オバラ ケイスケ   Obara Keisuke
  小原 圭将
   所属   東邦大学  薬学部 薬学科
   職種   准教授
言語種別 日本語
発表タイトル ジスチグミンによる長時間持続性の排尿時膀胱内圧の増加効果とその機序:全動物(whole animal)を用いた検討からリコンビナント酵素を用いた検証まで
会議名 第1回下総薬理学研究会
主催者 日本大学薬学部薬理学教室
発表形式 口頭
講演区分 一般
発表者・共同発表者◎小原圭将†
発表年月日 2017/06/24
開催地
(都市, 国名)
千葉県船橋市
学会抄録 第1回下総薬理学研究会プログラム・要旨集 14-14
概要 【目的】可逆的コリンエステラーゼ(ChE)阻害薬であるジスチグミン(Dis)は、日本国内では重症筋無力症や緑内障のほか、低緊張性膀胱による排尿困難に対しても適用されている。Disは長時間持続性の性質を示すとされてきたが、膀胱運動に対する増強効果がどの程度持続するかについては検討されていない。また、この性質が何に起因するかも不明である。本研究では、生体位膀胱の排尿時膀胱内圧の増加作用を指標としてDisの作用持続性を検討し、本ChE阻害薬の体内動態やChE活性阻害作用の持続性との関連性を追究した。
【方法】シストメトリー法により麻酔下モルモットの膀胱内圧変動を記録し、Disの排尿時膀胱内圧増加作用、血漿中濃度、血中ChE活性阻害作用を投与後12時間まで測定した。摘出排尿筋標本を用いた実験では、AChによる収縮反応増強作用とDTNB法により測定したChE活性に対する阻害作用を、Dis洗滌後12時間に亘り測定した。遺伝子組換え型ヒトアセチルコリンエステラーゼ(rhAChE)に対する阻害作用は、Dis洗滌48時間後まで検討した。
【結果】1)Dis(0.03–0.1 mg/kg)は、投与後12時間に亘り、モルモットの排尿時最大膀胱内圧(IVPmax)を有意に増加させた。2)血漿中のDis濃度は投与6時間後には投与直後の1%未満に低下し、消失半減期は約0.7時間と算出された。3)Disは膀胱及び全血中アセチルコリンエステラーゼ(AChE)活性をDis投与後12時間に亘り有意に阻害したが、血漿中ChE活性には影響を与えなかった。4)摘出排尿筋標本では、Dis(10-6 M)はACh(3 × 10-6 M)による収縮反応の増強作用とChE活性の阻害作用を示し、これらの作用はDis洗滌後も12時間に亘り有意に持続した。5)Dis(10-6 M)はrhAChEに対しても強力な阻害作用を示し、Disの洗滌48時間後においても阻害作用は持続したままであった。Dis洗滌後のrhAChEの酵素活性の経時変化をもとにDisのAChEからの解離速度定数(kdiss)及び解離半減期(t1/2)を求めると、それぞれ、kdiss = 0.012 ± 0.001時間-1及びt1/2 = 57.8時間と算出された。
【考察】Disの膀胱運動に対する増強作用とAChE阻害作用は12時間以上持続することが明らかとなった。また、DisがAChEから非常に解離しにくいことがこれらの特性を説明する有力な根拠となりうることも示された。