アリタ ミチツネ
Arita Michitsune
有田 通恒 所属 東邦大学 医学部 医学科 職種 助教 |
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言語種別 | 日本語 |
発表タイトル | マイクロサテライト不安定性の一形式であるEMASTの発生過程におけるp53の役割 |
会議名 | 第40回日本分子生物学会年会 |
学会区分 | 国内学会 |
発表形式 | ポスター掲示 |
講演区分 | 一般 |
発表者・共同発表者 | ◎有田通恒, 小池淳一,近藤元就,逸見仁道 |
発表年月日 | 2017/12/07 |
開催地 (都市, 国名) |
神戸市、兵庫県 |
概要 | ゲノム安定性の破綻はがんや老化の原因となる。近年、マイクロサテライト不安定性(MSI)の一表現型であるelevated microsatellite alterations at selected tetranucleotide repeats(EMAST)が、散発性大腸癌などの予後不良因子として注目されている。1から5塩基までの広範なリピートが異常となる高度なMSI(MSI-H)に対して、EMASTでは4塩基リピートに異常が集中し1塩基リピートには異常が見られない。これまでに、我々は、ミスマッチ修復(MMR)遺伝子の1つMSH3がEMASTの原因遺伝子であることや低酸素でのMSH3発現抑制機構を報告してきた。また、MSH3の低酸素性発現抑制はp53野生型では急速であり、変異型ではやや緩やかであることも示してきた。しかし、EMAST腫瘍発生に繋がるMSH3発現低下の分子機序は明らかではない。今回、MMR機能が野生型のヒト大腸癌細胞株を用いて、p53機能に依存した低酸素性EMAST誘導条件を確立したので報告する。まず、p53変異型細胞株SW620を0.1%の酸素濃度で培養し、MMR遺伝子のタンパク質レベルの発現を一定期間ごとに調べた。7日間で、MSH3は経時的に減少したのに対し、MSI-Hの原因となるMMR遺伝子MSH2やMLH1は3日目以降ほぼ同程度の発現量を維持した。すなわち、MSH3に偏ったMMR機能の低下を引き起こした。本条件でのEMAST発生を、4塩基リピートマーカー(MYCL1、L17686、UT5320、D9S242、D20S82、D11S488)を中心に調べたところ、80クローンのうち6クローンがいずれかのマーカーに変異を示した。これらクローンは1塩基リピート(BAT25、BAT26)の変異を示さず、EMASTと判定された。残りのクローンにも1塩基リピートの変異は認められず、本条件ではEMAST以外のMSIは発生しなかった。他の細胞株SW480でも同様であった。次に、この条件で、野生型p53を発現させたSW620(p53+)やp53とMMR機能がともに野生型である細胞株HCT116+3+5を培養した。その結果、MSI-Hの発生が認められた。以上の結果から、低酸素でのEMAST発生にはp53機能の欠失が不可欠であることが示された。 |