の収縮弛緩機能の制御の可能性
会議名 第139回薬理学会関東部会
主催者 籾山俊彦教授(東京慈恵会医科大学 医学部医学科薬理学講座)
学会区分 国内学会
発表形式 口頭
講演区分 一般
発表者・共同発表者◎八巻史子†, 瀧川将央†, 小原圭将†, 田中芳夫†
発表年月日 2018/10/20
開催地
(都市, 国名)
東京都港区西新橋(東京慈恵会医科大学)
学会抄録 第139回薬理学会関東部会プログラム・抄録集
概要 【背景・目的】アンジオテンシンⅡ(AngⅡ)は、血圧調節に重要な役割を果たす昇圧性ペプチドである。AngⅡの昇圧作用には、血管平滑筋の収縮による末梢血管抵抗の増大やアルドステロン分泌を介したナトリウム(Na)貯留による体液量の増大などが関与する。また、交感神経終末に存在するAT1受容体の活性化によるノルアドレナリンの遊離促進を介した間接的な血管収縮も関与するとされている。AngⅡは、さらに、副交感神経終末からのアセチルコリン(ACh)の遊離を抑制することにより、AChによる徐脈作用を減弱させる可能性も報告されている。つまり、AngⅡは交感神経のみならず副交感神経からの神経伝達物質の遊離の調節にも影響を与えて生体機能の制御を調節する可能性がある。しかし、循環器系以外の組織での検討はあまりされていない。本研究では、膀胱(①)と胃底(②)平滑筋組織を対象とし、AngⅡによる神経伝達物質の遊離調節を介した収縮弛緩機能の制御の可能性を検討した。【方法】①脊髄破壊ラットを作製し、第2–4仙髄電気刺激に伴う膀胱内圧上昇反応に対するロサルタンの影響を検討した。②ラット胃底平滑筋標本を作製し、経壁神経刺激(TNS)に伴う収縮・弛緩反応に対するAngⅡの影響を検討した。【結果・考察】①仙髄電気刺激は、ATPとAChの遊離が関与する膀胱内圧上昇反応を引き起こし、ロサルタンはこの内圧上昇反応を増強した。この結果から、内因性AngⅡが副交感神経終末からのATPとAChの遊離抑制を介して、膀胱平滑筋の収縮を抑制する可能性が示唆された。②AngⅡは、L-NAME存在下でTNSにより誘発される胃底平滑筋の収縮反応を抑制したが、L-NAMEおよびグアネチジン存在下では影響を与えなかった。一方、AngⅡは、アトロピンおよびグアネチジン存在下、PGF2αで収縮させた標本でTNSにより誘発される弛緩反応に対し影響を与えなかった。これらの結果から、AngⅡは交感神経終末からの神経伝達物質の遊離を促進し、二次的に副交感神経終末からの神経伝達物質の遊離を抑制して胃底平滑筋の収縮を減弱させる可能性が示唆された。以上の結果より、循環器系以外に泌尿器系や消化管系平滑筋組織においても、AngⅡが神経伝達物質の遊離調節を介して収縮弛緩機能を制御する可能性が示唆された。