アリタ ミチツネ   Arita Michitsune
  有田 通恒
   所属   東邦大学  医学部 医学科
   職種   助教
言語種別 日本語
発表タイトル 甘草由来化合物Licochalcone AによるTrkB mRNA分解促進作用
会議名 第59回日本小児血液・がん学会学術集会
学会区分 国内学会
発表形式 ポスター掲示
講演区分 一般
発表者・共同発表者◎有田通恒, 小池淳一, 吉川 展司, 近藤元就, 逸見仁道
発表年月日 2017/11/10
開催地
(都市, 国名)
松山市、愛媛県
学会抄録 日本小児血液・がん学会雑誌 54(4),366-366 2017
概要 低酸素ストレスへの適応は固形腫瘍が悪性化する重要なステップである。神経芽腫細胞はMYCNタンパクを大量産生することでHIF-1によるMYCNの機能抑制を回避し低酸素環境に適応すると考えられる。我々はこれまでに、MYCN遺伝子非増幅細胞株SK-N-SHが低酸素下でMYCN発現の活性化を介して増殖することを見いだした。今回、甘草由来化合物リコカルコンA (LicA) に、低酸素下で活性化する神経芽腫細胞の増殖伝達経路を標的とした増殖抑制活性を見いだしたので報告する。LicAの50%阻害濃度は8.4 µMであった。次に、増殖抑制に至る細胞内標的を探索した。MYCNに対する影響を調べたところ、mRNAおよびタンパク量を低下させた。アクチノマイシンD (ActD) で転写を停止させるとLicA処理でMYCN mRNA量は低下せず、LicAはMYCNの転写を抑制することが示された。MYCN発現を制御する増殖伝達系の活性化に対するLicAの影響を、3つのMAPK (ERK, JNK, p38) とAKTのリン酸化を指標にして調べた。その結果、低酸素下のSK-N-SHではJNKが選択的に活性化し、LicA処理によりJNK活性化が抑制された。JNK経路上流の増殖因子受容体であり、神経芽腫悪性化への寄与が知られるTrkBに対する影響を調べたところ、LicA処理によりTrkB発現はmRNAレベルで低下した。しかし、MYCNとは異なり、TrkB mRNA量の低下はActD存在下でも認められたことから、LicAはTrkB mRNA分解の亢進を介してTrkB発現を抑制し、JNK経路活性化とMYCN発現に依存したSK-N-SHの低酸素性増殖を抑えることが明らかとなった。さらに、MYCN増幅株GOTOやTGWでもLicAによるTrkB mRNA量の低下が認められた。以上の結果から、LicAはTrkBシグナリングを標的とした抗がん薬として期待される。